今回のご質問
&CROP編集部の野崎です。
&CROPでは、アパレル資材に関するどこに聞いていいのか分からないような質問・お困りごとを「&CROPの質問BOX」で募集しています。その中で、ドットボタンに関しての質問をいただきました。
(ドットボタン)モリトのセレックスとYKKのパーメックスの置き換えはできる?
ドットボタン、タックボタン、リベット等の金属パーツの二大メーカーであるモリトとYKKスナップファスナーですが、違いを知らないと「どちらを使うのが良いの?」「仕様書に書いてあるけど、違うメーカーに置き換えてもいいの?」「形が似てる品番はどれとどれ?」となってしまいますよね。
では、どうすればよいか。まずご質問の答えから。
ご質問の答え
YKK SF社とモリト社のドットボタンは置き換え可能だが、デザインや購入条件は異なる
ご質問いただいた内容の回答としては、
YKK SF社とモリト社のドットボタンは置き換え可能ですが、全く同じというわけではありません。
何かの理由で置き換えをしたい場合は、置き換えした品番の打ち駒とメーカーの打ち機が工場にあるか、変更後の品番のデザインで問題が無いか等をよく確認しましょう。
となります。
ですので、今後、何らかの理由で置き換えが必要になった場合は、
- 置き換えした品番の打ち駒とメーカーの打ち機が工場にあるか
- 変更後の品番のデザインで問題ないか
をご自身で確認できれば、置き換えができます。
そこで、ここからは、モリトとYKKスナップファスナーのドットボタンをどのように使い分ければ良いのかや、2社で形が似ているドットボタンの品番を紹介していきますので、今後の発注に役立てていただけると幸いです。
ドットボタンとは
ドットボタンとは、衣類などに用いる留め具のうち、ボタンのような2つの部分をパチッと合わせて固定させるもので、何度でも自在に開け閉めできます。
詳しくは、アパレル資材辞典の「ドットボタンとは」をご覧ください。
ドットボタンとは
※本記事ではドットボタン=金属製のドットボタン でお話ししておりますが、プラスチック製のドットボタンもございます。
ドットボタンのメーカー2社
YKKスナップファスナー株式会社
メーカー名 |
YKKスナップファスナー株式会社 |
---|---|
URL | https://www.ykksnap.co.jp/ |
YKKスナップファスナー株式会社(以下YKK SF社)は、YKKの子会社です。YKKと聞くとファスナーのイメージが強いかと思いますが、スナップボタン、タックボタン、リベット等の服飾資材の製造販売をしているメーカーです。2000年から2005年までは、「YKKニューマックス社」という社名だったので、ニューマックスで記憶されている方もいると思います。
モリトアパレル株式会社
メーカー名 | モリトアパレル株式会社 |
---|---|
URL | https://apparel.morito.co.jp/ |
モリトアパレル株式会社(以下モリト社)は、ハトメ、ホック、面ファスナーなどの服飾資材を中心に、製品・半製品のOEM生産、靴資材など幅広く企画開発を行っている服飾付属品の専門商社です。 創業からの主幹商品であるハトメ、ホックをはじめ「とめる・あわせる・高機能」をテーマとした様々な服飾付属品(パーツ)を主にアパレル業界(カジュアル、紳士、婦人、ユニフォーム、ワーキングウェア)へ幅広く販売しています。
モリトの打ち機は海外で生産しているドットボタンにも対応していることが多いため、海外の工場はモリトの打ち機を持っているケースが多いです。
メーカーの選定方法
ドットボタンをどちらのメーカーで購入するかは、以下の5点を参考にしてみてください。
持っている打ち機の種類で選ぶ
ドットボタンは、糸で縫い付けるタイプのボタンと違って機械で打ちます。4つのパーツで1セットで、打ち機と呼ばれる専用の機械で打ちますが、この打ち機にはYKK SF社製とモリト社製があり、それぞれ他社のパーツを打つことはできません。(海外製のドットボタンは、モリト社の打ち機で打てるように作られていることがほとんどです。)
工場にある打ち機を確認
縫製工場でドットボタンを打つ予定であれば、縫製工場にある打ち機のメーカーを確認してみてください。
どちらかしか持っていない場合は、そのメーカーでドットボタンも揃えると良いでしょう。
新たに打ち機買うなら
どちらも持っておらず、新たに打ち機も購入したいという場合は置き場所と予算に応じて選ぶことがおすすめです。
YKK SF社の打ち機は足踏み式で、最も小さいサイズでも、約高さ1m×横57cm×奥行45cmほどあります。モリト社の打ち機はハンドプレス式でサイズも、約高さ40cm×横21cm×奥行10cmほどなのでコンパクトです。
調べるとモリト社の打ち機はネットで約2-3万で販売されていましたが、YKK SF社は一般販売はしていません。ですがYKK SF社は打ち機のレンタル契約もあり、サービスエンジニアが工場まで伺ってメンテナンスと技術サポートをしてくれるというメリットがあります。
持っている打ち駒の種類で選ぶ
ドットボタンを打つには、メーカーの打ち機だけでなく、打ちたいドットボタンの品番・サイズ専用の打ち駒が必要になります。打ち駒は1つのパーツにつき1種類必要で、ドットボタンの場合は4つのパーツを組み合わせて1セットなので、打ち駒も4つ必要になります。
ドットボタン種類にもよりますが、打ち駒だけで約2-3万することもあるので、サンプルのために数回だけ打ちたいような場合だと、大きな出費になってしまいます。
前シーズンや他ブランドで使った実績のあるドットボタンだと、打ち駒を縫製工場が持っていることもあるので、持っている打ち駒の種類から、メーカーを選ぶというのも初期費用を抑えられるポイントになります。
欲しい数量で選ぶ
YKK SF社は基本的に100set以上からの受注になります。
ドットボタンは100set以上、10set単位での注文となり、100set,110set,120set…という単位でしか購入ができません。※パッキンは100pcs以上、100pcs単位になります。
それに対してモリト社は、1setあたりの値段は高くなるものの、1setから購入することができます。
「同じ種類を100setも要らないよ!」という方にはモリト社がおすすめです。
デザインで選ぶ
似たような形のドットボタンでも、YKK SF社とモリト社ではデザインが少し異なります。
例えばこちらの写真は、ドットボタンでよく使われるキャップパーツであるYKK SF社の「EJキャップ」とモリト社の「815A」を比較した画像です。若干ですが、モリト社の方が丸みのあるデザインになっていることが分かります。
続いて、ドットボタンの開閉する部分にあたる「ソケット(バネ)」の比較です。YKK SF社の「パーメックス」とその類似商品であるモリト社の「SELEX(セレックス)」を比べました。
YKK SF社のパーメックスの方が平たく、モリト社のSELEXの方が膨らみがあることが分かります。
このように若干ですがデザインが異なりますので、お好みのデザインによって選ぶのも良いですね。
YKK SF社は申請が必要なので注意
YKK SF社は、トラブルを防ぐために打ち機の設置の管理までしっかり行われていて、自社のドットボタンは自社の打ち機でしか打たないような仕組みになっています。
打ち付ける工程までしっかり品質管理ができる反面、新たに導入する場合は、どこのブランドがどの工場で使うのかを申請する必要があります。
パーツの名称
YKK SF社とモリト社で、ドットボタンのパーツの名称が異なります。発注の際は間違えても大体伝わることが多いですが、覚えておくと良いと思います。
パーツ画像 |
YKK SF社 | モリト社 |
キャップ | キャップ | |
ソケット | バネ | |
スタッド | ゲンコ | |
ポスト | ホソ |
似たドットボタンの品番
モリト社とYKK SF社で、似たようなデザインのドットボタンもあります。
- 先方の仕様書にはモリト社で書かれているけど、縫製工場にはYKK SF社の打ち機しかない…
- サンプル用としてYKK SF社のドットボタンをモリト社で代替したい
- モリト社を使う予定だが、社内に在庫があるのがYKK SF社なので、それで賄いたい
などと言う場面に遭遇したときに、どの品番がどの品番と似ているのかを分かっているとスムーズです。
キャップ
EJキャップ(YKK SF社)と8〇〇A(モリト社)
CZキャップ(YKK SF社)と8〇〇AF(モリト社)
下組
ミクレ(MI)(YKK SF社)と5BX(モリト社)
パーメックス(PX)(YKK SF社)と7301セレックス(モリト社)
まとめ
YKK SF社とモリト社のドットボタンは置き換え可能だが、デザインや購入条件は異なる
YKK SF社とモリト社のドットボタンには一部デザインの似た種類があり、置き換えることも可能です。
一からメーカーを選ぶ場合の選定方法としては、初期費用を抑える為にご自身の持っている打ち機や打ち駒の種類、デザインの好みに合わせて選んだり、数個使いたい程度であればモリト社のパーツ、打ち機をレンタルしたり、メンテナンスやサポートまでお願いしたい場合はYKK SF社のパーツを使うなど、上記でご案内した選定方法をご参考にお選びいただけると幸いです。
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