&CROP編集部の野崎です。
アパレルブランドのサンプル制作において、納期優先でスライダー代替品を付けたけど、後から付け直しがしたい…と思った経験はありませんか?今回は、ファスナースライダーの交換ができるものとできないもの、またファスナーのスライダーを選ぶ際に覚えておいた方が良い基本の知識についてご紹介していきたいと思います。
※今回、”ファスナー”としてご説明するのは、日本で90%以上・世界でも40%以上のシェアを誇るYKKファスナーです。他社メーカーのファスナーについてはこの限りではありません。
スライダーってどのパーツのこと?
スライダーとは、ファスナーのエレメントを開けたり閉めたりするためのパーツです。スライダーには手で持って引っ張る部分「引手」が付いています。
各パーツの名称は下記です。
- エレメント…務歯(むし)とも呼ばれ、かみ合うことでファスナーの働きをします。
- テープ…ファスナーの生地の部分です。
- スライダー…ファスナーを開閉するときにエレメントをかみ合わせる役目をするパーツです。引っ張る部分を「引手」とも呼びます。
- 上止め(うわどめ)…スライダーが上から抜けないようにおさえるためのパーツです。
- 下止め(したどめ)…スライダーが下から抜けないようにおさえるためのパーツです。
スライダー選びは注意点がたくさん
ファスナーのスライダーはどんな組合せもできるというわけではありません。対応している商品と、そうでない商品があります。スライダー選びには注意しなければならない点がたくさんあるので、一つずつご説明していきます。
ファスナーのサイズごとにスライダーのサイズも異なる
まず、ファスナーのサイズ(=エレメントのサイズ)によって、使われているスライダーのサイズが異なります。同じデザインのスライダーでも、対応しているファスナーサイズが違うと、スライダーを付け替えることはできません。
ファスナーのサイズは、種類にもよりますがスタンダードな展開だと、No3~10まであります。特に良く使われているのは、No.3とNo.5で、No.3はポケットファスナー、No.5はブルゾンの前立てに使われることが多いです。
つまり、ポケットに使われているスライダーと同じスライダーを前立てファスナーに付け替えようとしてもできない(その逆も不可)という事です。
ファスナーの種類ごとにスライダーも異なる
ファスナーの種類は、大きく分けて金属(メタル)ファスナー・コイルファスナー・ビスロンファスナーの3種類があります。
それぞれエレメントの形状が異なるため、エレメントを嚙み合わせる役割を持つスライダーも、それに伴って内側の構造が異なります。そのため同じサイズ・同じデザインだとしても、メタルファスナーのスライダーをコイルファスナーに付け替えたり、コイルファスナーのスライダーをビスロンファスナーに付け替えることはできません。
ファスナーの表使い・裏使いでスライダーが異なる
コイルファスナーには、エレメントが表から見えるように使う「表使い」と、エレメントを裏にして表面をフラットに見せる「裏使い」があります。
正面から見て、表使いの場合はエレメントがテープ上側にあり、裏使いの場合はエレメントがテープの下側にあるのでそれに合わせてスライダーの構造の上側にエレメントを通すためのトンネルがあるか、下側にあるかが異なります。
そのため表使い用のスライダーを裏使いのファスナーに使ったり、その逆で使うことはできません。
よくある疑問
「開き」用のスライダーは「止め」には使えない?
ファスナーの製品区分(ファスナー下部の構造)は大きく「止め」「開き(逆開含む)」の2種類に分けられます。製品区分が違うと同じスライダーは使えないようにも思えますが、基本的には「止め」のスライダーを「開き(逆開)」に使ったり、「開き(逆開)」のスライダーを「止め」に使うことは可能です。しかし一部例外もあります。
例外①「DF」スライダーは「開き(逆開)」に使用不可
DFスライダーとは、Fが「フリー」を指しており、ロック機能が付いていないスライダーのことです。ロック機能とは、スライダーを持たずにエレメントを左右に引っ張ったときにスライダーが下がって来ないようにロックをかける機能です。
洋服に使われているファスナースライダーはロック機能が付いていることがほとんどですが、鞄に使われるファスナーは、開けやすいように「DF」スライダーを使っていることが多いです。
この「DF」スライダ―は、製品区分「止め」用のスライダーなので、「開き(逆開)」製品に使うことはできません。
例外②3サイズのコイルファスナーは「止め」と「開き(逆開)」で異なる
理由は分からないのですが、3サイズのコイルファスナーのスライダーのみ、「止め」用と「開き(逆開)」用で分かれています。そのため、製品区分を跨いで「止め」用のスライダーを「開き(逆開)」に使う(またはその逆で使う)ことはできません。
逆開のスライダーは上下共通?
逆開とは、製品区分「開き」でスライダーが2つ付いているファスナーのことです。基本的に逆開のスライダーは、上下共通の規格です。※一部例外もございます。
同じファスナーのサイズ・種類であれば上下のスライダーで異なるデザインを選ぶことも可能です。
一部の例外
エクセラスライダー「DA2」と、5サイズ・コイルファスナー・裏使いの3つの条件が揃ったときの「DA8B」スライダーは同じデザインでも、上下のスライダー規格が異なります。
スライダーの選び方
次に、スライダーを選ぶ際の基本的なポイントをご紹介していきます。
特におさえておいていただきたいポイントは2つです。
機能で選ぶ
ファスナースライダーは、ファスナーのエレメントを開閉する役割を持つパーツですが、実はその開閉の仕組みも様々な機能があります。仕様箇所や目的に合っていない機能を選んでいると、クレームの原因にもなりますので注意しましょう。
ロック機能
ロック機能とは、スライダーを持たずにエレメントを左右に引っ張ったときにスライダーが下がって来ないようにロックをかける機能です。
ロック機能あり?なし?どちらを使えば良いか
洋服に使う場合は、ロック機能が付いているスライダーを選ぶことが多いです。ロック機能が付いていないと、ポケットのファスナーやブルゾン・パンツのフロントが、動いているうちに下がってきてしまう可能性があるためです。それに対して鞄に使う場合は、スライダーを持って引っ張らなくても開けやすいように、ロック機能が付いていないスライダーを使うことが多いです。
ロック機能が付いているかどうかの見分け方
“ロック機能”と一言で言っても「オートマチックロック」「セミオートマチックロック」「ノッチロック」などロックの仕組みがさまざまなのですが、ロック機能はどれもスライダー品番の2桁目に示されています。
2桁目が「F」だと「FREE(フリー)」の意味でロック機能が付いていないスライダーです。それ以外の「A」や「S」だと、ロック機能が付いているスライダーという意味になります。
リバーシブル仕様
リバーシブルのブルゾンなど、裏表をひっくり返して着用することができる製品の場合は、リバーシブル専用のスライダーを使います。
リバーシブル仕様のスライダーの見分け方
リバーシブル仕様のスライダーには、スライダーの両面に引手が付いているタイプと、1つの引手が回転レールに沿って移動することで表裏どちらからでも開閉できるタイプがあります。リバーシブル仕様かどうかは、ロック機能と同様に、スライダー品番の2桁目で確認することができます。2桁目が「U」「W」「X」だとリバーシブル仕様のスライダーです。
デザインで選ぶ
スライダーの引手はアパレル資材の中でも着用している人がよく触るパーツです。ブランドのテイストに合わせたデザインや、引っ張りやすい形状のデザインなどを基準に選ぶこともできます。
YKKスライダーから選ぶ
YKKのスライダーカタログには、たくさんのファスナースライダーが掲載されています。それぞれファスナーの種類ごと・サイズごとにまとめられているのでカタログの中からでもかなりのバリエーションからスライダーをお選びいただくことができます。
YKKのスライダーに後付け引手を付ける
YKKのスライダーの中には、引手が後付けできるようになっているタイプがあります。それが「CA」や「ZA」などのスライダーです。
これらのスライダーは、他社のファスナー用の引手を後付けして使うことができます。後付け引手を使うことで、定番カタログには無い独自性を出すことができます。
後付け引手の例
例えばボタンメーカーのアイリスは、金属引手や紐引手、シリコン引手などさまざまなファスナー引手を展開しています。
一からオリジナルで作成する
スライダーは型からオリジナルで作成することも可能です。経済ロットは3000個ほど掛かりますが、引手の形からそのブランドだけのオリジナルデザインで作成できます。
まとめ
スライダー交換をするときは、ファスナーのサイズや種類に注意!
スライダー交換のポイント、いかがでしたでしょうか。
既に付いているファスナーのスライダーを交換するときは、ファスナーの【サイズ】【種類(金属・コイル・ビスロン)】とコイルの場合は【表使い・裏使い】をよく確認するようにしましょう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。