✪ 要ブクマ!✪ アパレルやテキスタイルを学んでいる人向けに生地加工の種類を目的別に解説!

CROP編集部の瀧澤です

テキスタイル(生地)の「加工」と聞くとどんな事を思い浮かべますか?一般の消費者がアパレル製品を手にした時に製品に使われている布から「加工」という言葉を思い浮かべることはあまり無いと思います。しかし、アパレルや繊維の業界で生地を取り扱っていると「テキスタイル」と「加工」には切り離すことが出来ない関係があることがわかります…と言うか身に沁みます(笑)。例えば私たちが普段身に着けている服に使われている織物や編み物は織りあがった(編み上った)状態の「生機」まま服地などに使用することはほとんどありません。唯一の例外は皆さんも良くご存じのリジットデニムと呼ばれる生デニムくらいです。これらのデニムは織るときに糸に着けた糊が着いたままの硬い風合いでアタリやヒゲと呼ばれるデニムに特有の表情がつき易く、一度洗うと生地が大きく縮んだり歪んだりします。それは生デニムが普通の織物や編物では生機(きばた)と呼ばれる状態で製品に縫製されているからです。しかし一般的な生地は織り(編み)あがった後に「湯通し・糊抜き・精練などの加工」工程を経て生地をリラックスさせて歪みや縮み汚れなどを取り除いてからから必要に応じて染色などの加工がされて、最適な風合いになるように仕上げられてから出荷されます。このようにほとんどの生地に一般的に行われている加工を「整理加工」または「整理仕上げ加工」と言います。また生地の用途によって整理加工の工程で目的に応じた撥水性や防汚性・抗菌性・速乾性・吸水性などの「機能性を付加する加工」が行われ、この「機能性を付加する加工」にも多くの種類があります。また生地に染色やプリントの様に「生地の見た目やデザイン・風合いなどを変化させたり付加する加工」にも多くの種類があります。この記事では生地に施されている様々な加工を用途や目的別に解説しています。ブックマークに保存して必要な時に見返していただければ幸いです。

東海染工浜松工場 google map

加工の目的

前述したように生地の加工目的は大きく分けて以下の3つです。

①染色・整理・仕上げ加工

②機能性を付加する加工

③デザインや風合いに変化を与える加工

加工によっては複数の効果を狙って行われ場合や素材や他の加工との組み合わせによる相乗効果でテキスタイルの新しい価値や用途を広げることも可能です。

①染色・整理・仕上げ加工

染色加工は文字通り色を付ける加工で生地の状態で染色することを無地染め(piece dyed)反染と呼び、一般的に染色と整理仕上げは一貫工程で行われることが多いです。織り(編み)上がった生地は生機(きばた)と呼ばれ製織(製編)時の品質の安定や効率を考えて糸が糊付け(サイジング)されているため、通常の生地では最低でも湯通し・糊抜きして生地巾を整えて乾燥させて巻き取る工程が行われます。また生地で染色加工を行う前には染色時にムラになるのを防ぐために油や汚れを落とす精練という工程を経て下晒(したざらし)またはP下と呼んでいる状態にする必要があります。染色後には風合いを柔らかくする柔軟加工や生地にハリや安定性を与える樹脂加工、熱や蒸気で強制的に収縮させて安定させる加工や毛焼き・起毛加工などが必要に応じて行われます、それぞれの加工の種類や詳細については整理・仕上げ加工の種類の項を参照して下さい。

②機能性を付加する加工

 生地に機能性を付加する加工には多くの種類があります。撥水加工抗菌防臭加工ウォッシュ&ウェア(W&W)加工UVカット加工などは良く見かける馴染のある加工だと思いますがそれ以外にも多くの加工があってメーカーや加工所によって独自の名称で呼んでいる加工もあります。代表的な加工の種類と目的については機能性を付加する加工の項で解説しています。

③デザインや風合いに変化を与える加工

 生地に色を付ける染色プリント加工も生地にデザイン性を付加する最も代表的な加工です。加えて風合や生地の表面を調整するカレンダー加工・エンボス加工・起毛加工の様な加工からデザイン性に変化を与えるオパール加工・フロッキー加工・プリーツ加工などの加工、コーティング加工ボンディング加工のような加工まで多種多様な加工があります。これらの加工の種類や詳細はデザインや風合いに変化を与える加工の項を参考にして下さい。

※これらの加工は単独でもそれぞれ効果がありますが他の加工と組み合わせることで新しい機能やデザイン性や付加価値を発揮することもあります。

整理・仕上げ加工

湯通し・整理

着物や先染め織物など織り(編み)あがった生機(きばた)※を湯に浸して糊や汚れを落として地の目の縒れや歪みをリラックスさせて巾を整えて乾燥させる最も基本的な整理仕上げ工程でスレーキなども湯通し整理した状態で使われることが多く湯通しスレーキなどと呼ばれる。

※生機(きばた):織り(編み)上がったままの状態の生地を生機と言います。生機は製織する際に糸につけた糊や生地の油分、汚れなどが付着していて糊が残っているので風合いも硬くゴワゴワしている場合が多いです。

P下晒の見本帳画像

晒し・下晒・精練

無地の生機を染色できる状態にすることを晒(さらし)・下晒し(したざらし)・精練(せいれん)などと言い、下晒や精練されてすぐに染色やプリント加工ができる状態の生地をP下(ぴーした)・下晒(したざらし)と言います。P下にする工程では糊や不純物、汚れを取り除きますが生地の種類によっては毛焼きや漂白を行う場合もあります。綿(コットン)の生地では染色性や寸法安定性を向上させて光沢を出す目的で高濃度の水酸化ナトリウム溶液中で繊維を膨潤させるシルケット加工(マーセライズ加工)を行う場合もあります。

減量加工(げんりょうかこう)

染色前のポリエステルの生地を強アルカリ(苛性ソーダ)で加水分解させて繊維の表面を溶かすことで柔軟でシルキーな風合いにする加工を減量加工と言い、比較的硬い風合いのポリエステル生地をレディスのシャツ・ブラウス用途などに改質する目的で広く行われています。

防縮加工(ぼうしゅくかこう)

縮を防ぐ(防縮)にはあらかじめ生地を縮ませてしまう方法や樹脂などによって縮を防ぐ方法があります。とくに吸水性の高い綿などのセルロース系繊維では水分を吸収すると繊維がリラックスして膨潤し、乾燥すると縮む性質があります。したがってこれらの繊維では湯通しした後に生地の地の目を整えて熱を加えて乾燥させることで生地が収縮して製品になった後での収縮をある程度防ぐ事が出来ます。これをかなり強制的に行って縮率を安定させるのが後述するサンフォライズ加工です。

サンフォライズ加工(サンフォライズド加工)

おもに綿織物に施される加工で生地を強制的に縮めて製品になってからの縮を防ぐ加工、水蒸気でリラックスさせた生地を高温のシリンダーに挟んで圧力を加えて強制的に縮ませる加工。当初は製品での縮が大きかったデニムの縮を軽減する目的で多く用いられた。現在も厚手の綿生地などに広く用いられている。サンフォライズ加工の詳しい原理はこちらの生地がわかりやすく解説しているので参考にして下さい。問答無用で生地を強制的に縮めるサンフォライズド‥

縮絨加工(しゅくじゅうかこう)

ウールの強縮絨加工見本

 

ウールなどの獣毛がスケールの働きで毛と毛が絡まり合って縮むことをフェルト化と言います。このフェルト化する性質を利用して熱や圧力を加えてあらかじめ生地を収縮させて製品での収縮を抑えたり、生地の密度を高めたり、風合いを作る加工を縮絨加工と言います。縮絨がさらに進んだ状態がフェルトと呼ばれる状態です。

ウールの防縮加工

縮絨加工の項で述べたウールの縮絨はウール表面を覆っているうろこ状のスケールと呼ばれる表面組織によって起こります。このスケールを塩素などの薬品によって取り除くことでウールが洗濯などによって縮むのを防ぐのがウールの防縮加工です。この加工をすることでウールが本来持っている様々な機能を生かしたウォッシャブルな製品が多く生まれています。メリノウールのアンダーウェアなど防縮加工を施されたメリノウールによって編まれています。ただし生地ではなく原料の原毛の状態で加工されることがほとんどです。

シルケット加工(マーセライズ加工)

シルケット加工はおもに綿の糸や織・編み物に行われる加工で生地(糸)を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)水溶液に浸してシルクのような光沢や風合いに改質する加工でマーセライズ加工とも呼ばれます。シルケット加工のメリットには繊維にシルクのような光沢を与える・染色性の向上・強度や寸法安定性が増す・吸湿性の向上・防止しわ性の向上などがあげられます。より効果を引き出すために糸の状態でシルケット加工を施して製織・製編みした後で再び生地でシルケット加工をすることをダブルシルケット加工と言います。またシルケット加工は低温であるほど均質で高級感のある生地に仕上がると言われていて氷点下のシルケット液で処理する方法をコールドマーセライズと呼んでいます。浜松産地の山崎テキスタイルでは-300°という低温で処理しているそうです。

柔軟加工

最も代表的な柔軟加工は一般家庭でも行われている柔軟仕上げ剤による加工です。柔軟加工に用いられる柔軟剤にはシリコン樹脂や油脂によって繊維をコーティングして柔軟性を付加するものからノンシリコンの天然成分由来の物まで多種多様の柔軟剤があり素材や目的に応じて使用されます。加工所によっては独自の配合の柔軟剤を使用して差別化しているところもあります。また古くから和紙などにも行われて来た「砧打ち」のように生地を叩いて風合いを柔らかくするとても手間のかかる方法もあります。より手軽な方法としてはカジュアルウェアなどに良く用いられるタンブラー乾燥による仕上げ方法などもあります。

ニドム加工・ニドムバイオ加工

バイオ加工・ニドム加工については下記の記事を参考にしてください。

アパレル資材研究所 「&CROP」by株式会社クロップオザキ

繊維の業界にいると生地やデニムの加工などで良く目にするバイオ加工について調べてみると知らなかったことや間違って理解してい…

毛焼き加工

毛焼きはおもに綿や麻などのセルロース系繊維の表面の毛羽を焼いて表面をクリアーにする目的で行われる加工です。表面に毛羽のある素材は肌触りや柔らかく温かみがありますが生地の使用目的によっては表面の毛羽を焼くことでクリアな風合いに仕上げることが出来ます。また日本国内ではコーデュロイや別珍の様な毛羽のある生地でもクリアな仕上がりにするために毛焼き工程を行っています。現在は生地をガスバーナーの炎の中を高速で通して行うガス焼きと言う方法が主流です。

樹脂加工

生地の仕上げ工程では目的に応じて様々な種類の樹脂が使われます。その目的は生地の堅さやハリ感などの調整をはじめ縮やシワを防ぐ・形態を安定させる・ぬめりや光沢を与える等風合いの調整から機能性を付加する目的でも用いられています。

ワッシャー仕上げ・エアタンブラー仕上げ

先の樹脂などを使用した仕上げ加工に対してナチュラルでリラックスした雰囲気や風合いを求める場合には生地に洗いをかけて洗いざらした風合いに仕上げるワッシャー加工・ワッシャー仕上げが行われます。エアタンブラー仕上げも同様な仕上げ方法ですが一般的にはドラム式の乾燥機で空気を含ませながら乾燥仕上げする方法です。

天日乾燥仕上げ

ワッシャー仕上げなどの場合には乾燥もタンブラー乾燥機で熱を加えて生地を攪拌しながら乾燥させて仕上げますが素材によっては手間とコストのかかる天日乾燥で仕上げる方法が用いられる場合もあります。

機能性を付加する加工

撥水加工

耐久撥水加工生地

撥水(はっすい)加工は繊維表面をフッ素樹脂やシリコン樹脂でコーティングして水や汚れを弾く加工です。商品の濡れや汚れを防ぐ目的で行われる初期撥水と呼ばれる軽度の撥水から洗濯耐久性の高い耐久撥水や超撥水など製品の用途に応じて色々なレベルの撥水加工があります。撥水の仕組みは繊維の表面を分子レベルの微細な突起(撥水基:はっすいき)で覆って水滴を弾き。撥水の性能は撥水性の度合いや洗濯・クリーニングの耐久性をはっすい性試験「JIS L 1092」で評価(1~5級)するのが一般的です。

UVカット加工

UVカット加工は過度な紫外線(UV)を遮断する加工で、衣服を透過して肌へダメージを与える紫外線を吸収または反射する目的で行われます。反射させる方法は主にセラミックなどの紫外線を反射する物質の微粒子を繊維に練りこんだり織り込む方法が用いられ微粒子が光を乱反射させることで「防透け性」も兼ね備えている素材が多く、主に合成繊維に用いられます。加工によるUVカット加工は綿などのセルロース系繊維に用いられ紫外線を吸収する有機物(ベンゾトリアゾール(BTA)系)を繊維に塗布・付着させる方法が一般的に行われて来ましたが近年は難分解性・蓄積性などの慢性毒性の観点から規制が進んでいます。

抗菌防臭加工・制菌加工・抗ウイルス加工

SEKカラーマーク画像:一般社団法人繊維評価技術協議会

抗菌加工は抗菌剤の働きによって繊維表面に付着した細菌の増殖を抑制する機能加工です。抗菌剤を繊維に練りこむ場合と生地の仕上げ加工などの工程でコーティングするタイプがあり、細菌の増殖を防ぐことで防臭効果を発揮します。抗菌加工の効果は臭いの原因となる黄色ブドウ球菌に限定されますが一般用途向け制菌加工では黄色ブドウ球菌に加えて肺炎桿菌・緑膿菌・大腸菌・モラクセラ菌などの増殖を抑制し菌自体の活動を低下させる効果があります。また医療機関などで使用される繊維の場合はMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)にも効果のある特定用途制菌加工の繊維製品が用いられ、細菌を抑制する効果は抗菌加工 > 一般用途制菌加工 > 特定用途制菌加工となっています。抗菌加工の商標や特徴については日本化学繊維協会のwebページ抗菌防臭・制菌加工のリストも参考にしてください。また細菌は繊維に付着した皮脂などの汚れで増殖して臭いなどの原因となりますがウイルスは繊維製品に付着しても増殖することはありません。繊維製品の表面に付いたウイルスの数を減少させる目的の加工が抗ウイルス加工です。SIAA(抗菌製品技術協議会)では未加工製品の表面と比べてウイルスの減少割合が100分の1以下で洗濯などの耐久性試験後も抗ウイルス効果が確認できる製品に認定マークの表示を許可しています。

W&W加工(ウオッシュ・アンド・ウェア加工)

ノーアイロンシャツ画像

しわになりやすい綿などの天然セルロース繊維製品や生地に行われる加工でノーアイロン加工形態安定加工とも呼ばれます。ワイシャツなどアイロンがけという手間と時間のかかる家事労働から解放される画期的な加工で平成のはじめころに製品が発表されると一気に広まりました。縫製後の製品にホルマリンガスを浸透させてセルロース繊維を改質して形態を安定させるVP加工。液体アンモニア処理した生地を樹脂と熱で処理して形態を鑑定させる日清紡が開発したSSP加工(スーパーソフトピーチフェイズ加工)。また生地に樹脂をつけて高温で処理し半永久的なプレス状態にするPP加工(パーマネント・プレス加工)などの加工方法があります。

接触冷感加工

エリスリトールの結晶 Thomas Kniess – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44313896による

接触冷感効果を付加するにはQMAX値(最大熱吸収速度)の高い素材を用いたり、繊維形状のデザインによって冷却効果を発揮する合繊素材に用いられる方法があります。加工によって冷感効果を付加する場合には主にエリスリトールやキリシトールなどの糖が水分を吸収して溶けるときに熱を奪う原理「溶解吸熱作用」やゼオライトが水分を吸着する時に熱を奪う効果などを利用してシリコーン樹脂などと組み合わせて繊維に加工する方法が一般的です。接触冷感素材の種類と仕組みについては下記の記事も参考にしてください。

アパレル資材研究所 「&CROP」by株式会社クロップオザキ

クール・ビズやビジネス・カジュアル化を契機に国内の冷感素材の開発は一気に進み現在では合繊メーカーはじめ大手アパレルやアウ…

 

デザインや風合いに変化を与える加工

カレンダー加工・シレ―加工・チンツ加工

裏面シレー加工の見本画像 光沢のある裏面がシレー面

カレンダー加工シレー加工チンツ加工とも呼ばれる加工です。チンツ加工は元々は綿の平織物に蝋や糊を引いて加熱したローラーで圧力をかけ光沢を出す加工を指していたので綿や麻などの天然繊維に対して使われることが多いです。一方、シレー加工は合成繊維の高密度織物の目をつぶして気密性や防水性を高めたり織り目からダウンが抜けるのを防ぐ目的で樹脂コーティングと併用して行われるケースが多く、どちらも熱と圧力によって光沢や気密度を上げる目的で行われカレンダー加工とも呼ばれます。シレー加工では生地の使用目的によって光沢のあるシレー面を表に用いる場合を表シレー、裏に用いる場合を裏シレーと区別して呼ぶ場合もあります。

エンボス加工

中肉のポリエステル生地に3Dエンボス加工を施した画像

エンボス加工はいわゆる型押しで生地に凹凸を付ける加工です。生地素材以外にも身の回りの紙などの様々な物にエンボス加工が施されています。テキスタイル素材では主に熱可塑性のあるポリエステルやナイロンなどの合成繊維に施され、加熱した金属の型と弾力のある樹脂ロールの間に生地を通して加工します。金属のロール金型は高価なので良く使われる定型の幾何柄などの金型は加工所が所有している場合もあり、ブランドロゴなどのオリジナルの型を作成して加工することも可能です。また小さなパターンをエンボス加工することで生地の肌触りや通気性などをコントロールする目的で行うこともあります。

起毛加工

ポリエステルフリースの画像
※フリースは最も身近な起毛素材
ポリエステルフリースの画像 ※フリースは最も身近な起毛素材

生地の表面の繊維を針や突起物でかき出して表面を毛羽立たせる加工を起毛加工と言います。起毛にはウールなどの繊維を引き出す毛足の長いシャギー起毛や表面の繊維を微妙に毛羽立たせて桃の果実の表面の産毛のようにするピーチ起毛と呼ばれる起毛など、素材の種類や用途に応じたさまざまな起毛方法があります。一般的な起毛は布に針を植えた針布を用いることが多く針布起毛と呼ばれ。他にもナイロンブラシ起毛機や高級ウールに使われるアザミの実を使った起毛機などもあります。起毛によって得られる効果は手触りの柔らかさや保温性アップ、かさ高性アップ、見た目の変化などがあげられます。防寒衣料として広く普及したフリース素材も多くはポリエステルの編地を起毛して作られています。

オパール加工

ポリエステル・コットンの生地に水玉柄のオパール加工した生地の画像

オパール加工は生地に透かし模様をつくるプリントの応用技法です。一般的には酸に弱いセルロース系繊維と耐薬品性に優れたポリエステルなどの合成繊維を混紡・交織・合撚・カバリングなどの糸を使用した生地に硫酸を混ぜた糊をプリント後に熱処理をしてセルロース部分を炭化させて脱落させ模様を表現します。おもに毛足のあるベルベットやベロアなどに用いられることが多くプリント技法と組み合わせることで多様な表現が可能です。

フロッキー加工

フロッキー加工フロッキープリントとも呼ばれるプリント技法を応用した植毛加工です。ベースとなる基布にバインダー(接着剤)を塗布し、ナイロンやレーヨンの毛羽を静電気で立たせた状態で接着(植毛)します。植毛された部分はベルベットのような見た目と手触りの立体的な表現が可能で、プリント同様に型を使用することで複雑な柄を表現することもできます。以前はフロッキー部分が硬くなるデメリットがありましたが近年ではバインダーの進化によって非常に柔らかい風合いのフロッキー加工が可能になりました。

ラミネート加工・ボンディング加工

 

ラミネート加工は生地の表面にPVC(ポリ塩化ビニル)などのシートやフィルムを貼り付ける加工でバッグなどに多く用いられます。また合成皮革もラミネートやエンボス、プリントの技術なども組み合わせて作られています。一方でボンディング加工は生地と生地を貼り合わせる加工です。貼り合わせることで表面と裏面の表現に変化を持たせたり、機能の異なる生地を貼り合わせることで新しい用途を生み出すことも可能です。接着方法には点で接着する方法と面で接着する方法があり接着方法によって風合いや機能性も変わってきます。アウトドアーやスポーツに用いられるスリーレイヤー(3層)素材もナイロンなどの表地に透湿性のあるフィルムとトリコットなどの裏地を貼り合わせて作られています。

コーティング加工

ウール100%のBWに樹脂をつけてカレンダー加工した生地の画像

 

コーティング加工は生地の表面や裏面にアクリル樹脂やウレタン樹脂をコーティングして防水性や防風性を付加する加工です。ポリエステルやナイロンのタフタなどにシレー加工と合わせてアクリルコーティングを施した生地や裏面からウレタン樹脂をコーティング(2層)して防水効果を付加する方法などが見られます。最近ではあまり行わていませんが綿などの天然繊維の生地に蝋をコーティングしたパラフィン加工やオイルを浸み込ませたオイルコーティングの生地も防風・防水などの目的で作られていました。現在ではより手軽に出来る樹脂を用いたオイルコーティング風やパラフィンコーティング風の樹脂加工もあります。

リップル加工・塩縮加工

リップル加工を施した綿生地

リップル加工塩縮加工は同じ加工と言われることもありますが、一般的には綿などのセルロース系繊維に濃度の高い水酸化ナトリウム溶液をプリントなどの手法で捺染し部分的に生地を収縮させてさざ波のような表情に表現したものをリップル加工と呼んでいます。一方で塩縮加工は元々は絹(シルク)の織物を塩化カルシウムや硫酸カルシウム等の塩類の水溶液に浸して収縮させ凹凸やシワを表現したものを塩縮加工と呼んでいたと思われます。現在ではリップル加工と塩縮加工の区別が曖昧でここからは私の推測ですが先に述べたようにセルロース系の繊維に捺染技法を用いで水酸化ナトリウムを混ぜた糊をさざ波のようなパターンでプリントして部分的に縮めて仕上げた生地をリップル加工。シルクに防染糊で柄やパターンを捺染して塩化カルシウムなどの溶液中で収縮させて柄や凹凸を表現した生地を塩縮加工と区別して良いのではないかの思います。また塩縮加工はナイロンの生地にも用いられ塩縮加工を施したナイロン生地は風合いが紙や昆布のように硬くなり独特のシワがある表情になります。

まとめ

多くのテキスタイル素材には用途や使用目的に応じて様々な効果を狙った加工が施されていることが分かっていただけたと思います。これらの加工は単一で効果を発揮する場合もあれば素材や加工の組み合わせの相乗効果によってまったく新しい表現や機能性を生み出すこともあります。ここでは一般的によく行われている代表的な加工を取り上げました。素材や使用する目的によって天然繊維の自然な持ち味を生かすナチュラルな加工から様々な機能性を付与する加工まで染色整理を行う染色工場や各種の加工所が独自のノウハウやこだわりのある加工を行っています。一般的に広く行われている加工からオリジナルの加工までその種類はとても多く、記載し忘れている加工はおいおい追記していきたいと思っています。色々な加工やその目的を知っていることで素材への理解がより深まり、テキスタイルを選ぶ際のひとつの基準にもなりますので✪要ブクマ✪で必要な時に見返して参考にしたいただけると嬉しいです。

 

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