&CROP編集部の野崎です。
生地に熱で圧着してロゴ入れができる転写マーク。縫製の必要がなく、デザインのバリエーションも豊富なことから、さまざまなアパレルブランドで採用されています。しかし「うまく貼れない」「きちんと接着したのに剥がれてしまった」というトラブルもよく耳にします。生地に直接貼り付ける性質上、生地との相性やそのほかさまざまな条件が重なり、剥離につながってしまう例も少なくありません。

そこで今回は、転写マークがうまく貼れない・剥がれてしまう原因を6つ解説します。トラブルの予防・解消のお役に立てれば幸いです。
転写マークの種類やデザインのバリエーションについては、こちらの記事をご覧ください。
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もくじ
転写マークが貼れない・剥がれる原因6つ
- 生地との相性が悪い
- 温度・圧力・時間の設定ミス
- 洗濯・乾燥による剥離
- 転写マークを貼る位置の問題
- デザインの問題
- 転写マーク自体の経年劣化
原因① 生地との相性が悪い
転写マークは、生地に直接圧着させる性質上、生地との相性が非常に重要です。相性の悪い生地に接着しようとすると、剥離の原因になります。
接着強度が出にくい生地の特徴
- 強撥水・耐久撥水加工がされた布帛生地
- 表面の凹凸が強い生地
- 細い糸が使われている薄い生地

また、フィラメント系(長繊維)の糸が使用された生地よりも、スパン系(短繊維)の糸の方が樹脂が含浸しやすく付きやすいです。使用されている糸の種類は、生地の規格書に記載されていることが多いです。生地の手配先に問い合わせて、生地規格書を確認するようにしてください。
生地規格書の見方についてはこちらの記事でもご紹介しております。
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ストレッチ性のある生地の場合は、うまく接着できたとしても、引っ張った際に転写マークが伸縮に追従できず、裂けてしまうこともあります。ストレッチ生地に転写マークを施す場合は、ストレッチに追従しやすい素材(ラバーやシリコン素材)の転写マークを作成するとよいでしょう。
トラブルを防ぐための対策
転写マークを作成した際は、必ず使用する生地で事前に接着試験を行ってください。接着試験は、各ブランドの基準に沿ってブランド側が行うことが多いですが、ブランド側で対応できない場合は、転写マークの製造メーカーや弊社のような副資材商社で対応できることもあります。※基本的に、生産を依頼した業者での対応となります。
原因② 温度・圧力・時間の設定ミス
生地との相性の問題の次にありがちな原因が、温度・圧力・時間の設定ミスです。転写マークは、使用する素材やデザインによって、温度・圧力・時間の基準が定められています(基準は、転写マークの製造を依頼した会社が提供します)。この3つの条件を守ってプレス機を設定することが重要です。

よくある設定ミスのパターン
- 温度が安定していない状態でのプレス
- プレス時間の不足
温度が上がり切っていない状態でプレスをかけてしまったり、プレス機を連続して使用しているうちに温度が下がっていることに気づかずに作業を続けてしまったりすると、温度不足による剥離の原因となります。また、作業効率を上げるためにプレス時間を基準よりも短く設定してしまうことがありますが、時間が短いと接着剤が生地に十分に浸透しきらず、剥離の原因になります。
機械側の問題も見落とさない
- メンテナンス不足による温度誤差
- 機械の癖・経年劣化による設定値とのズレ
特に海外の工場の場合、プレス機のメンテナンス不足により、温度や圧力が設定条件よりも低くなってしまっていた、ということもあります。
トラブルを防ぐための対策
転写マークを生地に圧着するときは、転写条件(温度・圧力・時間)を記録しておきましょう。トラブルが起きた際は、まず温度・圧力・時間が基準通りになっているかを確認します。それでも剥離が起きる場合は、設定した温度や圧力が実際に達成されているかのチェックが必要です。プレス機の定期的なメンテナンスを依頼しておくと、事前にトラブルを防ぐことができます。
原因③ 洗濯・乾燥による剥離
販売時には問題がなかったとしても、「数回洗ったら剥離してしまった」「乾燥機にかけたら剥離してしまった」などと消費者から問い合わせが入ることがあるかもしれません。プリントと同様に、転写マークも”永遠に剥がれない”を保証することは難しいです。剥離は、使用回数・使用年数・洗濯回数によって進行します。自分のアパレルブランドとしての物性基準を持っておくことが大切です。
剥離強度の試験方法と基準
転写マークの剥離強度については、サンプルを生産した段階で、実際に転写マークを貼る生地を使って試験を行うことをおすすめしています。試験内容は、水洗い・ドライクリーニングの繰り返し試験(1〜50回程度)や、粘着力の強いテープを上から貼ってははがすことを繰り返して耐久性を確認する試験などがあります。どの程度の試験をクリアすればOKかという基準は、アパレルブランドによってさまざまです。
トラブルを防ぐための対策
品質表示には、水洗いの可/不可や乾燥の可/不可を表記する洗濯絵表示があります。生地の素材などによって決めることが多いですが、転写マークの物性も考慮して設定するようにしてください。また、特別な配慮(ネットに入れて洗うなど)が必要な場合は、品質表示内の付記用語に記載するようにしてください。
※品質表示の詳しい記載事項についてはこちらの記事をご覧ください。
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原因④ 転写マークを貼る位置の問題
転写マークを貼る位置によっては、うまく貼れなかったり、剥離が起こる原因になったりすることがあります。
縫い目・段差のある位置への転写
縫い目をまたいだ転写や、生地に段差がある位置での転写は、プレス機での圧着時に転写マーク全体に均一な圧力がかかりにくくなります。適切な接着条件で圧着していても、マークの一部で条件が整っていない箇所が生じ、そこから剥離してしまうことがあります。
負荷のかかりやすい位置への使用
生地に負荷のかかりやすい位置への転写は、転写マークも一緒に負荷を受けることで剥離の原因となります。例えば、ストレッチ生地の伸びやすい肘や膝部分などへの使用は避けるようにしましょう。
トラブルを防ぐための対策
縫製後ではフラットな面に転写できない場合は、裁断した生地の状態(縫製前)に転写マークを圧着しておくのも一つの方法です。フラットな面に転写できない仕様の場合は、転写マークを貼る位置やデザインの見直しをするようにしてください。
原因⑤ デザインの問題(細すぎる・角が鋭すぎる)
転写マーク自体のデザインが原因で、剥離につながることもあります。
剥離しやすいデザインの特徴
線が細いデザインや、先端がとがった形状は、接着面積が小さいぶん、端から剥離しやすい傾向があります。

トラブルを防ぐための対策
弊社のような副資材専門商社にご相談いただいた場合、剥離しやすいデザインでご入稿いただいたときは、事前に剥離リスクをご案内したうえで、デザインの一部修正をご提案することが多いです(線幅を太くする・角丸処理をするなど)。また、デザインよりも一回り広く接着用の糊を付ける手法もあり、その場合は角のあるデザインでも剥離が起きにくくなります。
原因⑥ 転写マークの経年劣化(保管状態の問題)
転写マークの経年劣化が原因で、剥離が起きやすくなることもあります。高温多湿の環境に長時間放置することによる品質劣化や、長期保管による接着剤の変質で、本来の接着強度を発揮できなくなるケースがあります。
トラブルを防ぐための対策
特に高温の環境下では、糊が劣化したり一部溶け出したりすることもありますので、長期間保管する場合は保管環境に問題がないかを確認してください。また、生産した転写マークについては、生産時期を記録し、古いものから優先して使うよう在庫管理に注意してください。
トラブルが起きてしまったときは
「転写マークが剥離してしまう」トラブルが起きたときは、以下の順番で原因の特定を行うとよいでしょう。
- サンプル時に取得した転写マーク×生地の接着試験結果を確認する。
→ サンプル後に生地変更があったにもかかわらず、転写マークの試験をし直すのを忘れていた…というケースも。 - 転写マークの製造を依頼した会社に、接着条件を再確認する。
- 転写加工を依頼した工場に、接着時の条件を確認する。
→ 基準の接着条件通りであれば、プレス機の温度・圧力が設定通りになっているか、繰り返し転写しているうちに設定温度が下がってしまった可能性はないかを確認する。 - 同条件で工場に再度転写してもらい、転写マークメーカーまたは検査機関で試験基準通りの結果が出ているかを確認する。
転写マークでよくある質問
Q. 転写マークは何回洗濯まで持ちますか?
作成する転写マークのデザインや手法によっても異なるため、一概には言えません。アパレルメーカーで自社基準を設け、サンプルで洗濯試験を行うようにしてください。
Q. ストレッチ素材に転写マークは使えますか?
使用可能ですが、ストレッチが強い素材の場合、転写マークが伸縮に追従できず裂けてしまう可能性があります。転写マークの素材によってもストレッチへの耐久性は異なりますので、転写したい生地が決まっている場合は、転写マークの企画段階で製造を依頼している会社に生地を見せて相談するとよいでしょう。
Q. 転写マークの剥離試験は自社でもできますか?
設備があれば可能ですが、自社のみで試験を行った場合、転写マークに対する保証や責任は自社でしか負えません。転写マークの製造メーカーや外部検査機関(ボーケン・カケン等)に依頼しておくと安心です。
Q. 転写マークが剥がれた場合、貼り直しはできますか?
基本的に、一度溶けた糊は再使用できないため、同じ転写マークを貼り直すことはできません。新しい転写マークを使用することになります。また、一度剥がれてしまった生地に再度転写マークを付けることは可能ですが、糊の跡がきれいに取れていないことが多く、元通りに仕上げるのはかなり難しいです。
まとめ ― トラブルを防ぐための3つのポイント
今回は、転写マークがうまく貼れない原因と対策についてご紹介しました。さまざまな原因がありますが、特に下記の3点に注意していただくと、トラブルが起きにくくなり、また起きたときの対処もスムーズになります。
- 必ず量産前にサンプルで試験を行う(生地との相性・剥離試験)
- 指定された接着条件(温度・圧力・時間)を守って接着する
- (何かあったときのために)接着条件を記録しておく
当メディア&CROPを運営している株式会社クロップオザキでも、転写マークのご提案・生産を行っております。転写マークについてのご相談やお困りごとがある方は、いつでもお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました!