&CROP編集部の保立です。
皆さまは、洋服を買う際に何を決め手に選んでいるのでしょうか?
値段、デザイン、着心地など、人によって選ぶ際のポイントは様々だと思います。
一部の服好きの方の中には、ボタンやファスナーなど、細かいパーツのデザインやこだわりに目をつけて購入している!という方もいるかもしれません。
そこで今回は、多種多様な付属の中でも特にボタンの選び方についてお話ししていきたいと思います。様々なシーン毎に選ぶべきボタン、また、逆に選んではいけないボタンについてもご説明します。ボタンはただの留め具ではなく、ボタン一つで洋服の印象がガラッと変わるものです。この記事を読んでくださった方はもうボタン選びを失敗しない。そんな内容になっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
細部までこだわりを持ちたい・高級感を出したい方へ
「細部までこだわりを表現したい」という方には、高級感のある天然素材ボタンがおすすめです。
貝・水牛・ナットの3種類が代表格
天然素材ボタンといえばまず挙がるのがこの3種類。これらのボタンはどれもプラスチックボタンより値段が張りますが、天然素材ならではの風合いがあるので、細部までこだわりたいと考えている方におすすめです。簡単に3種類の天然ボタンについてご説明いたします。
貝ボタン

貝ボタンとは、貝殻を原料に作られたボタンです。貝の真珠層独特の輝きが特徴で、10mmや11.5mmのサイズをシャツのボタンに使うことが多いです。貝の種類によって色が異なり、一般的によく使われている種類では、高瀬貝、黒蝶貝、白蝶貝などがあります。貝殻で作られているので、ご家庭での洗濯やクリーニングで割れてしまうことがあります。また、貝素材に似せたポリエステルのイミテーションボタンもありますが、天然素材の貝ボタンのほうが、コストは高くなります。
水牛ボタン

水牛ボタンとは、水牛の角を原料に作られたボタンです。マーブル模様や刷毛ではいたような模様が特徴で、高級ジャケットやパンツのフロントにも使われています。水牛の種類や角のくりぬく部分によってベージュっぽいものから黒っぽいものまで色や模様が様々です。(乳白色のボタンは水牛の骨を使用しています)
熱や水には弱いので、ホットプレスやタンブラー乾燥、水洗いをするとボタンの油分が失われツヤ落ちや割れの原因になります。基本的には家庭の洗濯機は推奨していません。クリーニング等の際は、製品から取り外すか溶剤が触れないよう、十分にボタンを保護して石油系ドライを行ってください。また、水牛ボタンに似せたポリエステルユリア樹脂のイミテーションボタンもありますが、天然素材を使った水牛ボタンのほうが、コストは高くなります。
ナットボタン

ナットボタンとは、タグワ椰子という椰子の実の種を原料に作られたボタンです。年輪のような温かみのある模様が特徴で、スーツ、ジャケット、コート、パンツ等様々な衣料に使われます。元の色は乳白色ですが、身生地に合わせて染色して使用することが多いです。色落ちや色移りの可能性がありますので、身生地に対して濃い色や反対色のナットボタンを使用するのは避けてください。また、洗濯後、濡れたまま他の衣料と長時間重ねてしまうと色移りする可能性が高いので、洗濯後は放置せずにすぐに干すようにしましょう。
このように、それぞれのボタンに特徴があり、使用するのにおすすめのアイテムも異なります。それぞれの特徴に合った使い方ができると良いですね。
天然ならではの風合いや個体差が魅力
さらにブランドのこだわりを表現したい場合は、ボタンにロゴを入れるのも一つです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
&CROP編集部の野崎です。アパレルブランドを始めて「オリジナリティを出したい」「細かい部分までこだわりたい」「他とは違う資材を使ってみたい」と考えたときにおすすめしたいのが、オリジナルのロゴが入った資材を使うことです。資材にこ[…]
特に水牛ボタンやナットボタンはレーザーでロゴを入れるとロゴ入れした部分が焦げたような見た目になります。この風合いは天然素材にしか出せないので、とてもおすすめです。

使いながら経年変化を楽しめる
また、水牛ボタンやナットボタンは、革製品と同じように、時間の経過で色合いが少しずつ変化します。このように、経年変化を楽しめるのも天然素材の一つの魅力です。「着ながら育てる」が洋服へのこだわりを持つ人にとってはたまらないポイントではないでしょうか。
日常使い・取り扱いやすさを重視したい方へ
ポリエステル・ユリア樹脂



貝ボタンや水牛ボタン、ナットボタンのような見た目を使用したいけれどコストがかけられない、そんな方にはこちらのプラスチックボタンがおすすめです。
ポリエステルボタンとは、ポリエステル樹脂を原料に作られたボタンです。ポリエステル樹脂には原色と後染めがあり、パールの光沢、貝、ナット、水牛など自然調の様々な模様が作ることができるので、貝ボタン・ナットボタン・水牛ボタンのイミテーションを作ることができます。また、天然素材と比べて、耐薬品性や耐熱性に優れている素材でもあります。
ユリアボタンとは、ユリア樹脂(尿素系の樹脂)を原料に作られたボタンです。水牛ボタン・ナットボタンのイミテーションを作ることができます。着色した粘土状のユリア樹脂を粘土のように積み上げて模様を表現しています。製造過程にホルマリンを使用するので、2歳以下の乳幼児の衣類には使用できません。


洗濯・アイロンOKでお手入れ簡単
プラスチックボタンは天然素材ボタンとは異なり基本的に洗濯機の使用、アイロン、ドライクリーニング可なので、とても取り扱いやすく、消費者ファーストのボタンであると言えます。ただし、下記の注意が必要です。
- ポリエステル樹脂:塩素漂白剤は使用不可です。
- ユリア樹脂:つけ置き洗い(一夜)をすると柔らかくなり、割れや欠けの原因になります。
プラスチックで天然素材風の質感を表現したい方におすすめ
国内最大のボタンメーカーであるアイリスさんの商品であるIPSシリーズは、素材の質感にこだわった貝調ボタンを展開しています。

https://www.iris.co.jp/
デザインや色も豊富
先述してきたように、天然素材ボタンに比べて取り扱いが容易で種類も多いため、幅広い使い方が可能です。また、形や色などデザインの幅が広いことも特徴です。先染めが可能なので、鮮やかな色のボタンであっても色落ちしにくいです。奇抜なデザインに対応できるのも大きな魅力の一つですね。
赤ちゃんでも使える・安全性を重視したい方へ
実は、ベビー服を作る際、大人向けの服には使っても問題のない素材でも、赤ちゃんの敏感な肌には適さないものがいくつかあります。そういった素材を使うと、赤ちゃんの肌トラブルを引き起こす原因となってしまうこともあります。
今回はベビー服に使用してはいけないボタンをご紹介します。
ホルマリン含有の素材はNG
ユリア樹脂ボタン
先程と内容が重なりますが、ユリア樹脂ボタンは製造過程にホルマリンを使用するためベビー服には不適切です。ユリア樹脂ボタンは大人向けの洋服に良く使用されますがベビー服には不適切であることをしっかりと覚えていてください。
カゼインボタン

カゼインボタンにもホルマリンが使用されています。カゼインボタンとは、牛乳に含まれる「レンネットカゼイン」という成分を原料としたボタンで、商標名では「ラクトボタン」と言い、牛乳のような柔らかみのある真っ白な色が特徴です。染色性が高く好みの色に染めて使用することができるボタンですが、ベビー服には不適切です。
ウッドボタン(合板使用ボタン)

ウッドボタンは、そのナチュラルな風合いから、コットンなどの天然素材と合わせてさまざまなアパレルブランドで使用されています。しかし、合板を使用しているウッドボタンにはホルマリンが含まれていることがあるため、ベビー服には使用できません。
金属メッキはアレルギーへの配慮が必要
ABS樹脂ボタン

ABS樹脂ボタンとは、ABS樹脂という合成樹脂を金属メッキでコーティングしたボタンです。メッキで覆われているため見た目は金属のようですが、中は樹脂なので軽いという特徴があります。
メタル(金属)ボタンだと重くて垂れてしまうような薄手のカーディガンや伸縮性のあるニットなどに使われています。ABS樹脂ボタンではニッケルメッキを使用しているものは、金属アレルギーを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
サンプル帳に記載の「子供服NGマーク」にご注意を
こちらのマークが「乳幼児の衣類使用不可」を意味するマークになります。ベビー服に使用する資材の注意点についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
こんにちは、&CROP編集部の野崎です。今回は、「趣味でベビー服を作り始めてSNSにアップしたら、予想以上に反響があり、販売を始めることになった。」「それまで大人向けのアパレルブランドを運営していたが、ベビー服に挑戦してみたいと[…]
エコ・環境配慮を重視したい方へ
アパレル業界は特に環境における問題が山積みであると言えるでしょう。この問題の背景には大量消費・大量廃棄などがありますが、ここでは詳しくお話しません。気になる方はこちらの記事を是非ご覧ください。
繊維製品における資源循環システム検討会報告書から-資源循環における国内繊維産業の現状&CROP編集部の瀧澤です。いま、日本国内ではどのくらいの繊維製品が生産され、廃棄されているのか?持続可能性と言う言葉を頻繁に聞くよ[…]
本題に戻りますが、環境問題への配慮から環境にやさしいボタンも増えてきていますので、こちらの記事ではいくつか紹介させていただきます。
エコなボタンを使用したいそんなあなたに ~認証マークや表記をチェック~
最近は環境に配慮するという流れから、バイオマス素材を使ったボタンやリサイクル素材を使ったボタンも増えてきています。
バイオマス素材とは、石油などの化石資源ではなく、動植物に由来する有機性資源であるバイオマス(再生可能な生物資源)を原料として作られる素材のことです。
下記のボタンは一般社団法人日本有機資源協会の認証を取得した環境にやさしいボタンです。バイオマス30や、バイオマス40など、数字が記載されておりますが、この数字は植物由来の材料の割合を示していて、高いほど間接的にCO₂の削減に貢献すると言われています。
バイオナイロンボタン

バイオユリアボタン

バイオポリエステルボタン

バガスボタン

バガスボタンとは、サトウキビから砂糖を生産する際に生まれる副産物を原料の一部としたバイオマスボタンです。
サトウキビから砂糖を生産する際に生まれる副産物を原料にしているので、通常のバイオマス素材を使用するよりもエコであると言えます。
また、最近では竹富に着目、従来のバガスボタンに国産竹粉を10%含有させた新たなバイオマス素材のボタンも誕生しています。
一風変わったボタンも ~糸ボタン~
プラスチックゴミを有効活用した糸ボタンというものもあります。こちらはペットボトルからできた糸ボタンで、1本の再生ポリエステル糸を使って作られています。
風合いもとてもナチュラルで素敵です。以下、糸ボタンの5つの安心ポイントをまとめました。
- GRS認証(リサイクル材料)の原料を使用
- ISO14001認証工場で紡糸
- エコマーク認定の糸を使用
- 安全な商品の証明、エコテックススタンダード100認証
- 既存刺繡糸と同等の安定品質
環境に配慮された糸ボタン、ぜひ使用してみてください。
ワークウェア向け・丈夫さを重視したいかたへ
ワークウェア・作業着向けに、丈夫さを重視してボタンを選びたい方には、ナイロンボタンがおすすめです。ナイロンボタンとは、ポリエステル同様に、石油を原料としたボタンです。他のボタンとは製法が異なり、1回で生産できる数が多いため、1つ当たりの単価が比較的安いのが特徴です。染色が可能なので、染めて使うことも多いです。

耐熱・耐衝撃に優れ、環境にも配慮された製法
今回は、スポーツやユニフォームにおすすめの「ジャポムボタン」を例に説明させていただきます。こちらのボタンは高い耐久性を持っています。耐熱性160℃×30秒×4回あてても、ドライクリーニング(石油・パークロ)リネンサプライを5回連続使用しても変化がないほどです。あらゆるクリーニングに対応しているというのがこのボタンの特徴です。
また、製品を溶かして再形成するという製法なので、100%リサイクルで無駄な材料ロスがないというのも特徴の一つです。丈夫で尚且つ環境にやさしいボタンということですね。
カラーバリエーションが豊富で汎用性あり
こちらのボタンのおすすめポイントは、カラーバリエーションの豊富さです。
定番色60色に加えて225色のオプションカラーがあるので、提案の幅が広がります。
また、スポーツやユニフォームなど、様々な使用用途に合わせて使うこともできます。
丈夫=素材だけではなく”形状”もポイント ~猫目ボタン~

先程耐熱・耐衝撃に優れていると記載しましたが、丈夫さは素材からくるものだけではありません。
猫目ボタン(Cat’s Eye Buttons)
猫目ボタン(Cat’s Eye Buttons)には、猫目型の歪みによって付け糸が引っ張られず、擦れない、糸切れしにくいという機能があります。
先程の「ジャポムボタン」にも猫目バージョンがございます。
タヌキ穴ボタン

タヌキ穴ボタンはボタン穴に傾斜があるので、ボタンの穴の角に糸が当たって摩擦で糸が切れてしまう現象を軽減することができます。
パラシュートボタン

パラシュートボタンはテープを通して固定するボタンです。テープ部分を縫い付けるのでほつれにくく、丈夫につけることができます。
【比較表】用途別おすすめボタン早見表
| シーン | 素材例 | 特徴 | 注意点 |
高級感を出したい | 水牛・貝・ナット | 天然の風合い・経年変化(着て育てる) | 洗濯NGなものも多い・割れやすい・高価格・個体差 |
| 取り扱いやすさ | ポリエステルボタン・ユリアボタン | 洗濯OK・低コスト・カラーバリエーション豊富 | 安っぽく見えてしまう場合も |
| 子供服 | NG素材⇒ユリア樹脂・カゼイン ウッド(合板使用)・ABS樹脂 | 作業工程にホルマリンを含む | サンプル帳のマークを確認 |
| ナチュラル・エコ | ウッドボタン・バイオマス素材ボタン(バガスボタン等) | 環境配慮素材・自然な風合い・話題性有り | 強度や水濡れに注意 |
| 耐久性重視 | ナイロンボタン/猫目ボタン | 耐熱・耐衝撃/糸が切れにくい | 安っぽく見えてしまう場合も |
ボタン選びに困ったらクロップオザキへ!
最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。ここまで読んだあなたはもうボタン選びに困ることはありません。それでももしこんな悩みを抱えた方は、お気軽にご相談ください。
サンプル帳の見方が分からない…。実際に生地と合わせて選びたい!ほかにもあらゆるお困りごとに耳を傾けます。
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&CROP編集部の野崎です。普段何気なく留めたり外したりしているボタンですが、着ている服に何㎜の大きさのボタンが使われているのか、ご存知ですか?ボタンのサイズはアイテムやデザインによってもさまざまで決まりがあるわけではありません[…]
&CROP編集部の野崎です。アパレルブランドを運営されている方が、作っている服にさらに付加価値を付けたいブランドとして何か特別感を出す方法はないか細部までこだわって服づくりがしたいと考えたときに、オ[…]
参考資料
株式会社アイリスSMALL BUTTON COLLECTION
株式会社幸徳ボタンLEATHER & WOOD BUTTON COLLECTION
株式会社日東ボタンSCOTCH BUTTON COLLECTION 1
株式会社日東ボタンSCOTCH BUTTON COLLECTION 2