「このAI画像で作りたい!」の落とし穴| アパレル資材発注で注意すべき5つのこと

最近ホームページからの新規のお問い合わせで「こんなアパレル資材(付属)を作りたいです」とAI生成画像データをお送りいただくことが増えてきています。

AIで簡単に本物の画像に近い形でシミュレーションができる、とても便利な時代になりました。ボタンやテープへのロゴ入れ、バックルなどの金属パーツの形状の生成など、色んなアパレル資材のイメージを手軽に生成することができます。「デザインのイメージを膨らませる」ことを目的としてAI画像を使うのは、これからの時代に必要になってくると思いますし、とても良いことだと思います。しかし、その画像をそのままアパレル付属の発注に使うのには注意が必要です。

これまでは、「こんなアパレル資材が作りたい!」というご要望に対して、私たちのような資材の専門家が、再現可能な範囲や仕様上の注意点を把握したうえでご案内し、デザインや形状の提案をしていました。しかし、それがAIに置き換わったことで、良くも悪くも「専門知識がなくても」イメージ画像だけは簡単に生成できてしまうようになりました。

今回は、AIでイメージを生成して仕様を伝える際に注意していただきたい5つのポイントをご紹介します。アパレル業界でAIを活用されている方にぜひご覧いただけたら嬉しいです。

デザインの形状に注意(PL法)

AIの画像生成では、どんな形のアパレル資材でもイメージ画像として再現することができます。「こんなデザインにできたら理想だな」という形を自由につくることができますが、それは実物が存在し販売されているものとは異なります。

世の中に販売されているものには、PL法(製造物責任法)というものがあります。これは、販売されている製品が原因で消費者が何らかの被害(怪我など)を被ったとき、その製品を販売している者が責任を負うという法律です。たとえば、先端が尖ったバックルが衣服についていて、着用者が転倒した際に怪我をした場合、その製品を販売したブランドが責任を問われる可能性があります。

これにより、アパレル資材も「怪我が起きる可能性がある仕様になっていないか?」をよく考えてデザインを決定していく必要があります。

たとえばアルファベットを模したバックルやボタンなど、角が尖っているようなデザインは、角に手を引っかけて傷つけてしまったり、万が一目などに当たると怪我を招く恐れがあるため、採用を避けるケースが多いです。とはいえ、どのくらいまで鋭利にして良いのかについては、「角があるデザインを絶対に使ってはいけない」という法律があるわけではなく、最終的には自己責任の範疇になるのが難しいところです。

AIで生成したバックルの画像
AIで生成したバックル

そのため、私たちのような資材商社にご相談いただければ事前にアナウンスが可能ですが、AIで生成した画像をそのまま工場に見せて「これと同じように作ってほしい」と依頼をすると、そのようなアナウンスがないまま形になってしまうこともあり得ます。アパレル資材を形状からオリジナルで作成したい場合は、この点に注意してデザインを検討するようにしてください。「このデザインはPL法上問題ないか?」と判断に迷う場合は、工場や資材商社に事前に確認することをおすすめします。

再現不可能・コスト増になるデザインに注意

AI生成画像でご相談いただく場合、実際の製造では再現が難しいデザインや、再現するのに工程が多くなるデザインでご相談をいただくことがあります。

「本当にこのデザインにしたいから、コストが高くても良い」という場合であれば問題ないのですが、「ここを変えたらもっとコストを抑えられるのに、それを知らないから思ったよりもコストがかかってオリジナル資材がつくれない」ということも起こりえます。具体的な例をご紹介します。

金属パーツへのロゴ入れの例

金属パーツにロゴを入れたいという希望で、AIで画像生成をしたところ、ロゴ部分が凹んだデザインが生成されました。

AIで生成したロゴ入り金属パーツ(ドットボタン)の画像
AIで生成したロゴ入り金属パーツ(ドットボタン)

これをそのまま工場に見積もりを依頼したところ、型から作成する必要があり、型代だけで10万円かかってしまいます。「ロゴ入れは初期費用がかかるから難しい…」と諦めてしまいたくなりますが、実際には金属パーツにロゴを入れる方法として、凹凸の出ない「レーザー刻印」があります。

 

型から作成レーザー刻印
初期費用数万~10万円以上1~2万程度
小ロット対応不向き100個~OK
デザイン変更型の作り直しが必要レーザーデータ代のみ
仕上がり凹凸の再現も可能

基本はフラット

(一部凹凸のあるレーザーの種類も)

金属パーツのレーザー刻印(凹凸無し)の画像
金属パーツのレーザー刻印(凹凸無し)

レーザー刻印であれば型は不要で、初期費用はデータ代のみです。100個からの小ロットでも対応できるため、「ロゴを入れたい」だけが希望であれば、実はそれほどハードルは高くないのです。しかしAIで生成した画像に凹凸があると、それを見せられた工場は「凹凸が必要なんだ、では型から作成するしかない」と判断してしまいます。

シリコンワッペンの例

シリコンワッペンを作るとします。縁取りが白、地の色がグレー、中央のロゴ色が白のワッペンを作りたい場合、シリコンワッペンは層を重ねて色を表現するため、縁取りと中央ロゴを凹に、地のグレーを凸にする(またはその逆)と、2層(グレーと白の層)で制作できます。

しかし、AIで画像を生成した際に、縁取りが凹、その上にグレーの地の色が乗り、さらにその上にロゴが凸で表現された場合、3層のデザインになります。その結果、製造工程が増え、コストも上がってしまいます。AIにとって、ロゴを凸にするか凹にするかは指定しない限りどちらでも構わないため、こういったことが起こりやすくなります。

シリコンワッペンの例の画像
シリコンワッペンの例

本来コストをかけたくない部分に費用と手間がかかってしまうと、作り手にとっても依頼者にとってもメリットのない状況が生まれてしまいます。AIで生成した画像をそのまま渡すのではなく、「なぜそのデザインになっているのか」を一度立ち止まって確認することが大切です。

一から形状を作るには型代がかかる

どんなアパレル資材においても、一から形状をオリジナルで作成する場合には、基本的に型代や版代がかかります。そのため、AIで一から画像生成を行った場合、選択肢は大きく2つになります。

  1. 型からオリジナルで作成する
  2. 既製品に近いものを探して、ロゴを入れる

どんなものを作りたいかにもよりますが、初回作成で1,000ロット以上ある場合は型から作成することも選択肢に入りますが、1,000個以下の場合は型から作成すると初期費用が高くなりやすく、コストが合わないことが多いです。また、作成後にデザインを変更したい場合も、型の作り直しが必要になるというデメリットがあります。

そのため、初めてロゴ入り資材を作る場合や、まずは小ロットから始めたい場合は、既製品にロゴを入れる方法がおすすめです。既製品にロゴを入れる場合は、ロゴを入れたい商品の画像をAIに読み込ませて、「この部分にこういう感じでロゴを入れたい」と伝えて生成してもらうのが、イメージを最も近づけやすい方法だと思います。

AIへの依頼方法の画像
AIへの依頼方法

なお、既製品へのロゴ入れ方法には、刺繍・転写・印刷・レーザー刻印などがあり、素材や仕上がりのイメージによって最適な方法が異なります。詳しくはお気軽にご相談ください。

どこは必須事項で、どこは妥協できるのかをきちんと伝える

ここまで1〜3のポイントを解説してきましたが、AI画像を使って発注相談をする際に最も大切なのは、「どこがこだわり(必須ポイント)で、どこは変更可能なのか」を事前に伝えることです。「この仕様は必ずこうしたい。でもここの部分はAIが自動生成したものなので、もっと良い方法があれば教えてほしい」と伝えていただけると、修正案も提案しやすくなります。

相談時に以下の情報を整理して伝えていただけると、よりスムーズにご提案できます。

  • このデザイン・形状は必須か、変更可能か
  • 希望ロット数
  • 予算感(型代に使える金額の目安)
  • 使用アイテム・取り付け位置
  • こだわりたいポイントとそうでないポイント

ロゴデザインは必ず編集可能なデータ形式で納品

最近、ロゴデザインをAIで生成していて、デザインデータの納品をお願いすると「画像データ(JPEGやPNG)しかありません」という方が増えています。

アパレル資材にロゴを入れるためのデータ形式としては、基本的にAdobe Illustratorで編集可能なPDFまたはai形式のファイルが必要です。そのデータをもとに型を作成したり、刻印データを作ったりするため、画像データでは編集ができないからです。残念ながら、現時点では、ChatGPTやGeminiなどのAIは、Adobe Illustratorで編集可能なファイル形式で出力する機能を持っていません。そのため、画像形式で出力されたデザインを外部業者に依頼して、編集可能なファイルに変換してからデータを納品する必要があります。

このデータ変換を資材商社や工場内で対応してくれる会社もありますが、画像データの変換には上からトレース(なぞる)する作業が必要で手間もかかるため、基本的には有償対応と考えておいた方が良いでしょう。外注費用はデザインの複雑さにもよりますが、数千円〜数万円程度が目安です。

ブランドロゴは、アパレル資材への印字以外にも、WEBページやSNSへの掲載、ショップデザインの作成などさまざまな場面で使用することになると思います。費用をかけて外部業者にきちんとしたデザインデータに整えてもらうことは、長い目で見ると大切な投資だと思います。ロゴデータは一度きちんと整えておけば、資材発注以外の場面でも繰り返し使えるため、早めに準備しておくことをおすすめします。

まとめ

AIを活用したものづくりの相談が増える中、今回ご紹介した5つのポイントを押さえておくだけで、無駄なコストやトラブルを防ぐことができます。

私自身、日常的にAIが使われる時代になり、AIでできることが増えているからこそ、正しい資材の知識や仕様の注意点を把握しておく必要があると日々感じています。皆さまのこだわりのものづくりがより叶えられるよう、今回ご紹介した注意点を意識しながら、うまくAIを活用していただけたら嬉しいです。&CROPを運営しているクロップオザキでは、今回ご紹介したようなオリジナルアパレル資材のご相談を承っております。お気軽にご相談いただけたら嬉しいです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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