基本的な表地の欠点、種類ごとの対処方法とトラブル解決で重要なこと!

 

&CROP編集部の瀧澤です

表地(テキスタイル)素材にはさまざまな欠点が発生します。素材によっては、欠点はつきものと言って良いほどで、アパレルメーカーに生地を販売していると‟売れば、売っただけ問題が起こり「売れれば地獄、売れなくても地獄」が生地屋の実態(笑) それでも本当に生地の不良や欠点で問題となるケースは通常は10件に1件くらいの割合です。しかし初期の対応や対処を誤ると思わぬ大問題につながることがあるので予断は禁物と言うのが長年テキスタイル販売をして来た現場のリアルな実情です。生地の不良が起こる原因は素材の種類や加工方法によって様々です。どちらかと言うと天然素材の方が欠点が多い反面で素材への理解を深めることで解決することが多く、製品修正などで対応できるケースも多いです。一方で合成繊維は欠点が起こりにくい分、問題が発生すると修整が難しい場合が多く注意が必要です。生地を販売する側としては素材のメリット・デメリットを事前に良く説明しておく必要があります。しかし企画担当の人が理解していても生産担当者や工場に共有されることはあまりなく、送られて来た生地を放反・裁断しようとして生地の欠点に気づいた縫製工場がアパレルメーカーの生産担当に ‟この生地縫えませ~ん!” と連絡 ⇒アパレルの生産担当者は ‟工場が縫えないと言っているから、なんとかして~“ と生地屋に電話 ⇒ 生地屋は “わっ!またかよ~” とバタバタするのがリアルな現場です(笑)…   欠点の種類や原因はとても多く、それらを全て知っていることよりも欠点が見つかった時点でどのように対応するかがとても重要です。修整が可能かどうかやどの時点で修正するのが一番良いのかを知っていれば生地問屋やメーカーとの交渉も主導権を持ってスムーズに進めることが出来ます。欠点に気がついた時点で何を最優先するのか?被害を最小限で食い止めるための判断するときの参考にしてもらえるように生地の種類による欠点や対処法のあれこれを現場目線でまとめましたので最後までお付き合いいただければ幸いです。生地トラブルが少しでも減った平和な世の中を願って…

生地欠点の種類

生地疵(きじきず)

生地の疵には、糸切れ・組織崩れ・目飛び・目寄れ・節糸・ネップ・織段・異物織り込み・筬割れ・破れ…など、色々な種類があり原因もさまざまです。麻などのように素材の特性で傷や節糸が出やすい素材や、織機の調整不良などが原因で起こる場合もあります。どちらかと言うと天然素材に多い欠点ですが天然繊維の織り疵についてはある程度修整方法も確立しているので万一製品になってから疵が見つかった場合でも修整可能な場合も多いです。一方、化合繊などのフィラメント糸を使用した生地では修整が難しいケースが多いので製品となってしまう前にパーツを差し替えるなどの対処をすることが重要になります。

飛び込み・異原糸混入

飛び込みと呼んでいる欠点には染料の飛び込み異原糸や異色繊維、異物などが糸に混入して起こる飛び込みがあります。染料の飛び込みについては次の汚れの項で説明しますので、ここでは異原糸などの飛び込みについて簡単に説明します。飛び込みが最も良くみられる繊維は羊毛などの獣毛繊維や綿や麻などの天然繊維です。天然繊維では原料繊維を梳く工程で異物を取り除きますが取り除くことが出来なかった異物が紡績工程をで糸に混入してしまう事があります。とくに羊毛の白などでは飛び込みが目立ち、製品での修正が多くなることからあらかじめ白色の生地コストを高くして販売する生地メーカーもあります。異原糸などの飛び込みは余程のものでない限り修整可能な場合も多いので飛び込みがどの程度発生しているのか、製品での修整が可能なのか?を早めに確認して製品が縫い上がった段階ですぐ修整が行えるようあらかじめ段取りをしておくことで修正にかかる期間を短縮することが出来ます。

汚れ

生地汚れの種類や原因にも様々な種類があります。前項で挙げた染料の飛び込みは染色加工所内で何らかの原因で染料が生地に付着して起こります。また汚れは、紡績・撚糸・整経・サイジング・製織・整理仕上げ・運搬などの工程で糸や生地に油汚れや錆、静電気による吸塵、手垢汚れなどが付着して発生します。汚れや油染みも修整が可能かどうかや、発生の状態によって対応方法が変わってくるので状況を正確に把握することが重要です。

染色ムラ

染色ムラの欠点も無地染めのムラやプリント欠点など原因も種類も様々です。無地染めで最も良く起こるのが生地の部分(両耳と中央・反の巻き始めと終わりなど)によって微妙に色が違う中希と呼ぶ欠点です。通常、製品を縫製する際はパーツによって微妙に色が違ってしまうのを防ぐために反内縫製(一反内で製品を作る)が行われますが1反の中で色差が生じている場合、縫い上った製品がパーツによって色差がありクレームとなる場合があります。中希の欠点は縫製でパーツ同士を縫い合わせる工程や製品になってからの納品前の検品で発覚するケースも多いです。中希や染色時のムラは製品での修正技術が確立していて製品で修正が可能な場合も多いです。それでもムラが出ている事が分かったら出来るだけ早い段階で欠点が発生していることをメーカーに連絡して修整が可能かなど対応方法を確認しておくことが重要です。

生地の地の目曲がり・巾不同

通常の織物(平織)の地の目(タテとヨコ)は垂直に交差する設計です。しかし様々な要因でこの地の目が斜めになったり(斜行:しゃこう)湾曲(ボーイング)したり。また両耳の巾が不均等(巾不同)になっていたりする場合があります。いわゆる斜行と呼んでいるのは経糸に対してヨコの地の目が斜めになっている場合です。一般的にデニムやサージのように綾組織の織物や単糸使いの丸編物などは斜行が生じ易いです。これらは生地組織・糸の撚り・丸編みの構造など生地の特性としてある程度の許容が必要です。アパレルメーカーによっては独自の基準を設けているます。また丸編物で地の目が湾曲(ボーイング)している場合や平織の生地で極端な斜行が生じている場合は整理工程での不良が考えられます。生地の巾が不均一(生地巾が狭くなったり広くなったり)している場合も何らかの不良が考えられるので生地を裁断する前にメーカーに確認する必要があります。整理工程での不良は工程をやり直すことで修整可能な場合も多いのです。特に先染めの柄物などでは裁断してしまってから柄合わせが出来ないなど大きなクレームになる可能性があるので注意が必要です。

横段・アタリ・スレ・チョークマーク

生地の巾(ヨコ)方向にボーダー状に段が発生した色や密度の差を横段と呼んでいます。横段にはハッキリと判るものや一見しただけでは判りにくくて角度や光の当たり方によって目立つ場合など色々です。原因は織機や編み機の調整不良などによる織りムラや編みムラ。途中で糸のロットが変わることで起こる場合もあります。スレアタリチョークマークは反物を巻き取る際などに何らかの理由で発生することが多く、生地の素材や仕上げ方法などによっても発生しやすい場合があります。これらの欠点はプレスなどによって簡単に解消する場合もあれば修整が難しいケースもあるので、もしスレやアタリを見つけた場合は裁断や縫製前に確認することをお奨めします。

生折れ(きおれ)

生機で保管していた際の折り目などが染色整理工程や仕上げ工程を経ても消えずに残ってしまうものを生折れと言います。生折れはプレスなどの処理で消える場合もあれば何をやっても消えない場合もあるので注意が必要です。製品になってから修整が出来ないと大きなクレームになってしまうケースもあるので生折れがあることが分った時点でどのくらいの割合で発生しているのか?修整の可・不可を確認する必要があります。

移行昇華(いこうしょうか)

移行昇華はおもにポリエステルの染色に使用する分散染料が輸送・保管時などの高温や圧力がかかった状態におかれることでポリウレタンやゴム、他のポリエステルに色移りすることを言います。分散染料は高温・高圧で染色されるため比較的堅牢な染色性を有していますが、高温・高圧での昇華転写プリントが可能なことからも一定の条件が重なると染料が他の製品やパーツ、下札などに移染してしまうことがあります。生地の状態では欠点として認識できないことや比較的堅牢な合繊素材であることから納品後に移行昇華が起こったり、発覚するケースも多いです。染料の色や種類によっても移行昇華が起こりやすい場合があるので必要に応じて昇華堅牢度試験データーを確認する、配色使いを避ける、昇華の起こらない代替素材(ナイロン等)を使用するなど企画段階から移行昇華を考慮した対策が必要です。

生地のクレーム対応

初動が大切(状況を把握して生地メーカーに伝える)

生地の問題や欠点がどの時点で見つかるかによって対応方法は変わってきます。問題が見つかった時点で裁断や縫製を中断して欠点の種類やどの程度発生しているのか?修整が可能かどうか?などを確認して生地メーカーに連絡し、対応をしてもらう必要があります。生地メーカーに連絡する際にはあらかじめ必要と思われる情報を把握しておくことで無駄な時間と手間を省くことができるのでポイントを下記にまとめました。(この内容は縫製工場などの現場に聞き取りする際も同様です)

  1. 発生している疵や欠点の状態 (可能であれば写真を撮って先にメールなどに添付して送っておくと良い)
  2. 生じている欠点の見本をメーカー担当者に送付(口頭や画像だけよりも現物を見てもらった方が話が早い)極端な斜行や湾曲などの場合は原反を1反送ってしまった方が判りやすい場合もあります。
  3. 現在の生地の状態は裁断前か、裁断が終わっているのか?縫製のどの段階なのかなど
  4. 納品された生地に対してどの程度の割合で欠点が発生しているのが(極一部に起きているのか全体に生じているのか・または〇着中/何着くらい出ているのか?)
  5. 製品や半製品で修整をする場合には何着を何時指定の場所に発送できるのか?

生地メーカーの担当者が状況を把握できるように必要と思われる内容はメモをするなどして要点を伝えるようにしましょう。

生地メーカーに聞くべき内容(最善の対応を引き出すには)

生地のメーカーや問屋に前項の状況を伝えて欠点の状態を確認してもらった上で聞くべき内容は次の点です。

  1. 修整が可能な欠点か?製品での修整が可能なのか、原反での修整が必要か?(地の目曲がりや柄不同など原反で再度整理加工をやり直さないとダメな場合もあります)
  2. 縫製が進んでしまっている場合は半製品で修整するのか?縫製が終わってから修整するのか?
  3. どのくらいの期間(納期)で修整できるのか?
  4. 修整が出来ない場合は生地の交換や再加工が可能か?その場合どのくらいの期間がかかるのか?
  5. 修整する生地・製品・半製品の送り先

上記の内容に回答をもらった上で納期を含めた調整が必要になってくると思います。こちらの要望や納期スケジュールをハッキリと伝えたうえで納期を含めてどのような対応が可能なのか回答を求めることがとても重要です。うやむやな回答を許容するとメーカーや担当者によってはハッキリした返事がもらえすに1週間以上も経過してしまう場合もあります。生地に瑕疵がある場合は期限を切って返答をもらうなどこちらの意思・納品が遅れた場合や納品出来なかった場合のデメリットもハッキリ伝えて最善の対応を求めましょう。

修整屋とは

生地欠点の修整やそれ以外にも様々な製品トラブルに対応してくれる専門の業者を修整屋と呼んでいます。基本的には生地トラブルの際には生地メーカーが指定する修整工場に修正を依頼することが多いです。アパレルメーカー・生地メーカーをはじめ繊維にかかわる仕事をしていると嫌でもどこかで必ずお付き合いする機会があるので機会があれば名詞交換などをして懇意にしておくことをお奨めします。修整屋さんはもともとは生地メーカーさんとのかかわりが強かったので新潟や一宮などに本社があるところが多いですが、現在では縫製の拠点が中国や東南アジアに移ったのに応じて中国・ベトナム・タイ・ミャンマーなどに工場をおいて対応しているところもあります。産地の特性や素材によって得意な修整分野があったりするのでそれぞれの修整屋さんのコスト・スピード・修整技術の特長を知っておくと何かのときに役に立つことがあると思います。

修整屋さんの紹介

弊社が懇意にして色々と細かい対応をしていただいているのは新潟県長岡市に本社がある山田修整有限会社さんです。高い修整技術で難しい修整にもスピーディに対応していただいてとても助かっています。以下に山田修整さんをはじめ良く知られている修整屋さんのリンクを貼っておくので参考にして下さい。ここでご紹介しているのは全て過去に何度か修整でお世話になったことのある修整屋さんばかりです。

衣類修整のプロ集団 新潟県の山田修整

新潟県長岡市の衣類修整の専門集団山田修整です。アパレル、ファッション、B品をA品に修整。欠点内容は傷、色、汚れ、縫製不良…

ファッション業界のドクター 衣料・雑貨 検品・修整の専門会社 愛知県一宮市 株式会社桑原…

株式会社 ル・マ・ニエ・ナカジマ - 公式サイト

ル・マ・ニエ・ナカジマは新潟県長岡市に本社を構え、衣類の加工・補修・物流サービスを行なっております。ファッションとビジネ…

 

下記はHP等の記載はありませんが麻やウール織物にとても高い修整技術を持っている修整工場さんです。

有限会社小啓修整織物 

住所:愛知県一宮市瀬部字砂留49の2  電話 0586-78-5110

まとめ

生地の疵や欠点には様々な種類や原因があり、ここでは比較的頻度の多い欠点を簡単な説明をしました。私自身はそれほど疵や欠点の種類や原因には詳しい訳ではありません。ただ沢山の生地クレームを経験してきたので、製品で修整した方が良いのか?生地の状態で修整した方が良いか?修整が難しそうで生地を再度投入して染めなおしが必要か?などある程度の判断はできます。しかし勝手な判断で進めてしまうと最終的な責任の所在が曖昧になってしまうので必ずメーカー担当者や責任者に確認したうえで対応策を決めて行うようにすることが重要です。あたりまえの事の繰り返しになりますが次の3つのポイントを押さえて冷静に対応しましょう。

①生地のトラブルが発生した場合には現状を出来るだけ正確に把握してメーカー担当者に伝える。

②納期などの要望をハッキリと伝えて最善の回答と対応をお願いする。

③メーカーの回答をもとに縫製工場と生産スケジュールを調整し顧客に報告する。

※状況を正確に把握することや生地メーカーから納得のゆく回答を得ることは顧客に対応を説明する際にもとても重要です!自分が納得できていない内容をお客様が納得することはまずありません。

今回この記事を書いていて過去の事を色々と思い出して気が重くなったのでそろそろ終わりにします(笑)クレームもキチンと対応すれば自分の資産になると思ってより良い対応をするようにしましょう!最後まで読んでいただきありがとうございました。生地トラブルの無い平和な世界が来ますように…

 

 

最新情報をチェックしよう!