キュプラ裏地とは

キュプラ裏地とは

 

名称(日本語/英語)

キュプラ裏地(読み方:きゅぷらうらじ) / cupra(cuprammonium rayon) lining

カテゴリ副資材
種類中カテゴリ(裏地)

概要

キュプラ裏地(日本語名・・・キュプラ裏地(読み方:きゅぷらうらじ)/英語名・・・cupra(cuprammonium rayon) とは、再生繊維の一種でコットン・リンター(綿花の種を包む産毛)を原料としたキュプラでつくられた裏地です。

コットンリンター画像
コットンリンター~旭化成株式会社HPより~

成り立ち

1897年にドイツのJ.P.ベンベルグ社で工業化された繊維で、「ベンベルグ」(旭化成)の商標でも知られています。原料を銅アンモニア溶液で溶解してコロイド状の粘液変化させて脱泡し、圧縮して細い繊維に再生させたものです。銅アンモニア(cuprammonium)法で製造されているのでcupra=キュプラという名前になりました。

用途

 

衣類

ジャケットなどの裏地に使用される他、下着や肌着として利用されることが多いです。

ジャケットの裏地の画像
ジャケットの裏地の画像

魅力

すべりがよい

ジャケットに袖を通す画像

キュプラは繊維の断面が真円に近くなめらかですべりがよく、着用感が良いです。

ドレープ性

繊維の中にやわらかい部分とかたい部分がランダムに配置され、水分の重さも加わりバランスの良いドレープ性を感じられます。

発色性・光沢

繊維の中に極めて小さな水分の通り道が多く、染料を素早く吸い上げ、深く美しい発色性を有します。またキュプラには独特の光沢があり高級感を演出します。

夏は涼しく冬暖かい

キュプラは水分を多く含むため熱伝導率がとても高く、水分を介し肌表面の熱を素早く外へ逃げがすので、夏は肌にひんやり感を与えます。また冬は空気中の水分がキュプラに吸着することで、水分のエネルギーが熱に変わり発熱します。

制電性

キュプラの繊維内の水分を通り静電気を空気中に逃がします。また静電気を軽減することでほこりや花粉が衣服内に付着するのを防ぎます。

サステナブル性

キュプラは綿の種(コットンシード)に付いた産毛部分の”コットンリンター”を使用しています。このコットンリンターは、繊維が短く、綿糸には使用できないため本来であれば廃棄するものですが、その資源を有効活用しているという面でキュプラはサステナブル性の高い素材と言えます。

代表的なキュプラ裏地の種類

代表的なキュプラ裏地の種類をご紹介させていただきます。

タフタ

タフタ裏地の画像
タフタ裏地

様々なシーズンに対応可能なスタンダードな裏地です。特にキュプラのタフタ裏地ではフラットな組織がその風合いの柔らかさや手触りの良さを際立たせてくれ、ジャケットやスカート、ワンピース、パンツなど幅広く使用でき高級感を演出してくれます。

シャンタン

シャンタン裏地の画像
シャンタン裏地

横糸に節糸を使用したシャンタン裏地でキュプラの糸で滑りがよく、ソフトですがハリもあり、ジャケットやコート、スカートの裏地におすすめです。

ツイル

ツイル裏地の画像
ツイル裏地

美しいツヤとハリがあり綾目でほどよい厚みがあるため秋冬のウェアに活躍する裏地です。上品で高級感があり、スーツやジャケット、ワンピース、パンツなどにとても合います。

サテン

サテン裏地の画像
サテン裏地

シルキーで優雅な光沢と美しい色彩が魅力的な高級感のある裏地です。ジャケットやボトムスの裏地としても、またインテリア向けや資材向けなどとしても人気があります。

トリコット

トリコット裏地の画像
トリコット裏地

トリコット編みで目があいており通気性がある為、春夏向けアイテムのジャケットやニットの裏地などに適しています。またベンベルグ混のトリコットは特有のざらっとした肌触りをシルキーなベンベルグの糸でやわらげてくれるのでとても柔らかい触り心地で気持ちよいです。

ジャガード・柄物

柄物裏地の画像
柄裏地

他の素材の裏地と同様に織で柄を表現したジャガード裏地や先染めのストライプやチェックなどの柄物のバリエーションもあります。キュプラ独特のツヤやしなやかさが柄と組み合わさることが更なる高級感を感じることができます。

代表的なキュプラ裏地のサプライヤー

貝ボタンの代表的な資材メーカは以下

  • 旭化成アドバンス
  • エルトップ
  • ジャルコ

旭化成アドバンス

旭化成アドバンス株式会社HPの画像
旭化成アドバンス株式会社HPより

メーカー名

旭化成アドバンス株式会社

URL

https://www.asahi-kasei.co.jp/advance/jp/

旭化成アドバンス株式会社

旭化成株式会社の子会社で繊維、樹脂化学品、建材事業中心の販売会社です。繊維では世界で唯一ベンベルグ®の商標でキュプラ裏地を生産している旭化成株式会社の子会社です。旭化成の開発せんいを中心に、アパレル向け裏地や表生地などを取り扱っています。

エルトップ

株式会社エルトップHP TOP画像
株式会社エルトップHPより

メーカー名

株式会社エルトップ

URLhttps://www.l-top.co.jp/index.html

エルトップは甲斐絹で有名な山梨県富士吉田産地で生産した高級先染織物を販売している会社です。旭化成株式会社、蝶理株式会社を株主に持ち、自然環境に優しいエコロジー素材ベンベルグ(キュプラ)を使用した織物「LOISIR®」(ロアジール)を中心に販売しています。

ジャルコ

株式会社ジャルコHP TOP
株式会社ジャルコHPより

メーカー名

株式会社ジャルコ

URL

http://www.jalco.jp/

株式会社ジャルコは1933年創業のキュプラを含めた高級裏地や生地の企画、生産、販売の会社です。先染め織物の産地である富士吉田市の工場と直接取引をすることで小ロットで別注生地の生産ができることが特徴です。

キュプラ裏地の取り扱いや縫製時の注意点

キュプラ裏地の洗濯方法

キュプラは洗濯によって縮みが発生したり、シワになりやすいようなデリケートな素材です。加工や混紡で洗濯ができる場合もありますが、基本的には洗濯機での洗濯は避けて手洗いかドライクリーニングにしていただくことをお勧めします。

摩擦に注意

キュプラは摩擦に弱くとても毛羽立ちやすい素材になります。こすれやすい箇所にキュプラの裏地を使用することは避けましょう。また何か液体をこぼして拭く際に、力をいれてこすっても毛羽立ってしまいますし、洗濯機での洗濯中にこすれてしまうことで毛羽立ってしまうことも考えられますので、やはり洗濯機での家庭洗濯は避けましょう。一度毛羽立ってしまうとブラシを掛けてもなかなか元には戻りませんので注意が必要です。

 

色落ち、移染に注意

他の裏地と同様ですが、表生地と反対色の裏地を使用して裏地から表生地に色が移ってしまったり、下に着用する服に色が移ってしまうことがあります。使用する裏地の色の組合せや染色堅牢度は確認しておきましょう。

 

長納期に注意

キュプラの糸はベンベルグ®の商標で旭化成株式会社でしか生産していません。2022年4月に宮崎県にある旭化成のベンベルグ工場で火災が発生、ベンベルグの糸が供給出来ず、工場の復旧や再稼働などを含めてその後数年に渡りキュプラ裏地の生産が追い付かない状況に陥ってしまいました。情報を確認しながら供給状況を把握しておくことをおすすめ致します。

 

同一反内での裁断の推奨

他素材の裏地同様ですが、1着の製品の中で裏地のパーツが身頃、袖など複数になる場合、同一原反内で裁断して使用することをお勧めします。原反が違うと生産ロットが異なることもあり、同じ色でもロット毎の色差が生じてしまう可能性があるので要注意です。

おすすめキュプラ裏地

AK750ニューベンヒット

密度を高く織られた定番的なキュプラのタフタ裏地です。平織りで比較的薄い為、キュプラ特有のしなやかさやドレープ性感じることができます。メンズのスーツやジャケットの裏地、レディースのワンピースやスカートなど幅広くご利用いただけます。

AK1300ベンシャンブレー

AK1300ベンシャンブレーツイルサンプル帳の画像
AK1300ベンシャンブレーツイルサンプル帳
シャンブレー調のキュプラツイル裏地です。優雅な色合いやシャンブレーの色変化が特徴で、中厚手の厚みは秋冬向けの裏地として最適です。

AK604ペーズリーシャンブレー

AK604ペイズリーシャンブレーの画像
AK604ペイズリーシャンブレーの画像
AK604ペーズリーシャンブレー裏地の画像
AK604ペーズリーシャンブレー裏地の画像

ジャガードで表現した細かいペーズリー柄が上品なキュプラ裏地。またシャンブレー独特の優雅な色の変化もきれいで、裏地で使用することで高級感を醸し出します。

まとめ

美しく機能的なキュプラ裏地

ご紹介してきたように、キュプラは見た目的にも機能的にもとても素晴らしい素材です。特に裏地として使用することで、服の完成度をワンランク押し上げてくれます。洗濯を含めた取扱いには気を付けなければいけませんが、それを差し引いたとしても多機能で、ポリエステルの裏地などと比べると価格は高いですが、それを補って余りあります。魅力的な製品にする為に是非キュプラ裏地をご検討ください。