衣料品の廃棄・リユース・リサイクルの現状

繊維製品における資源循環システム検討会報告書から

-資源循環における国内繊維産業の現状

&CROP編集部の瀧澤です。

いま、日本国内ではどのくらいの繊維製品が生産され、廃棄されているのか?持続可能性と言う言葉を頻繁に聞くようになって久しいですが、実際にはどのくらいの製品が生産されてどれくらいの製品がリユース・リサイクルされているのか?経済産業省がHPで開示している「繊維製品における資源循環システム検討会報告書」から近年の国内の繊維製品の生産量やリユース・リサイクルの現状はどうなっているのか?今回は報告書の前半部分の国内繊維産業の資源循環における現状を3分で読めるようにまとめたのでご一読下さい。

繊維製品における資源循環システム検討会とは?

経済産業省環境省が共同して2023年1月~9月に7回に渡り行われたのが「繊維製品における資源循環システム検討会」です。この検討会を受けて2024年の5月には資源循環の4つのフェーズ「回収」「分別・再生」「製造」「販売」における具体的な政策が検討され報告書が出ることになっています。先の検討会の報告書(38ページ)は経済産業省のHPでいつでも見ることが出来ます。※この記事の図表は繊維製品における資源循環システム検討会報告書から転載しています。リンクは記事の最後に貼っておきます。

〈国内の繊維製品市場〉

・市場規模の推移

日本の衣料品の市場規模を表した図

国内繊維製品の市場規模は1991年の15.3兆円をピークに2022年には8.7兆円まで縮小。一方、年間の供給点数は30年間で20億点から約1.8倍の37.3億点となり繊維製品の小売価格は大きく下落した。要因としてはファストファッションによる衣料品の低価格化と市場の9割以上を占める海外生産品の増加がある。

・繊維製品輸出の推移

日本からの輸出品目の推移を表した図

1998年以降の繊維製品(原料・糸・衣料品・その他二次製品)の輸出額はほぼ横這いで推移して来た。しかし、最も輸出の多かった生地の輸出は減少2020年には二次製品より下がり、生地輸出額は1998年の半分以下となった。衣料品の輸出は他国と比べても少ない。

・国内繊維産業の特徴と課題

国内繊維産業は分業構造と高い技術力による高品質な繊維製品の生産供給が特徴で、海外においても高い評価を維持してきた。しかし、分業構造がサスティナビリティにおけるグローバル認証制度などでマイナスとなっている部分がある。

〈繊維資源循環〉

・繊維製品資源循環の現状

2022年版 衣類のマテリアルフローを表した図

2022年の国内の新規衣類供給量は約79.8万トンで家庭や事業所から手放された衣類は約73.1万トンと推計されています。手放された衣類のうち17.4%(12.7万トン)が産業用資材等に利用され、18.1%(13.3万トン)がリユース。⇒残り64.5%(47万トン)は廃棄されている。

・リユースマーケットの推移

ファッションリユースマーケットの推移を表した図

年齢の若い層ほどリユースや良い製品を長く着る意識が高く、従来の古着市場に加えて国内大手アパレルでも自社製品を回収してリユースや産業資材へのアップサイクルなどの取り組みや衣料品を長く着るためのリペアサービスも行われリユース市場は拡大している。

2016年4600億円 ⇒ 2022年 9900億円

・繊維製品のリサイクル

国内では古くからウールや獣毛等の高級天然繊維原料のリサイクルや、未利用の落綿や屑綿を活用したリサイクルが行われて来ました。昨今では従来の自治体による故衣料品の回収に加えてアパレル企業による回収等さまざまな取り組みも行われるようになって来ています。しかしいまだに65%の繊維製品が廃棄されています。また企業ユニフォームなどはセキュリティの観点から焼却処分されるケースが多く回収率は0.6%程度にとどまっています。

〈まとめ〉

  • 国内繊維製品の市場規模は1991年の15.3兆円をピークに2022年には8.7兆円まで縮小。
  • 製品供給点数は30年間で20億点から約1.8倍の37.3億点となり繊維製品の小売価格は大きく下落。
  • 最も輸出の多かった生地の輸出は減少、2020年には二次製品が首位となり生地輸出額は1998年の半分以下。
  • 国内繊維産業は分業による高品質な繊維製品の生産供給が特徴、しかし分業構造がグローバル認証制度などでマイナスとなる面もある。
  • 2022年の衣類供給量は約79.8万トン。手放された衣類は約73.1万トン、うち17.4%(12.7万トン)が産業用資材等に再利用され、18.1%(13.3万トン)がリユースされているが、いまだ65%の繊維製品が廃棄されている。
  • リユース市場は2016年4600億円 ⇒ 2022年 9900億円と拡大している。

ここまで経済産業省の「繊維製品における資源循環システム検討会報告書」から資源循環の視点で国内の繊維産業の現状のポイントになる部分だけを記載しています。より詳細な内容に興味のある方は下記のリンクで報告書が開示されています。今回は3分くらいで読めるようにと現状についての大枠だけをまとめています。次回は繊維製品資源循環の現状の課題と対策について抜粋してまとめます。引き続きご一読いただければ幸いです。

※今回の記事の内容は図表も含め下記の報告書を参照しています。

経産省の報告書(PDF)は下記からもご覧いただけます

繊維製品における資源循環システム検討会…

 

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