もくじ
はじめに
&CROP編集部の野崎です。
アパレル資材の発注中でもややこしいと言われているのが、ファスナー発注方法です。理由は、発注指示が多いだけでなく、使用するファスナーや仕様により指示方法が異なり、指示漏れやミスが発生しやすい為です。発注担当者様の中には、今まで発注してきたけど未だに不安、という方も多いのではないでしょうか。
ファスナー発注のコツ
私はアパレル副資材商社で働いていますので、お客様から受注することもあれば、代行で発注することもあります。仕事を通して学んだファスナー発注のコツは、
です。これは、どの資材にも言えることですが、ファスナーなど発注指示の多い資材では特に鍵になります。
そこで、アパレル資材の発注担当者様向けに、『基本編』と『応用編』、2回に分けてファスナー発注時のチェック項目をご紹介します。
基本編でご紹介する内容
今回の『基本編』では、国内シェア95%以上のシェアを誇るYKKファスナーを軸に、ファスナー発注前に必ず確認すべき、5つの必須チェック項目をご紹介します。
国内で取り扱いされるファスナーの殆どがYKKファスナーですので、ファスナー発注を制するならYKKファスナーを制するのが一番です。
今回ご紹介する5つの必須チェック項目を押さえることで、発注時にどこに気を付けて発注すればいいのか、どこをよく確認すれば良いのかが分かり、ミスや記載漏れが原因の仕入れ先とのやり取りや、納品されたものが違う、といったことを減らすことができます。
これまでのファスナー発注の効率が上がるだけでなく、新しいファスナーを発注する時に活用できますので、発注前の確認項目としてぜひご活用ください。
※この記事を読み進める際に役立つ記事:
ファスナーの各部位の名称やファスナーの種類、選定ポイント等、基礎知識に不安がある方は、『ファスナーとは』をお読みいただいてから本編をお読みいただくと、理解が深まります。
ファスナー発注5つの必須チェック項目
ファスナーの発注書をつくるときに、効率よく間違いがないかチェックできるようになる、5つの必須チェック項目はこちら
次に、各チェック項目を詳しく解説していきます。
※国内シェア95%を誇るYKKファスナーを基本としてお話しています。
1.製品区分が抜けていないか
サイズやファスナーの種類、スライダーの品番の記載しても、漏れがちなのが、「製品区分」です。ファスナー発注の際は、製品区分の漏れが無いか必ずチェックしましょう。
製品区分とは?
製品区分とは、ファスナーが開いているときに、スライダー側にあるおさえ部分の種類によって分けられます。大きく分けて【止め(C)、開き(OR/OL)、逆開(MR/ML)】の3種類があります。
製品区分は、ファスナーの使用箇所によって変わります。
- パンツのフロントファスナーやポケットファスナーなど左右に分離しないとき→止め(C)
- ブルゾンのフロントファスナーなど左右に完全に分離させたいとき→開き(OR/OL)、逆開(MR/ML)
開き(OR/OL)、逆開(MR/ML)の違い
開き(OR/OL)、逆開(MR/ML)の違いは、スライダーの数です。開きはスライダー1つ、逆開はスライダー2つとなります。使用箇所は同じですが、下からも開閉できるようになっているタイプが逆開です。
製品区分の記載方法
ファスナーを発注する際は使用箇所から製品区分を決め、下記のコードを記載する必要があります。
- 止め→C
- 開き→OR(右差し)/OL(左差し)
- 逆開→MR(右差し)/ML(左差し)
例)5サイズのビスロンファスナー(5VS)の場合
- 止め(C)で発注したいとき→5 VS C DA
- 開き(右差し:OR)で発注したいとき→5 VS OR DA
- 逆開(右差し:MR)で発注したいとき→5 VS MR DA/DA
となります。
解説
- ファスナーの指定は、「サイズ/使用するスライダー/製品区分/スライダー品番」の順で記載します。
- 5サイズビスロンファスナーの場合は、左から「5(サイズ) VS(ビスロン) C/OR/MR(製品区分) DA(スライダーの品番)」と記載します。
- 逆開はスライダーが2つ付くので、DA/DAとなります。
サイズやファスナーの種類、スライダーの品番の記載はされていても、製品区分の記載(例の赤字部分)が漏れがちなので発注前に確認してみてください。
2.スライダーのロック機能に問題はないか
スライダーのロック機能とは?
ファスナーのスライダーにはロック機能が付いているものと付いていないものがあります。
ロック機能とは、動いているうちにスライダーが重力で下がってきてしまわないように、スライダーの引手を引っ張ったときのみロックが外れる等の機能のことです。横向きにファスナーを使うショルダーバッグの開き口等はノンロックでも問題ありませんが、パンツやブルゾンのフロント等、動いているうちに下がってきては困る部分には、ロック機能が付いたファスナーを使う必要があります。
※参照:&CROPアパレル資材辞典『ファスナーとはー資材発注時の注意とポイント』より
判断基準
スライダーのロック機能に問題が無いかは、以下2つのポイントから判断します。
- 生産する製品に、ロック機能が必要か
- 使用するスライダーにロック機能が付いているか
1.生産する製品に、ロック機能が必要か
基本的には理由がない限り、衣類にはロック機能が付いたスライダーを使うことをおすすめします。
理由は、ファスナーを縦使いしない場合や、カバンなどに使用する場合はロック機能なしのスライダーでも問題ありません。ですが、パンツやブルゾンのフロントなど、使用箇所によっては製品全回収の大問題になりかねない為です。
ロック機能無しのスライダー発注は注意です。
2.使用するスライダーにロック機能が付いているか
2文字目がF(R、W)以外なら基本的にロック機能あり
使用するスライダーにロック機能が付いているかどうかは、スライダーの品番の2文字目で判断します。
2文字目が「F」になっているとロック機能が付いていない(ノンロック)※1のですが、それ以外のアルファベットであれば基本的にロック機能が付いています。ロック機能の中にも、タイプが様々で、タイプによってアルファベットが変わります。
※1.R,Wもロック機能なしのスライダーですが、珍しく、ほとんど見る機会は無いと思います。
発注するスライダーにロック機能が付いているかどうか、スライダー品番の2文字目をよく確認をするようにしてください。
3.スライダー塗装やメッキの指示ができているか
省略して記載されることもあるため忘れやすいですが、スライダーの塗装やメッキの指示の記載漏れもよくあります。
スライダーとエレメント同色が希望であれば表面処理コードを入れる必要はありませんが、エレメントと違う色(またはメッキ)にしたい場合は、指示漏れの無いように気を付けてください。
スライダー塗装・メッキの指示方法
スライダー塗装・メッキの指示は、スライダーのコードの後ろに( )で表面処理コードを入れることで伝えます。
よく使用する表面処理
よく使用する表面処理コードは下記となります。
- ( E )・・・塗装(エレメント同色)
- ( C5 )・・・シルバーメッキ
- ( V3 )・・・ブラックシルバーメッキ
- ( X6 )・・・マットブラック
- ( O ) ・・・ゴールドメッキ
特に指示・確認が必要ないケース
- スライダーとエレメントが同色の場合
- コイルファスナー以外(金属ファスナー・ビスロンファスナー)
1.エレメントとスライダーが同色の場合
冒頭でもお伝えした通り、標準では、スライダーの塗装・メッキの指示をしない場合、エレメント(務歯)と同じカラーとなります。エレメント同色が希望であれば表面処理コードを入れる必要はありません。
2.コイルファスナー以外(金属ファスナー・ビスロンファスナー)
金属ファスナー・ビスロンファスナーの場合はエレメント(務歯)と違う色のスライダーを使うことはほとんど無いので塗装・メッキの指示をしなくても大体通じるかと思います。
指示・確認が必要なケース
- スライダーとエレメントを変える場合
- コイルファスナーの場合
1.スライダーとエレメントを変える場合
上の写真のようにあえてデザイン的にスライダーとエレメントを変えることもあります。この場合は指示が必要です。
2.コイルファスナーの場合
上の画像のように、コイルファスナーの場合は、エレメント同色の塗装を使うこともあれば、メッキのスライダーを使用することもあるため、確認が必要です。
チェックポイントまとめ
- スライダーとエレメント同色が希望であれば表面処理コードを入れる必要はない。
- 金属ファスナー・ビスロンファスナーは、スライダーとエレメントで違う色を殆ど使うことが無いので、塗装・メッキ指示をしなくても通じる
- エレメントと違う色(またはメッキ)にしたい場合は、指示漏れの無いように気を付ける。
- コイルファスナーは、スライダーとエレメントが同色でない場合もあるので必ず確認する。
4.寸法は0.5cm単位になっているか
ファスナーの寸法は0.5cm単位で発注が可能です。12.4cm・13.2cmなど、0.5cmより細かい指示はお受けすることができません。また、ファスナーの製品寸法表示には許容差がありますのでご注意ください。
5.表使い・裏使いの指示ができているか
コイルファスナーは、エレメントが表に見えないようにして使用する「裏使い」という使い方があります。基準が「表使い」なので、「表使い」が欲しい場合は記載する必要はありませんが、裏使いの場合は指示が必要です。
発注に慣れてくると、うっかりこの「裏使い」の記載を忘れて発注してしまい、到着したファスナーを見てみたら表使いになっていた・・・ということがあります。裏使いで発注する際は、記載漏れの無いようにご注意ください。
裏使いとは?
裏使いとは、コイルファスナーでエレメントが見えない様にする使い方。裏使いは、エレメントが表から見えずシンプルでスタイリッシュなデザインから、ブルゾンのフロントファスナーやポケットなどによく使われています。
表使いの画像
裏使いの画像
まとめ
今回はファスナー発注時のよくある間違いや漏れやすいポイントをご説明させていただきました。
いつもと違うファスナーを使ってみよう!と思うと、コードの組み合わせで発注方法が複雑なファスナーは間違いが起きやすいです。しかも、ほかの資材よりも納期が掛かるため、一度間違えると使いたいファスナーが間に合わず使えなくなってしまう可能性もあります。
発注前のチェックポイントを抑えることで、今後使ったことが無いファスナーを発注する際にも、どこをよく確認すれば良いのかが分かります。
また、ミスや記載漏れが原因の仕入れ先とのやり取りを減らすこともできますので、発注前の確認項目としてぜひご活用ください。
応用編はこちら:
応用編では、ファスナー発注で更にややこしく、特別なファスナー・仕様として代表的な、METALION(メタリオン)、CONCEAL(コンシール)ファスナー、袖脱着ファスナー、圧着仕様におけるファスナー発注のポイント(注意点)を5つご紹介しています。基本を押さえたら、こちらも是非!
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ファスナーの基礎知識~選定・発注のポイントまで詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。かなりのボリュームですが、複雑なファスナーのことがよく理解出来ますのでおススメです。