こんにちは。&CROP編集部の野崎です。
アパレルでサスティナブル資材を使った商品を企画をしたい!と考えたときに、一番分かりやすく、消費者にも伝わりやすいのがサスティナブル認証を受けている資材を使うことです。
しかし、サスティナブル認証といっても種類がいろいろあり、それぞれの認証にどんな意味があるのか・何を使えばよいのか分かりにくいです。
この記事では、生地や副資材によく使われているサスティナブル認証を7種類ご紹介します。ただ「認証を受けているから」という理由で資材を選定するのではなく、その資材がなぜサスティナブル認証を受けているのか・使うことで何に貢献できるのかをわかります。そして、製品のアピールポイントとしてどのように活用していけば良いのかを考えてもらえれば嬉しいです。
サスティナブル認証の種類
サスティナブル認証とは、社会・人間・環境における持続可能な開発に貢献できる証です。
今回ご紹介する7種類は以下
オーガニック認証
オーガニックとは
オーガニックとは、環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業です。簡単にいうと、環境にやさしい栽培方法ということです。
具体的には下記のような条件が挙げられます。
- 化学的に合成された肥料や農薬を使用しないこと(土壌汚染の原因となるため)
- 遺伝子組み換え技術を使用しないこと(遺伝子組み換え植物が農地の外に出てしまったときに、生態系に影響を及ぼすため)
このオーガニックに関する世界的な認証が《OCS認証》と《GOTS認証》です。
【世界共通】OCS認証
OCS認証とは、Organic Content Standard認証の略で、原料から最終製品までの履歴を追跡し、その商品がオーガニック繊維製品であることを証明するマークです。
OCS認証が付いていることで、製品のオーガニック繊維の含有率を最終消費者に保証することができます。
まとめると、
- トレーサビリティ(追跡可能性)が確保されていること
- 原料がオーガニック繊維であること
この2点を保証する認証が、OCS認証です。
【世界共通】GOTS認証
GOTS認証とは、Global Organic Textile Standard 認証の略で、オーガニック(有機栽培)の原料を使用し、繊維の収穫〜加工〜製造〜流通の全ての過程において環境的・社会的に配慮されていることを証明するマークです。
OCS認証と同じオーガニックの認証なのですが、GOTS認証は、OCS認証の環境的配慮に+αで社会的配慮が加えられています。
具体的な認証の条件の一例が下記となります。(うち橙色が社会的配慮の観点)
原料の70%以上がオーガニック繊維であること
加工がオーガニックな方法で行われていること
遺伝子組み換え技術を使用しないこと
トレーサビリティ(生産履歴の追跡可能性)が確保されていること
水・エネルギーの使用に関して環境目標を設定していること
動物実験をしないこと
衛生的で安全な労働環境であること
搾取や差別のない労働条件を満たしていること
リサイクル認証
【世界共通】GRS認証
GRS認証とは、Global Recycled Standard 認証の略で、製品のリサイクル含有物を検証し、環境配慮など社会的責任を果たした上で生産されているかを証明するマークです。
廃棄物の回収から製造、最終製品の販売までの過程を審査します。
審査における3つの観点
製品のリサイクル含有物の検証(トレーサビリティ)
生産段階の社会的・環境的配慮(労働環境、倫理、廃水管理、エネルギー使用など)
適切な化学物質管理(有害化学物質を含む薬剤の排除など)
人に対する安全基準の認証
【世界共通】OEKO-TEX(エコテックス)
OEKO-TEX(エコテックス)とは、350種類以上の有害物質を対象とした、人に対する世界最高基準の安全な製品の証明のマークです。
有害物質の法規制は国によってさまざまです。日本は安全基準が高いようなイメージがありますが、日本では許可されていて中国などでは規制されている物質もあり、またその逆もあります。
エコテックス(スタンダート100)は、すべての国の規制をカバーする安全基準であることから、世界最高水準の安全な証明のマークと言われています。
規制項目
- 特定のアゾ系染料から出てくる、禁止MAKアミン
- 発がん性やアレルギー誘発性染料
- ホルムアルデヒド
- 農薬
- フェノール類
- 塩素系芳香族化合物(キャリア)
- 抽出可能重金属:Ni,Cd,Cr,Cr(6価)等
- 染色堅牢度
- pH値
- フタレート類(乳幼児商品)
- 有機スズ化合物(TBT及びDBT)
- 揮発性物質放出量
- 臭気
- 殺生物加工と難燃加工は別個に規制
バイオマス認証
【日本のみ】バイオマスマーク
バイオマスマークは、生物由来の資源(バイオマス資源)を使って、品質および安全性が確認された製品に付けられるマークです。
バイオマスマークが付いている製品を使うことで、日本の温室効果ガス削減に貢献することができます。生物由来の物質にしか含まれていない炭素(C14)がどのくらい含まれているかを測ることで、その製品の「バイオマス度」が測ることができます。バイオマスマークは、含有率が乾燥重量10%以上である製品に付けることができます。
その他の認証
【日本のみ】エコマーク
エコマークは、様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルです。
「バイオマス」「リサイクル」という様に決められた分野だけに限定されておらず、「省資源と資源循環」「地球温暖化の防止」「有害物質の制限とコントロール」「生物多様性の保全」という大きな4つの重点項目があり、マークが付いた製品がどのようにエコなのかをマーク下に記載する決まりになっています。
【日本のみ】グリーンプラ
グリーンプラは、生分解性プラスチックのうち、堆肥化により炭酸ガスと水に分解される「コンポスト性」と、使われている製品の「安全性」が認められた商品につけられるラベルです。
サスティナブル認証の注意点
資材すべてが認証済だったとしても、製品自体でサスティナブル認証を謳うことはできない
例えばシャツを作るために必要な生地・副資材(芯地・ボタン・糸など)すべてにGOTS認証済の資材を使ったとしても、製品自体を「GOTS認証済製品」と謳うことはできません。
これは、認証にはトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されている必要があり、資材すべてが認証済だったとしても、それらを縫製している段階の確認が取れないためです。
製品を認証済と謳うには、製品自体で認証を取得する必要があります。
こんな使い方がおすすめ
ひとつのプロダクトに複数のテーマを入れない
とりあえず、環境にやさしいから認証マークが付いているものを使おう!と思って選んでいくと、
ボタンはバイオマス、ファスナーはリサイクル、ネームは生分解、テープはオーガニックコットン・・・などごちゃごちゃしてしまい、製品全体で見たときに何がどう環境にやさしいのか分かりにくくなってしまいます。そのため、1つのプロダクトに対してテーマを決めて選定することがおすすめです。
例1)テーマが【ごみの焼却から生まれる二酸化炭素を減らして、地球温暖化を防ぐ】だとしたら、
①生分解性のあるオーガニックコットンの表地・リヨセルネーム・天然素材ボタンなどを組み合わせて、製品をそのまま土に埋めれば分解される製品をつくる。製品が不要になった後に土に還す場所を確保し、消費者がごみ箱に捨ててしまわないよう、回収する仕組みづくりをする。
②バイオマス認証の付いている資材を組み合わせて、製品全体で約○○%バイオマス、と謳えるようにする。(バイオマス資源は植物の光合成によって二酸化炭素を使うため、ごみ焼却で発生する二酸化炭素と相殺ができる)
例2)テーマが【製品ができるまでに関わっているすべての人の労働環境を保障する】だとしたら、
①オーガニック認証(OCS認証・GOTS認証)、リサイクル認証(GRS認証)など種類は何でも良いので、トレーサビリティが確保されていて労働環境が可視化できる資材を選定する。
②フェアトレードの資材やオーガニックコットンを使用する。
などが考えられます。ブランドでアプローチしたいテーマを決めて、それに合わせた資材を選定することで、何に貢献しているかを感じながら製品づくりをすることができますし、消費者側にも活動が伝わりやすいものになります。
まとめ
今回は、アパレル業界でよく使われているサスティナブル認証をご紹介させていただきました。サスティナブル認証の種類を知ることで、資材探しにお役立ていただけたら嬉しいです。それぞれの認証がなぜサスティナブルと言われているのか、本質を考えて選定することで、製品のアピールポイントとして活用でき、消費者への訴求力も上がります。
これからの時代は「かたちだけのサスティナブル」は通用しないと言われています。既にサスティナブル資材を取り入れているブランドも、今一度見直してみてください。