&CROP編集部の野崎です。 前回の記事では、紐先加工の種類についてご紹介しました。
&CROP編集部の野崎です。スピンドルの紐先加工について、「この加工をやりたいんですけど…」と、お客さまから画像付きでお問合せをいただくことがあります。また、「金属チップ」だと思って発注したけれど、実は欲しかったのは「弾[…]
紐先加工には、セルチップ、金属チップ、弾丸チップ、シリコンチップ、TPUチップ、シュリンク加工、シリコンディップ加工などさまざまな種類があります。それぞれの加工で受ける印象やコスト・ロットも異なるため、選ぶ際には使用シーンやコスト感に合わせた選定が重要です。
今回は、その「紐先加工を実際に使ったときに起こりがちなトラブル」について、実際の現場で起きた事例をもとにご紹介していきます。これから初めて紐先加工を注文してみようと考えている方や、いつもと違う加工方法を検討している方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
トラブル事例とその解決策
小ロット生産で費用が跳ね上がる!?「ロットと小口代」の落とし穴
サイズ展開や色展開が多いスピンドルを小ロットで注文するとき「1本あたり○○円と聞いていたのに、請求額が思ったより高くなっている!」と驚くことがあります。
なぜ起こるの?
スピンドルの紐先加工(セルチップ、金属チップ、弾丸チップなど)では、1色・1サイズで100本未満の生産には「小口代」がかかるのが一般的です。たとえば、
- サイズ展開がS/M/L/XLの4種類で、それぞれスピンドルの長さが違う
- カラー展開が3色で、スピンドルの色も合わせて3種類
- 合計で300本のスピンドルを使用予定でも、1サイズ・1色あたりの本数は100本未満
このような場合、4サイズ × 3色 = 12ロットとカウントされ、小口代が12件分発生します。小口代は1ロットあたり1,000~2,000円程度が相場ですので、12件で最大2万4,000円もの追加費用となる場合があります。
どうすれば防げるの?
まずは見積もり段階で「小口代が発生するか」を必ず確認しましょう。私たちのようなアパレル資材の卸売業者の場合、見積時に小口代を提示しています。そのうえで、次のような工夫でロット数を減らすことができます。
- サイズ別スピンドル寸法をなるべく統一する(例:S・M共通、L・XL共通)
- スピンドルカラーを共通にする
特にスピンドル寸法は数センチ程度の誤差は許容範囲としているテープ―メーカーも多いため、2-3cmピッチで寸法を指定しても、指定通りに上がらないことも多いです。それならば細かいピッチで指定せず、寸法をまとめることでコストを抑えることができます。
寸法ぴったりにならない?「仕上がり寸法のズレ」
「130cmで注文したはずなのに、届いたら127cmだった」「135cmだった」など、仕上がり寸法のズレに戸惑う方も多いです。
なぜ起こるの?
スピンドルの紐は、素材の特性や加工工程によって伸縮性があるため、機械で一律に加工する場合には数センチの誤差が発生することがあります。スピンドルの紐先加工は、1本1本手作業で指示寸法にカットしているのではなく、機械を使っています。糸巻きのような機械にかけ、紐をまとめてカットします。紐は織りの構造により伸縮があるため、1本1本確認しながらぴったりの長さに加工するのは難しいのです。テープメーカーにより異なりますが、寸法誤差の許容範囲を±5%、大きいメーカーだと±10%と定めています。そのため±5%だとしても、
- 100cm指定 → 95〜105cm
- 130cm指定 → 123.5〜136.5cm
- 150cm指定 → 142.5〜157.5cm
上記のような寸法誤差は許容値となります。特に袋紐や太番手の丸紐などは伸縮しやすいため、加工現場でも誤差が出やすい傾向があります。
どうすれば防げるの?
この誤差を完全に防ぐことは難しいですが、発注先へ事前に「±2cm以内にしてほしい」など、具体的な許容範囲を伝えておくと対応できる可能性があります。メーカーによっては、多めに生産し、誤差が2cmにおさまらなかったものはB品として除外する、等の対応を取ってもらえる可能性もあります。(別途費用は掛かると考えてください。)
ハトメに紐が通らない!?「サイズ不一致」問題
製品の最終工程で「スピンドルがハトメに通らない!」というトラブルは意外とよくある問題です。特に、シュリンクチップ加工などの太めの紐先加工方法で起きがちです。
なぜ起こるの?
ハトメの内径はスピンドルの「仕上がり直径」を基準に選ぶ必要があります。紐自体の太さだけで判断すると、紐先加工後の径がハトメに合わなくなってしまいます。特に、シュリンクチップは紐を固結びしてチューブを収縮させる加工のため、仕上がりの太さが増します。また固結びの強さによっても直径に多少差があるので、サンプルでは通ったけど量産では通らなかった、ということもあり得ます。

どうすれば防げるの?
- サンプルの段階で「実際に加工したスピンドル」をハトメに通して確認する
- 使用予定のハトメの内径を、YKK SF社やモリト社のサンプル帳などで事前にチェック


どうしても小さいハトメを使用したい場合は、製品完成後にスピンドルを通し、後からヒートガンでシュリンク加工を施す方法もあります。その場合はシュリンクチューブ(1m単位)を購入し、必要な長さにカットをして、縫製工場や加工場にて工業用ドライヤー(ヒートガン)を使って収縮させます。※テープメーカーで製品完成後の紐通し・シュリンクの後加工は受け付けておりません。
シリコンチップが装着できない!
シリコンチップ加工では、セルチップ加工をした上からシリコンパーツを装着します。サンプル程度の数量なら手作業で何とかなることもありますが、量産の際に縫製工場で手作業でシリコンパーツを装着してもらおう思ったら「キツくてなかなか入らない!」と断られてしまうこともあります。

なぜ起こるの?
サンプルの時はできたのに、量産だと装着できない!という場合は、セルチップの太さがサンプル時と量産時で違うことも考えられます。サンプルで短納期で仕上げるときは、量産とは異なる機械で仕上げることもあり、セルチップの太さもメーカーや機械によって異なるからです。また、シリコンチップ自体が外れにくくするためにかなりタイトに設計されているため、少しの差でも装着が難しくなります。
どうすれば防げるの?
- シリコンチップは基本的にテープメーカーで装着済みの状態で納品してもらう
- 手作業で装着する必要がある場合は「シリコンチップ用のセルチップ」で加工を依頼する
シリコンチップ加工まで行っているメーカーであれば、セルチップの径をシリコンチップ用に合わせてもらえます。また、自分で付ける場合は、チップや紐を水で濡らして滑りやすくしたり、丸く削った棒などで押し込むとスムーズになります。尖ったペンチなどの鋭利なものを使って無理に装着しようとすると、シリコンが裂ける可能性があるため十分にご注意ください。
洗濯機での破損クレーム!スピンドルの洗濯注意
洗濯機の洗濯槽にある小さな穴にチップ加工が挟まってしまう、という事故が起きる可能性があります。実際に私も「洗濯機に挟まって取れてしまった金属チップを修理できますか?」というお問い合わせをいただいたことがあります。

なぜ起こるの?
洗濯槽の穴に金属チップが挟まったまま洗濯が続行されると、チップが変形し、抜けなくなることがあります。特にドラム式洗濯機では、回転と遠心力の影響でトラブルが起きやすくなります。
どうすれば防げるの?
- 洗濯ネットを使用するよう、品質表示や下げ札に注意書きを入れる
- 商品説明書やオンライン販売ページにも記載しておくと安心
特に金属チップを使用している製品には、注意を促す一文を必ず加えておきましょう。
まとめ
スピンドルは想定外のトラブルが起こりやすい
紐先加工のあるスピンドルは受注生産かつカスタマイズ性が高いため、想定外のトラブルが起こりやすい付属です。ただ、今回紹介したように、事前の確認や知識を持つことで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。&CROPを運営する株式会社クロップオザキでは、スピンドルや紐先加工に関するご相談を随時承っています。「資材の選び方に不安がある」「詳しく相談しながら決めたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ※BtoB向け販売となります。個人のお客様への販売は行っておりませんので、あらかじめご了承ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました!