&CROP 編集部の野崎です。
最近アパレル業界でも「SDGs」「サスティナブル」という言葉をよく耳にしますよね。
サスティナブルを意識した企画をやりたい!と思いながらも、「どんな種類があるのか?」「何から始めれば良いのか?」「資材の選び方は?」等、分からないことが多すぎて取り掛かれない・・・という方も多いのではないでしょうか。
今回のシリーズでは、サスティナブルな取り組みとして挙げられる代表的な種類と、アパレルでそれらを採用した事例をご紹介します!基本的な知識と、他社で行われている取り組みを知ることで、自社の取り組みのアイデアづくりに活かしてみてください。
ご紹介するサスティナブルな取り組み4項目
こちらの記事では4つの中でも「生分解」についてお話しいたします。
アパレル業界で使われるサスティナブル認証について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
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生分解とは?
生分解とは、微生物の働きにより分子レベルまで分解し、最終的には炭酸ガスと水になって自然界に循環する性質のことです。基本的にオーガニックコットンなどの天然繊維は生分解ですが、生分解性のあるプラスチックもあります。生分解性プラスチックは、下記のような問題を解決できるのではないかと期待されています。
プラスチックと環境問題
マイクロプラスチック問題
通常のプラスチックは、焼却しない限りは分解されずに自然環境中に残ります。木材などの天然物であれば微生物が分解してくれますが、プラスチックは水や紫外線によって細かく粉砕はされても、分解はされないため、結果的に微細化して回収が難しくなってしまう問題があります。
目視でも分からないような小さなマイクロプラスチックが回収できなくなると、そのマイクロプラスチックを魚食べ、その魚を別の魚が食べ・・・という様に、どんどん生物濃縮が進んでしまい、最終的に生態系や人体に悪影響を及ぼすと言われています。
廃棄プラスチック問題
1950年から2015年までの間で、焼却処理されたプラスチックの量は7億トンとも言われています。7億トンものプラスチックを焼却すると、莫大な量の二酸化炭素が発生します。二酸化炭素は「温室効果ガス」の一種で、地球温暖化を促進させてしまいます。従って、焼却が必要なプラスチック(廃棄物)を増やすことは、地球温暖化を進めてしまう原因にもなります。
※参照:三菱総合研究所 https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20190408.html
生分解の種類
「生分解性」とひと言で言っても、どんな環境でも土に還る(炭酸ガスと水に分解される)訳ではありません。
生分解の中にも種類があり、
- 土壌
- コンポスト(高温多湿)
- 水環境(海洋)
などに分けられます。「生分解だから」といって土に埋めておけばすべて分解される、という訳ではないのを覚えておいてください。
生分解とバイオマスの違い
生分解=分解されるプラスチック=自然の原料でできている?=バイオマス、と考えられることがありますが、それは違います。
生分解は、炭酸ガスと水に分解される性質のことですが、バイオマスの素材を使っていないプラスチックでも、炭酸ガスと水に分解される種類があります。またその逆で、バイオマスの素材を使っていても、プラスチックに作り替える過程で天然資源としての性質を失っているので、生分解の性質を持たないバイオマスプラスチックもたくさんあります。
そのため、種類としては
- 生分解性プラスチック(バイオマス資源を使っていない)
- バイオマスプラスチック(生分解はしない)
- 生分解の機能を持つバイオマスプラスチック
の3つがあると理解してください。
生分解性のあるアパレル資材
生分解性プラスチックは、農業用ネットやビニール、釣り糸やゴルフのティー、BB弾などにも使われています。これらの製品は、自然の中で使用され、使用寿命が短く、失くなってしまうこと多いため、生分解性プラスチックだと自然界でもそのまま分解されゴミとして残ることが無く、都合が良いからです。
つまり、前提として「生分解」という性質は、自然の中で使うもの(失くしてしまいやすいもの)・使用される寿命が比較的短いもの に適していて、長く着られることを目的とした洋服のような製品にはあまり適しません。後ほど詳しく紹介しますが、アパレル製品に「生分解」を採用してサスティナブルを謳う場合は、その製品を生分解させるまでの流れも、製品の販売と一緒にに確立する必要があります。
そのことを踏まえたうえで、生分解性のあるアパレル資材をご紹介します。
オーガニックコットン
オーガニックコットンを含め、綿繊維は天然繊維なので、基本的に生分解性があります。※特殊な染色や加工を施した場合はこの限りではありません。
オーガニックコットンの資材はこちらの記事でご紹介していますので参照ください。
アパレルサスティナブル基礎講座②オーガニックとは?
リヨセル
リヨセルは、木材パルプなどから採取した繊維(セルロース)を化学処理で溶かして紡糸し、繊維化させたものです。分類上は化学繊維(再生セルロース繊維)となりますが、原料が天然物なので、生分解性があります。
アパレル資材での活用例としては、リヨセル繊維を使ったネームが挙げられます。生分解性がある=長期保存には向かないため、シーズン別注(オリジナル)等のネームにおすすめです。
製品袋
製品が店舗に入荷してくる際に使われる製品袋(納品袋)や、製品販売用のパッケージ袋も、生分解性のあるタイプがあります。
アパレルで生分解性のある素材を使った取り組み例
アパレルで生分解性のある素材の例を探したところ、生分解性を全面に打ち出しているブランドはほとんど見つかりませんでした。オーガニックコットンなどは天然繊維でできているので生分解性も付与されるというものはあるものの、天然繊維以外の生分解性の素材はあまり使われていません。これは、それらの製品を回収する仕組み(コンポスト等)がまだ確立されていないからだと考えられます。
そんな中でも生分解性を訴求しているタオルがあります。
バイオワークス(公式HP)
バイオワークスは、アパレルメーカーではなく素材を開発・製造している会社です。
生分解性のあるポリ乳酸(PLA)という素材は従来からありますが、染色性が悪いことと熱に弱いことから、繊維業界ではあまり流通していませんでした。バイオワークスでは、このポリ乳酸の弱点を克服する植物由来の添加剤を開発し、「Plax Fiber」という改良ポリ乳酸の開発に成功しました。この新たな素材を使って、抗菌・消臭性に優れた肌にやさしいタオルを生産しています。
今後はコンポスト等の回収モデルも確立させる予定とのことです。
まとめ
生分解で環境にやさしい製品をつくるには
生分解を取り入れた製品づくりをする場合、「この製品のテープだけ生分解です」「生地は生分解ですが副資材は生分解ではないです」という様な作り方をしてしまうと、あまり意味がなくなってしまいます。というのも、生分解性のある製品は生分解をして初めて意味がある(サスティナブルである)と言えるからです。製品の一部にだけ生分解性のある資材を使うと、製品を回収した後に生分解性のある資材とない資材で分ける手間がかかってしまいます。
また、例え製品のすべてに生分解性のある資材を使ったとしても、その製品を他の服と一緒にごみ袋に入れて捨てていたら、結局焼却されてしまうので意味がありません。
生分解の機能を持つ製品を作るのであれば、それらを回収して企業で用意したコンポストで分解させる、もしくは消費者が製品を使わなくなったときに、積極的に「自宅で生分解させてみよう!」と行動できるような仕組みづくり(簡単なコンポストをセット販売・生分解後の画像を撮って投稿キャンペーン等)までセットで行う必要があります。そこまで行うことで生分解性を謳う意味が出てきます。
今回紹介した生分解性のあるアパレル資材は、弊社で取り扱っております。「資材が欲しい」「サスティナブル資材に関してもっと詳しく知りたい」という方は、こちらのお問合せフォームよりご連絡ください。