アパレルメーカー必見!ファスナーの右挿しと左挿しの違いと発注方法

&CROP編集部の野崎です。パーカーなどの前開き製品のファスナーを閉めるとき、「何かいつもと違うな…」と感じることはありませんか?


日本で販売されている製品の場合、「開き」仕様だと自分が着用した状態で左側に付いているスライダーにファスナーテープの右側を挿し込んでスライダーを引っ張ることがほとんどだと思います。ですが、実は海外企画の製品は、右側に付いているスライダーにファスナーテープの左側を挿し込む「左挿し」になっていることが多いため、違和感を感じてしまうのです。

今回はそんな開きファスナーの挿し方向について、「左挿し」「右挿し」のご説明と、使用用途、アパレルメーカーの方に役立つ発注方法をご紹介します。

この記事で学べること

  • 「右挿し」「左挿し」の違いについて
  • 「左挿し」はどのような場合に使うのか
  • 挿し方向の異なるファスナーの発注方法

ファスナーの基本名称

まず、ファスナー(開き)の各部の名称についてご説明します。

ファスナー各部の名称の画像
ファスナー各部の名称
  • エレメント…務歯(むし)とも呼ばれ、かみ合ったり離れたりすることでファスナーが開閉されます。
  • テープ…ファスナーの生地の部分です。
  • スライダー…ファスナーを開閉するときにエレメントをかみ合わせる役目をするパーツです。

開き製品の場合、ファスナー下に開き具(ひらきぐ)が付いています。

開き具の名称の画像
開き具の名称

下の大きい部分をと言い、差し込むほうを蝶棒と言います。


ファスナーの「挿し方向」って?

この蝶棒と箱が左右どちらについているかで、挿す方向が変わります。

左挿し・右挿しの違い

基本名称で説明した開き部分に基づくと分かりやすいですが、左に付いているスライダーに、右側から蝶棒を挿し込む仕様を「右挿し」、右に付いているスライダーに、左側から蝶棒を挿し込む仕様を「左挿し」といいます。

青色が右挿し・黄色が左挿しの画像
青色が左挿し・黄色が右挿し
青色が右挿し・黄色が左挿しの画像
青色が左挿し・黄色が右挿し


右利きが多い日本では、販売されている製品はほとんどが右挿しになっています。右手で箱に挿し込むほうがやりやすいからです。

左挿しはどんな時に使う?

それに対し、アメリカなどの海外企画の製品は、左挿しが多いです。これには諸説ありはっきりとした理由は分からないのですが、海外は日本よりも左利きの人の割合が多いからではないか、と言われています。

確かに日本よりも左利きの割合が多いと言われていますが、それでも右利きと左利きの割合でいうと圧倒的に右利きの方が多いので、理由は定かでありません…。ただ、あくまでも各国の慣習によるものなので、かけボタンの前後と違い、男性用と女性用という区別はありません。

海外企画で左差しファスナーが付いている例の画像
海外企画で左差しファスナーが付いている例

日本企画でもあえて左挿しを使うこともある

 日本企画でも、あえて左挿しを使うこともあります。例えば、

  • 袖脱着仕様の場合
  • ライナーの脱着部分でライナー単体では着用しない場合 です。

袖脱着仕様の場合

例えば袖を着脱してベストのように着ることもできるジャケットなどは、アームホール部分に開きファスナーが取り付けられており、袖の部分が取り外しができるようになっています。

袖脱着仕様の製品の画像
袖脱着仕様の製品


このような仕様の場合は、左右のファスナーを、それぞれ右挿し・左挿しと使い分けていることが多いです。理由は2点あります。

本体(ベスト部分)にスライダーが残らないようにするため

左右の袖を取り外してベストとして着用している際、ファスナーのスライダーが本体(ベスト)に残ったままぶらぶらしてしまうと恰好悪いです。袖を取り外したアームホール部分が目立たないよう、右側には右挿しを、左側には左挿しを使って袖側にスライダーを残すようにします。

袖を外した後のアームホールの画像
袖を外した後のアームホール
アームホールに蝶棒だけが残っていて、すっきりしていることが伝わる画像
蝶棒だけが残っていて、すっきりしている
左右の袖を戻すときに間違いないようにするため

左右の袖を取り外し、ベストとして着用した後、袖を戻そうとファスナーを取り付けると、左右の袖がどちらが左でどちらが右か、分かりづらくなってしまいます。戻すときに左右を逆に付けてしまうことが無いよう、分かりやすく左挿しと右挿しで区別しています。

外した後の袖の画像
外した後の袖
左右の袖で挿し方向が異なることが分かる画像
左右の袖で挿し方向が異なる

ライナーの脱着部分(ライナー単体では着用しない場合)

ライナーとは、アウターの内側についている取り外しのできる裏地のことです。環境によって防寒機能をコントロールするために、ライナーが付いている商品があります。このライナーの着脱ファスナーにも、左側には左挿しのファスナーが使われていることがあります。左挿しを使えばライナー側にスライダーが残るので、アウター単体で着たときに邪魔にならないからです。

アパレルメーカーのためのファスナー発注ガイド

ここまで左挿しファスナーの使い方についてご説明してきました。ここからは、実際に手配したい時はどのような発注をすれば良いのか、アパレルメーカーの方向けに発注方法について解説していきます。

※本記事では、日本シェア90%以上であるYKKの発注コードに基づいてご説明いたします。

ファスナーの発注にはコードを使う

ファスナーは【サイズ】【種類】【製品区分】【スライダー】【色】【長さ】などの組み合わせで作られています。そのためファスナーは数え切れないほどの種類があり、受注生産で作られていきます。どの組み合わせが必要なのかを明確にするため、発注時にはYKK独自の発注コードを使って発注します。

発注コードの構成は以下の通りです。

  1. サイズ(エレメントの大きさ)
  2. ファスナーの種類
  3. 製品区分(エンド部分)
  4. スライダー
  5. テープカラー
  6. 長さ


それぞれの詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

ファスナーとは

「左挿し」「右挿し」の指定は製品区分で

「左挿し」「右挿し」の指定は③製品区分で行います。製品区分は、ファスナーのエンド部分の指定のことで、【止(とめ)・開(あき)・逆開(ぎゃっかい)】の3種類があります。

製品区分の説明の画像
製品区分(YKKファスニング専科より)
  • 止(C)…ポケットやパンツのフロントなど、エンドを開かない場合に使う
  • 開(OR,OL)…ブルゾンのフロントなど、エンドを開けて左右を離すときに使う
  • 逆開(MR,ML)…開のなかでもスライダーが2個付いたもの。下からも開けられるブルゾン等に使う。


開きを「O」「OP」と記載することもありますが、正式には右挿しの場合はRightのRで「OR」、左挿しの場合はLeftのLで「OL」と指定します。

まとめ

今回は「右挿し」「左挿し」の違いや使用用途、発注方法をご紹介しました。普段何気なく使っていて意識したことがある方は少ないかもしれません。袖脱着仕様やライナー脱着仕様の製品を見かけた際は、左挿しになっているかどうか、見てみてくださいね。当社では、法人のお客様であれば小ロットからファスナーの手配も可能です。ファスナーは組み合わせは数え切れないほどあるため、最も発注が難しい資材とも言えます。「ファスナーを相談しながら選びたい」という方はぜひご相談ください。

参考文献

 

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