&CROP編集部の野崎です。
中綿を生地で挟むキルト加工。お好きな生地と中綿を組み合わせて、オリジナルのキルト加工ができることをご存知でしょうか。今回は、アパレルブランドを運営しており、オリジナルでキルト加工を作成したいと考えている方へ向けて、キルト加工に使用する素材の選び方や注文の流れ、費用感について分かりやすく解説します。
「キルト加工を作成したいけれど、どのように依頼すればよいか分からない」「キルト加工に使用できる生地の基準を知りたい」という方に、ぜひお読みいただけたら嬉しいです。
もくじ
キルト加工とは?既製キルトとオリジナル制作の違い
キルト加工の基本構造
キルト加工とは、中綿を生地で挟み、上からステッチ(縫い目)で抑えて固定する加工のことです。生地で中綿を挟むため、防寒性に優れており、秋冬のコートなどのアウターでよく見かけます。また、ステッチによってできる模様は「キルト柄」と呼ばれ、保温性だけでなくデザイン性も兼ね備えている点が特徴です。

既製品キルトとオリジナルキルト
あらかじめキルト加工が施された状態で販売されている生地もあります。ダイヤ柄やひょうたん柄など、裏地として保温性を高める目的で使われるタフタ素材のキルト生地は、既製品でも一定数展開されています。既製品キルトは、在庫があれば数日で取り寄せ可能な点がメリットです。一方で、オリジナルキルトの場合は加工納期が必要になりますが、生地の種類や中綿の厚み、キルト柄などを自由に選び、細かくカスタマイズすることができます。
本記事では、オリジナルでキルト加工を依頼する場合について詳しく解説していきます。
キルト加工の種類|両面キルトと片面キルト
キルト加工には、大きく分けて「両面キルト」と「片面キルト」の2種類があります。
両面キルトとは
両面キルトとは、表裏ともに生地で中綿を挟んだキルトのことです。表裏で異なる種類の生地を使用することも可能です。
アウターに付属する脱着可能なライナーや、インナーダウンなどは、両面キルトで作られていることがあります。

片面キルトとは
片面キルトは、片面のみ生地で中綿を挟んだキルトのことです。表地は別で用意し、キルト柄を表に見せず、裏地としてキルトを使用する場合に用いられます。またその逆に、裏地側にはキルト柄を見せず、表地としてキルトを使用する場合も、片面キルトが選ばれます。コートなど防寒を目的とした重衣料では、両面キルトで表裏ともにステッチが入ると風を通しやすくなるため、片面キルトが使われることが多い印象です。一方、インナーダウンやライナーなど、上からさらにアウターを羽織る前提のアイテムでは、両面キルトの商品も多く見られます。

スパンボンドは入れるべき?役割と考え方
スパンボンドとは
スパンボンドとは、中綿と生地の間に挟む不織布のことです。主に、中綿の「吹き出し」を防ぐ目的で使用されます。
※吹き出しとは、中綿の繊維が生地の繊維の隙間から出てきてしまう現象のことを指します。
スパンボンドは必ずしも必要というわけではありませんが、キルトに使用する生地の通気度が1cc以上の場合、使用を重ねるうちに中綿が吹き出してしまう可能性があります。そのため、このような場合はスパンボンドを挟むことを推奨しています。また、別の役割として、キルトの裏側にスパンボンドを挟むことで、キルティングした際に立体感が出やすくなることもあります。立体感の出方は、生地や中綿の種類にも左右されますが、仕上がりを調整する目的でスパンボンドを使用するケースもあります。
キルト加工で使用する素材の選び方
① 生地の選び方
キルトの表裏に使用する生地は、中綿の吹き出しを防ぐため、密度の高い生地を選ぶのがおすすめです。通気度1cc以下の生地であれば、スパンボンドを挟まなくても比較的安心して使用できます。
一般的に、ニットやカットソーなどの編み組織は、伸縮時に編み目が開きやすいため、キルト加工にはあまり適していません。使用する場合は、ハイゲージ(目の細かい)素材を選ぶようにしましょう。織物の場合、タフタ・サテン・ツイルなど幅広く使用されていますが、特に裏地用途のキルトでは、密度の高いタフタが使われることが多いです。
また、生地の素材自体は問いませんが、中綿の素材との摩擦によって静電気が発生すると、中綿が生地の内側に張り付き、吹き出しが起こりやすくなるため注意が必要です。例えば、ポリエステル中綿に対してウールやナイロン素材の生地を使用する場合は、帯電防止機能付きの中綿を選ぶなど、静電気対策を行うことをおすすめします。
また、生地を選ぶ際には厚みやハリにも注意が必要です。厚みやハリのあるしっかりした生地は、中綿を挟んでキルト加工をしてもボリューム感が出にくい傾向があります。ふんわりとしたキルト生地を作りたい場合は、風合いのやわらかい生地を選ぶと良いでしょう。

② スパンボンドの選び方
スパンボンドを挟む・挟まないかの基準は、前述の通り、生地の通気度が1cc以下であれば「挟まなくても可」、1cc以上の場合は「挟むことを推奨」となります。スパンボンドは表から見えない素材のため、色展開は白1色のみであることがほとんどです。キルト加工場に在庫のある品番や、中綿と同じメーカーでまとめて手配できるものが選ばれるケースが多くなります。スパンボンドの種類による仕上がりの差はそれほど大きくないため、過度に慎重になる必要はありません。
③ 中綿の選び方
続いて、中綿の選び方についてです。
素材で選ぶ
中綿の素材は、ポリエステルが主流です。そのほか、軽量なポリプロピレン製中綿や、天然繊維の保温力・調湿性を生かしたウール混、キュプラ混の中綿もあります。
機能で選ぶ
中綿には、機能性を付加した「機能中綿」もあります。例えば、湿度に反応して発熱する吸湿発熱素材、マイクロファイバーや中空糸を使用して空気を多く含み保温性を高めたもの、帯電防止糸を使用した静電気防止中綿、ストレッチ性のある中綿などです。製品の着用シーンに合わせて、機能性中綿を選ぶのもおすすめです。


厚みで選ぶ
中綿には、同一商品でも複数の厚みが展開されていることが多くあります。中綿の厚みやハリ感によって、キルト加工後のボリューム感は大きく変わります。実際の仕上がりは、加工してみないと分かりにくいため、可能であればサンプルで確認するようにしましょう。

素材選びで注意したい点
仕上がり幅は一番生地幅が狭い素材に合わせられる
キルト加工で注意したいポイントのひとつが「生地幅」です。キルト加工では、生地・中綿・スパンボンドを重ねてキルティングしていくため、仕上がりの生地幅は、最も幅の狭い素材に合わせられます。例えば、生地が92cm幅の場合、中綿やスパンボンドが150cm幅であっても、完成するキルト生地は92cm幅になります。幅が合っていないとロスが発生してしまうため、できるだけ近い幅の素材を選ぶことをおすすめします。


キルトの仕上がりが思っていたのと違う
「思ったよりボリュームが出ない」「想像以上にボリュームが出た」と感じるケースも少なくありません。キルトのボリューム感は、生地の厚みやハリ、中綿の厚み、スパンボンドの有無、キルト柄のサイズによって決まります。仕上がりがイメージと異なる場合は、以下のポイントを見直してみてください。
キルトのボリューム感が出ないときに確認したい4つのポイント
- 生地の厚みやハリは適切か(厚い・ハリが強い場合はボリュームが出にくい)
- 中綿の厚みは適切か
- スパンボンドを裏側にも挟んでいるか
- キルト柄が細かすぎないか
キルト加工の依頼方法と注文の流れ
ここからは、キルト加工を依頼する際の方法と、実際の注文の流れについてご紹介します。
発注時に必要な情報
- 生地・スパンボンド・中綿の品番
- キルト柄(品番指定)
- 加工メートル数
キルト柄の選び方
柄見本の中からキルト柄を選びます。キルト柄には、ダイヤ柄やひょうたん柄などさまざまな種類があります。数年前にはひょうたん柄が流行したように、キルト柄にもトレンドがあります。

加工数量と費用感の考え方
サンプル作成の場合、3m程度から加工可能なケースもあります。ただし、生地や中綿は1反(商品にもよりますが約50m)単位で購入した方が単価は下がるため、少量加工の場合は割高になりがちです。そのため、経済ロットは1反を目安に考えておくと良いでしょう。
まとめ|迷ったら早めに相談するのがおすすめ
いかがでしたでしょうか。キルト加工は、生地・中綿・キルト柄など、選択肢が多く組み合わせもさまざまです。加工が必要な分、「ハードルが高そう」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と小ロットからオリジナルキルトを作成することができます。キルト加工や、そのほかのアパレル資材について「相談しながら選びたい」「まずは話を聞いてみたい」という場合は、お気軽にお問い合わせください。ここまでお読みいただき、ありがとうございました!