はじめてのアパレル副資材発注で失敗しない5つのポイント【無料チェックリスト付き】

&CROP編集部の野崎です。
最近、小ロットでアパレルブランドを立ち上げる方が増えています。アパレルブランドを始めると、デザイン、パターン(型紙)、縫製工場の選定、生地の手配など、やるべきことが山ほど出てきます。そんな中で「副資材」と呼ばれるボタンやファスナー、テープ類などは、生地やデザインよりも後回しになりやすいです。しかし、副資材は種類も多く複雑なため、発注において「何に気を付けたら良いの?」と不安になることもあるのではないでしょうか。実は事前に知っておくだけで防げる落とし穴がたくさんあります。

今回は、これから副資材の発注にチャレンジする方に向けて、よくある失敗と注意すべきポイントを5つにまとめました。

 

ポイント1:数量の伝え方に注意!

アパレルブランドの製品をつくるときは、基本的にサンプルを何度か作成し、量産(店頭に並ぶ製品)に入ります。サンプルの段階では1個、2個しか必要ないパーツも、必要数量ではなく「ロット」で発注しなければいけないケースが多いので注意が必要です。

単位を書き忘れて勘違い…

例えば、サンプル段階では「3個」しか必要ないボタンも、メーカー側では「1パック=100個」でしか販売していない場合があります。発注書に「3」とだけ記入すると「3パック=300個」と勘違いが生まれ、必要なのは3個だったのに、300個届いてしまった…というケースもあります。こうした数量トラブルは、発注の際に必ず「単位」まで書くことで防げます。

発注数量によって単価が変わる

副資材の価格は「数量」によって変動することがあります。例えば、ボタンメーカーでは〇個以下だとサンプル単価(量産単価の2倍)、〇個以上で量産単価となる。などの決まりがあることがあります。

たくさん買ったほうが合計金額が安くなる?!

例えばこのようなケースで、たくさん買ったほうが合計金額が安くなるということがあります。

例:1個100円のボタン(サンプル単価は200円)

  • 10個購入 → 200円 × 10個 = 2,000円
  • 20個購入 → 200円 × 20個 = 4,000円
  • 31個購入 → 100円 × 31個 = 3,100円

つまり、20個買うよりも31個買ったほうが安くなることもあります。副資材は1個当たりの単価がそこまで高くない上に、最近は小口発注も増えてきており、メーカー側も対応に追われてしまうため、小口単価(サンプル単価)を設けているメーカーが増えています。必ず見積もり段階で確認し、発注しましょう。

予備を含めた数で発注を

量産の場合は特に、必要数量ちょうどの数ではなく、少々予備を含めた数で発注をするようにしましょう。気を付けていても、工場での縫製ミスや小さなパーツの紛失は起こることがあります。生産数量にもよりますが、だいたい3%~5%ほどロスを見ておくとよいでしょう。

特に注意すべき副資材

ファスナー

ファスナーは色・長さ・サイズ・スライダーの種類・製品区分などのカスタマイズにより受注生産で作られるため、少量でも納期が1か月ほどかかることがあります。不足してしまってから慌てて発注しても、製品納期に間に合わない可能性が高いので、ロスを見て発注するようにしましょう。

ファスナー
打ち付属

タックボタンやドットボタン、リベットなどの打ち付属(打ち機で生地に取り付ける付属)は、打ち損じが起きる可能性があります。取り付ける向きを間違えたり、うまく取り付けられていないと、簡単に外れてしまうこともあります。打ち機で金属のアシを潰して固定するため、一度取り付けたものは基本的に付け直しができません。そのため、多めに手配をしておくことをおすすめします。

タックボタン

ポイント2:納期の見誤りに注意!

頼めばすぐ届くと思っていたら、納期が想像よりも掛かって間に合わない…ということになってしまっては大変です。数十年前は発注すればすぐに届く、という認識だった商品も、近年の注文の小口化に伴い、即日出荷は受付していない付属メーカーも多くなっていますので、必ず余裕をもった発注を心がけてください。

副資材のなかでも、オリジナルのロゴを入れたり、加工が必要な商品は特に注意が必要です。また、海外縫製で輸出入が絡む場合は、逆算して考えることは必須です。今回は私の経験上、特に納期に注意するべき付属をご紹介します。

ファスナーは基本的に受注生産

先述しましたが、ファスナーは基本的に長さ・カラー・サイズ・エレメントの種類・スライダーの種類全てカスタムして、組み合わせで作られています。そのパターンは数えきれないほどあるため、1本1本を在庫しているのではなく、注文が入った後に生産する「受注生産」方法をとっています。ファスナーを在庫で詰んでいる加工場には、よく使うファスナーの種類・カラーはすぐに出せるように用意されている場合もありますが、それも基本サンプルのみの対応。量産の場合は、ファスナー納期は1か月以上かかることもよくある話です。ファスナーは、1.5か月~2か月前には注文しておくようにしましょう。

加工が必要な資材

ロゴ入りの別注資材が納期が掛かるのは当然のこと、サンプルの段階で試作をしたり、量産に向けて生産数を決めたりするので、忘れにくいと思います。しかし、ロゴが入っているわけではないけど、「受注後に加工が必要な資材」は見落としがちなので注意が必要です。例えば生地をスリット状カットしてバイアステープを作成する場合や、生地をくるんでつくるクルミボタンなど見落としがちなので注意が必要です。数量や加工場の混雑状況にもよりますが、2~3週間余裕をみて発注すると安心です。

くるみボタン

打ち付属/駒

打ち付属のバリエーションが豊富なので、在庫を切らしていることが多い印象です。製品が完成した後に取り付けができるドットボタンやタックボタンは、納期が掛かっても仕上げに間に合えばよいので何とかなりますが、縫製前に取り付ける必要があるハトメなどは、特に注意が必要です。またパーツの在庫があったとしても、打ち駒(打ち機にセットする専用のアタッチメント)が無く納期が間に合わない…ということもあります。生産過程のどの段階で必要になる資材なのか?も考え、優先順位をつけて発注するようにしましょう。

打ち駒とドットボタン

ポイント3:色ブレに注意!

副資材の色は、頭の中だけで決めてしまうと非常に危険です。Webカタログや画像で見て決めるのではなく、実物サンプルを取り寄せ、必ず確認をしてから量産に進むようにしましょう。

画面上の色をあてにしない

最近はWebカタログで資材を検索できることが多いですが、画面越しの色は非常に危険です。ディスプレイ環境、ブルーライトカット機能、撮影条件などで実際の色味とずれます。必ず実物サンプルを取り寄せて確認しましょう。

色の選択肢が限られる場合は…

副資材を探していてちょうどよい色が無い場合は、生地になじませたかったら、生地よりも少し暗めの色を選ぶようにしましょう。生地よりも明るい色を選んでしまうと、そのパーツが浮いて見えてしまいます。もちろん、目立たせたい場合は配色使いすることもありますが、目立たせたくない場合は、少し暗めの色を選ぶとなじみます。

※配色使いする場合は、色落ちにご注意ください。特に後染のパーツの色落ちする可能性が高いです。

ポイント4:仕様の伝達ミスに注意!

副資材は、品番、サイズ、色など、種類がたくさんあります。そのため、必要事項を記載忘れてしまったり、1文字書き間違えるだけでミスにつながってしまいます。そのような伝達ミスを防ぐためのポイントをご紹介します。

品番を必ず伝える

基本的に副資材にはそれぞれ「品番」が付けられています。例えば、「ホック」と聞いてどんなパーツを思い浮かべますか?前カンやスクリングホックのような引っかけて使うパーツもあれば、「留めるもの=ホック」の認識で、ドットボタンのことを「ホック」と呼ぶ人もいます。一般名称で注文をすると、「ホック」のように認識は人それぞれ異なるので、思っていたパーツと違うものが届いてしまう可能性もあります。必ず、発注の際は品番を伝えるようにしましょう。品番が分からない場合は、近いイメージの画像を見せて伝えると認識のずれが少ないです。

ドットボタン
ホック
前カン

必要事項の伝え忘れ

基本的に、品番・サイズ・色番・個数・単位の5つの項目は入れるようにしましょう。特に、色は「BLUE」や「YELLOW」などの色名表記ではなく、色番で表記するようにしてください。資材にはそれぞれ色番という番号がつけられていることが多いです。(番号はメーカーによって異なります。)例えば白でも、オフホワイト(あたたかみのある白)と真っ白の2種類あることもあります。


ポイント5:想定外のコストに注意!

サンプル費用やデザイン費、パターン代、縫製工賃に生地・資材代など服をつくるのにはいろんなところで費用が掛かります。1個あたりの資材の単価だけチェックしておけばOK!…というわけではなく、あらかじめかかる可能性があるコストを想定しておけると安心です。ここでは見落としがちなコストの一例をご紹介します。

初期費用

別注(オリジナル)資材を作るためには、成型のための型を作ったり、プリントや刺繍用のデータを作ったりと、初期費用が掛かります。またサンプル試作費用なども加味して上代金額を決める必要があります。

ロットによる繰り上げ手配

ロットの話を先述しましたが、特に注意が必要なのは、金額の大きい生地の繰り上げ手配。生地メーカーによっては10m以下までしかカット対応を行わない、など決まりを設けているメーカーもあります。仮に20m必要な場合でも、繰り上げ手配で50m購入しなければならないことも。生地はほかの付属品と比べても単価が比較的高いので、繰り上げm数が大きいと、かなりのダメージになってしまいます。小ロットで生産を希望する場合には、カット対応が可能な生地問屋さん経由で手配をしたり、初めからカット手配が可能な生地を探すと良いでしょう。

輸送費

海外縫製の場合、日本で手配した生地や資材を、縫製工場に送る必要があり、その輸送費用も考慮する必要があります。まとめて一気に船で送ることができれば、それが一番費用を抑えることができますが、資材納期が想定よりも掛かってしまい、一部資材をクーリエ(国際宅配便サービス)を利用して送る、というケースもあります。重さや体積により金額が変わって来ますが、船便よりも格段にコストが上がります。想定外の輸送費をかけないためにも、納期に余裕を持った発注を心がけてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。副資材の発注は、ちょっとした認識違いが大きなトラブルにつながることもあります。私自身の付属屋としての経験から、注意するべきポイントを絞ってお伝えさせていただきましたので、少しでも参考になれば幸いです。今回ご紹介した5つのポイントを意識すれば、発注時の不安をぐっと減らせるはずです。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。

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