ビギナー必見!生地見本帳と生地規格書の見方をわかりやすく解説。代表的な生地サプライヤーもあわせて紹介します。

&CROP編集部の瀧澤です。今回は特に初心者の方向けに生地(表地)見本帳の見方をわかりやすく解説して行きます。表地・裏地を含めてファッションに使われるテキスタイル素材にはとても多くの種類があります。そしてファッションにおいてメイン素材となるテキスタイルを選ぶときに見本帳を見ないで素材を決定することは余程のベテランでもあまりありません。見本帳には現物の生地スワッチが貼り付けてあるので生地の色・風合い・厚みなどを実際に手に取って確認することができるからです。最近では画像の精度が上がったことでオンラインでもおおよその感じを知ることはできます。それでもやはり見本帳の重要性は変わりません。加えて見本帳にはターゲットとなる生地の様々な情報が記載されているので、これらの情報の見方を熟知していればターゲットとなる生地の特性を一瞬で把握することができます。しかし見方を知らないと記載されている内容は暗号にしか見えないので、生地の見本帳を見た時に…? ? ?がいくつか浮かんだことがある方は是非お付き合いください。私も初めて生地見本帳を手にしたときは頭の中が?マークだらけだったのを思い出します(笑)。そして、さらに生地に関する詳しい情報が記載されている生地規格書というものもあります。これは生地を輸出する際のINVOICEを作成するときなどに必要となる書類で、生地に関する必要な情報が全て記載されています。今回はこの生地規格書の見方もあわせて解説していますので興味のある方は是非最後までお付き合いください。

見本帳の基本的な記載事項

生地見本帳はサンプル帳・スワッチ見本・カラーカードなどとも呼ばれます。それぞれ若干のニュアンスの違いはありますが、メーカーや用途によっても色々なタイプがあり、台紙の色・材質・厚みもさまざまで、専門の業者が作成したサンプル帳から手書きのスワッチ見本まで用途や目的によっていろいろなタイプがあります。それでも記載されている基本的な情報や見方はどれもほほ同じですので基本的な事を把握しておけば大丈夫です。ではとりあえず実物の見本帳を見てみましょう。

まずは弊社の手書きの見本帳で基本的な記載事項を確認してみましょう!

左上の一番上からDesign No ・Size・Quality・Articleとなっています。

  • 1行目 Design No  K4995 生地の品番 基本的にはこの品番を伝えることでメーカーにはどの生地なのかが分かるようになっています。
  • 2行目 Size 112/114cm × 50M 生地の規格 112/114cmは生地の有効巾(センチメートル)を、50Mは1反の巻きメーター数を表しています。112/114となっているのは仕上がり状態や色によって巾に多少の前後があることを表します。また巻きメーター数を50M乱のように記載している場合は反によって巻きのメーターに前後があることを表します。
  • 3行目  Quality  綿100% はこの生地の混用率が綿(cotton)100%の素材であることを表していますが、混用率はメーカーや人によっても表記方法が違う場合があるので次項で詳しく説明しています。さらに後ろに記載している370g/mはこの生地の目付です。この生地は生地巾1mあたりの重さが370gであることを表し、またこの表記が370g/㎡の場合は1平方メートル当たりの重さですので注意してください。稀に海外の生地ではyadで表示されている場合もあります。また370g/smと記載されている場合はシングルメーターの意味で370g/mと同じです。
  • 4行目 Articleには糸使い生地名加工などを記載している場合が多いです。この生地は8/1×8/1(タテヨコとも8番単糸でかなり厚手)を使ったバッファローチェックで起毛加工をしていることがわかります。
  • 一番右下には弊社のロゴが印字されています。

これらの記載項目はメーカーやデザインによって多少表記が変わりますが基本的な項目はほぼ同じですのでここからは色々なメーカーの見本帳を見ながら解説していきますが、でもその前に見本帳で良く使われるな混用率の略表記と糸の表記について説明しておきます。

混用率の略表記

生地の混用率の記載では素材名をそのまま書くと長くなるため略式表記することが多いのです。メーカーや人によっても若干違う場合がありますが基本は同じです。

混用率の略表記 素材名 備考 ※注この表の表記は繊維製品指定表示の指定用語を表しているわけではありません
W  WO 毛

ウール・羊毛

獣毛素材にはMH(M):モヘア CA:カシミヤ・キャメル ANG(AG):アンゴラ ALP(AP):アルパカ等もある

C    CO 綿・コットン
S    SI 絹・シルク
F Li  Ra フラックス リネン ラミー

麻には様々な種類があり一般的にはリネン(L/LI)ラミー(RA/R)または麻と表記する場合が多いです

まれにF(flax)と表記されている場合もありますがflaxはリネンを紡績する前の亜麻を指します。

P PE PET   T ポリエステル

ポリエステルはPまたはPEと表記されることが多いですが、かつてテトロンと言う商標で呼ばれていたことから

T(テトロン)と表す場合もあります。ちなみにT/Wはポリエステル・ウール、T/Rはポリエステルレーヨンのこと

N NY   PA ナイロン

ナイロンはNまたはNYと表記されることが多いですが海外の素材ではPA(ポリアミド)と表記されています

ACE  TA

アセテート トリアセテート

一般的にアセテートはACEまたはAC、トリアセテートはTAまたはTACと表記されます

A    ACR  MA

アクリル モダアクリル

アクリルはAまたはACR MAはモダアクリルの意味

R    RY

レーヨン

VIS(ビスコースレーヨン)PN(ポリノジックレーヨン)と表記される場合もある

CU

キュプラ

 

PU     OP

ポリウレタン

PU(ポリウレタン)は海外ではOP(オペロン)と表記されることが多い

その他の略表記

上記以外にもPP(ポリプロピレン)やポリエステルの種類でPBT(ポリブチレンテレフタラート)やPTT(ポリトリメチレンテレフタラート) ・H/HE(ヘンプ)などがあり略表記はメーカーによっても異なる場合があります

糸の表記

糸の表記方法は本来、別の記事で書かなければならないくらい複雑で判りにくいのですが、ここでは見本帳を見る際の基本的な見方を下表で説明します。糸に種類や表記についてのさらに詳しい解説は下記の記事もあわせて読んでください。

表記 備考(×記号の左側が経糸、右側が緯糸の糸使いを表しています)
 40/1  × 40/1

この場合はタテヨコともに40番単糸を使っています

100/2  × 80/1 タテ 100番双子糸 ×  ヨコ 80番単糸

60/1+40/1 × 60/1

タテ 60番単糸と40番単糸 × ヨコ 60番単糸
80/1+CSY60/1(※1) × RY50/1(※2)+CSY60/1

タテ 80番単糸と60番単糸のコアスパンヤーン

ヨコ レーヨン50番単糸と60番単糸のコアスパンヤーン

※1:CSYはコアスパンヤーンの略、この場合はポリウレタンフィラメントを芯にコットンでカバーリングしたストレッチ糸

※2:RY50/1この表の素材ベースは綿なので、綿(C)は省略して異なる素材が使われている場合は分かりやすいように糸番手の左に略表記を入れる場合があります。

アパレル資材研究所 「&CROP」by株式会社クロップオザキ

糸はテキスタイルを構成する主素材で縫製や意匠にも必須の素材です。さまざまな素材や太さの糸があり、その組み合わせは無限です…

代表的なサプライヤーと見本帳を紹介!

マスダ(株)

 マスダ株式会社は合繊素材を中心にカラーストック販売をしている生地メーカーで、国内生産のスポーツ向け合繊素材の品ぞろえがが豊富です。見本帳はポリエステル100%の定番ストレッチタフタで撥水加工が施されています。取り扱い方法や素材の簡単な説明が表記されていてスワッチ見本の下に機能下げ札の見本もついています。

マスダ株式会社はテキスタイル・繊維資材生地からアパレル製品まで、「繊維製品に関する製造機能を持った商事会社」です。皆様が…

株式会社サンウェル

天然繊維から化合繊、複合繊維までファッションアパレル向けの素材を幅広くストック販売しています。見本帳はコットン100%の薄手素材で機能性を表すアイコンや生地の特徴、取り扱い上の注意点も記載されています。生地の実巾と有効巾が両方が記載されています。

株式会社サンウェル

株式会社サンウェル(SUNWELL)は、テキスタイルからアパレル、リテールまで一貫して担い、消費者を見据えたファッション…

 

双日ファッション株式会社(VANCET)

 

双日ファッションはサンウェルと並んで多品種のカラーストック展開をしている繊維商社です。定番的な綿や合繊素材・カットソー・ウール・先染・プリントなど幅広い商品展開をしています。見本帳はコットン100%16番単糸の引きそろえ天竺で同クオリティでボーダーの展開もあることがわかり、用途やアテンションも記載されています。

 

 

 

 

VANCET‐NETは、双日ファッションが運営するテキスタイル通販サイトです。約1,600品番、20,000色の豊富なラ…

桑村繊維株式会社

桑村繊維は兵庫県の西脇産地で主にシャツ地を生産している産元メーカーです。10のセクションあり、セクションごとにカラーストック販売もしています。見本帳はテキスタイル1部2課の先染めシャツ地の見本帳です、この素材は綿とポリエステルであることがCOMPOSITIONから判ります。左上にカラーナンバーが記載されていて上から1~4となっています。またアイコンからオーガニックコットンとリサイクルポリエステルを使用していることや中国製生地であることも表示されています。

 

 

 

桑村繊維株式会社

昭和3年創業。繊維会社、桑村繊維株式会社のコーポレートです。蓄積された技術をもとに先見性と独創性を発揮しながら、ファッシ…

柴屋株式会社

自社のオリジナルテキスタイルを含め全国の産地のテキスタイルを取り扱うサプライヤーです。見本帳は焚火ブームで引き合いの多くなっている難燃性素材、compositionを見るとコットンとモダクリルになっています。モダクリルはアクリル繊維の一種で難燃性が求められるテキスタイルに使用されることが多いです。見本帳には難燃繊維であることを示す下げ札のサンプルがプリントされています。

柴屋株式会社 | 先鋭性と110年以上の伝統が誇る大阪の繊維商社

JAPANESE TEXTILE COMPANY "SHIBAYA".日本の天然繊維を世界広める繊維商社・柴屋株式会社で…

宇仁繊維株式会社

薄地から中肉までの無地とプリントテキスタイルをストック販売しています。とくに合繊プリントのバリエーションと無地を同じクオリティでストックしていてプリントの種類が豊富です。見本帳は資材用でも引き合いが多い定番のポリエステル製二越ちりめんでカラーバリエーションが豊富です。

宇仁繊維株式会社

宇仁繊維は「小紋工房」のブランド名で、オリジナルテキスタイルを展開しています。多品種、小ロット、超クイックレスポンスでお…

瀧定名古屋株式会社

瀧定名古屋は名古屋市に本社のある繊維専門商社で婦人服地部・紳士服自部・ニット服地部があり、その中の各セクションごとにオリジナルテキスタイルをストック販売しています。見本帳は輸入生地をメインに取り扱っている03課がストック販売しているポーラテックアルファダイレクトの見本帳です。素材はポリエステル100%ですがブランド力を反映させたインパクトのある見本帳ですね。

瀧定名古屋株式会社|創業150年余の歴史を誇る繊維専門商社

瀧定名古屋は150年以上の歴史を持つ繊維専門商社で、テキスタイル・アパレル製品を扱います。大手メーカーや流通業に対し、素…

STYLEM瀧定大阪株式会社

STYLEMは大阪府に本社を置く繊維専門商社で、テキスタイル1部が主にオリジナルストック生地の販売をしています。瀧定名古屋同様にセクションごとにオリジナルの生地を企画して販売しています。見本帳はカットソーを中心に取り扱う27課のカールマイヤー素材でポリエステルとポリウレタンが使われています。ECOPET®は帝人のリサイクルポリエステル素材です。

スタイレム瀧定大阪株式会社ウェブサイト

テキスタイル業界をリードする繊維専門商社であるスタイレム瀧定大阪株式会社のウェブサイトです。企業情報、事業紹介、グローバ…

比較的取り扱い品種の多いサプライヤーを紹介しましたが、まだまだ沢山の生地メーカーや問屋があり紹介しきれないのでこの辺でお許しください(笑)

次項では生地規格書とその見方を簡単に解説したいと思います。

生地規格書とは

生地規格書は原反規格書・輸出用生地規格書などとも呼ばれ、ターゲットの生地の情報が記入された書類です。通常は生地を輸出する際のINVOICE等に必要事項を記入するの時にメーカーに請求して提示してもらいます。商品の詳細情報が記載されているため一般にはあまり公開しない内容なので下図の原反規格書は品番を消していますが通常は生地の品番が入ります。書式や記載されている項目はメーカーによって多少違いがありますが基本的には大体同じです。次項で内容を簡単に説明します。

生地規格書の見方

①通常は正式品番を記載

②品名(和名)はメーカーによってそれぞれで特に規定はありません

③英文名もメーカーによって表現が若干変わります

④混用率は総合混用率が%で記載されています

⑤生地規格は生地の巾(㎝)と巻(M)、輸出用規格書の巾は有効巾ではなく端から端までの全巾を記載しています

⑥糸番手と打ち込み本数は通常別項目でに記載している場合が多いです。×の左側が経糸・右側が緯糸の番手で下段は打ち込み本数(1インチあたり)です。この生地では経糸にポリエステル/綿混紡の45番単糸が1インチ間に137本の密度で緯糸は経糸と同じ糸をを用いて1インチの密度が72本に仕上がるように設計されていることがわかります。

⑦目付はここでは1㎡と巾なり1mの両方が記載されています 

⑧原反が外側表か中側表かが記載されています

⑨原産国は最終加工された国を記載 ex:生機が海外製でも染・仕上げを日本で行えば原産国は日本になります   

 

まとめ 

生地見本帳は生地を販売するための重要なツールなのでターゲットの生地に関する様々な情報が記載されています。はじめは少し判りにくくても沢山の見本帳を見ているうちに生地に関する色々なことが一瞬でわかるようになるので機会を作って沢山の見本帳を見ると良いと思います。色々なサプライヤーや生地屋さんの展示会に行くのもお薦めです。慣れてくると見本帳の画像だけでもおおよそどんな生地なのか想像がつくようになり、昨今のようにネット環境が整ってくるとわざわざ足を運ばなくてもどこに探している生地があるか分かるようになります。そのためにも生地を見るのが楽しいと思えるうちに(笑)沢山見本帳を見て・触って・匂いを嗅いで体に覚えさせておくと良いですよ。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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