&CROP編集部の野崎です。
タオルやサポーター・収納ケースなど、世の中には服以外の縫製品もたくさんあります。しかし、繊維・ファッション業界は分業化が進んでおり、業界以外の人が問い合わせをしようとするとどこに相談すればよいのかが分かりづらいのが現状です。今回は、「縫製品の相談がしたい」という方に向けて、依頼先の探し方と、事前に知っておくべき注意点をまとめて解説します。縫製品をどこに頼めば良いのか分からない、という方のお役に立てれば嬉しいです。
もくじ
縫製品の依頼先には、どんな選択肢がある?
縫製品の依頼先には、下記のような選択肢があります。
- 縫製工場に直接相談
- 縫製工場とのマッチングサービスを利用
- OEM会社・商社へ相談
1.縫製工場に直接相談
一番シンプルな方法が、縫製工場に直接相談をすることです。他社を挟まないので、作りたい仕様をダイレクトに共有することができます。しかし、繊維・ファッション以外の業界の方が縫製工場を選定するのは、かなり難易度が高いです。縫製工場によって設備も異なり、得意としている分野も異なります。「この仕様はできない」「この生地だと縫えない」ということもあります。また、縫製工場は基本的には決まった仕様のものを縫う場所です。そのため、「縫製の仕様から相談したい」「サンプルを何度も繰り返して仕様を決めたい」という要望を受けてもらえる縫製工場は少ないのが現状です。何社か連絡を取ってみて、希望する仕様に対応できる設備が整っており、開発から伴走してくれそうな縫製工場を探す必要があります。

2.縫製工場とのマッチングサービスを利用
近年では、縫製工場と依頼者をつなぐマッチングサービスも増えてきています。繊維・ファッション業界以外の企業や個人でも利用しやすく、「どこに相談すれば良いか分からない」という方でも気軽に利用できるのが大きな特徴です。サービス側が内容に合った縫製工場を紹介してくれるため、自分で一から工場を探す手間を省くことができます。
代表的なサービスとしては、「シタテル」と「nutte(ヌッテ)」があります。
シタテル
シタテルは、商品企画から生産管理・納品までをトータルでサポートするサービスです。アパレルだけでなく、飲食店や建設業・医療機関など、異業種のユニフォームやオリジナルグッズの製作実績も多く、初めて縫製品を製作する企業でも相談しやすい体制が整っています。
- シタテル サービスページ https://sitateru.com/
nutte(ヌッテ)
nutte(ヌッテ)は、全国の縫製職人や縫製工場と依頼者をつなぐマッチングサービスです。サンプル製作や小ロット生産・1点ものの製作などにも対応しており、比較的小規模な案件を依頼したい場合に適しています。
- nutte(ヌッテ) サービスページ https://nutte.jp/
ただし、これらのサービスは「作りたいもののイメージがある程度決まっている」場合に特に活用しやすいサービスです。素材・仕様・付属品の選定など、商品企画の段階から相談したい場合や、用途に応じた提案を受けながら進めたい場合は、OEM会社や商社へ相談した方がスムーズに進むケースもあります。
3.OEM会社・商社へ相談
「どのような素材や仕様が最適か相談しながら進めたい」という場合は、OEM会社や商社へ相談するのがおすすめです。
OEM会社や商社は、商品企画から素材・副資材の選定、サンプル製作、縫製工場の手配、生産管理まで、一連のものづくりをサポートしてくれます。縫製工場ごとの得意分野や設備を把握しているため、製品の用途・予算・ロットに合わせて最適な生産先を選定できることも大きなメリットです。また、縫製品は生地だけでなく、ファスナーやボタン・ゴム・テープなどの副資材によって、使い勝手や耐久性・見た目の印象が大きく変わります。OEM会社や商社であれば、こうした副資材も含めてトータルで提案を受けられるため、初めて製品を開発する場合でも安心して進めることができます。
一方で、サンプル製作や打ち合わせを重ねながら製品を作り上げていくため、縫製だけを依頼する場合と比べると、開発期間や費用が大きくなる傾向があります。その分、用途やターゲットに合わせた製品づくりができ、品質や量産時の安定性も確保しやすくなります。
「仕様が決まっているので縫製だけお願いしたい」のか、「何をどのように作れば良いかも含めて相談したい」のかによって、最適な依頼先は異なります。目的に合わせて依頼先を選ぶことで、よりスムーズに製品開発を進めることができます。
OEM会社ではどんな縫製品が作れる?
当メディアを運営しているクロップオザキでは、資材選定に強いOEM会社として、アパレル製品だけでなくさまざまな業界の縫製品開発をサポートしています。ここでは実際に製品化をお手伝いした事例をご紹介します。
洗濯の負担を軽減する「ランドリーネットバッグ」の製品化

クリーニング店が開発した特許技術を活かしたランドリーネットの製品化をサポートしました。特殊素材「クロロプレーン」へのハニカム構造の抜き型加工、縫製工場の選定や、ファスナーガレージ・バインダー仕様など細部の設計も調整し、試作から量産まで一貫して伴走しました。
今回の事例 洗濯の常識を覆すランドリーネット「スリーシックスティ」 ご依頼経緯とご依頼内容 ご依…
医療資材運搬用「布製通い袋」の製品化

医療機関で使用する資材を繰り返し安全に運搬できる布製通い袋を開発しました。複数サイズのケースに対応できる構造や、防水性・耐久性を備えた生地選定、コストとのバランスなどを検討しながら、お客様のご要望に合わせて設計。試作品の製作から量産まで一貫してサポートし、その後のリピート生産にもつながっています。
今回の事例 医療資材運搬用の、布製通い袋 今回のお客様 ご依頼者様 カザト株式会社 取締役 リサイクル部長 風…
その他にも、ペット用縫製品の開発や、ロボットの収納ケース、腰サポーターの縫製など、さまざまな縫製品の実績がございます。
依頼される前に知っておきたい!ファッション縫製業界の”常識”と異業種の”常識”の違い
ここからは、依頼される前に知っておいていただきたい、ファッション縫製業界と異業種が一緒に開発を進める際に起こりやすいトラブルや認識の違いについてご紹介します。ここでまとめた内容は、実際に当社が異業種の縫製品開発を進めるなかで直面した事例です。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
寸法・許容誤差の考え方が違う
ファッション業界は、ほかの工業系の業界と比べて寸法誤差の許容値が広いです。これは、生地自体に伸縮性があり、縫製も職人が手作業で行っているためです。服の縫製の場合、着丈(長い部分)では1cm〜1.5cm程度の誤差を許容とするケースが多いです。依頼時に「どこまでの誤差を許容とするか」については、事前に明確に話し合っておくと、後々トラブルが起きにくくなります。
業界が違うとコストダウンにつながることも
ファッション業界では、縫製だけでなく成型品についても寸法誤差の許容範囲が広いです。これは、ファッション業界で樹脂製の成型品を製作する場合、工業製品向けの金型とは精度の基準が異なるためです。その分、コストを抑えて生産することができます。精密な工業製品の金型では1型あたり50万円程度かかるケースもありますが、ファッション業界で製作する成型品の場合、海外生産であれば型代5万円前後に抑えられることもあります。精度がそれほど必要ない成型品であれば、ファッション業界のルートで製作することがコスト削減の一つの手段となります。
逆に、工業製品のように精密な成型品を作りたい場合は、ファッション業界ではルートを見つけることが難しいことが多いです。
全く同じ商品には仕上がらない
縫製品は金型で成型するのではなく、職人が手作業でミシンを使って縫製します。工場や職人によって技術には差があり、完全に均一な直線で縫うことは難しく、ステッチがわずかに曲がるといったことはどうしても起こり得ます。「いつでも同じ形状のものが仕上がる」という前提は持たず、「絶対に譲れない部分だけを明確に共有して進める」くらいの認識でいると、スムーズに進めやすくなります。
簡単に工場の振り替えができない
縫製工場といってもひとくくりにはできず、工場によって設備が異なり、対応できるものも異なります。縫製方法(直線縫い・ロック縫いなど)や、縫製したい生地の種類・厚み、カットソーか布帛かによっても、対応できる工場は変わります。いったん依頼先が決まると「やっぱり別の工場に変更しよう」という振り替えは難しいため、最初の段階での工場選定が非常に重要です。
サンプル作成回数の認識の違い
ファッション業界では、サンプルを1〜2回(多くても3回程度)作成して量産生産に入るのが一般的な流れです。縫製業はサンプル生産や少量の生産だけで利益を出すことは難しく、ある程度の数量を量産生産することによって利益を得る仕組みになっています。そのため、「サンプル費用を支払っているのだから何回でも対応してもらえる」と思っていると、工場側の負担が大きくなりお断りされてしまうケースもあります。
開発品の場合、サンプル回数を事前に明確に決めることは難しいですが、おおよそ何回サンプル生産を依頼する想定か、量産数量はどの程度あるかを最初に共有・確認してから進めることをおすすめします。「これ以上は続けられない」とサンプルの途中で打ち切りになるような最悪のケースを避けるためにも、最初の段階でのすり合わせが重要です。
納期には余裕をもって依頼を
ファッション業界はシーズン性が強く、縫製工場によっては繁忙期・閑散期の差が激しいこともあります。そのため、納期には余裕をもって依頼することを心掛けてください。特に開発品の場合は、仕様書を用意したとしても、ファッション業界で一般的に使われる仕様書とは異なり、細かい縫製方法の指示が含まれていないことが多いです。工場に委ねる形で縫製を進めると、1回のサンプルで希望通りに仕上がることは少なく、仕様の試行錯誤に時間と手間がかかります。
国内工場と海外工場のイメージ
「海外の縫製工場はロットが大きくてクオリティが低い」とイメージされている方も多いかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。ロットについては内容にもよりますが、1SKU(サイズ・カラーごと)あたり1,000個以上あれば海外縫製も選択肢に入る場合が多いです。
海外縫製は国内と比べてロットが大きくなる傾向がありますが、商品によっては海外の方が得意なものもあります。例えばアパレル製品の場合、レインウェアに使用するシームテープを貼る仕様やダウンの縫製は、国内では対応できる現場自体が少なく、海外縫製が中心となっています。国内の縫製工場はかなり空洞化し少なくなっており、手の込んだものや手間のかかるものを引き受けられる工場は限られています。また、海外縫製だからといって必ずクオリティが下がるというわけではありません。
品質管理・環境認証の基準が異なる
アパレル業界では、品質管理として生地の堅牢度試験や引き裂き・引っ張り試験などが一般的です。世界的な環境認証としては、エコテックス認証やGRS認証などがあります。
※アパレル業界で使われている環境認証についてはこちらの記事をご覧ください。
こんにちは。&CROP編集部の野崎です。アパレルでサスティナブル資材を使った商品を企画をしたい!と考えたときに、一番分かりやすく、消費者にも伝わりやすいのがサスティナブル認証を受けている資材を使うことです。しかし、サスティナブル認証[…]
一方、工業製品でよく参照されるREACH(EUの化学物質規制)やRoHS(EUの電気・電子機器における有害物質使用制限指令)といった法規制は、アパレル製品の品質基準とは体系が異なるため、「これらをクリアしていますか?」というお問い合わせをいただいても、すぐにお答えすることが難しい場合があります。
世界的な資材メーカーの素材であれば、メーカー側で法規制対応の確認を取っているケースもありますが、そうでない場合は各素材を検査機関で成分分析して確認する必要があり、別途検査費用がかかります。

スムーズに開発を進めるために、事前に準備しておくこと
1.参考品(実物)またはイメージ画像やスケッチ
縫製仕様などの細かい部分を確認できるため、イメージしている製品の参考品(実物)があると最もスムーズに話が進みます。実物がない場合は、イメージ画像や仕様のスケッチなどをご用意ください。
2.使用用途・使用環境・誰が何の目的で使うのか
使用用途や使用環境は、素材や仕様を検討するうえで重要な情報です。「屋外で使いたい」「頻繁に洗濯する想定」といった情報を事前に共有していただけると、より的確な提案が可能になります。また、使用者や縫製品を製作したい目的もお伺いできれば、さらに適切な方法をご提案できます。
3.数量・納期・予算の目安
依頼の段階で決まっている場合は、量産数量・納期の目安・全体の予算感をお伝えいただけるとスムーズです。当社のようなOEM会社の場合は、複数の協力縫製工場と連携しているため、数量や予算に応じて最適な縫製工場を選定します。
4.(あれば)縫い方のリクエスト画像
「直線縫いにしてほしい」「ロックをかけてほしい」「バインダーで綺麗に始末してほしい」など、縫い方のリクエストがあれば事前にお知らせください。縫い方によって得意とする縫製工場が異なるためです。イメージに近い写真を添えてご相談いただけると、よりスムーズに進めることができます。なお、縫製方法のご希望が特にない場合も、使用用途を詳しくお伺いできればこちらからご提案することも可能です。

縫製開発品の生産の流れ
当社の場合、お問い合わせいただいた後にまず、細かい仕様や使用目的についてヒアリングするお時間をいただいています(オンラインまたはご来社)。
その後、製品イメージを整理し、縫製工場に伝わる形で仕様をまとめたうえで、案件ごとに適切な縫製工場を選定します。縫製工場が決まったら使用する資材を手配し、サンプル製作を行います。1回で理想の仕様に仕上がることは少ないため、2〜3回のサンプルを繰り返しながら仕様を固めていきます。サンプルをご確認いただき、仕様が確定したら必要数量の量産に移ります。
生産の流れは依頼するOEM会社によっても異なりますので、詳しくはお問い合わせのうえご確認ください。
まとめ
実際に繊維・ファッション業界以外の業種の方と開発を進めると「業界が異なると認識がここまで違うのか!」と気づく場面に何度も遭遇します。事前にお互いの業界の違いを理解し、認識をすり合わせておくことが、ご希望に沿った製品づくりを実現するためのポイントだと感じています。今回まとめた実務経験に基づく注意点が、ものづくりのお役に立てれば嬉しいです。
縫製品を開発する際は、最初の設計と縫製工場の選定が非常に重要です。当社では、ご希望の目的に沿った仕様の検討や、縫製工場が製作しやすい仕様設計への落とし込みから、一緒に伴走しています。「仕様の検討からサンプル生産・量産までまとめて相談したい」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
