杢(もく)・杢調ってなに?

  • 2024年5月21日
  • 2024年5月23日
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&CROP編集部の瀧澤です

糸やテキスタイルの表現には杢調(もくちょう)トップメランジ霜降りと呼ばれる表現や、メニック染スペック染という染色技法があります。これらの素材は一見すると無地に見えますがよく見ると濃淡の色が混ざり合った深みのある独特な表情の素材です。このような見え方に対してソリッドベタ染めという場合は、出来るだけ均質でムラの無い染め上がりや仕上がりが要求されます。この記事ではテキスタイルの杢調やトップ・メランジという呼び方が具体的にどんな素材を指しているのか?杢とトップとメランジって同じなの?撚り杢って何?メニック染やスペック染ってどんな染?といった疑問にムラムラお答えしていきますので最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

グレー杢(もく)・杢調とは

ファッションや繊維の業界で杢と言えばグレー杢、そしてグレー杢と言えばGR7(ジーアールセブン)を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。GR7と言えば明治20年に大阪で創業した内外綿株式会社(現在の新内外綿株式会社)がアメリカで出会ったスエットやTシャツに魅せられて開発し「杢糸」と名付けたのが始まりと言われます。染色した原綿を混ぜてから紡績することで杢糸は染色コストの削減にもつながるオリジナル糸として国内の杢グレーの基準となりました。現在もっとも多く流通している杢カラーがGR7と呼ばれるグレー杢ですが他にもGR1(チャコール杢)GR3(オートミール杢)をはじめブルー杢・ベージュ杢など変化に富んだ杢糸が流通しています(画像は綿100%の天竺)。そして素材も綿100%ばかりでなくレーヨン混・テンセル混・カシミヤ混など様々な混紡の杢糸が商品化されています。また綿(コットン)の杢調素材開発のキッカケとなったと言われる毛(ウール)にはもともとトップ(TOP)メランジ(MELANGE)と呼ぶ杢調のカラーが多くあります。

木目と杢目のちがいは?

黒柿孔雀杢の画像
黒柿孔雀杢

杢は木目から派生した同義の言葉と思っていましたが調べてみると木目とは製材したときに現れる柾目や板目のような整った木の年輪の模様のことを指し、杢目はそれ以外の複雑な木の模様で縮杢(ちぢみもく)鳥眼杢(ちょうがんもく)縞杢(しまもく)筍杢(たけのこもく)泡杢(あわもく)虎斑(とらふ)など見え方によってさまざまな杢目があること知りました。古くは正倉院に宝物として納められている黒柿蘇芳染金絵長花形几(くろがきすおうぞめきんえのちょうはながたき)に使われている黒柿の孔雀杢と呼ばれる杢目は特上品になると3万本に1本と言われるとても希少な杢目と言われています。これらの杢目を見ていると個人的には撚り杢の糸で織られた生地が杢調という言葉にしっくりする感じがします。いずれにしても杢や杢調は2色以上の色が複雑に混ざり合った規則性のない複雑な調子を持ったテクスチャー(※)を表していると言えると思います。テクスチャー(※)については下記の記事も参照して下さい。

アパレル資材研究所 「&CROP」by株式会社クロップオザキ

最近では化粧品や食べ物の食感の表現、音楽のリズムやメロディの組み合わせや効果にまで使われるテクスチャーと言う表現は元々は…

杢調に表現する方法

TOP(トップ)染

綿もウールも紡績(糸にする)工程で繊維の不純物をある程度取りいて繊維の方向を揃えて太いロープ状にしますがこの状態をスライバーと呼んでいます。ウールではスライバーを巻き上げると独楽を伏せたような形になるので英語でTOP(トップ)と言い、スライバーの状態で染色することをトップ染と言います。従ってトップ染はもともとはウールをスライバーの状態で染色することを指していました。現在では綿も含めて糸になる前の原毛や原綿のスライバーで染めることをトップ染と言っています。しかし一般的にはスーツ生地のようなウール素材はトップグレーと呼び、綿の場合は杢グレーと言う場合が多いです。これはやはり最初に綿の杢グレーを開発した新内外綿がこれを「杢糸」と名付けたことが影響している気がします。トップで染めた繊維は複数色混ぜ合わせることで深みのある色味を表現したり、混ぜ合わせ具合を調整することでメランジ調の表現をすることができます。トップ染に対して糸で染めることを糸染(先染)生地の状態で染めることを生地染(後染)と言います。

撚り杢糸(よりもくいと)

左がウールトップ糸 、右が綿の撚り杢糸

色の違う糸を2本以上撚り合わせた糸を撚り杢糸と言います。撚り杢糸は意匠糸に分類されますが、撚り合わせ方・撚糸の強弱・太さ・撚り合わせ本数・織、編みなどの組織や生地の密度によって表情が変化する面白さがあります。下の画像は右の杢糸を使った撚り杢デニムのサンプルです。

染め分け(片サイド染)

ポリエステルとコットンのように染色性の違う繊維を混紡(こんぼう)したり、撚り合わせたりした糸を生地にしてから後染することで杢調の表現をすることができます。下の画像は国内で広く流通しているポリエステル65%綿35%の混紡糸で織った生地のポリエステルサイドを染めることでトップ調(杢調)にしている生地です。このような生地はポリエステルと綿を別々に染め(2浴染)ることでベタに染めることも可能です。(※)混紡:種類の違う繊維を糸にする前のワタ(繊維)の状態で混ぜ合わせること

メニック染

 

メニック染は愛知県一宮市の糸染め企業が開発したウールの糸を染める技法で、深みや霜降り感を意図的に作りだす染色技法。

森保染色株式会社のメニック染めpdf

スペック染

※画像は浅記株式会社の下記リンクからの転載です。

スペック染めはおもに綿糸を斑に染める染色方法です。染料を粒子状(スペック)にすることで糸に染まり着く際に濃淡の差を生じさせる方法で、この糸をおもに経糸として製織することで深い味わいのある杢調の表現ができる新潟産地独自の染色技法です。スペック染めについては下記リンク、新潟県見附市の浅記株式会社のページも参照して下さい。

浅記株式会社

新潟県見附市にある浅記株式会社では、インディゴ染色の洗い加工を思わせる自然感覚の色が特徴の、スペック染と呼ばれる染色方法…

まとめ

色・柄・材質・凹凸感・手触り…etc、無限にあるといえるテキスタイル表現の中で、杢調・TOP・メランジ・ムラなどと呼んでいる見え方は一つの重要なカテゴリーと言えると思います。このような表現には人為的なコントロールが難しい要素があり、しかしそこに素材の深みと味わいを感じます。これらの表現や技法には商品としてのクオリティを安定させるために沢山の工夫がされています。また一方で管理しきれない素材表現の面白さが大きな魅力でもあります。テキスタイルにはすでに出尽くしたかと思われるほど多様な表現や技法が存在していますが、それらを知ることでさらに新しいアイデアや表現が生み出されてくるのがとても楽しみです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

 

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