縫製仕様書とは
洋服を作るためにはデザインが必要になる訳ですが、デザイン画だけでは洋服にはできません。まずパターンと言われる型紙が必要です。パターンはデザイナーが書いた2次元の絵を立体化する技術を持つパタンナーと言われる人によって作られます。パターンに沿って生地を裁断し、組み立てて(縫って)一枚の洋服ができます。
ではデザイン画とパターンがあれば洋服はできるのでしょうか?答えはNoです。それらだけではどこをどう縫ったらいいのか、サイズはどれくらいなのか、ボタンは何を使うのかなどわからず、組み立てることができません。
そこで必要になるのが縫製仕様書です。縫製仕様書は洋服を組み立てるための設計図の役割を果たします。縫製仕様書について詳しくはこちらの記事を参照ください。
縫製仕様書とは~アパレル縫製仕様書について知りたい全ての方へ~
無料ダウンロードできる縫製仕様書
今回、無料ダウンロードできる縫製仕様書はどんなものなのかを見てみました。その結果を報告します。まずGoogleで「縫製仕様書 無料ダウンロード」のキーワードで検索した上位4位の結果です(2022年1月現在)。
「縫製仕様書 無料ダウンロード」で検索した結果上位4社
*ランキング名をクリックすると会社のHPを参照できます。
1位 匠の縫製工場 ものづくり工房(運営:SPP株式会社)
石川県の縫製工場で、企画から資材調達、縫製まで一貫体制で依頼できることが強み。また小ロット・短納期に対応できる生産方式を取っています。
2位 AYATORI(運営:株式会社DeepValley)
東京の渋谷にてアパレル生産業務を簡単にするクラウドPLM「AYATORI」の開発・販売の他、製造・買取支援サービス、ファッション産業へのIT導入支援、ブランドプロデュースを手掛けています。
3位 アパレル工場チューリップ(運営:チューリップあまくさ宝島)
熊本県にてミシンの販売とサポート、パターン作成と販売、アパレル道場など行っています。
4位 縫製工場ミヤモリ(運営:株式会社ミヤモリ)
富山県の縫製工場で、スポーツウェア、カジュアルウェアを得意とする国内縫製工場。企画サポートサービスとして、パターンメイキングから依頼できます。
このランキング上位に占める会社は、縫製工場はもちろんですが、縫製設備がない会社でも縫製のプロとしての実績があり、縫製仕様書の作成には長けています。では、実際にダウンロードした縫製仕様書を見ていきましょう。
ダウンロードした縫製仕様書
ものづくり工房
縫製仕様書のダウンロードはこちらから → http://www.e-plan.jp/koubou/toolbox_sp.html
この縫製仕様書はエクセルでもPDFでもダウンロードでき、エクセルの方は自分で項目も変更できますし、チェックマークも入れられて便利です。
記入項目もほぼ網羅されているので、これを利用すれば縫製仕様書を完成させることができます。また、書き方の参考例もあり、とても親切です。
さらに用紙サイズもA4 2枚バージョンとA3 1枚バージョンとあり、これも助かります。A3のコピー用紙がない会社さんもありますからね。
AYATORI
縫製仕様書のダウンロードはこちらから → https://ayatorimedia.deepvalley.co.jp/apparel-format/
こちらはダウンロードするのにフォーム記入がある点がひとつのハードルです。しかし、フォームを記入するとすぐにダウンロードできるURLが表示され、即ダウンロードができます。
エクセルではなくグーグルのスプレッドシート形式なので、そのままだと使い慣れていないと使いづらいですが、エクセル形式にダウンロードもできます(下記参照)。
この縫製仕様書のシートの内容は一番充実していて、これならほぼ修正なしに使えます。加工指示書、縫製仕様書、検品書までシートが分かれていて、即実践で使える内容です。自動計算機能もあり、とても便利です。私たちが大手アパレルメーカーとやり取りしている縫製仕様書もこのような形式です。
スプレッドシートのタスクバーから「ファイル」→「ダウンロード」→「Microsoft Excel(.xlsx)」を選択します。これでエクセル形式にダウンロードできます。
TULIP業務日誌
縫製仕様書のダウンロードはこちらから → https://blog.goo.ne.jp/cotulip/e/8346afa633cbae7bfe867af784976453
この縫製仕様書はダウンロードというより写真をコピーする感じです(ページの注意事項に「※ブログ引越しにつきダウンロードを中止しました」とありました)。それなので、このままだと編集も書き込みも難しいです。このままでは正直使用は難しいですが、こういう形式で作ればいいのかと参考にして、自分でエクセルなどで作成するのはいいかと思います。
また、「当アパレルサポートご利用の方には、業務、アイテムに合わせた、ご自身で仕様変更可能なエクセルデータにて、お渡ししています」とあるので、無料なのかどうかはわかりませんがエクセル形式で提供いただけるようです。
ミヤモリ
縫製仕様書のダウンロードはこちらから → https://www.miyamori-co.com/support/worksheet/
こちらの縫製仕様書はPDFのみなので、有料のソフトがないと編集ができないのでこのままだと応用が利かないです。
縫製仕様書を2種類用意されているのは便利ですが、仕様書の項目が少なく、付け加える必要があります。この形式を参考にして、自分でアレンジしたい人にはいいです。
上位4社でおすすめのテンプレートは?
以上、上位4社の縫製仕様書を見てきましたが、AYATORIさんの縫製仕様書は完璧です。これはこのまますぐに使用できます。トップスとボトム用にも分かれているので、アイテムに合わせても使いやすいです。さらに加工指示書、検品書も別で用意されていて、縫製工場とのやり取りはこれがあれば十分です。
ものづくり工房さんの縫製仕様書もシンプルに1枚(もしくは2枚)のシートに収まっていて、概ね指示項目は網羅されているので使いやすいかと思います。エクセル形式なので、自分でアレンジも可能ですし、追加項目を別シートで作ってもいいです。
TULIPさんとミヤモリさんの縫製仕様書は写真、PDF形式なので、このままだと書き込みとか編集が難しいので上記2社のものと比較すると使いづらいです。一方で、これらの形式を参考に自分でエクセルなどを使ったひな形を作るにはいいです。すでに上記2社のようにビッシリ項目が埋まってしまっていると自分なりにアレンジするのが難しくなってしまいます。
いずれにせよ、無料でダウンロードできる縫製仕様書を提供してくれているのはどの会社も素晴らしいです。これからアパレルを始めようという方にはとても役立ちます。
ちなみにこれからアパレルを始めようという方はこちらの記事もご参照ください。
アパレルブランド立ち上げ成功に必要な条件3つ※動機別成功例/失敗例つき
最後に
今回、無料ダウンロードの縫製仕様書を検証してみて、どの会社も情報を提供することで、生産の手間を省いて欲しいという想いがあることがわかりました。「無料ダウンロード」と聞くと、何か買わなければならないとか、ここから先は有料みたいなものを心配しますが、調査した中では特にそういったものはありませんでした。この機会に縫製仕様書をデジタル化して管理することにお役立ていただけたら嬉しいです。