生地の斜行とねじれ、素材・染め・組織で変わる現場の判断基準


&CROP編集部の瀧澤です

原反(生地)が縫製工場に到着して最初に行われる工程を延反(えんたん)と言います。延反には専用の自動延反機を使って行う場合と、手作業で行う手延反があります。延反は裁断・縫製の精度を左右する最初の重要な工程で生地をまっすぐに広げ、均等に重ねることで、正確な裁断が可能になります。縫製工場ではこの段階で生地の状態に異常が無いかをチェックします。出荷される原反は基本的には検反という工程を経て正常な状態であることを確認して発送されています。しかし縫製工場ではこの延反工程で色ムラや汚れ、段や傷が無いかをチェックしています。そしてこのチェックは出荷前の検反よりも厳しめのバイアスがかかっています。その時工場が一番厳しくチェックするのが生地の斜行や歪みです。それは生地がゆがんだ状態で裁断・縫製をしてしまうと修正が難しい場合が多く工場も責任を問われるからです。

工場は問題が生じた場合の自社の責任を回避する理由からも入念に確認して少しでも問題がありそうな場合は顧客に確認をします。場合によっては「この生地、斜行していて縫えない」とアパレルメーカーの生産担当者に連絡が入ります。生地はもう工場に届いていて、量産の日程も決まっている。こういう場面は、アパレルの現場では珍しくありません。そのとき最初に頭をよぎるのが、「斜行って、何%までならよかったんだっけ」という基準です。ところが公的検査機関には生地の斜行や歪みに関する絶対の基準はありません。アパレルメーカーによっては独自の基準を設けていますが生地の種類や原料、組織によっても許容範囲が大きく変わってくるので一概にはいえないのが実情です。

斜行は「何%まで許容」という一律の基準が無いのはそもそも数値で判断がしにくいからでもあり、カットソーか布帛か、後染めか先染めか、綾織か平織かで、判断の基準も変わります。サンプルは上手く縫えていても量産や初回洗濯でねじれが出ることも珍しくありません。

この記事では、斜行やねじれがなぜ起きるのかという基本から、素材・染め・組織によって判断がどう分かれるのか、そして現場でいちばん多いトラブルのパターンまで順を追って解説しています。

斜行や歪みは、なぜ起きる?

斜行とは

地の目が斜めに傾いた状態を、斜行(しゃこう)と呼びます。ここで呼び方を整理します。JISの生地試験では、この傾きを「布目曲がり」と呼んでいます。ただ、現場では布目曲がりのことも含めて、広く「斜行」と呼ぶことが多いです。これらを呼び分けてもかえって混乱するので、この記事でも通りのいい「斜行」で統一します。

生地の地の目がどれくらい傾いているかは%で表します。測り方はシンプルで、生地を平らに広げ、経糸を垂直に置いたときに緯糸が生地の端から端でどれだけ横にずれているかを見て、そのずれを生地巾で割ります。たとえば生地巾が130cmで、端から端で緯糸が3cmずれていれば、3 ÷ 130 × 100 で、斜行はおよそ2.3%です。ずれが大きいほど、数字も大きくなります。

同じ「斜行」でも、生地と製品では扱いが違ってくる

ただ、同じ斜行と言っても、生地の段階で見る斜行と、縫って洗ったあとの製品で見る斜行は、測り方も、数字の意味も少し違います。ここを分けておかないと、「反物では斜行をチェックしてOKだったのに、製品にしたらねじれた」という食い違いが起きます。まず、違いを並べてみます。

 

生地の斜行

製品の斜行

呼び方

斜行(JISの試験名は布目曲がり)

斜行・ねじれ

どこで見る

反物の状態

縫った製品

いつ測る

生地を広げて計測

主に洗濯後

どの向きで見る

巾の方向|緯糸の傾き

丈の方向|脇線のねじれ

何を表す数字か

生地の地の目の傾き

生地+裁断+縫製+洗濯の結果のねじれ

主に管理するのは

生地メーカー・生地屋

アパレルメーカー

 生地の段階では斜行が小さくても、製品で洗濯後に斜行が出ることがあります。洗うと糸の撚りは元へ戻ろうとしますし、仕上げでいったんまっすぐに直した生地は、その矯正が洗濯で解けて元の傾きに戻ります。だから、整理仕上げで無理にまっすぐに仕上げた結果、洗濯後に製品がねじれるというような消費者クレームになるケースもあります。

言い換えると、生地の斜行は生地メーカーが管理する、生地素材そのものが持っている性質でもあります。例えば平織のプレーンな織物では基本的に経糸と緯糸が垂直になっていますが綾織の生地では地組織が斜めになっています。丸編みの編地も編み機の構造上ある程度の斜行があるのは当然です。一方、製品の斜行は、その生地の仕上げ、裁断、縫製、そして洗濯が重なった結果です。最終的にこの数字と向き合わなければならないのは、製品を世に出すアパレルメーカーになります。

斜行の3つの原因

斜行の原因は、大きく3つに分かれます。この中には生地や素材の特性として許容の判断をすべきものと、生地の不良として修整が必要なケースが混在しています。

 

生地の構造に由来する斜行

ひとつめは、生地や素材がもともと持っている性質です。撚りをかけた糸には、元へ戻ろうとする回転力(トルク)が残っています。Tシャツや肌着に使われる綿の天竺のような単糸使いの生地では、この力が地の目の曲がりに影響します。単糸はZ撚りが多く、洗濯などで撚りのセットがゆるむと、糸が回転して編地が斜行します。加えて、綿のような天然繊維は熱でセットが効かないため、加工の工程で形を安定させにくいという事情もあります。

編み方そのものにも理由があります。丸編みは筒状に編んでいく構造上、ねじれる力が発生します。織物では、デニムやサージのような綾織が斜行しやすい組織です。

これらは機械の調整不良や製織・製編み工程のミスではなく、生地の特性として理解する必要があります。斜行=不良ではなく、どこまでが許容なのかを知った上で使えるかどうかの判断が必要です。撚りの向き(S撚り・Z撚り)については薄地の記事で触れているので、糸の段階で何が起きているかは下記のリンクの記事も合わせて参考にして下さい。

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製織・製編の工程で起こる斜行

ふたつめは、生地を織る、編む段階で生じる斜行です。これは生地がもともと持っている特性を越えた織機や編機の調整不良などによって生機の段階で、すでに地の目が許容を超えて曲がってしまった場合です。仕上をする前から許容を越えて曲がっている状態の生機を無理にまっすぐに整えて仕上げした場合には製品になってから洗濯などで製品が歪んでしまうといった消費者クレームにつながる場合があります。

仕上げの工程で起きる斜行

三つめは、染色・整理仕上げの工程で生じるものです。仕上げは、生地の幅を出しながら連続で送っていく工程なので、ここでの条件設定や送りに狂いがあれば、地の目が曲がります。

見分けるには、丸編みで地の目が弓なりに湾曲している(ボーイング)場合や、平織なのに極端な斜行が出ている場合は、整理工程での不良を疑う必要があります。ひとつめで挙げた綾織や単糸の丸編みとは違い、平織は経糸と緯糸が垂直に交差している組織だからです。また生地の巾が反の中で不均一になっている場合も、何らかの不良が考えられます。整理工程の不良の場合は仕上げ加工をやり直すことで直せる場合が少なくありません。だから生地斜行がある場合には裁断前にメーカーへ確認することは必須です。また先染めのチェックやストライプ柄では斜行が大きいと柄合わせが難しくなります。

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判断の目安

綾織や単糸の丸編みで多少の斜行なら生地の特性の範囲として見る(どのくらいまでが許容範囲かあらかじめ生地メーカーに確認しておく)。平織での極端な斜行や丸編みが湾曲(ボーイング)しているといった場合は、工程の不良を疑って生地メーカーに確認する。もし自分での判断に迷った時にはメーカーや経験のある人にまず相談しましょう。

斜行した生機を、まっすぐに仕上げして起こること

斜行した(曲がった)生地は、整理仕上げの段階で、無理に縦方向の地の目を通すような修正をかけることができてしまいます。すると、反物としては地の目が通り、裁断して縫った直後も、見た目はきれいです。とくに熱セット性の無い天然繊維の場合では無理に修正したことによる歪みが生地に残っていて、消費者が洗濯したときに脇の目曲がりとして出てくる場合があります。実際に、綿ニットシャツを初めて洗濯したら脇目が10cmも曲がった、という事故例も報告されています。展示会用の試作反の試験では問題が出ていませんでした。とくに丸編みのカットソー等では原反に斜行が無いことが仕上がった製品でも問題が起こらない保証にはならないと知っておく必要があります。

素材・染・組織によって変わる斜行の判断基準

 

ここまでの説明で素材や生地の種類(組織)によって一概に斜行は何パーセントまでが許容のような判断基準で割り切れない事が分っていただけたと思います。この項では判断が分かれやすい三つのポイントで振り返ってみます。

布帛とカットソー

一般的な斜行の許容目安はニット・カットソー製品で5~7%以内、布帛で3~5%以内と言われています。このように許容範囲に幅があるのは、やはり素材の種類によって違いがあるからです。大手アパレルでは布帛3%以内、カットソー5%以内のように自社基準を設けているメーカーもありますが、例えば綿のブロードが3%も斜行していたらやはりそのままは使えないですし、逆に単糸使いの丸編み天竺で斜行度を3%以内に収めるのはおそらく難しいと思います。このように布帛と丸編みのカットソー生地では斜行の許容範囲は大きく違ってきます。

デニムや綾織の斜行について

一般的に綾織(ツイル)は平織に比べて糸の交点が少なく、組織の特性として斜め方向へ引っ張る力(トルク)が働きやすいため、ネジレ(斜行)が生じやすい傾向があります。とくに綿の太番手を使ったデニムや片撚り糸を使用した生地では、洗濯によって5%以上の強いネジレ(レッグツイスト)が発生することがあります。かつては「デニムだから斜行してあたりまえ」という言い方もありました。しかし、現在では整理加工の段階でスキュー加工や防縮加工を施すことで製品になってからのねじれが生じないように斜行がコントロールされた状態で管理されているのが普通です。

先染織物の斜行

先染め(チェックやストライプ)生地では小さな斜行で歪みそのものは小さくても、柄の歪みとして認識されます。柄物の場合、実際の歪みの数値は基準内なのに、柄が合わないという理由で生地を修正したケースもあります。柄合わせの難しい大柄のチェックなどを別注する際はメーカーと相談して許容範囲をあらかじめ確認しておくことをお奨めします。

なぜ量産になって表面化するのか?

斜行が問題になるのは、生地そのものの性質より、情報が共有されていないケースが多いというのが現場での実感です。

よくあるのは、企画が生地を選定。その時点で普通は生地屋やメーカーからは「この生地は斜行が起こるので何パーセントまでは許容範囲」といったデメリット説明がされます。ところがその話が生産担当や工場まで伝わっていないために生地が工場に届いて、いざ裁断・縫製という段になって、工場から生産担当へ「この生地、斜行してて縫えない」と連絡が入ります。生産担当は、そこからメーカーの担当や生地屋へ「工場が縫えないと言っている」と連絡が来ます。この段階で生産スケジュールに余裕が無いことも多く、許容範囲なのか?修正可能なのか?サンプルを作成した時はどうだったのか?確認だけで数日を要して納期に影響する場合もあります。最初にデメリットは伝えていたのに情報が途中で止まってしまって、量産段階で問題になるパターンです。

そしてやっかいなのが、サンプルの段階ではこれらの問題が隠れてしまうことです。サンプル段階では1点、2点を丁寧に縫います。多少の斜行があっても、熟練した職人は何とか形にしてしまうのでサンプルは問題なく上がってくる。ところが量産になると、同じ手当てを全数にはできません。しかもサンプルを縫った工場と量産の工場が別なら、サンプルでは吸収できていた問題が、量産で出てくる場合も多いです。

もう一つのケースは設計上斜行している生地を、仕上げで無理にまっすぐ直した場合です。これは丸編みのカットソー製品でよく起こります。無理に地の目を通した生地で縫製された製品は、エンドユーザーの家庭洗濯でねじれが生じて消費者クレームにつながります。

企画・発注段階で押さえるポイント

テキスタイル素材は原料も設計も千差万別なことで多彩な表現を可能にしています。斜行だけに限らずどのような生地にもメリットとデメリットがあることを理解して、サンプル段階から生産担当者や縫製工場と情報を共有することがトラブルを事前に防ぐ最も堅実で有効な方法です。情報が共有されていれば、万一トラブルが生じた場合でも動きが速くなります。斜行が許容範囲なのか、許容範囲でないとしたらその原因は何で、修整が可能なのか。これを特定するのは生地メーカーの仕事です。縫製工場が見ているのは、あくまで「縫えるかどうか」「このまま縫って問題にならないか」です。ここを取り違えて工場に判断を求めても答えは出ずに時間だけが過ぎていきます。前もって情報が共有されていれば、工場も冷静に判断ができ、メーカーへの確認もすぐ動けます。

また斜行のデメリットが心配な生地素材を使う時は、発注前に製品の状態で洗濯試験を行って、洗ったあとの斜行の程度を確かめておくことで、サンプル作成では隠れてしまう問題を量産前に検証しておくことは自社のブランドを守るための堅実な方法と言えます。

まとめ

生地の斜行によって生じる製品のねじれは消費者クレームになるケースも多く、ブランドの価値や信頼を失墜させてしまう原因にもなりかねません。生地を選ぶ段階から発注前までに確認しておきたいことを、簡単なチェックリストにまとめました。

  • 生地を選ぶ段階で、斜行・ねじれのリスクをメーカーや生地商に確認したか?
  • それらのデメリットを、生産担当者や縫製工場と共有できているか?
  • 柄物の場合、数値だけでなく柄合わせが可能かどうかを確認したか?
  • サンプルと量産は同じ工場か、工場が違う場合量産工場での先上げサンプルは確認したか?
  • サンプル生地と量産生地の仕上がり見本を確認したか?
  • 斜行が予測される素材の場合製品での選択試験をして確認したか?

生地選びの段階で、斜行やねじれのリスクをどう見ればいいか、どこまで発注先に確認しておけばいいか。迷ったときは、弊社の営業担当に気軽にご相談ください。生地単体の手配だけでなく、用途・デザイン・量産性を踏まえた生地の提案も行っています。

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