テキスタイルのテクスチャー textileコラム④

 

テクスチャ―のある織物画像

&CROP編集部の瀧澤です

テクスチャー(texture)と言う言葉にはいろいろな意味があるようです。質感・手触り・風合い・感触・食感・構造や組織、音楽ではメロディーやリズムを組み合わせた効果やパートをテクスチャーと言ったりもするので私たちが五感で感じられる触覚すべてがテクスチャーと言う言葉には含まれている気がします。そしてこのコラムのタイトルでもあるテキスタイル(textile)デザインの表現にもテクスチャーと言う言葉が良く使われます。テキスタイルとテクスチャーは語感も似ていますが、どうやら語源をたどるととても近い言葉のようです。今回はテキスタイルとその表現や風合いを表すテクスチャーと言う言葉の意味や関係について探ります。

洋書の画像

TextileとTextureの語源

テキスタイルデザインを勉強していた当時(30年位大昔)はテクスチャーという言葉に頻繁に出会いましたがその後服地の提案や販売をしていて使うことはほとんどないので、あまり一般的な表現ではないのかも知れません。しかしテクスチャーはテキスタイル(生地)の表面感・素材・手触り・色・組織・落ち感やハリ感・匂い…等々を総合的に表しているのでテクスチャーはテキスタイルの表現そのものと言う感じがして語源を調べてみると「テキスタイル」「テクスチャー」、さらに「テキスト」と言う言葉もラテン語の織るという意味につながっていることを知りました。語源英和辞典によるとtextileはラテン語texo(織る)+-ills(されたもの)が語源で“織られたもの”と言う意味。ちなみにtexoは印欧語根のtekから派生した言葉で技術と言う意味の古代ギリシャ語tekhneも同じ語源から来ているそうです。ちなみにtekhneから派生した言葉にはtechnical/technology/architecture等の言葉があり技術や建築の様な言葉が織る・編むというような人類にとって根源的な行為から派生しているのが興味深いです。

テキスタイルのテクスチャー

テキスタイルプリント画像

テキスタイルの表現そのものとも言えるテクスチャーですが、テキスタイルがデザインされて最終的な生地として出来上るにはその表現(テクスチャー)を決定する複数の要素があります。これらの要素が複雑に影響し合って生地の見た目や手触りのような表現が決まります。ここではテキスタイルの表現(テクスチャー)を決める(影響する)複数の要素について思いつく範囲で書いてみたいと思います。

テクスチャーの構成要素

素材

繊維素材画像

素材はテキスタイルの表現を決める最も大きな要素です。天然繊維・化学繊維・植物繊維・動物繊維・合成繊維再生繊維などそれぞれの繊維が持っている特徴やフィラメント・スパン・繊維断面の形状、・光沢感・硬さ・柔らかさ・重さ繊維の太さ…のように天然の素材ではその素材が本来持っている表情や特性が人工繊維では人為的に設計された繊維の形状や機能性がテキスタイルのテクスチャーに大きく影響します。テキスタイルデザインではこれらの素材の持っている特性や機能を積極的に利用する意図で素材を選びます。繊維素材については下記のテキスタイルコラム②「繊維ってなに?」も参照して下さい。

繊維ってなに? textileコラム①  

 

組織

編物の組織

テキスタイルの組織はテクスチャーという言葉の表現そのものとも言えます。テキスタイルの組織には大きく分けると織物(おりもの)・編物(あみもの)・不織布(ふしょくふ)があります。織物の組織は経糸と緯糸の組み合わせによって作られ、平織・綾織・朱子織をベースに沢山の変化組織があります。編物は一本の糸をループ状に絡みあわせてつくられる組織で天竺・フライス・スムース・鹿の子のような丸編み(ヨコ編み)と複数の経糸によって縦方向に組織を作る経編があります。不織布はウールのフェルトが古くから用いられ最も良く知られています。ウールフェルトは羊毛の縮絨性を利用して繊維どうしを絡みあわせることで布の形状にして利用する方法で羊毛の利用方法としては織物よりも古いと考えられます。また現在では化学繊維を水流の圧力でからみ合わせたり、熱で圧着させてシート状にすることで色々な厚みの不織布がつくられていて、ティーバッグや梱包資材のような身近なところから産業用資材まで様々なところで使われています。織物の組織については下記の「布帛・織物とは」のリンクもあわせて参照して下さい。

布帛・織物とは

 

色(染色)

絵具の画像

テキスタイルと色表現(染色)は切り離して考えることができません。テキスタイルの色の表現には天然素材の色をそのまま生かした生成りや獣毛のグレーやブラウン、ブラックのようなカラーをはじめとして繊維の状態で色を混色するトップ染めやストライプ・チェック・シャンブレーなどの先染め。織りあがった生地の状態で染める後染めなどの染色方法があります。植物繊維・動物繊維・化学繊維等繊維の種類や性質によって染色方法や使用する染料が異なり、また発色や色の表現も変化します。素材と染色、そして以に述べる柄や糸、加工方法の組み合わせが無限のテキスタイル表現を可能にしています。染色についての基礎知識は下記のリンクも合わせて参照して下さい。

【テキスタイル初心者必見】染色の仕組みと代表的な染料9種類を分かりやすく解説

 

柄の表現

カーペットの柄

一般的にはテキスタイルデザインと言えばプリントなどの柄の意匠をイメージされる方が多いのではないかと思います。柄によるテキスタイルの表現も、もちろんテクスチャーを構成する重要な要素です。柄の表現方法には前述した組織によるものや先染めによる表現、そして伝統的な型染め・手描き・絞り染・ろうけつ染め・ブロックプリントそしてシルクスクリーンプリントインクジェットまで様々な表現方法があります。またカーペット等に用いられるつづれ織り、組織と色糸を組み合わせて柄を作る各種のジャカード織物など多種類の柄表現があります。

糸の表現

織物を構成している経糸と緯糸、編物を構成する編み糸。糸の太さや撚糸、さまざまな意匠糸など、テキスタイルを構成する糸と素材の組み合わせを工夫することでもテクスチャーの表現に変化をもたせることが出来ます。例としては強撚糸によるサマーヤーン・毛足のある糸やモール糸・ネップ糸・ムラ糸・杢糸・スペック染めの糸・絣糸・壁撚り糸・梳毛糸・紡毛糸・双糸・単糸・フィラメント糸・スパン糸等々…使用する糸によってもテキスタイルに無限の表現を与えることが出来ます。

加工によるテクスチャー

織り(編み)上がったテキスタイルは仕上げや加工によって風合いや見た目、機能等に変化をつけることが出来ます。テキスタイルの仕上げ加工にも素材や染工所・加工所によって独自の方法があります。一般的な例を挙げると大手の染工所が行っている生地を安定させて風合いを作る柔軟剤等による樹脂仕上げに始まって、ワッシャー仕上げ・天日干し・毛焼き・起毛・縮絨のような風合いをつくる加工。カレンダー・撥水・吸水・消臭・抗菌・形態安定のような機能を付加する加工方法がありこれらの加工もテキスタイルのテクスチャーに影響します。

ストーリー(まとめ)

古い本の画像

ストーリー?をテクスチャーと言って良いのかはわかりませんが、テキスタイルの持っているストーリーはテキスタイルを身に着け、身近に利用する人に大きな影響を与えるテクスチャーだと個人的には思っています。天然繊維であれば素材がどんな産地や環境で育ち、どのような工程を経て生地になったのか?化学繊維であればどのような機能やスペックがあって私たちに快適さや利便性を与えてくれるのか?テキスタイルの持っているストーリーを知ることはテキスタイルの価値を身近に感じる重要なテクスチャーであり、素材を提案する側にいる私たちにとってもストーリーのある素材を扱うことで環境を含めた様々な問題の解決につながるのではないかと思っています。

参考にさせていただいたwebサイト

語源英和辞典

 

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