&CROP編集部の野崎です。
皆さまは、買ってきたファスナーの長さが合わなかった…という経験はありませんか?手芸店では長いファスナーを短く調整してもらえるサービスがある店舗もありますが、実は家庭でも長さの調整をすることができます。
私たちアパレル業界の「付属屋」は、基本ファスナー加工(長いファスナーを短く調整する加工)は長いファスナーを短く加工してくれるような問屋さんに依頼したりするのですが、急ぎのサンプル分は当社で加工することもあります。そこで今回は、当社のスタッフが代々受け継いできた、「世界一やさしいファスナーの長さ調整方法」を写真付きで分かりやすく解説していきたいと思います。
※今回使用しているファスナーは日本で90%以上のシェアを誇るYKKのファスナーです。
ファスナーの基礎知識
まず、ファスナー加工の解説に必要な基礎知識をご紹介します。
ファスナーの長さを短くする=ファスナーを詰める
アパレル業界では、ファスナーの長さを短く調整することを「ファスナーを詰める」と言います。またそこから派生して、ファスナーを短くする加工のことを「詰め加工」と言います。
ファスナー各部の名称
詰め加工を解説する前に、ファスナー各部の名称についてご紹介します。
- エレメント…務歯(むし)とも呼ばれ、かみ合うことでファスナーの働きをします。
- テープ…ファスナーの生地の部分です。
- スライダー…ファスナーを開閉するときにエレメントをかみ合わせる役目をするパーツです。
- 上止め(うわどめ)…スライダーが上から抜けないようにおさえるためのパーツです。
- 下止め(したどめ)…スライダーが下から抜けないようにおさえるためのパーツです。
ファスナーの種類は大きく分けて3種類
ファスナーの種類は、大きく分けて3種類あります。
金属ファスナー
金属ファスナーとは、エレメント(務歯)が金属でできているファスナーです。ジーンズやパンツ、カジュアルなアウターなどに使用されます。
コイルファスナー
コイルファスナーとは、樹脂をコイル状に配置してエレメントを形成しているファスナーです。柔軟で加工もしやすいのが特徴で、衣類だけでなくポーチや鞄などにもよく使われています。
ビスロンファスナー
ビスロンファスナーとは、樹脂をテープに射出成型することでエレメントを形成しているファスナーです。金属・コイルファスナーと比較してエレメントの見えている面積が大きく、おもちゃのようなポップな印象があります。
ファスナーの詳しい説明に関しては、こちらの記事をご覧ください。
ファスナーとは
基本の詰め方は同じですが、細かい部分が少し異なるため、本記事ではそれぞれの加工方法をご紹介していきます。
使う道具
ファスナー詰め加工に必要な道具は以下の通りです。
- メジャー・定規:ファスナーの寸法を測る
- ペンチ:上止めを固定する(※ビスロンファスナー・金属ファスナーのみ)
- 目打ち:カットしたエレメントを取り除く(※コイルファスナーのみ)
- くい切り:エレメントをカットする
- ピンキングばさみ:テープをカットする(※なければ、ハサミ・ライターで代用可)
ファスナーの長さを短くする方法
ここから、ファスナーの長さを短くする方法を手順を追って解説していきます。
1、調整したい長さを測り、印を付ける。
ファスナーの寸法を測り、調整したい長さ(加工後の長さ)に印(しるし)を付けます。今回は、20cmのファスナーを15cmに調整していきます。
ファスナーの長さの測り方
ファスナーの長さは《下止めからスライダーの頭端まで》を測ります。
ワンポイント
印をつける際は、ファスナーの裏側に付けておくと目立ちにくいです。
2、エレメントを外す
印をつけた部分より上のエレメント(使わない部分)を2~3cmほど外していきます。外し方はファスナーの種類によって異なるので、それぞれご説明します。
コイルファスナー
コイルファスナーは、1本の樹脂がコイル状に縫い込まれた構造をしています。くい切りを使い、テープを切らないように気を付けながらエレメントの先端をカットします。
ワンポイント
テープを親指で持ち、コイル部分を押し出すようにするとエレメントが飛び出します。飛び出したエレメント部分をカットすると誤ってテープを切ってしまうことを防ぎやすいです。テープを切ってしまうと、そこからほつれてしまうので注意が必要です。
先端が切れたエレメントの内側にループ状の樹脂が残っているので、目打ちを使って取り除きます。ループの穴に目打ちを通して引っ張ると綺麗に取り除けます。
ビスロンファスナー
ビスロンファスナーは、テープに射出成型でつくられたエレメントが固定されています。コイルファスナーのように縫い込まれているわけではないので、食いきりでエレメントを掴み、引っ張ると、エレメントを外すことができます。
ワンポイント
エレメントが写真のように残ってしまった場合は、手で軽くこすり落とすと綺麗に取ることができます。
金属ファスナー
金属ファスナーは、金属のエレメントがテープにがっしりと挟み込まれた構造をしており、3種類のファスナーの中でもっともエレメントを外すのが難しいです。
まず、くい切りを使ってエレメントの先端部分をカットします。
ワンポイント
テープを切ってしまうと、そこからほつれてしまうので注意が必要です。エレメントをまとめてカットしようとするとかなり力が必要になります。一つずつ、くい切りでつまんでカットすると、切りやすいです。
エレメントの先端がカットできたら、くい切りを使って、エレメントの【コの字】を広げるようにして外します。手首をねじるようにすると外れやすいです。
3、上止めを付ける
エレメントを外した箇所に、上からスライダーが抜けないように上止めを付けます。上止めは2タイプあり、ファスナーの種類によって使い分けます。
- ツメタイプ:コイルファスナー
- コの字タイプ:ビスロンファスナー・金属ファスナー
コイルファスナー
コイルファスナーの上止めにはツメタイプを使います。まず、ファスナーの裏側からエレメントを包むようにしてツメをテープに刺します。
ツメは、テープ側が2本、エレメント側が1本になるように刺します。
刺したツメを、ペンチを使って内側に折り畳みます。ツメが引っ掛からないように、仕上げにトンカチで上止めを叩くこともあります。
ワンポイント
ツメがファスナーの表、金属の面が裏になっているのが正解です。
ビスロンファスナー・金属ファスナー
ビスロンファスナーと金属ファスナーの上止めには、コの字タイプの上止めを使います。テープを上止めで挟み込み、ペンチを使って固定させます。
4、テープをカットする
ピンキングばさみを使ってテープをカットします。ピンキングばさみを使うことでテープの先端がほつれにくくなります。ピンキングばさみをお持ちでない方は、通常のはさみで切ってからテープの端をライターで軽く炙ると、溶けてほつれにくくなります。
ワンポイント
市販のファスナーは、上止めから約2cmテープを残してカットされています。2cmほど残しておくと扱いやすいです。
カットができたら完成です。
まとめ
ファスナーの詰め加工解説、いかがでしたでしょうか。自分でファスナーの長さ調整ができるようになると、自宅に余っているファスナーや、寸法を間違えて購入してしまったファスナーも使えるようになるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
ファスナーの詰め加工を動画で見たい!という方は、こちらをご覧ください。
当社では、法人のお客様であれば小ロットからファスナーの手配も可能です。手芸店にはない寸法でも0.5cm単位で手配可能です。「ファスナーを相談しながら選びたい」という方はぜひご相談ください。