&CROP編集部の野崎です。
ファスナーメーカーといえば?という質問に、一番に思い浮かぶYKK。YKKは、日本で95%以上、世界でも45%以上のシェアを誇っています。ですが、「YKKと書かれているファスナーではなく、ちょっと違ったファスナーが使いたい」「他ブランドではあまり使われていないようなファスナーを使ってみたい。」と思ったことはありませんか?YKKファスナーは品質においても世界一と言えるファスナーメーカーですが、「YKKばかりでは面白くない!」というデザイナーの方々からの意見があるのも確かです。
そこで今回ご紹介するのが、YKKではなく、海外メーカーのファスナーです。海外メーカーのファスナーには、スイスのriri(リリ)やイタリアのRACCAGNI(ラッカーニ)、LAMPO(ランポ)などがありますが、どのファスナーメーカーもハイブランドと呼ばれるようなブランドで採用される高級ファスナーばかりです。その中でも今回は、値段も比較的お手頃で、YKKに次ぐ世界シェアを誇ると言われているアメリカの老舗ファスナーメーカー「IDEAL(アイディール)」のファスナーをご紹介させていただきます。ミニタリー系に合うファスナーや、ヴィンテージ感が出せるファスナーが使いたい、と考えている方にぴったりです。
こちらの記事では、
- IDEALファスナーの特徴・魅力
- IDEALファスナーの注文方法
- 発注の際の注意事項
を学ぶことができます。
IDEALファスナーとは
IDEAL社は、1936年にアメリカのニューヨークで創業した老舗のファスナーメーカーです。現在、生産は香港で行っています。YKKに次ぐシェアを持つメーカーで、世界各国で販売をしています。特に人気なのはヴィンテージ調のスライダーで、豊富なデザインはもちろん、スライダー部分に「IDEAL」「USA」などと刻印がされているのも特長です。
IDEALファスナーの魅力
”YKKじゃない”ファスナー
「ファスナーといえばYKK」という認識の方も多いかと思います。実際にYKKは日本で95%以上、世界で45%以上のシェアを誇るファスナーメーカーです。
そんな安心安全のYKKですが、どのアパレルでも使っているファスナーブランドであるが故に、あまり特別な感じはしません。IDEALファスナーもYKKに次いで2番目のシェアを誇るブランドですが、日本で採用されている事例はYKKよりも圧倒的に少なく、特別感があります。
おしゃれなデザイン
IDEALファスナーの魅力を語る上で欠かせないのが、スライダーのバリエーション。特に、金属ファスナーにヴィンテージデザインのスライダーを使うことが人気です。またビスロンファスナーにマット塗装したスライダーを付けると、ポップな印象にもなります。
ファスナー各部の名称
まずはじめに、本記事で出てくるファスナーの各パーツの名称をご説明します。
- エレメント…務歯(むし)とも呼ばれ、かみ合うことでファスナーの働きをします。
- テープ…ファスナーの生地の部分です。
- スライダー…ファスナーを開閉するときにエレメントをかみ合わせる役目をするパーツです。引っ張る部分を「引手」とも呼びます。
- 上止め(うわどめ)…スライダーが上から抜けないようにおさえるためのパーツです。
- 下止め(したどめ)…スライダーが下から抜けないようにおさえるためのパーツです。
IDEALファスナーの発注方法
海外のファスナーだから手が出しづらい…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一度覚えてしまえばYKKのファスナー発注とそこまで変わりません。
発注に必要な情報
IDEALファスナーは、YKKと同様にさまざまな要素の組み合わせでできているため、1本1本受注生産で作られています。注文したいファスナーを正確に伝えるために、ファスナーの種類やスライダーの種類それぞれにコードが割り振られており、それを組み合わせて注文をします。
- ファスナーの種類(金属・コイル・ビスロン)
- 製品区分(止め・開き等)
- エレメントのサイズ
- スライダーの機能
- スライダーの品番
- スライダーの仕上げ
- エレメント・テープの仕上げ
一つひとつ説明をしていきます。
ファスナーの種類
ファスナーの種類は大きく3つ
- METAL
- COIL(コイル)
- DELRIN®(ビスロン)
METAL
エレメントが金属でできているファスナーです。IDEALはヴィンテージ感のあるスライダーが特長のひとつであり、その中でもMETALファスナーは重厚感があるので、ヴィンテージ感を出したいカジュアルブランドに人気です。
METALバリエーション
METALの中でも、基本のエレメントと、光沢感の強いBRIGHTブライトシリーズがあります。それぞれ色によってコードが異なります。
ブライトシリーズは、YKKの一つひとつのエレメントに磨きをかけたエクセラファスナーのシングルに近いイメージです。ですが、エクセラほどの艶感とスライダーを上下させたときの滑らかさはありません。個人的には、見た目の光沢感が増していて、それ以外は通常ファスナーと大きく変わらない、という印象です。
COIL
ナイロン樹脂のワイヤーをコイル状に巻きつけたようなエレメント形状をしているファスナーです。YKKの「コイルファスナー」と似たつくりをしています。METALよりも軽量であることから、軽量化を求めるウェアやスポーツウェアに使われることも多いです。
COILバリエーション
最も一般的なものは【Basic】という種類です。Basicは、選んだテープカラーと同色のコイルエレメントに仕上がります。その他にも、YKKでいうとメタリオンに近い、COILファスナーを金属風の色調に仕上げたカラーや、透明なエレメント【Transparent】もあります。
DELRIN®
樹脂を射出成型でブロックのように噛み合う形状にしたファスナーです。YKKファスナーでは「ビスロン」と呼ばれている種類に近いです。エレメントの見える面積が大きく目立つので、ポップな印象を与えてくれます。DELRINもCOILと同様に軽量であることから、スポーツウェアやアウトドアウェアに使われることが多いです。
DELRINバリエーション
最も一般的なのは、【Basic】という種類です。COIL同様に、Basicは選んだテープカラーと同色のコイルエレメントに仕上がります。その他にも、YKKでいうとメタルックスに近い、エレメントを金属風の色調に仕上げたカラーや、左右のエレメントを配色(異なる色の組み合わせ)にする【Contrast Color T2D】や、暗闇で光る蓄光タイプの【Glow-in-the-Dark】などがあります。
製品区分(止め・開き等)
製品区分とは、ファスナーの下部の形状について示したものです。製品区分はファスナーの使用箇所によって異なり、大きく分けて【止め】【開き】【逆開】の3種類があります。これは、YKKファスナーと同様です。
止め(C)
「止め」は、スライダーを下ろした際に下止めによってスライダーが止まり、左右のテープが分離しないようになっています。パンツやスカートの前立てや、ポケットファスナーには、「止め」のファスナーが使われています。
開き(OR,OL)
「開き」は、ファスナー下部に開き具がついていて、左右に分離することができるようになっています。例えばブルゾンの前立ては、開きのファスナーが使われています。「開き」には、差し込むための蝶棒が右側に付いている「右挿し(OR)」と、左側に付いている「左挿し(OL)」の2種類があります。
逆開(MR,ML)
「逆開」は、「開き」と同じように開き具が付いていて、さらにスライダーが2つ付いているファスナーです。スライダーが2つ付いていることで、上下からファスナーを開けることができます。ゴルフウェアなどのスポーツウェアや、動きやすさを重視するブルゾンの前立てには、逆開のファスナーが使われていることが多いです。「逆開」にも、「開き」と同様に差し込むための蝶棒が右側に付いている「右挿し(MR)」と、左側に付いている「左挿し(ML)」の2種類があります。
また、IDEALファスナーの場合、チェーンやスライダー単品で手配することも可能です。その場合は、日本でチェーンとスライダーを組み合わせて加工をすることになります。チェーン単体で手配する場合は「CH」、スライダー単体で手配する場合は「PS」のコードを使用します。
エレメントのサイズ
エレメントのサイズ展開は、ファスナーの種類によって異なります。基本のサイズ展開は、METAL、COIL、DERLINの3種類で分かれています。
【Basic】であればこちらのサイズ展開ですが、それ以外の種類から選択する場合は、サイズ展開が限られることもございますので、使いたいファスナーが決まっている方は問い合わせて確認をするようにしてください。
スライダーの機能
ロック機能とは、スライダーを持たずにエレメントを左右に引っ張ったときにスライダーが下がって来ないようにロックをかける機能です。
ファスナースライダーは、ファスナーのエレメントを開閉する役割を持つパーツですが、実はその開閉の仕組みにも様々な機能があります。そのため使用場所や目的に合う機能を選ぶ必要があります。
スライダー機能一覧
スライダー機能の選び方
スライダー機能には、大きく分けてロック機能が付いているものと、付いていないものがあります。上記の画像でいうと、2と4はロック機能が付いていません。ロック機能が付いていないスライダーを衣服に使っていると、着用しているうちにスライダーが下がってファスナーが開いてしまうことがあります。鞄にはロック機能が付いていないスライダーを使うことが多いですが、衣服に使う場合は、特別な理由が無い限りロック機能が付いているスライダーを使うようにしましょう。
スライダーの品番
ファスナーのデザインやエレメントのサイズ・ファスナーの種類によって、スライダーを選びます。IDEALのスライダーは種類が豊富で、特にヴィンテージ感のあるデザインが人気です。IDEALのカタログに、スライダーのデザインや展開しているサイズがまとめられてるので、その中から選びましょう。
同じデザインでも、全てのサイズ展開しているとは限らないので注意!
気に入ったデザインのスライダーを見つけても、そのスライダーにロック機能が付いているかどうか、サイズの展開があるかどうか、ファスナーの種類は適応しているかどうかを確認するようにしましょう。
同じデザインが全てのサイズや種類で展開されているわけではないので、ご注意ください。
スライダーの仕上げ
スライダーの品番が決まったら、スライダーのメッキや塗装を選びます。IDEALの仕上げは「IP」から始まる品番で表されています。一般的な金属メッキや、アンティーク調に仕上げた錆びの掛かったようなメッキ、艶のある塗装やマットな質感の塗装などさまざまな種類があります。
スライダーの品番によってはできない仕上げもある
艶のある塗装よりも落ち着いた印象になるマット塗装「IP41」ですが、スライダーの品番によっては推奨されていません。例えばワイヤータイプのスライダーの場合は、マットな塗装だと剥がれやすいため艶のある塗装「IP32」やメッキが推奨されます。
METALファスナーのエレメントに合わせた仕上げは?
METALファスナーの場合、エレメントの色に合わせてスライダーを選びたい、という方も多いと思います。METALファスナーのエレメントに合わせると、こちらのカラー指定になります。
エレメントの仕上げ
最後に、COILとDELRINの場合は、ここでエレメントの仕上げを選択します。
IDEALファスナー使用の際の注意点
納期に注意
IDEALに限った話ではありませんが、ファスナーはテープ、エレメント、スライダーなどの組み合わせで構成されており、その組み合わせは数えきれないほどたくさんあります。そのため基本的には、受注生産されています。注文が入ってからの生産になるため、他の副資材と比べて納期が掛かるものと認識しておきましょう。
ファスナー納期は混雑具合にもよるため都度確認になりますが、混雑していなければ300本程度であれば1か月前後で上がります。
また、IDEALファスナーは香港で生産されています。サンプルであればOCSやDHLなどのクーリエで送ることが多いため、特に問題が無ければ発送から1-3日で届きますが、量産のファスナーをSHIPやAIRで輸送する場合は、輸送期間も加味して余裕を持って発注しておくと良いでしょう。
単価に注意(輸送がかかる)
IDEALファスナーの値段の相場は、YKKファスナーとさほど変わりませんが、海外手配品のため円安になるとその分、円単価は上がります。また、日本に輸入したり、海外工場に輸出する場合は、その運送費が掛かります。
まとめ
「ちょっと他とは違うものを使いたい」を叶えるIDEALファスナー
今回はアメリカのファスナーメーカーIDEALの魅力と注文方法を解説しました。YKK以外のファスナーを使ってみたい、ヴィンテージ感のあるファスナーや、デザイン性のあるスライダーを使ってみたい、という方はぜひ一度採用してみてはいかがでしょうか。
当メディア「&CROP」を運営している株式会社クロップオザキでは、YKKファスナーはもちろんのこと、IDEALファスナーの手配を承っております(BtoBのみの販売となります)。お気軽にお問い合わせください。