&CROP編集部の野崎です。
服を作るために必要なパーツのうち、ボタンやファスナー、テープなど、さまざまなパーツにブランドのロゴを入れることができます。その中でも、ファスナーの「引き手」は、服のファスナーを開け閉めするときに必ず触れる、大切なパーツです。ファスナー引き手にブランドロゴを入れたり、素材を変えたりするだけで、ぐっと“ブランドらしさ”を伝えることができます。
今回は、オリジナルのファスナー引き手を考えている方へ、ロゴが入れられるファスナー引き手の種類と、生産の際のポイントをわかりやすくご紹介します。初期費用やロットについてもまとめていますので「ちょっとこだわりをプラスしたい」「小ロットで試してみたい」というアパレルブランドの方も、ぜひお読みいただけたら嬉しいです。
ファスナー引き手の基本構造は2種類
引き手には、大きく分けて「スライダー一体タイプ」と「スライダーに後付けするタイプ」の2種類があります。
スライダー一体タイプ
ファスナーメーカー(YKKなど)に生産を依頼する、スライダーと引き手が一体になっているタイプです。後付けよりも比較的強度が高く、全体に統一感のある仕上がりが魅力です。
スライダーに後付けタイプ
スライダー本体に後から引き手パーツを取り付ける方法です。素材や形の自由度が高く、比較的小ロット対応もしやすいので、デザイン性を重視したいブランドにも向いています。
スライダー一体タイプ
- 基本の金属スライダー
- DSYGスライダー別注ロゴ入り
- プッシュオンスライダー(シリコン後付け)
基本の金属スライダー
最も一般的なのが、ファスナーメーカーで製作する金属製スライダー。メーカーで一体成型されるため強度があり、単価を抑えやすいのが特徴です。ただし、金属のため金型代が必要で、生産ロットもやや大きめになります。
また、ファスナーの種類(金属・コイル・ビスロン)やサイズ(3C・5Cなど)ごとに金型が異なるため、組み合わせによってロットが増える点にも注意が必要です。
- コスト(初期費用):金型代 約10万円〜
- ロット:約3,000個〜
注意点として、デザインを凝りすぎると、金属の体積が増え検針機に反応したり、複雑な構造のデザインは指が引っかかったりする場合があるため、安全性の確認が大切です。通常ファスナー納期は1か月~1.5か月程度ですが、別注スライダーを使用する場合はさらに時間がかかります。シーズンに合わせて発注するなら、余裕をもったスケジュール管理がポイントです。
DSYGスライダー別注ロゴ入り
スポーツウェアなどで人気なのが「DSYGスライダー」。金属と樹脂で構成され、樹脂部分にオリジナルのロゴを入れることができます。金属の重厚感を残しつつも、ロゴがさりげなく見えるバランスが絶妙で、スライダーが揺れにくく使いやすい点も好まれています。
- コスト(初期費用):金型代 約20万円〜
- ロット:約5,000個〜
注意点は、納期が長めな点です。別注スライダーを先に生産してからファスナー組立に入るため、余裕をもった手配が必要です。完成までに時間はかかりますが、「控えめだけどこだわり」を演出したいブランドにはぴったりです。
プッシュオンスライダー(シリコン後付け)
「プッシュオン」は、スライダーの形状自体は既製のものを使い、その上にシリコンカバーをかぶせるタイプです。このシリコン部分をオリジナルで成型し、ロゴやカラーを自由にデザインできます。立体的なロゴ表現ができ、カラーバリエーションも豊富。ゴルフウェアやアスレジャー系ブランドなど、高級感とスポーティさを両立したいシーンによく使われます。

- コスト(初期費用):型代 約10万円〜
- ロット:約3,000個〜
注意点としては、シリコン素材は高価で納期もやや長めになります。原料自体が高いため、数量が少ないと単価は高くなります。
スライダーに後付けタイプ
- 金属チャーム型の引き手
- 既製引き手+ロゴ加工
- 紐テープ引き手
- シリコン引き手
- 紐+ポリウレタン引き手
金属チャーム型の引き手
スライダーの穴に金属パーツを引っかけて使うタイプです。CAやZAといった後付け対応スライダーに合わせて製作します。スライダー一体型に比べると強度はやや劣りますが、ファスナーの種類やサイズを問わず使える汎用性が魅力です。

- コスト(初期費用):金型代 約10万円〜
- ロット:約3,000個〜
注意点としては、CAタイプは構造上外れやすい場合があるため、用途に合わせて選定を行ってください。ZAタイプのほうがやや丈夫です。


既製引き手+ロゴ加工
「まずは少量から試してみたい」というときにおすすめなのが、既製の金属引き手にロゴを加工する方法です。アイリスなどのパーツメーカーが展開する定番引き手に、レーザー刻印やバンピーレーザー(凹凸加工)でブランドロゴを入れることができます。

- コスト(初期費用):金型不要(加工費のみ)
- ロット:100個〜対応可
注意点としては、1個あたりの単価は高めです。500〜1,000個程度作る場合は、金型から製作したほうがコストを抑えられます。初期投資を抑えながらブランドロゴ入りを試せるので、立ち上げ間もないブランドにもおすすめです。
紐テープ引き手
スライダーに紐を通して、縫い留めたり結んだりするタイプです。素材の選択肢が広く、ナイロン・ポリエステル・コットンなどから選べます。ジャガード織りやプリントでロゴを入れることも可能です。
- コスト(初期費用):ジャガード型代 数万円〜
- ロット:内容により変動(例:プリントなら小ロット対応可)
注意点として、紐の端はヒートカットや高周波カットでほつれを防止してください。素材によっては色ブレや収縮もあるため、サンプル確認をおすすめします。軽やかでカジュアルな印象を出したいときにぴったりです。
シリコン引き手
柔らかく安全性が高い素材で、子ども服やスポーツウェアに使われることが多い引き手です。立体ロゴやカラフルな表現もできるため、機能性とデザイン性を両立できます。

- コスト(初期費用):型代 約10万円〜
- ロット:約3,000個〜
注意点として、白は汚れやすいのと、シリコン素材は静電気でホコリがつきやすいです。また裂け防止のため、厚みや形状に配慮が必要です。
紐+ポリウレタン引き手
紐の先端にポリウレタン成型のパーツをつけたタイプです。グローブをつけたままでもつかみやすく、アウトドアやスキーウェアなど機能性ウェアに多く採用されています。
- コスト(初期費用):型代 約5〜10万円
- ロット:約5,000個〜(海外生産)
注意点としては、国内生産は少なく、中国や台湾での製作が中心です。輸送期間も含めたスケジュール設計が必要です。軽量で検針機にも反応しないため、安全性の面でも安心して使えます。
まとめ
ファスナーの引き手は、ほんの数センチのパーツですが、洋服の脱ぎ着の際に手に触れるからこそ、服の印象を大きく左右します。既製品にロゴを刻むだけでもブランドらしさが伝わり、別注で作り込めば唯一無二の存在感になります。予算やロットに合わせて、オリジナル引き手の作成を検討してみていただけたら嬉しいです。
&CROPを運営している株式会社クロップオザキでも、ファスナー引き手をはじめとしたオリジナル資材の生産を承っております。「自分たちらしい引き手を作ってみたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。