もくじ
概要
アパレル資材とは、衣類を生産するのに必要な資材(材料)のことです。アパレル資材は主資材・副資材に分類されます。生地(表地)とニット糸の2つが主資材、それ以外が副資材です。副資材は更に繊維資材、服飾資材、商標資材に分類されます。裏地、芯地などの表地以外の生地状の資材が繊維資材、ボタン、ファスナーなど、細かなパーツが服飾資材、ブランドネームや下げ札など、商標が入った資材が商標資材です。洗濯表示やサイズ表示、納品袋等も商標資材に含まれます。
分類表
以下にアパレル資材の分類をまとめました。文章で説明すると、難しく感じますが一覧で見ると、明快です。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
主素材 | 生地(表地) | 織物、編物(カットソー)、不織布 |
ニット | 糸 | |
副資材 | 繊維資材 | 裏地・芯地・スレーキ・中綿 |
服飾資材 | ファスナー(金属、コイル、ビスロン等)・ボタン(天然素材、非天然素材ボタン等)・ドットボタン(金属ドット、プラドット等)・タックボタン・リベット・前カン(手付け、機械付け等)・ハトメ・バックル(金属バックル、プラバックル等)・テープ(サテン、グログラン、綾テープ等)・レース(トーション、エンブロイダリ―等)・リブ(横編み)スパンコール・ビーズ(グラス、プラ、ウッドビーズ等) | |
商標資材 | ブランドネーム(織りネーム、プリントネーム等)洗濯表示(品質表示、注意表示等)下札、納品袋 |
付属とは?
アパレル業、とりわけデザインやアパレル資材の選定や生産に関わる方は「付属」と言う言葉を耳にするかもしれません。付属とはボタンやフックなどの細かなパーツの俗称です。
辞書でその意味を調べると、次のようにあります。
主になるものに付き従っていること。また、そのもの。
ふ‐ぞく【付属/附属】 の解説-goo辞書
衣類の一部分、付属品の様な立場であることから、アパレル製品の服飾資材の中の特に小さなパーツ群を「付属」と呼ぶようになったと考えられます。特に当社の様なアパレル副資材商社(卸)では、服飾資材ということは殆どなく、より直感的な「付属」と呼ぶのが一般的です。
ジャケットにみるアパレル資材
例として、ジャケットにどんなアパレル資材が使われているか見てみましょう。
メイン資材
まず、ジャケットと言えば、メインとなる生地(主資材)と、ジャケットを留めるボタン(副資材/服飾資材)です。この2つは、まっさきに思いつく資材でしょう。
見えない部分で活躍する「繊維資材」
ですが、これだけではジャケットはできません。内側には着用時の肌触りや滑りを良くする為の裏地、衿や見返しには補強・保形のための芯地、ポケットには袋布と言われるスレーキといった繊維資材(副資材)が必要です。
販売や流通に欠かせない「商標資材」
販売する場合は、これだけでは駄目ですので、商標資材(副資材)の出番です。どのブランドかを示すブランドネーム、サイズを表すサイズネーム、洗濯方法を示す洗濯表示(洗濯ネーム)、販売するのに必要な下げ札を付けます。更に、流通時の配慮も必要ですので、縫製工場で生産終了後に流通で汚れないように納品袋が使われます。
これらジャケット自体に必要な生地やボタンだけでなく、流通に必要な納品袋も含め全てアパレル資材です。このように、ひとつのジャケットを作成・販売するのに多くのアパレル資材が使われています。
概要を掴んだら、次に、アパレル資材を各分類ごとに細かく見ていきましょう。
主素材
概要
主資材とは、洋服のメインとなる生地(表地)の事です。主資材は生地(表地)とニットの2つ。生地は織物・編物・不織布の3種類、ニットはニット用の糸が資材に当たります。
分類表
主資材の分類です。こうして分類を見ると、生地とニットは別物、という事が分かりますね。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
主素材 | 生地(表地) | 織物 |
編物(カットソー) | ||
不織布 | ||
ニット | 糸(ウール、カシミヤ、シルク、モヘアなど) |
生地?表地?
これまでの解説でも、生地(表地)と表記しています。この為、この記事を読んでいる方の中には、名称・呼び方として、生地が正しいのか、表地が正しいのか疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、生地も表地もどちらも正しい名称・呼び方です。ですが、アパレル業界では、「生地=表地」という共通認識がある為、メインとなる生地のことを表地と言うことは殆どなく、生地と言う方が一般的です。生地を使用したアパレル資材には裏地もある為、メインとなる生地と裏地の区別で「表地」と名付けられている、といった具合です。
生地(表地)
ー主素材ー
主素材の1つ目、生地(表地)には、織物と編物、不織布の3種類。この3つの中では、織物と編物が種類も流通も多いメイン資材です。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
主素材 | 生地(表地) | 織物 |
編物(カットソー) | ||
不織布 |
織物
概要
織物とは、縦糸・緯糸を使って織った生地のことです。織物は、織り組織(織り方)による分類と素材による分類、と2つの分類の仕方があります。
表にした方が分かりやすいので、以下分類表をご覧ください。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
主素材 | 生地(表地) | 織物 | <三原組織別> |
<素材別> |
織り組織による分類
織り組織とは、生地の織り方のことです。織り組織は三種類あります。1つ目は平織(タフタ)、2つ目は綾織(ツイル)、3つ目は朱子織(サテン)。これら3つの織り組織を『三原組織(織物三原組織)』と呼びます。
素材による分類
素材の場合は、5つに分類されます。1つ目はウールや綿などの天然素材、2つ目はポリエステル、ナイロンに代表される合成繊維、3つ目はレーヨン、テンセルといった再生繊維、4つ目はアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、そして5つ目は金属繊維や炭素繊維といったその他の繊維です。
平織(タフタ)・綾織(ツイル)・朱子織(サテン)の3つの織り組織を基本とし、織り方×素材の組み合わせで、いろいろな種類の織物生地が生産されています。
編物(カットソー)
ー主資材/生地(表地)ー
概要
編物とは、主にカットソーに使われる丸編みの生地のことです。代表的な編物生地には、天竺、スムース、テレコ、裏毛などがあります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
主素材 | 生地(表地) | 編物(カットソー) | 天竺、スムース、テレコ、裏毛など |
特徴
編物の特徴は2つ。1つは織物の生地よりも伸縮性があり、肌触りがいい点。もう一つは生地状になっている編地を裁断して縫って製品にするという点です。編物には、主資材のニットがありますが、編物生地がニットと区別されるのは、裁断して縫う点にあります。
用途
伸縮性があり肌触りが良いことから、機能性や肌触りを重視する、Tシャツ、トレーナー、スエットパンツ等に使われます。
カットソーとは?
カットソーとは、編物生地を使って作られた衣服のことです。編地生地の特徴である生地状になっている編地を裁断(CUT)して縫う(SEW)”CUT & SEW”が語源です。
カットソーというシャツが売られていることから、カットソーとTシャツは別と思われる方がいますが、カットソーと呼ばれているシャツも、Tシャツもトレーナー・スウェットも同じカットソーです。
不織布
ー主資材/生地(表地)ー
概要
不織布(ふしょくふ)とは、読んで字の如く、織っても編んでもいない生地のことです。代表的な生地に、フェルトやスパンボンドが挙げられます。防護服に使われるタイベックス(デュポンの商標)が有名です。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
主素材 | 生地(表地) | 不織布 | フェルト・スパンボンド、タイベックスなど |
ニット(糸)
ー主資材ー
概要
ニットとは、1本の糸をループ状に編んで作られた製品のことです。ニットは表地と異なり出来上がったニットを裁断して売買するのではなく、原料(編む前の)となる糸の取引となる為、糸が資材にあたります。厳密にいうと一部縫製されたものもありますが、ニットの特徴は、同じ編物であるカットソーと違い裁断・縫製をしないことです。袖や衿なども、”リンキング”と呼ばれる手法を使い、そのパーツ毎に縫製せず編んで取り付けます。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
主素材 | ニット | 糸 | ウール、カシミヤ、シルク、モヘアなど |
代表的なニット素材
糸の素材として代表格はウールです。その他、高級な素材としてカシミヤやシルク、意匠性の高いモヘア、春夏向けに使われる綿やリネンなどがあります。また、低価格に仕上げられるアクリルもよく使われます。
副資材
概要
副資材とは、洋服のメインとなる生地(表地)とニット以外の資材のことです。副資材には繊維資材と服飾資材、商標資材があります。
繊維資材は表地以外の生地からなる資材で、裏地・芯地・スレーキ・中綿の4種類、服飾資材は生地以外の細かなパーツで数多く、ファスナー・ボタン・ドットボタン・タックボタン・リベット・前カン・ハトメ・バックル・テープ・レース・リブ、スパンコール・ビーズの全13種類、商標資材はブランド名など商標名が入った資材で、ブランドネーム・選択表示・下げ札等が挙げられます。
※この辞典では、納品袋等も商標資材に分類しています。
分類表
各副資材が、どこに分類されるかは、以下分類表をご覧ください。用途別にまとまっているのが分かります。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 繊維資材 | 裏地・芯地・スレーキ・中綿 |
服飾資材 | ファスナー・ボタン・ドットボタン・タックボタン・リベット・前カン・ハトメ・バックル・テープ・レース・リブ(横編み)スパンコール・ビーズ | |
商標資材 | ブランドネーム・サイズネーム・洗濯表示(洗濯ネーム)・下札 納品袋 |
繊維資材
ー副資材ー
概要
繊維資材とは、繊維でできた副資材のことです。裏地・芯地・スレーキ・中綿の4種類あります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 繊維資材 | 裏地 | タフタ、ツイル、サテン、メッシュ等 |
芯地 | 接着芯、仮接着芯、フラシ芯、毛芯等 | ||
スレーキ | タフタ、ツイル等 | ||
中綿 | レギュラー綿、機能綿、粒綿等 |
裏地
ー副資材/繊維資材ー
概要
裏地とはジャケット、コート、スカートの内側に使われる生地のことです。裏地を使う目的は着用時の滑りをよくしたり、表地のチクチク感を防いだり、表地のまとわりつきを防ぐなどがあります。スーツのパンツには膝裏という裏地が使われています。裏地も生地(表地)と同じく『三原組織(平織・綾織・朱子織)』を基本とし様々な種類があります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 繊維資材 | 裏地 | タフタ、ツイル、サテン、メッシュ等 |
裏地素材の国内シェアについて
裏地素材の国内シェアはポリエステル75%とその大半を占めています。その次に使われているのがキュプラです。キュプラはコットンリンターという綿花の綿を取った後の種にある産毛を再生した繊維で、裏地として優れた特性を持ち、高級な素材として知られています。ポリエステル、キュプラ以外にはレーヨン、ナイロンなどもありますが、その使用量はごくわずかです。
芯地
ー副資材/繊維資材ー
概要
芯地とは、保形性維持、補強、フォルムを綺麗にみせるために使われる表生地の裏側にくる資材です。洋服を作る上で重要な役割を果たしますが表に出てこないため、目立たない存在です。主にジャケットやコートの前身、見返し、衿、ラペル、パンツの前立て、ベルト部分、ポケット口、シャツの衿やカフス、前立てなどに使われています。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 繊維資材 | 芯地 | 接着芯、仮接着芯、フラシ芯、毛芯等 |
種類
芯地には、接着芯・科接着芯・フラシ芯(無接着芯)・毛芯の4種類があります。
- 接着芯
接着芯は、一番使われている芯地で、熱と圧力を掛けることで芯地の基布に付いている樹脂が溶けて生地にくっつくタイプのものです。 - 仮接着芯
仮接着芯は、縫製の時だけくっついている芯地です。 フラシ芯
フラシ芯(無接着芯)は樹脂のまったく付いていない芯地です。毛芯
毛芯は、テーラードのジャケットに使われる芯地です。
素材
芯地の基布に使われるのはほとんどが織物ですが、編物や不織布の芯もあります。素材はポリエステルのものがほとんどですが、綿、綿とポリエステルの混紡糸というのもあります。
スレーキ
ー副資材/繊維資材ー
概要
スレーキとは袋布といってジャケットやパンツのポケットに使われている布のことです。裏地よりも強く、表地を使うよりリーズナブルなので専用の生地として使われます。織り組織としては、耐久性のある平織と綾織の生地が使われます。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 繊維資材 | スレーキ | <織り組織> <素材> |
スレーキの使い分け
- 綾織のスレーキ:ポケット
- 綿・混紡糸・ポリエステルのスレーキ:表地の薄さで使い分け
- 起毛スレーキ:冬用の衣料
スレーキは、用途や表地の厚さ(薄さ)に合わせて使い分けます。
ポケットなど、耐久性が求められる箇所には、平織りより厚く、強い綾織のスレーキを使います。表地の薄さに合わせる場合によく使われる素材は綿、ポリエステルと綿の混紡糸、ポリエステルの3つです。表面を掻いて起毛させた起毛スレーキは冬用の衣料に適しています。
中綿
ー副資材/繊維資材ー
概要
中綿とは冬物の衣料の内側に使って保温性を持たせたり、クッションのような柔らかな厚みを出したりしたい時に使われる資材のことです。最近ではアニマルフリーという観点でダウンジャケットから中綿仕様に変更されることもあります。通常の中綿は生地状になっていて裁断して使います。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素地または種類 |
副資材 | 繊維資材 | 中綿 | ポリエステル(ウール混・キュプラ混)、レギュラー綿、機能綿、粒綿等 |
素材と厚み
中綿に使われる素材はポリエステルがほとんどです。中にはウール混やキュプラ混という機能性を上げた中綿も出ています。機能性中綿といって、柔らかさを追求したり、保温性を高めたり、吸湿発熱機能を備えたり、かさ高性を高めたりしたものもあります。さらに粒中綿といって、生地状ではなく、粒状になった中綿もあります。よりダウンの風合に近いということで人気のある中綿です。
厚みにも種類があり平方メートルあたりの重さ(g数)で表されます。よく使われる厚みは、30gから150gくらいです。
服飾資材
ー副資材ー
概要
服飾資材とは、洋服に使用する細かなパーツのことです。服飾資材は数多くの種類があります。現在は、ファスナー、ボタン、ドットボタン、タックボタンリベット、前カン、ハトメバックル、テープ、レース、リブ、スパンコールビーズの全13種類です。
分類
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | ファスナー(金属、コイル、ビスロン等) |
ボタン(天然素材、非天然素材ボタン等) | ||
ドットボタン(金属ドット、プラドット等) | ||
タックボタン | ||
リベット | ||
前カン(手付け、機械付け等) | ||
ハトメ | ||
バックル(金属バックル、プラバックル等) | ||
テープ(サテン、グログラン、綾テープ等) | ||
レース(トーション、エンブロイダリ―等) | ||
リブ(横編み) | ||
スパンコール | ||
ビーズ(グラス、プラ、ウッドビーズ等) |
服飾資材の概要を掴んだら、各服飾資材について、見ていきましょう。
ファスナー
ー副資材/服飾資材ー
概要
ファスナーとはパンツやブルゾンのフロントの開閉に使われる資材のことです。日本でファスナーと言えば、95%以上のシェアを持つYKKのファスナーです。私たち(クロップオザキ)が手配するファスナーもYKKが99%です。YKKの他には国内では朝日ファスナー、海外ではriri、IDEAL、Lampoなどがあります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 服飾資材 | ファスナー | 金属、コイル、ビスロン等 |
ファスナーのパーツと種類
ファスナーはエレメント(務歯)と言われる歯の部分、それを支えるテープ、開閉するためのスライダーで構成されています。それぞれ種類や色があるため、商品アイテム数は膨大なものになります。
ファスナーの受注について
定番で使うファスナー以外は基本受注生産になります。特に国内ではYKKが市場を占めているので納期はYKKの工場の混み具合で変わってくるということになります。そのため、ファスナーは他の資材より納期が読みづらく、時間が掛かるという認識を持っておいてください。また、服飾資材の中でもファスナーは縫製工程上、先に使用する資材なので納期の管理には注意が必要です。
併せて読む
ファスナーについては、本アパレル資材辞典の「ファスナーとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ボタン
ー副資材/服飾資材ー
概要
ボタンとは、服のフロントを開閉やポケット口の開け閉めに使われる資材のことです。ファスナーと同じくらいよく使われます。ボタンはその材料から天然素材と非天然素材に分かれます。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 服飾資材 | ボタン | <天然素材> <非天然素材> |
素材別代表的なボタン
- 天然素材
貝ボタン(高瀬貝・蝶貝)、水牛ボタン、ナットボタン、革製ボタン、木製ボタン - 非天然素材
ポリエステル樹脂ボタン、ユリア樹脂ボタン、ナイロン樹脂ボタン、メタル(金属)ボタン、布製ボタン、紐製ボタン
天然素材のボタンについて
天然素材でよく使われるのが貝、水牛、ナットです。
- 貝ボタン
- 水牛ボタン
- ナットボタン
- その他
貝ボタン
貝ボタンはシャツ、ジャケットに使われ、ポピュラーな高瀬貝、高級感のある蝶貝(黒蝶、茶蝶、白蝶)がメジャーな貝ボタンの原料です。水牛ボタンは角と骨の部分を原料にしたもので、一般に使われているボタンでは最も高級です。
水牛ボタン
水牛ボタンは色によって値段が違うという特徴があり、ベージュ系が最も高価でブラウン系、ブラックと濃くなるにつれリーズナブルになります。
ナットボタン
ナットボタンはエクアドル原産のタグア椰子という椰子の実の種を使ったものです。ニワトリの卵くらいの大きさの種で周囲は茶褐色ですが、割ると綺麗な乳白色です。この乳白色になぞらえて「アイボリーナット」とも言われます。天然の色はこの乳白色ですが、色付きのボタンもあり、後染色を施しています。水牛ボタンに次ぐ高級な素材で、水牛よりも柔らかみのある雰囲気です。ジャケット、パンツ、コートと幅広く利用されています。
その他
上記3素材以外にも革や木を使ったボタンも天然素材ボタンとして使われています。
非天然素材のボタンについて
非天然素材のボタンは樹脂と樹脂以外のボタンがあります。樹脂ボタンでは、天然素材のイミテーションとして作られたボタンが多いです。
- 樹脂ボタン
- 樹脂以外のボタン
樹脂ボタン
樹脂ボタンでは、ポリエステルの貝調、水牛調、ナット調ボタン、ユリア樹脂を使った水牛調、ナット調ボタンがポピュラーです。ナイロンで作った革調ボタン、アクリル製のパール調ボタンもあります。
樹脂ならではのものではカゼインボタンというのがあります。これは牛乳に含まれるたんぱく質が原料になった樹脂ボタンで真っ白な色が綺麗なボタンです。染色も可能です。
樹脂以外
樹脂以外では金属を使ったメタルボタン、生地を使ったクルミボタン、紐を加工したチャイナボタンなどもあります。
併せて読む
ボタンについて更に詳しく知りたい場合は、本アパレル資材辞典の「ボタンとは」で詳しく解説していますので併せてごらんください。
ドットボタン
ー副資材/服飾資材ー
概要
ドットボタンとはブルゾンやスポーツウェアのパンツのフロントに使われるパチンとはめたり、外したりするボタンのことです。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 服飾資材 | ドットボタン | 金属製、プラスチック製 |
パーツと装着について
上前、下前どちらも2つのパーツからなり、一つのボタンに4つのパーツが必要です。装着するには専用の機械(打ち機)を使用し、それに合わせたパーツ毎の駒(アタッチメント)が必要になります。
用途
大量に取り付けるのにはボタンより効率よく生産できるのでユニフォームによく使われています。
素材による使い分け
素材は金属製のものとプラスチック製のものがあり、デザイン性、機能性を考慮して使い分けられます。デザイン性や重厚感を持たせたいライダースジャケット、スタジャンには金属製が使われます。軽さ、スポーティさを求めるスポーツウェアにはプラスチック製がよく使われます。
併せて読む
ドットボタンについて、更に詳しく知りたい場合は、「ドットボタンとは」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
ドットボタンとは名称(日本語/英語)ドットボタン/ Dot buttonカテゴリ副資材 ー服飾資材種類大カテゴリ(ドットボタン)概要ドットボタン(日本語名:[…]
タックボタン
ー副資材/服飾資材ー
概要
タックボタンとはドットボタン同じく打ち機で打ち付けるタイプのボタンのことで、ジーンズのフロントボタンによく使われているボタンといえば想像がつきやすいでしょう。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 素材または種類 |
副資材 | 服飾資材 | タックボタン | 金属製がほとんど |
パーツについて
ドットボタンと違い、ボタンホールを利用するのでパーツは下前のみで2つのパーツからなります。
素材
素材としては金属製がほとんどです。
用途
ジーンズや作業着などボタンにも強度や取れにくさが求められる衣類に元々は使われていましたが、今はファッション性で使われることも多いです。ネオバーと言われることもあります。
リベット
ー副資材/服飾資材ー
概要
リベットとはタックボタンと一緒によく使われるポケット口に付く鋲(びょう)のことです。ロバストを言われることもあります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | リベット |
パーツと種類
リベットもタックボタンのように上下2つのパーツからなり、打ち機で打ち付けます。ジーンズのポケット口の両端に付いている金属製のパーツで、丸い形状が多く、シルバーや銅色のメッキのものがよく使われます。
用途
ポケット口で力が加わりやすく、切れやすい箇所を補強する目的で使われます。デザイン的に使われることも多く、リベットを使わずにカンヌキで済ましてしまうことも多いです。
前カン
ー副資材/服飾資材ー
概要
前カンとはスーツのパンツやスラックスのフロントのボタン代わり、スカートのサイドホックなど引っ掛けて止めるタイプの金属パーツのことです。フロントではなく、パンツの裏側に付けます。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | 前カン |
前カンの種類とパーツ
メンズによく使われるのは打ち込み前カンといって、ドットボタンのように上下4つのパーツからなり、打ち機と駒を利用して取り付けるタイプです。レディースのパンツやスカートに使われるのは糸付け前カンと言って、糸で縫い付けるタイプで2つのパーツからなります。
併せて読む
前カンについて更に詳しく知りたい場合は、アパレル資材辞典の「前カンとは」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
ハトメ
ー副資材/服飾資材ー
概要
ハトメとはアイレットとも呼ばれ、丸い穴を開けるパーツのことです。見た目が鳩の目のよう、ということが名前の由来だそうです。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | ハトメ |
パーツ
上下2つのパーツで構成され、ドットボタン同様、打ち機と駒を利用して取り付けます。
用途と種類
パーカーのフードに付けるコードやスエットパンツのウェストコードを出す部分によく使われます。洋服に使用するものは金属製がほとんどですが、プラスチック製のものもあります。
併せて読む
ハトメについて更に詳しく知りたい場合は、アパレル資材辞典の「ハトメとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
打ち機と駒
ー副資材/服飾資材ー
概要
打ち機と駒は、ボタンを留める金具のことです。
打ち機と駒が必要なボタン
前述のドットボタンからハトメまでは打ち機と駒が必要です。
- ドットボタン
- タックボタン
- リベット
- 前カン
- ハトメ
他社メーカーとの互換性
ファスナーの2大メーカーは、YKKの子会社のYKKスナップファスナー(以下YKK SF)とモリトジャパン(以下モリト)です。この2社の打ち機と駒は互換性がありませんので、YKK SFのドットボタンをモリトの打ち機と駒で打つ、またその逆はできません。この2社以外のものはモリトの打ち機と互換性があるので打つことは可能ですが、駒は必ずそのメーカーの純正のものを使用してください。製品完成後に外れてしまったり、うまくボタンがはまらなかったりクレームの原因になります。
バックル
ー副資材/服飾資材ー
概要
バックルとはベルトをアジャストするために使われるパーツで、大きいサイズのバックルはベルトの留め具として、コートのベルトや、ライダースの裾ベルトに、小さいサイズのバックルは、袖口や衿に使われています。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | バックル |
バックルの種類
バックルは大きく2種類、ピン付きと通し(ピン付きでない)に分かれます。ピン付きの場合はベルト部分に菊穴やハトメを利用した穴が必要です。通しバックルの方はベルト生地の厚みで止めるので穴は必要ありません。
- ピン付きベルト部分に菊穴やハトメを利用した穴が必要
- 通し(ピン付きでない)ベルト生地の厚みで止めるので穴は必要ない
素材
素材は金属製とプラスチック製があり、プラスチック製は身生地と同色に染めて使われることも多いです。
併せて読む
バックルについて更に詳しく知りたい場合は、本アパレル資材辞典の「バックルとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
種類毎に、詳しく知りたい方は、アパレル資材辞典「バックル」の記事一覧をご覧ください。
テープ
ー副資材/服飾資材ー
概要
洋服に使うテープは多岐に渡ります。よく使わるテープ・リボンとして、杉綾テープ(ヘリンボーンテープ)、サテンテープ(片面・両面)、グログランテープ、タフタテープ、ベルベットテープ(片面・両面)などがあります。伸縮性のあるテープとしてはストレッチテープ、ニットテープがあり、内側に使用するものだと平ゴム、コールゴムがあります。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | テープ |
素材
素材はテープによりますが、綿とポリエステルが多いです。
コード(紐)について
コード(紐)もテープの部類に入ります。スピンドルと言われる靴紐に使うような丸や平たいコードはフードやウェストによく使います。ゴムスピンドルと言われる伸縮性のあるものもスポーツウェアなどによく使います。コードの素材もテープ同様、綿やポリエステルが多いですが、ダッフルコートのトグルボタンを留めるのには麻の素材のものをよく使います。
バイアステープについて
バイアステープとは縫い代を隠すために使われるテープです。生地を斜め45°にカットしてつなぎ合わせたテープなのでアームホールのようなカーブの箇所でも少し伸びることで縫いやすくしています。アンコンジャケットの内側の縫い代を隠したり、パンツの前立ての裏側の縫い代を隠したりするのに使われます。デザイン的に身生地と違う色を使ったり、ストライプや花柄の生地を使ったりすることもあります。バイアステープ用に用意した生地もありますが、生地を支給してもらいバイアステープ加工することも可能です。
テープ・コードの加工
テープ・コードはそれぞれ加工ができます。
テープの加工
- ブランドロゴをプリント
- ジャガード機で織りや編みで表現
- エンボス加工で凹凸に表現
などです。
コードの加工
コード(紐)で多い加工は紐先を固定するチップ加工です。よく使われるのは、靴紐の先にあるようなプラスチックで固める「セルチップ加工」です。
レース
ー副資材/服飾資材ー
概要
レースとは洋服を装飾するための資材で、主にレディースで使われます。キャミソールの縁や裾だったり、ブラウスの装飾に使用され、ほとんどが身生地と同色に染めて使います。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | レース |
代表的なレースの種類
よく使われるレースは細幅のトーションレース、綿のエンブロイダリ―レースです。ラッセルレース、ケミカルレースもありますが、洋服に付けるレースという意味では、前者の方が多いです。染色して使用するのがほとんどということで、色落ちの可能性があるので配色使いはしないように注意することと、投入数より仕上がり数が少なくなることを考慮する必要があります(5~10%の縮みロスを見る)。
リブ
ー副資材/服飾資材ー
概要
リブとはアパレル資材では横編みのパーツのことを指します。代表的なものだとポロシャツのポロ衿、ブルゾンの衿や袖、裾に使われる伸縮性のあるパーツです。MA-1の衿や袖を想像してもらえると分かりやすいです。横編み機で作成するもので小ロットでも作れるのが特徴です。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | リブ |
種類と用途
一般にリブに使う横編み機は5ゲージから16ゲージで、数字が小さくなるほどざっくり厚いリブになり、大きくなると目のつまった薄いリブになります。5ゲージ以下をローゲージと言い、冬物ブルゾンなどによく使われます。逆に14ゲージ以上はハイゲージと言い、ポロ衿やスポーツウェアの軽量ブルゾンに使われます。
素材
素材は糸の素材になる訳ですが、冬物に使うのはウールやアクリルウール(混紡糸)、スポーツウェアによく使うのはポリエステル、ポロ衿は身生地の素材に合わせて綿やTC(ポリエステルと綿の混紡糸)が使われることが多いです。また、裾や袖に使う場合は伸縮性を増すために上記の糸に加え、ポリウレタンの糸を入れます(「ゴム入り」という言い方)。
編み方による見た目
編地の見た目は針数を調整して行います。総針というとすべての針が立っているので凹凸の少ない編地になります。2×1(ニーイチ)というと2本に1本針を抜くので、抜いた部分が凹んで畔(あぜ)ができます。その他3×2、1×1という針の抜き方もあります。またジャガード編み機というのを使うと、編地でロゴを表現できたり、メッシュ調の編地にしたり、より装飾性のある編地を作ることができます。
併せて読む
リブについてについて更に詳しく知りたい場合は、アパレル資材辞典の「リブとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
スパンコール
ー副資材/服飾資材ー
概要
スパンコールとはTシャツなどに装飾的に使われる丸いプラスチックのパーツです。Tシャツにスパンコールでモチーフを表したデザインを見たことがあると思います。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 服飾資材 | スパンコール |
種類
スパンコールはCUPというものが一番使われ、これは丸い形状に亀甲柄が押されお皿のようになっているものです。その他の形状では平丸、四角などがあります。
素材
スパンコールの素材には塩ビ製のものとポリエステル製のものがありますが、塩ビ製のものは洗濯性が悪く、ドライクリーニングすると溶けてしまうので、洋服に使う場合はポリエステル製のものを使ってください。
併せて読む
スパンコールについて更に詳しく知りたい場合は、アパレル資材辞典の「スパンコールとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ビーズ
ー副資材/服飾資材ー
概要
ビーズとはスパンコール同様、Tシャツなどに装飾用途で使われたり、ワッペンに組み込まれたりして使われる装飾用パーツです。
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 | 種類 |
副資材 | 服飾資材 | ビーズ | グラスビーズ(形状:丸、外丸、スリーカット、ドロップ、竹、六角など) |
パールビーズ(パール・淡水パール、色や形状・穴の位置は様々) |
ビーズの種類
ビーズにもいろいろな種類がありますが、アパレル資材として使われるのはグラスビーズとパールビーズがほとんどです。
グラスビーズ
グラスビーズには丸、外丸、スリーカット、ドロップ、竹、六角などの形状があります。サイズがあるものもあり、モチーフの図柄に合わせて組み合わせて使います。
パールビーズ
パールビーズも色や形、穴の位置などいろいろ種類があります。また、淡水パールと言って、淡水で養殖されたパールもあります。
併せて読む
ビーズについて更に詳しく知りたい場合は、アパレル資材辞典の「ビーズとは」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
商標素材
ー副資材ー
概要
商標資材とはブランド名など商標が入った資材のことを指します。ここではブランドネーム、洗濯表示、下札について説明します。
分類表
大カテゴリー | 中カテゴリー | 資材名 |
副資材 | 商標資材 | ブランドネーム(織りネーム、プリントネーム等) |
洗濯表示(品質表示、注意表示等) | ||
下札 | ||
納品袋 |
商標資材にどのような資材があるか把握したら、各商標資材をそれぞれ見ていきましょう。
ブランドネーム
ー副資材/商標資材ー
概要
ブランドネームとはブランド名を表したネームのことです。あまり資材の付かないTシャツでも使われる資材です。
種類
ブランドネームは大きく3種類あります。織ネーム、プリントネーム、転写マークです。その中でも一番よく使われているのは織りネームです。
織ネーム
織りネームは、ジャガード織機で織ったネームで、織機の種類にはシャトル織機、レピア織機、エアジェット織機とあり、後者に行くほど生産スピードが上がります。
シャトル織機は古くからあるもので生産効率が悪いのですが、その織ネームには独特の風合があり、ネームの耳の部分も織機で織られるので素肌にネームが当たってもチクチク痛くありません。
一方、レピア、エアジェット織機で織ったネームは広い幅で織り、その後ヒートカットしてネームの幅にするため、ヒートカット部分がチクチクします。それを防ぐためにヒートカット後に両端をロックミシンで耳づけ加工をしたり、ウルトラソニックカットといって超音波でカットして対応したりしています。
プリントネーム
プリントネームはテープにブランドロゴを一定間隔でプリントしてカットしたものです。テープは既成のものがいろいろあるので、好みのもの選ぶことができます。また、プリントは織りよりも細かな表現を忠実に再現できるというメリットがあります。一方で織ネームより安っぽく見えてしまうのは否めません。
転写マーク
最近、人気のあるのが転写マークです。
転写マークはフィルムの上にプリントしたいデザイン(ブランドロゴ等)を予め載せておき、プリントしたい場所にそのフィルムを置き、熱と圧力を掛けて圧着するものです。この為、生地にプリントしたような見た目をしています。
転写マークの特徴は、縫製工場で加工可能で便利な事!
プリント機が不要なので縫製工場でも加工が可能で便利です。また、ブランドネームとして使うことで、織りネームやプリントネームのような違和感がなく、すっきりとした仕上がりになります。スポーツウェア、Tシャツによく使われています。最近ではカジュアルウェア、アウトドアウェアブランドでも使われています。
洗濯表示(洗濯ネーム)
ー副資材/商標資材ー
洗濯表示とは洗濯ネームとも言われ、よく見るのは白いテープに混率、洗濯方法や注意事項等が印字したものです。海外ブランドでは洗濯ネームを織ネームで行っているところもありますが、日本ではほとんどが白いテープにプリントしたものを使っています。洗濯ネームは素材、型番、色によっても内容が変わるので、小回りの利く印字プリンターで作られます。洗濯表示に関しては家庭用品質表示法にて決まっています。
下札
ー副資材/商標資材ー
下札とは最終的に製品になったときにその商品の品番、値段等を表す商標資材です。下札は購入後に廃棄されてしまう資材ですが、紙質や形状、デザインにそのブランドのこだわりが表われているものが多いです。
ここまでのまとめ
以上、アパレル資材の概要とその種類について、説明してきました。生地やボタン以外に、実に様々なアパレル資材があることがお分かりいただけたでしょうか。
ここでは各資材の概要しか触れていませんが、全体を通してアパレル資材の大まかな分類、それぞれどんな種類があり、それぞれどのような役割を担っているかなどから、アパレル資材の全体像をつかんでいただけると幸いです。
日本のアパレル資材市場と傾向
日本のアパレル資材市場は前述の分類と同じく、表生地(主資材)、副資材(付属)、商標資材(ネーム類)に分けてみることができます。それぞれについて見ていきます。
表生地市場
生地産地
表生地市場は衣服のメインの素材であり、その歴史は古く、繊維業としてその土地の特異性を活かした産地と言われる場所があります。有名なところを挙げると、綿織物の産地である静岡県西部の遠州(静岡県浜松等)、毛織物で国内生産70%のシェアを誇る尾州(愛知県一宮、岐阜県羽島等)、合成繊維は北陸(福井、石川)が産地として有名です。ニットだと新潟の見附や五泉、デニムの岡山備前地区、先染め織物は山梨県の富士吉田、兵庫県の西脇が産地として有名です。それぞれの産地に生地メーカーや糸メーカーが工場を構え、今でも生産をしています。
現在の状況
一方で、海外の安価な生地の流入増と、生産者の高齢化、後継者不足などで廃業するところも増えているのが実情です。下の表は2010年を100とした国内繊維工業の生産指数ですが、繊維工業は2011年をピークに毎年減少。不織布に関しては増加傾向にありましたが2017年をピークに減少に転じています。
表生地商社
表生地は生産者が直接販売しているケースもありますが、ほとんどは生地の専門商社が販売しています。特に自社で生地を企画して、ストック販売している生地商社の存在が大きいです。スタイレム瀧定大阪、瀧定名古屋、双日ファッション、サンウェル、桑村繊維、宇仁繊維、マスダなどが主な商社です。その他、総合繊維商社でも生地を取り扱っているところも多くあり、東レインターナショナル、蝶理、帝人フロンティア、豊島、モリリン、ヤギ、田村駒などがあります。
市場動向
表生地市場の傾向としては国内メーカーの生地の流通量は減少していく一方で、海外製の生地の取り扱いが増えています。特に総合繊維商社が海外の生地提案から製品生産まで請け負うケースが増えていて、中国、東南アジアで生地の調達から縫製まで済ませてしまうのが主流になっています。国内の生地で技術力、表現力などの付加価値を高いものは、逆に海外のラグジュアリーブランドからの受注が増えています。また、導電性繊維を利用した生体情報マネジメントを提供しているミツフジ、合成のクモ糸繊維のスパイバーなど新たな技術を利用した生地・糸メーカーも注目を集めています。
副資材市場
副資材市場とは、洋服を構成する表生地以外の資材を扱っている市場で、主に副資材商社(付属卸)と言われる会社が販売している市場です。副資材商社が仕入れる大手メーカーとしては、ファスナーのYKK、ボタンのアイリス、日東ボタン、テープ・リボンのSHINDO、裏地の東レ、旭化成、芯地の日東紡インターライニング、東海サーモなどがあります。アパレルはこれらメーカーに基本的に直接資材を発注することはほとんどなく、その間入る副資材商社がアパレルの注文を取りまとめ、それぞれのメーカーに発注しています。資材探索、単価交渉、納期交渉などの業務を副資材商社が請負、海外縫製工場向けの輸出書類の作成、資材提案・資材調達アドバイスなどを行うことで存在価値を高めてきました。海外縫製が主流になり、現地での資材調達ができる仕組みも大手中心に整えていて、中国、東南アジア(ベトナム、タイなど)に進出しています。一方で製品コスト削減のために、アパレルメーカーによる副資材の現地調達化(副資材卸を使わず)、工場手配化が進んでいるところもあり、副資材商社もさらなる付加価値を提供していく必要があります。
副資材商社
アパレル副資材の大手3商社、三景、島田商事、清原
㈱三景
副資材商社として、最大手は㈱三景で売上規模は511億円(2020年3月期連結)。三景は現在伊藤忠商事の100%子会社で、裏地、芯地の独自に開発を行っていて、メーカー機能を強化しています。商標資材も自社工場にて生産をしています。
島田商事㈱
三景に次ぐのが、島田商事㈱で売上規模は国内257億円(2019年度)です。メンズ、スポーツの資材に強く、海外進出も積極的に行っています。副資材卸にはめずらしくニューヨークにも支店を構えています。展示会に力を入れていて、国内はもちろん、ヨーロッパなど海外での展示会にも積極的に出展しています。
清原㈱
島田商事と同規模なのが、清原㈱で売上規模は232億円(2020年5月期)です。清原は創業80年以上の老舗企業です。レディース向け、手芸向けの資材に強い副資材卸で、オリジナルのサンプル帳を数多く出していて、独自の提案力があります。
上記3社が副資材商社の中では大手と言われる会社です。
その他副資材商社
この3社以下では売上規模が100億円前後の会社が続きます。岐阜の吉岡㈱、大阪の清川㈱、室谷㈱、ユニフォームに強い広島のミツボシコーポレーションなどがあります。それぞれ東京にも支店を持っています。東京創業の会社では、滝清㈱、㈱丸東、日之出産業㈱、㈱エスジー・コーポレーション、そして当社、㈱クロップオザキなどがあります。
市場動向
副資材卸売業は新規参入障壁が低いため小さな規模の会社もたくさんありましたが、20年ほど前から海外生産が主流になるにつれ、すべての副資材を揃えられ、海外輸出できる機能が必要となりました。そして、海外現地手配を求められるようになり、それに対応できない小規模な会社は淘汰されていきました。オリジナルの資材を提供できることや海外での現地調達機能などが他社との差別化になり、大手や準大手はその戦略に出ています。大手ほどの資金力のない中小規模卸には大手とは違う付加価値を提供していくことが求められています。
商標資材市場
商標資材市場とはブランドネーム、下札、洗濯ネームなどブランドの名前が入ったり、製品情報が入ったりする資材を扱う市場です。商標資材は副資材卸も扱っている会社も多いですが、商標資材を専門で扱っているメーカーがあります。副資材卸もそれらのメーカーから購入することも多いです。
商標資材メーカー
商標資材メーカー大手2社は、ナクシス㈱とテンタック㈱
商標資材メーカーの大手2社が、ナクシス㈱ 売上規模226億(2018年度連結)とテンタック㈱ 売上規模208億円(2019年度)です。両社とも中国、東南アジアを中心に海外にも積極的に進出しており、規模の拡大を図っています。上記2社に限りませんが、商標資材メーカーはICタグであるRFIDタグの開発に注力して、設備投資も積極的に行っています。
その他商標資材メーカー
大手2社に続くメーカーとして、コバオリ㈱、東京吉岡㈱、副資材でも紹介した三景のレーベル事業などがあります。商品の製造機能だけでなく、デザイン提案から行うことでサービスを強化している会社も多いです。
市場動向
市場の傾向としてはRFIDの導入企業が増えることで、大規模な工場投資ができる大手に有利な環境があります。また、その大手も海外では海外メーカーとの競争もあり、楽観視できない環境にあります。
アパレル資材の流通と仕入ルート
アパレル資材流通の流れ
アパレルメーカーは、主資材である生地は生地メーカーや生地商社、製品をお願いする繊維商社に直接注文することが多いです。商標資材については大手アパレルメーカーになると、自社のシステムと品質表示情報を連携させることが多く、商標資材メーカーと直接取引するケースが多いです。一方で副資材に関しては先述しましたが、商品項目が多く、仕入メーカーが多岐に渡るため、自社で発注、管理をするより、副資材商社に発注してコントロールしてもらうことがほとんどです。商標資材に関しても副資材商社に任せるケースもあります。
アパレル業界全体の流れを図式で説明します。
業界の流れを川の流れになぞらえて、製造側の方を川上、消費者側の方を川下と言います。私たちは業界の川中や川上での仕事に従事していますが、片方では消費者でもあります。
小売・アパレルメーカー・セレクトショップ
消費者側から流れを説明します。私たちは洋服を買いにお店に行きます(ネットショップも含め)。そのお店にある洋服を納入・販売しているのはアパレルメーカー(ワールド、オンワード、TSI等)であったり、ユニクロ、しまむらと言った専門店(SPA)だったり、ユナイテッドアローズ、ビームスと言ったセレクトショップだったりします。それらの会社は洋服を企画したり、発注したりしてはいますが、自社で生産(縫製)しているものはほとんどありません(自社の縫製工場はほぼない)。
縫製工場・商社・OEM会社
洋服を実際縫うのは、縫製工場ですが、アパレルメーカーやブランドが縫製(生産)をする方法は、3つあります。1つ目は縫製工場へ直接依頼する方法、2つ目は商社へ依頼する方法、3つ目はOEM会社へ依頼する方法です。OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略で、商社の小規模バージョンと思ってもらえると良いです。
縫製工場へ直接依頼するのは現在は稀
洋服を実際に縫っているのは縫製工場になりますので、国内縫製の場合、アパレルメーカーが直接縫製工場に依頼することもありますが、海外縫製が主流の現在では直接海外工場とやり取りしたり、貿易したりするところは少ないです。
商社・OEM会社に依頼するのが一般的だが、弊害もある
まず、縫製・生産をする場合、言葉の問題や貿易の煩わしさから、生産の部分を商社に任せることが多いです。OEM(Original Equipment Manufacturer)や振屋(ふりや)と呼ばれる会社に生産を任せるケースもあります。
メリットはとにかく楽で効率が良いこと
商社やOEMに依頼するメリットは、それぞれ自社の協力縫製工場を持ち、アパレルなどの要望に合わせて、工場を使い分け、納期管理、品質管理、コスト管理を行います。アパレル側は言った納期、コストで納品してもらえればいいので、手間が大きく省けることです。アパレルにとっては楽でいい、というのが商社やOEM会社へ依頼するメリットです。
デメリットはオリジナリティの損失で、価格競争に巻き込まれてしまう危険性をはらんでいる事
さて、アパレルにとっては楽でいいのですが、あまりにも商社・OEM任せにしてしまうと弊害も出てきます。任せすぎによるオリジナリティの損失です。商社・OEMからデザイン提案をしてもらうODM(Original Design Manufacturer)という形式があり、この場合、アパレルはデザイン・企画も必要なくなります。しかし、この形式だとブランドのオリジナリティが失われてしまい、どこのブランドも同じような洋服になってしまいます。以前、この問題が現実になり、洋服が売れず価格競争に陥ったという苦い経験があります。
メリットとデメリットを把握し効率的に活用するのが鍵
しかし、ODMが悪い訳ではありません。商社・OEMの立場だとODMの方が自分たちのコントロールできる要素が多いので、利益率が高くなります。また生地商社・副資材卸にとっては商社・OEMが決定権を持つので営業します。
しかし、コストの安い洋服を作ろうとすると生地や副資材はコストを抑えるために現地の縫製工場にすべて手配させることも多いです。こうなると生地商社、副資材商社の入る余地がなくなります。
生地商社・副資材商社
百貨店などのある程度の価格の洋服はアパレルが企画を行い、生地選定、資材選定もデザイナーや企画という人たちがすることが多いです。生産の部分だけ(一部は生地提案も含む)を商社・OEMに任せるという形を取ります。この場合、決定権はアパレル側にあるので生地商社、副資材商社もアパレルに営業に行くことになります。もちろん資材の調達、納期、コスト管理は生産を請け負っている商社・OEMと行うことになるので、そちらへの営業も欠かせません。日本から資材を輸出する場合は輸出書類の作成、輸出梱包も生地商社、副資材商社は担っています。また、海外現地での資材調達も行っています。
お金の流れとモノの流れ
ここで少しややこしいのが生地商社や副資材商社から見たお金の流れとモノの流れです。決定権はアパレルにあるケースだとアパレルがどの資材を使うのかを決めます。しかし、その資材を買うのはアパレルではなく、生産を請け負っている商社・OEMになります。そして、資材は商社・OEMに送っても仕方ないので縫製工場に送ります(輸出の場合は越仲倉庫のケースが多い)。納品書・請求書は商社・OEMへ、資材は縫製工場へとの流れになります。海外生産で商社・OEMへ生産を任せている場合、このケースがほとんどです。このケース以外に商社・OEMを通さずに、アパレルと海外縫製工場が直接やり取りするケースも最近は増えてきています。直貿と言われます。この場合はケースバイケースになりますが、生地、副資材は海外縫製工場が直接買うことが多いです。日本からの資材も海外工場に直接売るケースもありますが、代金回収の問題があるのでアパレルに保証をしてもらったり、先払いしてもらったりすることもあります。
縫製工場とアパレルの取引
国内縫製の場合も商社・OEMが間に入ることが今はほとんどです。一部、縫製工場とアパレルが直接取引することもあります。その取引形態には大きく3種類あります。純工、属工、製品買いです。純工は純粋に工賃のみということで、アパレルは生地、副資材を購入して、工場に無償提供し、工賃のみを支払うパターンです。属工というのは付属(副資材)+工賃という意味で、生地は無償支給しますが、副資材は工場が購入して、工賃に副資材をプラスして支払うパターン。製品買いというのは生地も副資材もすべて工場が購入し、工賃と合わせて製品代を支払うものです。アパレル側からすると製品買いの方が、先に出ていくお金がないので資金繰り的なメリットがあり、生地や副資材の手配も工場がするので手間が省けます。さらに工場は自分たちが購入するので、要尺を詰めたり、資材ロスが出ないように大事に使用してもらえたりもします。どういう形態で取引ができるかは交渉になります。
縫製ネット仲介サイト
最近はネットで縫いたい会社(人)と縫って欲しい会社(人)を仲介するサイトも出ています。シタテルは一型50枚から請け負っていて、ヌッテは1枚でも仲介してくれます。
アパレル資材の仕入ルート
大手・中小アパレル企業の場合
アパレル資材の仕入ルートは購入量や口座の有無によって変わってきます。大手アパレルになると購入量も大きいので、生地であれば直接生地メーカーと取引したり、繊維商社に提案させたりします。副資材も大手副資材商社が数社、日々営業に行っていますし、商標資材はシステム連携を行っていたりします。大手は資材調達には苦労することはないでしょう。中小アパレルにも生地商社や副資材商社が営業に行っているのが多いかと思います。商標資材に関してはシステム連携まで行わないところが多く、副資材商社に任せているケースも多いです。
立ち上げ間もないアパレルの場合
立ち上げ間もないアパレルになると資材調達のハードルが上がってきます。例えば独立前にアパレルにいた人は、そこで付き合いのあった生地商社や副資材卸から購入することができる可能性があります。まったく付き合いがないとなると、生地商社や副資材卸とすぐに口座を開くことが難しく、初めは日暮里の繊維問屋街やオカダヤ、ユザワヤなどの小売店、もしくはネットで購入するということになります。最近は当社も含め、B-to-B向けのECサイトを展開している会社があるので、そういうところで調達した方が、小売りのネットサイトよりもリーズナブルに調達できます。ゆくゆくは生地商社、副資材卸と口座開設をし、頼れる仕入ルートを確保していくことが必要です。
副資材商社を使う意味
副資材に関して、製造元(メーカー)というと裏地なら東レ、ファスナーならYKK、ボタンなアイリスなどになります。直接それらメーカーから仕入れれば安く調達できるように思いますが、ほとんどのメーカーが直接取引はしてもらえません。今までの商習慣というのもありますが、メーカーは細かな対応をしたくなく、副資材商社がそこに入ることによって、オーダーをまとめてくれるという機能があるからです。また、メーカーからすると口座管理もコストになってしまうため、大手メーカーになるほど取引口座を増やしたくありません。メーカーの営業も何件ものアパレルを回るより、数件の副資材商社に回ってオーダーを取った方が時間的にも売上的にも効率がいいのです。それなので、副資材に関しては副資材商社との取引になります(一部例外もあります)。
商標資材に関しては、直接商標資材卸と取引することも可能です。一方で発注の手間を省いたり、仕入ルートを一本化したりするために、副資材商社から調達することも多いです。
ブランド側の課題・問題点
資材の仕入ルートの確保について
アパレルビジネスをしていくためには生地(ニットなら糸)、副資材がないといくらいいアイデア、デザイン、販売ルートがあっても成り立ちません。大手や既に何年もビジネスを行っている会社は問題ありませんが、立ち上げたばかりとか、これからビジネスを興そうとする場合、仕入ルートの確保というのが一つの課題になります。初めから生地商社や副資材商社と直接口座を開くというのは難しいかもしれません。初めは生地問屋やネット小売りから現金で仕入れるしかないかもしれません。
B-to-B向けECサイトの活用も
先ほども述べましたが、最近はB-to-B向けに生地や副資材の卸売ECサイトも出ているので利用する価値はあります。当社でもショールームの開放とB-to-B向けECサイトは展開しています。まずはそういうのを利用して実績を作っていくことが大事です。実績ができてくれば、口座開設もしやすくなりますし、発注量が増えてくればいろいろ調達先も広げることができるようになります。大手アパレルは不況の真っただ中にあるので、生地商社、副資材商社も小ロット対応でも対応してくれるところは増えています。まずは、生地商社、副資材商社と口座開設をして、頼れる仕入ルートを確保していきましょう。
※当社のECサイト「Handy Crop」は、2024年3月末にサービスを終了いたしました。
仕入ルート確保で生じる問題点と課題
事業スタート時には資金が必要!?
アパレルビジネスを行っていく上で頼れる仕入ルートを確保していくことが大切ですが、問題となるのが支払い条件です。創業間もないとか、これからビジネス始める方は、すぐに口座を開設してくれないところも多いです。まずは入金後デリバリーが取引条件だったり、キャッシュオンデリバリーだったりと資材購入するための資金が先に必要になります。一方で資金回収は洋服ができて、売れて、入金されてからとなるので、資材購入してから回収できるまで数ヵ月掛かってしまうことも多いです。これは資材調達だけでなく、縫製工賃も先に払わなければなりませんし、展示会を行うなら展示会費用も先に必要になります。洋服が売れたお金で支払えればいいのですが、そうはいかないのがこのアパレルビジネスです。資材仕入先や縫製工場との取引も実績ができてくれば、末締め翌末払いなど月極での支払い条件に交渉できます。そこまでの期間はどうしても先にお金が出ていくので、ある程度の資本金が必要になります。今は資本金がなくても会社を興せる仕組みになっていますが、ある程度の資本金がないと資金繰りですぐに行き詰ってしまい、せっかくのデザインや売れる仕組みがあってもモノが作れなくなってしまいます。そうならないためにもスタート時の資金というのは大切です。
信頼できる仕入先確保には!?
信頼できる、協力してくれる資材仕入先の確保していくためには、やはり一度その会社に出向いて自分の目でその会社を見ることも大事です。自分の想いを伝え、賛同してもらえたら、やりやすい取引条件で仕入れさせてもらえるかもしれせん。また、その会社が信頼できるかどうかはホームページだけではわからないことも多いです。以前、スタートアップを目指している方がこんなことをおしゃっていました。「ホームページでは『あなたの力になる』と謳っているが、電話してスタートアップだと言うと取引してくれないところがほとんどだ」と。相手方も商売なので仕方ないこともありますが、自分の目でその会社を確かめて信頼できるかどうかを見極めた方がいいです。電話だけよりも出向いた方が、本気度が相手にも伝わります。
仕入ルートの確保に関して有効な手段として紹介があります。直接知っている会社があれば問題ないですが、そうでない場合はアパレル業界にいる知り合いや友人から紹介してもらうと、一見さんとして行くよりハードルがかなり下がります。
オリジナル資材の取引条件も課題!?
商標資材等自社のブランド名が入るオリジナルの資材は取引の条件が課題になります。その仕入先との関係が薄い場合だと、初めに作ったものをすべて先に人らなければなりません。例えばブランドネームを経済ロットで1,000枚初回に作成したとします。1,000枚をストックしておいてもらって、使う度に請求してもらうというのが理想ですが、そうはなりません。1,000枚上がった時点ですべて引き取るように求められます。また、初期費用として掛かる版代、型代も先に支払う必要があります。これも実績ができるまでは仕方のないことですので、この辺りの費用も考慮しておく必要があります。
資材選定・調達のタイミング
早め早めの発注が基本
資材選定・調達のタイミングは納期から逆算して選定・発注することが多いかと思いますが、早め早めに準備することが鉄則です。通常、生地を選定して、その後副資材を決めていくことになります。生地にしても、副資材にしても在庫品であればすぐに調達できるのですが、希望するデザイン、色がすべてすぐに揃うことは稀です。特にファスナーに関してはほぼ受注生産なので、希望のものがすぐに揃うことはまずないです。それなので、生地の選定を行ったら、その後間を置かず副資材を選定・発注をしてください。副資材は在庫があるものと、選定・発注を後回しにしがちですが、納得のいくものづくりのためには後回しにしないでください。
ファスナー・リブは時間が掛かるもの
特にファスナー、リブ(横付属)は時間の掛かる上、縫製工程上先に必要になる資材なので早めの手配が必須です。ファスナーはYKKの工場に受注生産で作ってもらうのが、コスト的に一番リーズナブルです。その納期で間に合わない場合はYKKの代理店が在庫しているファスナーを加工(長めをカット等)して対応しますが、長めの単価+加工賃と割高になってしまう上、テープカラーやスライダーも在庫のあるものに変更する必要があり、コストアップなのにデザイン的に妥協しないといけないことになります。これは他の資材でも急ぎだと代替えなどを強いられることがあり、思うようなものづくりができなくなります。それなので早め早めの選定・発注を行うことをおすすめします。
ブランドロゴが入るような別注品の作成も早めの準備が必要です。デザイン画の作成、型や版起こし、サンプル作成・確認、量産の発注と通常の資材より時間が掛かります。こちらも早めに動き出すことが必要です。
資材の管理についてと問題・課題・改善策
別注資材の在庫管理
資材の管理ということでは、別注の資材の管理が必要です。ブランドネーム、下札はどのブランドでオリジナルのものを作成すると思われます。ブランドネーム・下札が在庫切れのため、生産が止まってしまうというのは避けたいです。在庫表を作って管理するなどして、今どれだけ在庫があるのか、どれくらいで無くなってしまうのか、そして生産期間を把握して、再発注のタイミングをとらえる必要があります。これはブランドネームだけでなく、ボタン、ファスナー引手などロゴ入りのものはすべてそのような管理が必要になります。
流行の資材
生地においても、副資材においてもそのシーズンの流行りの資材というのがあります。するとそこにオーダーが集中してしまい在庫がなくなり、生産期間も長くなるということがあります。過去にあった事例では、ベルベットテープが流行ったときに市場から在庫がなくなってしまい、オーダーを入れても半年後まで上がってこないとう事態がありました。生地商社、副資材商社もその辺の情報を取って、アナウンスしたり、在庫を厚く持ったりして対応もしますが、追い付かないことがあります。
資材メーカーの自然災害被災・事故
また、メーカーの自然災害で工場が被災、運送便が滞るなど不測の事態が納期に影響を与えることもあります。最近ではYKKの社内システム変更の際、システム不具合が発生して出荷が滞ってしまい通常の倍の納期が掛かるといった事態がありました。こういた情報は生地商社、副資材商社がアナウンスすると思うので、前述の欠品情報などと合わせて、それらの情報をチェックしておいてください。
長期保管による劣化
長い期間保管しておくと劣化や経年変化してしまう資材があります。ストレッチテープや平ゴムなどに伸縮性を出すためのポリウレタン糸が入っています。このポリウレタン糸はそのまま置いておくと劣化して切れやすくなってしまいます。また、ナイロンやポリウレタンといった素材は黄変しやすい素材です。特に太陽光に晒して置いてたり、湿気の多い場所に保管したりすると黄変の進みが早くなります。薄い色のナイロンの生地を保管する場合は、日の当たらない場所に風通しのよい場所に保管してください。
ボタンではナットボタンが経年変化を起こす素材です。薄い色のボタンは茶褐色に変化していき、年輪のような模様もはっきりしてきます。特にナットのオリジナルの色である乳白色のボタンは黄土色に変化していきます。これはナットボタンの味でもあります。しかし、乳白色のボタンを自社で在庫して何年かして使おうとすると色が変わってしまい、以前の思っていた色と違うということになります。ナットボタンの薄い色は経年変化するものと理解することと、保管の際は日の当たらない箱の中に保管し、早めに使うようにしてください。
生地でも副資材でも長年保管しておいて使用するというのはあまりいいことがありません。割高でも必要な分だけを仕入れ、使い切ることをおすすめします。あとで使うからというのはこの業界ではほぼありません。
アパレル資材と製品価値
アパレル資材と製品価値の関係
アパレル資材と製品価値の関係について最後に説明します。生地や副資材を工場に任せで手配して、とにかくコストを下げたいというブランドもありますが、それでは価格でしか競争力の持てない商品になってしまい、他社製品との価格競争になってしまいます。また、ユニクロ、ワークマンなどは低価格だが、品質がいい、機能がいいという商品を提供していて、安いだけでは生き残れない市場になっています。これからのアパレルは独自の雰囲気、ムードを醸し出した商品を作り出し、マスでなくコアなファンに支持されるブランドが生き残っていくものと考えます。そういうブランドはデザイン、生地はもちろん、副資材にもこだわりを持ったものづくりしています。「神は細部に宿る」と言います。ボタンやファスナー、表にはでない裏地、芯地にまでこだわる洋服は間違いなくいい服です。付加価値の高い商品を作り出し、コアなファンを大切にしていくことが、これからのブランドに求められるのではないでしょうか。
付加価値の上がる資材選び
それではどんな資材が付加価値を上げてくれるのでしょうか。それは何でもいいのでお任せではなく、なぜこの資材を使うのか、そこに理由を持った資材選択をすることです。裏地は機能的に優れていて、環境にもいいキュプラのものを使う。芯地は生地との芯貼りテストをして、スタイルにあう風合いのものを選ぶ。ボタンは天然素材のボタンを利用するといったことです。ボタンやファスナーの引手にブランドロゴを刻印したり、裏地にジャガード織りでネームを入れたりすることもオリジナル性が出て、付加価値はあがりますが、それよりもなぜこの資材を使うのかというストーリーに消費者は共感します。それは資材選びということ以外にも、こういう人がターゲットだから、このデザインの方が使いやすいといったこともあるでしょう。私の知り合いの経営者の方が「Flying Jeans(フライングジーンズ)」というジーンズを作りました。このジーンズは車いすの人にとって履き心地がよく、座った状態でもカッコのいいデザインにしたものです。これもこだわりのものづくりであり、こだわりの逸品です。
副資材はこの業界では「付属」と言われます。洋服を構成するメインの素材である生地に対して、その他の資材をひっくるめて「付属」と呼ぶのです。しかし、「付属」なくして洋服は成り立ちません。目立たない「付属」だから何でもいいのではなく、そこも理由を持って選ぶことでいいものづくりができます。副資材についても知識を持ってもらい、しっかり選んでもらえると嬉しいです。
まとめ
アパレル資材について、各資材の大まかな説明、日本の市場の特徴、流通と仕入ルート、ブランド経営をしていくために必要な仕入ルート確保、資材選定・調達のタイミング、資材の管理、そして最後にアパレル資材と製品価値ということで説明をしてきました。アパレル資材に関して概略がご理解いただければ幸いです。特に副資材についてはその範囲は幅広く、ここで詳細を書くことはできません。そのため、それぞれの資材の詳細情報はこのサイト内に随時アップしていきます。適切な資材選びをしないとクレームを引き起こしてしまうこともあります。私たちも何度もそのような経験をしてきました。詳細の資材情報にはクレームを起こさないための資材選びも紹介していきます。みなさまのものづくりが少しでも円滑に進み、求めるクオリティの商品がリーズナブルにできることに役立てるような情報を提供していきます。そして、みなさまのこだわりのあるものづくりをサポートし、ビジネスが活性化することに貢献していきたいです。最後までお読みいただきありがとうございます。