大きなクレームになる事も!? 生地の表(おもて)と裏(うら)の大切な話。

&CROP編集部の瀧澤です

“この生地どっちが表かわかりますか?” と良く聞かれます… 何時も “裏じゃない方~” と答えてため息をつかれる…ε=( ̄。 ̄  疲れるオヤジです(笑)。でも、あえて言わせてもらえば生地の表・裏を決めるのはその生地を作った人(メーカー)か生地を使う人ですから数多ある生地の裏表を私が把握している訳がないです。 そういえば学生の頃(半世紀ほど前の遥かなむかし)にはトレーナーやTシャツを裏返しに着るのが流行っていました。前置きが長くなりましたが “生地の表・裏は使う人が決めれば良い”しかし世間ではそうはいかないので当然流通している生地には便宜的に表・裏があります。そして私が取り扱っている生地は表地と呼ばれる服地が中心なのですが、弊社は服飾資材をメインに取り扱っているので裏地と呼ばれる生地にも色々な種類があります。ちなみに裏地は裏社会の人が着ている服の生地という意味ではありません(そんなことは言わんでも分かるワ!)。と言うことで今回は生地の表と裏裏地についての基礎的なことを解説しました。最後までお付き合いいただければうれしいです。

はじめに

原反の表示

最初に言っておくと「メーカー在庫生地の裏・表は原反や下げ札の表示を確認する」ことです。カットされた着分の場合や原反に表示が無い場合は生地メーカーに問い合わせするのが一番早くて正確です。とくに原反の場合は表示が無くても外側を表に巻いている(外表)か内側を表に巻いている(中表)かを聞くことで即解決します。着分などで表示が無くてどうしても裏表が分かりにくい場合は画像を送って確認してもらうか、それでもわかりにくい場合は裏表が分かるように表示したサンプルを送ってもらって確認する場合もあります。ただし、生地の表と裏で見え方が異なる生地の場合は製品を企画しているメーカーがどちらを表として意図しているのか(裏面を表使いする時には通常指示がある)を確認しておくことも必須です。また生地をバイオーダー(別注)で生産する場合にはどちらを表にするかを指定することも出来ます。その場合は素材や組織によっては傷や欠点が目立ちやすくなる場合もあるのであらかじめ生地メーカーにデメリット等を確認することをお薦めします。

生地組織と表裏

オックス(平織)の先染ストライプ  表(上)・裏(下)とも同じ見え方
3/3の綾組織の先染シャンブレー     左が表 右が裏
天竺組織 上が表・下が裏
フライス組織 表(上)・裏(下)ともに同じ組織

 

織・編物には生地の両面(表と裏)が同じ組織になる場合と表と裏で見え方(組織)が異なる場合があります。織物では平織組織の生地(ブロード・タフタ・オックス…等々)、編物ではフライス組織(ゴム編み・リブ編み)とパール編み(ガータ編み)は表と裏が同じ組織になるので基本的にはどっちを表に使っても同じ見え方になります。それ以外の組織では表と裏の組織が違うのでどちらが表かを決める(確認する)必要があります。一般的には「綾織の生地は綾目が右上がりの方が表」とか「サテン(朱子)組織は光沢のある方が表」などと言われますが、逆綾(左上がり)の生地やバックサテン(裏面がサテン組織)のようにアイテムや素材感によって表裏を設定している生地も多いので分からない時は確認する方が安心です。

検反・加工・仕上げによる表と裏

ポリエステルのタフタ(平織)左側がシレー加工面で光沢がある
スリーレイヤー(三層ボンディング)表(左)がナイロンタフタ 裏(右)がナイロントリコット

生地は染色や仕上げ整理の工程を経て検反(生地傷や染ムラ等の欠点を検査)後に出荷されます。傷がある箇所にはバノックと呼ばれる印がつけられ、また補修可能な場合には補修後に出荷される場合もあります。この検反工程は基本指定された生地の表面に対して行われるので、表に影響しない傷や汚れはカウントされないことが多いです。従って表裏が同じ組織の平織のような生地でも検反した側の面を表に指定しています。また撥水・起毛・コーティング…等々の加工によってどちらを表にするかが決まる場合もあるので組織が同じだからどっちを表にしても良いということにはならない生地の方が多いです。一例として、合繊のタフタに施されるシレー加工(熱と圧力をかけて気密性を高めて光沢を出す)では、通常はシレー(光沢)面を裏に使うことが多いのでシレー面が裏に設定されている商品が多いです。しかしメーカーや企画によってはシレー面を表使いするケースもあり、そういう場合は生地メーカーにシレー面(裏)を表に使った場合の問題やデメリットを確認の上で企画を進めるなどの配慮も必要になります。

柄のある生地の表裏

先染め生地の表裏

平織の先染め生地(チェック・ストライプ・シャンブレーなど)は両面とも柄の出方が同じなので特殊な加工がしていなければ基本的にはどちらを表に使っても同じですが綾織の先染め生地の場合は表と裏で柄の見え方が違います。通常は表から見たときに柄がハッキリ見えるように設計されています。それでもわかりにくい場合はやはりメーカーに確認しましょう。尚、先染産地(メーカー)では基本原反は外表に巻かれています。

プリント生地の表裏

ポリエステルの転写プリント 表裏がわかりやすい

プリントの生地は通常は柄をプリントしている面を表に使います。(バックプリントといってわざと裏面からプリントして使う場合もあります。)プリント面の方が、柄がハッキリ出ているので表裏が分かりやすい場合が多いですが薄地の手捺染の場合など生地への染料の浸透が良いと区別がつきにくい事もあります。プリントの場合も原則として原反は外表に巻かれています。

その他の見分け方

生地の耳穴で見分ける

この生地では針穴が凹(上)が表になります。

織物では仕上げの際に生地の両端(両耳)に針を刺してテンションを整えた時の穴が残っています。この穴の凹凸で表裏を見分けることも可能(一般的には凸;飛び出ている方が表、凹んでいる方が裏)ですが、生地の種類や仕上げ整理をする加工所によってもやり方が違い、全ての生地が同じではないので注意が必要です。同じ加工所の同じ生地を使っている場合には有効な見分け方と考えて良いですが、わからない場合はやはりメーカーに問い合わせする方が良いです。

 

起毛面で見分ける

ウールなどの起毛生地では起毛面が表の場合が多い

フラノやネルの生地は表面が起毛されているのが一般的ですが中には両面起毛のものあります。ウールのシャギー・モッサ・メルトンなどは起毛面が表、フリースも表起毛が一般的です。いずれにしても両面起毛の場合などは確認が必要です。

 

外表巻・中表巻

原反の巻き方には外側を表(外表:そとおもて)に巻く場合内側を表(中表:なかおもて)に巻く場合があります。尾州産地(羊毛を中心に生産する岐阜・名古屋の産地)では中表巻きと決まっていますが、それ以外の産地でも無地は中表に巻いてある場合が多いです(もちろん外表の場合もあります)。また先述したように先染織物やプリント生地は基本外表に巻いてある場合が多いです。いずれにしても原反には表裏の表示がされていることが多いのでまずは表示を確認し、もし表示が無く表裏がわからない場合には生地メーカーに問い合わせましょう。

 

生地の表と裏の2大原則

いつも使っている見慣れた生地ならば表裏の判断は比較的簡単です。もしわからない場合は生地メーカーに問い合わせる(原則1)のが正解です。そしてもう一つの原則は生地の表裏は使う人が決める(原則2)です。メーカーが裏としている側を表に使うのは使う人の自由です、しかし裏側を表に使う場合には生地の欠点が目立つ、傷が多い、機能性が劣る…などのデメリットがあることも理解しておく必要があります。例えば裏側に傷が多い生地を製品にした場合に製品を修整するコストが生じる場合や何らかの原因で顧客クレームになる可能性もあります。その際の費用負担は誰がするのかと言う問題になるケースもあるのでいずれにしても事前に確認しておくことが大切です。

 

 

裏地について

裏地は服やバッグなどの布製品には欠かせない生地資材です。ファッションアイテムの顔となる表地に対して総称して裏地と呼ばれますがとくに裏地となる基準があるわけではなくて衣類の脱ぎ着し易くする・製品のシルエットを整える・衣類が透けるのを防ぐ・保温効果を高める…等々の目的で様々な素材・種類・厚さの裏地があります。裏地については「&CROP内」の下記の記事リンクで詳しく解説されていますので興味のある方はぜひ参照してください。

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まとめ

表地と裏地と言っても何か厳密な規定があるわけでは無く、裏地をメイン素材として使う場合も表地素材を裏地に使う場合もあります。生地のどちらの面を表に使うのかも基本的には自由ですが商品として流通している生地には必ず表・裏があり、裏側を表に使用して製品で傷や汚れが発生した場合に生地メーカー側は修整費用を負担してくれない事もあります。また表・裏を間違って量産品が製造されてしまった場合の損失を誰が負担するのか責任の所在を問われるケースもあります。従って一般に言われている裏表の判別方法はあくまでも参考程度と考えて表裏の表示が無い場合や、わからない場合は必ず生地メーカーに確認しましょう。またアパレルメーカーが生地のどちらを表に指示しているのかの確認も必須です。思い込みを避けて面倒でも一に確認!二に確認!で無用なトラブルを防いで幸せに仕事しましょうね!最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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