もくじ
はじめに
&CROP編集部の野崎です。
アパレル資材の発注でもややこしいと言われるファスナ―発注のポイントを、『基本編』『応用編』、2回に分けてご紹介するシリーズ。今回は『応用編』です。
応用編でご紹介する内容
今回ご紹介するのは、METALION(メタリオン)、CONCEAL(コンシール)ファスナー、袖脱着ファスナー、圧着仕様についてです。これらに共通するのは、人気の高いファスナーの種類・仕様ながら、発注時の指示方法が基本的なファスナーと異なること。この為、基本的なファスナーの発注に慣れている場合は特に、指示漏れが起きやすいと言えます。
そこで今回は、『応用編』として、これら人気が高い種類・仕様ながら発注方法が異なりミスが起こりやすい、特別仕様のファスナーの発注ポイント(注意点)を5つをご紹介します。
ファスナーは納期が1か月以上かかる場合もあり、指示漏れが命取りになりかねません。前回ご案内した基本の発注ポイントに加え、今回ご紹介する特別仕様のファスナー発注ポイントを押さえることで、発注先とのやり取りの削減、思っていたものと違うものが届いた・・・といったことが無くなる等、業務効率が格段にアップします。
発注書をつくる時、発注前の確認事項として、ぜひご活用ください。
前回のおさらい
前回の『基本編』では国内シェア95%以上を誇るYKKファスナーの基本的なファスナー発注で押さえるべき5大チェックポイントをご紹介しました。応用編についても、より理解しやすくなりますので、まだお読みでない方は併せてお読みください。
はじめに&CROP編集部の野崎です。アパレル資材の発注中でもややこしいと言われているのが、ファスナー発注方法です。理由は、発注指示が多いだけでなく、使用するファスナーや仕様により指示方法が異なり、指示漏れやミスが発生しやすい為です。[…]
特別なファスナーの種類や仕様においての5つのチェックポイント
基本のファスナー発注と指示方法が異なる、特別なファスナーの種類や仕様においてのチェックポイントは以下5つ
- 【種類】メタリオンのエレメント/スライダー色指示漏れに注意!
- 【種類】コンシールファスナーは発注寸法に注意!
- 【仕様】コンシールファスナーを2サイズ→3サイズに変更するときは、テープの素材に注意!
- 【仕様】袖脱着ファスナーは使用するファスナーと右差し/左差しに注意!
- 【仕様】圧着仕様はT-B-0 EL-TOJIで発注!
次に、各チェックポイントをそれぞれ解説いたします。
※ファスナー発注の基本のポイントは、『基本編』をご覧ください。
1.【種類】メタリオンのエレメント/スライダーは色指示漏れに注意!
METALION®(メタリオン)とは?
METALION®(メタリオン)とは、YKK社製の、シルバーやゴールドなどの金属カラーをエレメント部分(コイル部分)で表現した、金属調のコイルファスナーです。
コイルファスナーの軽量さを維持しつつ、金属ファスナーが持っている重厚感や金属の輝きを兼ね備えています。金属ファスナーが向かないスポーツ系の衣類にも使用できるため人気が高いファスナーです。
※YKKの商品詳細:METALION®ーYKK㈱ジャパンカンパニー
ポイント(注意点)
金属ファスナーが向かないスポーツ系の衣類にも使用できるため人気が高いメタリオンですが、発注の際はエレメントの色指示が抜けがちなので注意が必要です。
というのも、通常の金属ファスナーの場合、エレメントカラーごとにコードがあり、ファスナーの種類のコード(チェーンタイプ)でメッキカラーも指示できます。それに対し、メタリオンのコード(チェーンタイプ)は統一で、3サイズの場合は【CM】、5サイズの場合は【CNM】となり、コードにエレメントカラーが含まれない為です。
金属ファスナーの発注に慣れているほど、エレメントの色指示が抜けがちになります。
通常の金属ファスナーと、メタリオンの表記の違い
通常の金属ファスナー
上画像の表を見ると、エレメントカラーごとにコードがあり、ファスナーの種類のコード(チェーンタイプ)でメッキカラーも指示できることが分かります。
メタリオン
上の画像を見ると分かる通り、チェーンタイプと、エレメントカラーが別の表でまとめられています。
メタリオンのコード(チェーンタイプ)は統一で、3サイズの場合は【CM】、5サイズの場合は【CNM】となり、エレメントカラーが含まれません。
例)「3サイズ/ゴールド」で発注する場合の指示の違い
例えば、3サイズ/ゴールドで発注する場合、金属ファスナーとメタリオンは、以下のように記載します。
- 通常の金属ファスナー:3 MGR C DA
- メタリオン:
〇正解:3 CM C DA EL-GOL1
✕ 不正解:3 CM C DA
通常の金属ファスナー
通常の金属ファスナーの3サイズ/ゴールドを発注したい場合は、3(サイズ)MGR C(製品区分) DA(スライダー品番)となります。
メタリオン
一方、メタリオンの3サイズ/ゴールドを発注したい場合は、 3(サイズ) CM C(製品区分) DA(スライダー品番) EL-GOL1(エレメントカラー指定)と記載する必要があります。
3 CM C(製品区分) DA(スライダー品番) だけではエレメントカラー(ゴールド)の指示ができないためです。
メタリオンのエレメントカラーのバリエーション
ちなみに、エレメントカラーのバリエーションはこちらになります。
通常の金属ファスナーの発注に慣れていると、このエレメントカラーの指定をし忘れることがあるので、発注前に確認をしてみてください。
まとめ
- 通常の金属ファスナーの発注に慣れているとMETALIONのエレメントカラーの指定を忘れがち
- METALIONでは、コードとエレメントカラーの指定は別!
- 指定方法は、「3 CM C DA EL-GOL1」のように、①サイズ/②コード(チェーンタイプ)/③製品区分/④エレメントカラーの順で指定する
- 発注前には、コードとエレメントカラーが別々に指定されているか必ずチェックする
2.【種類】コンシールファスナーは発注寸法に注意!
CONCEAL®(コンシール)ファスナーとは?
CONCEAL®(コンシール)ファスナーとは、YKK社製のエレメントと縫い目がテープの表にでないようになっているファスナーです。ワンピースの背中やスカートの脇など、ファスナーを目立たせたくないときに使います。また、ポケットに使うことで服全体のデザインを邪魔することなく機能性を付加することもできます。
※YKK㈱の商品詳細:『CONCEAL®』ーYKK㈱ジャパンカンパニー
ポイント(注意点)
コンシールファスナーは発注寸法に注意が必要です。基本的に目立たせないように使うため、生地に縫い込むことが多いのですが、その場合は開き寸(実際に開閉するのに必要な寸法)に縫い込むための長さを入れる必要があるためです。この縫い込みの長さは工場によって違うため確認が必要ですが、大体上下2cmずつで合計4cm程度長めに手配することが多いです。
サンプルは22cm・56cmでの手配が一般的で、下止めが可動式になっているため、長めに発注をしておいて調節をすることが多いです。ですが、いざ量産!となったときに開き寸ぴったりで発注してしまうと、長さが足りず、縫い込みできなくなってしまうため注意が必要です。
コンシールファスナーに多い例ではありますが、コンシールファスナーに限らず、縫い込みの場合は開き寸+縫込み分の寸法 が必要ということを覚えておくと良いです。
まとめ
- コンシールファスナー等縫い込みの場合は、「開き寸+縫込み分の寸法」で発注する!
- 縫い込み分は、大体上下2cm、合計4cm長めの手配が多いが、縫製工場によって違うため確認する
- サンプルの場合は、長めに発注しておいて調整が◎ 22㎝・56cmの手配が一般的
- (特に量産の時に)発注前は、長さが開き寸ぴったりになっていないか必ずチェックする!
3.【仕様】コンシールファスナーをエレメントサイズ2→3に変更するときは、
テープの素材に注意!
引き続き、コンシールファスナーのポイントです。先ほどはコンシールファスナーの発注寸法(長さ)についてのポイントでしたが、次は、発注時のテープの素材に関するポイントです。コンシールファスナーは、2サイズと3サイズで、標準で使用されるテープ素材が違う為、発注の際は、使いたいテープ素材で発注できているか必ず確認する必要があります。
コンシールファスナーのテープ素材の仕様についてご存じない方の為に、まずはテープの素材からご説明します。
コンシールファスナーのテープ素材
コンシールファスナーのテープ素材には《BPテープ》《Pテープ》の2種類があります。
BPテープとPテープの比較画像
BPテープ・Pテープと生地の相性
- BPテープ⇒ポリエステルニットテープ / 薄くて柔らかい生地向け
- Pテープ⇒ポリエステル織テープ / 袖脱着用ファスナーなど強度が必要な用途向け
このように、テープ素材と生地の相性があるので、生地によって、相性の良いテープを選ぶ、と言う流れになりますが、コンシールファスナーの場合は、サイズ違いで標準の素材が違う為、注意が必要になります。
コンシールファスナーは、エレメントサイズ2と3で標準のテープ素材が違う
コンシールファスナーは、エレメントサイズの違いで「標準の素材」が違います。
2CCと3CCテープの比較画像(表)
2CCと3CCテープの比較画像(裏)
ポイント(注意点)
2サイズのコンシールファスナー(2CC C DAなど)の場合は、BPテープのみの展開となるため、標準のテープ素材がBPテープとなります。しかし、3サイズのコンシールファスナー(3CC C DAなど)の場合は、BPテープとPテープの2展開あり、標準のテープ素材はPテープとなります。
- サイズ2(2CCファスナー):BPテープのみ
- サイズ3(3CCファスナー):
BPテープとPテープの2種類あるが、Pテープが標準テープ。テープの種類を指定しないとPテープでの発注となる。
例えば)2CCファスナーから3CCファスナーへ変更する場合
例えば薄くて柔らかい生地に2CCファスナー(BPテープ)を使用していて、サイズを大きくしたいから3CCファスナーに変更すると、テープの指定をしない限り、Pテープの3CCファスナーが上がってきてしまいます。
テープの指定方法
BPテープの3CCファスナーが必要な場合は、必ず 「3CC C DA(←ファスナーの品番) BPテープ」と記載してください。
まとめ
- コンシールファスナーは、2サイズではBPテープのみだが、3サイズでは、BPテープとPテープの2種類選べる
- 2サイズ(2CC)から3サイズ(3CC)へ変更する場合は、別途テープの指定が必要になる!
- 3CCテープでは、「3CC C DA」だとPテープで発注がかかる。BPテープが必要な場合は、「3CC C DA BPテープ」と書く
- BPテープの3CCテープを発注をする場合は、発注前に、「3CC C DA BPテープ」のように、ファスナー品番の後ろに「テープの種類」が指定されているか必ずチェックする
4.【仕様】袖脱着ファスナーは使用するファスナーと右差し/左差しに注意!
袖脱着ファスナーとは?
長袖ジャケットなどで袖をファスナーで着脱できるものがあります。着脱するために、左袖、右袖で1本ずつファスナーを使用します。
ポイント(注意点)
基本的に、開きファスナーは右差し(右側から差し込みタイプ) ですが、袖脱着ファスナーの場合はどちらも右差しを使うと左右どちらの袖だか分からなくなってしまうため、基本的に右袖は右差し、左袖は左差しのファスナーを使います。
発注する際は、3CF OR(右差し)DA→右袖用 3CF OL(左差し)DA→左袖用 の2種類を1本ずつ発注しましょう。
まとめ
- 袖脱着ファスナーの発注では、右袖は右挿し、左袖は左挿しのファスナーをそれぞれ1本ずつ発注する
- 記載の仕方は以下(それぞれ1本ずつ発注)
右袖用:3CF OR(右差し)DA
左袖用:3CF OL(左差し)DA - 発注時は、以下2点を必ず確認する
①右袖、左袖でそれぞれ1本ずつ発注しているか
②右袖には右挿し(OR)、左袖には左挿し(OL)がそれぞれ指定されているか
5.【仕様】圧着仕様はT-B-0 EL-TOJIで発注!
圧着仕様とは?
スポーツ系のアパレルブランドで人気の高い圧着仕様。ポリフレックスなどのラバーシートをファスナーの周りに圧着させることで、生地とファスナーの縫い目が見えないようにする仕様です。
T-B-0 EL-TOJIの例(表)の画像
T-B-0 EL-TOJIの例(裏)の画像
ポイント(注意点)
圧着仕様の場合、通常のファスナーのように上下に止めが付いていると、シートを圧着したときにポコッとふくらみができて目立ってしまいます。また、ファスナーは基本的に閉じた状態で圧着するのですが、閉じると上側にスライダーがくるので、上側の圧着がしにくくなってしまいます。
そのため圧着仕様のファスナーを発注する際は、「上下止め無し」「閉じている状態のスライダー初期位置が中央」の2点を記載する必要があります。
発注するコードとしては、3CF C DSYG(基本のファスナー発注)+ T-B-0(上下止め無し) EL-TOJI(閉じている状態のスライダーの初期位置が中央)となります。
まとめ
- 圧着仕様のファスナーを発注する際は、「上下止め無し」「閉じている状態のスライダー初期位置が中央」の2点を必ず記載する!
- それぞれの記載コードは以下
上下止め無し:T-B-0
閉じている状態のスライダー初期位置が中央:EL-TOJI - 発注コードの記載は、以下の順で記載する
①3CF C DSYG ②T-B-0 ③EL-TOJI
①基本のファスナー発注コード ②上下止め無し ③閉じている状態のスライダー初期位置が中央 - 圧着ファスナーの発注前には、基本の発注コードに加え、T-B-0 EL-TOJIが記載されているか必ずチェックする
まとめ
今回はファスナー発注時のよくある間違いや漏れやすいポイントの応用編をご説明させていただきました。
特定の種類や仕様における注意点をご紹介しましたが、どれも人気の高い種類・仕様なのでどこかで発注する機会があるかもしれません。何も知らずに通常通りで発注をすると「あれ、思っていたのと違う…」ということになってしまいます。
それぞれ注意点を頭の片隅に入れておいていただき、使用する機会があるときに「そういえばあのサイトに何か書いてあったな」と思い出していただけたら嬉しいです。