&CROP編集部の瀧澤です。テキスタイル初心者の方にとって、一見どれも同じように見える「平織り」の生地を見分けるのは難しいものです。私自身、はじめて生地を扱うようになったときはまるで区別がつきませんでした。そこで、今回は特に見分けにくい平織のプレーンな生地についてそれぞれの特徴や用途を整理し、初心者の方でも理解しやすいように解説をしました。結論から言うと生地を覚えるには沢山の生地に触れるしかないのですが、あわせて基本的な知識があると理解がより一層深まります。この記事では代表的でプレーンな平織の種類や用途を解説しています。
プレーンな平織り生地の見分け方
織物の三大組織の一つである平織は最もシンプルな組織の織物です。素材・糸の番手・撚糸・経緯の打ち込み本数の組み合わせでとても沢山の種類があります。今回は平織生地の中でも最もプレーンでアパレル製品や手芸店などで広く扱われている、手にする機会が多いけれども、どれも良く似ていて見分けがつきにくい、ブロード・タイプライター・シーチング…などの違いや特徴・用途・見分け方をわかりやすく解説します。
そもそも「平織り」ってどんなもの?
**平織り(ひらおり)**は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に浮き沈みさせて織る、最も単純で基本的な織り方です。組織点(糸が交差する点)が多いのでハリ感があり、摩擦に強く、丈夫で表と裏が同じ組織になるのが特徴です。 応用範囲が広く、厚地ではキャンバスや帆布、2本以上の糸を引き揃えて織ったオックスフォードなどがあります。そしてもっとも代表的で良く知られているのは綿のブロードです。他にもシーチング・ウェザー・ガーゼ・ローンのような実用的な生地に広く使われている織り方です。
織物の組織についたは下記のリンクもあわせて参照していただくと理解が深まります。
似ている平織生地の特徴と見分け方
平織り生地は、使用される糸の太さ(番手)や密度の違いによって、その表情や用途が変わります。下表では代表的な綿(コットン)の平織の生地を一覧で比較しています。
| 生地名 | 糸の太さ(糸番手) | 特徴・質感 | 主な用途 |
| ブロード | 40番単糸~120番双子 |
滑らかで上品な光沢 緻密で高級感がある |
ワイシャツ・シャツ・ブラウス |
| ポプリン | 中~細番手 | 柔らかく通気性が良い 横方向に細い「畝(うね)」がある | ワイシャツ・シャツ |
| シーチング | 20番手前後 |
やや粗めで素朴な風合い 針通りが良い 安価 |
仮縫い(トワル) 寝具 |
| タイプライター | 60~120番手 | 高級細番手糸を使用し軽量・高密度 紙のようなハリ感がある | シャツ・ダウンの表地 |
| 金巾(かなきん) | 30~40番単糸 |
薄手で丈夫、均一で畝はない 和風のイメージ |
風呂敷・座布団カバー 手芸用 |
プレーンな平織生地の詳細解説
ブロードクロス broadcloth
一般にはブロードと呼ぶことが多いです、英国ではブロードと次項のポプリンも含めてポプリンと呼んでいます。ワイシャツに使われる代表的な生地でポプリンと似ていますがポプリンより細番手の糸を使用していることが多いです。40番単糸または60番双糸以上の糸で、たて糸はよこ糸の1.5~2倍で織ったものを言います。繊細なよこ畝が見られますがポプリンほどには目立ちません。40S・50S・60/2が一般的ですが細番手になるほど光沢があり高級感が増します。80~120番双子のブランド超長綿を使用してシルケット加工や防縮加工を施した高級シャツ地も多くあります。
ポプリン poplin
ワイシャツ地に代表される緻密で通気性に優れた柔らかい手触りの織物。たて糸はよこ糸より細い糸を使用し、密度を2倍近くしているため、横方向に細い畝(うね)があらわれるのが特徴です。前項のブロードはもとはポプリンの一種ですがよこ畝があまり目立たない違いがあります。元々は絹とウールを交織したよこ畝のあるアイルランドの伝統織物「アイリッシュ・ポプリン」の事を指していましたが現在は世界的に有名なシャツ生地メーカー、トーマス・メイソン(THOMAS MASON)などが創業したランカシャー地方で織られた綿の「ランカシャー・ポプリン」を指しています。
シーチング sheeting
20番手前後の糸で、たて糸・よこ糸がほぼ同じ密度の、やや粗めの綿の平織物。生成りの生地に厚く糊付けしたものが多く使われていますが、晒・無地染も多く流通しています。安価で針の通りが良く、服の芯地や仮縫いによく使われるほか、手芸用、シーツ、カバーなどの用途や素朴な風合いを好んで服地として使用されることも多いです。シーチングのという呼び方は元々、米国でシーツ用の平織物を指していたことに由来します。また安価なことからスレーキとしても良く使われているのでシーチングとスレーキを混同しやすいです。スレーキには様々な生地が用いられ、シーチングは生地の種類をスレーキは用途を表しています。
タイプライター・クロス typewriter cloth
タイプライター・クロスは業界ではタイプライターと呼ばれることが多いです。スーピマ綿・エジプト綿などのブランド超長綿を使用した細番手(60~120番)の双糸または単糸を高密度に織ったきめが細かく平滑でハリ感の強いペーハーライクな風合いが特徴です。綿100%のほか綿/ナイロンの交織のタイプライターも人気があります。タイプライタークロスと呼ばれる語源についてタイプライターのインクリボンに用いられていたという説をよく見かけますが「タイプライタークロス」という名前の生地が工業規格としてリボンに広く用いられていた、という形で確認できる一次資料は、少なくとも一般に出回っている情報では確認できません。個人的にはハリのあるペーパーライクな風合いからの連想で誰かが言ったのが一般的なったと考える方がシックリします。
コットン・ダウンプルーフ cotton downproof
ダウンウェアや羽毛布団に使用する生地から羽毛の吹き出しを防ぐ加工を施した生地。綿の場合は細番手高密度の生地の目を高温高圧のローラーでつぶす方法や樹脂コーティングでふさぐ方法があり、綿ダンプ・コットンダンプまたはただダンプと呼ばれます。
ウエザー・クロス weather cloth
weatherproof(風雨に耐える)防水性・防風性のある生地の意味で、一般にはウェザーと言うことが多いです。高密度の平織りの生地に撥水加工や防水加工を施して元はミリタリー用に使われていました。比較的薄手軽量でハリのある生地で素材は綿100%をはじめ綿とポリエステルの混紡タイプが多く、カジュアルウェアやアウトドアウェアなどにも広く使われています。
金巾(かなきん)
30~40番くらいの単糸で織られた定番的な綿織物。経糸と緯糸をほぼ同じ密度でスクエアに織っているのでポプリンのようなよこ畝ではない。元はブラウスなどに使われていた薄地の生地ですが衣料用途の需要は減って和風のイメージから最近では風呂敷や座布団カバー・インテリア・手芸用途の需要が主体です。元来はインドの手織り木綿の事を言い「インド更紗」の生地に使われる。金巾を加工したものに後述するキャラコやキャンブリックがあります。
キャラコ calico
キャリコとも言い、前項の金巾にカレンダー加工(ローラーで熱と圧力をかけて光沢を出す加工)を施してパリッとした表面感に仕上げしたものを言う。もとはインドキャラコの事を指し、17世紀後半にイギリスでは更紗柄のキャラコが大ブームを巻き起こして伝統的な毛織物産業に大打撃を与えました。日本では足袋用の生地として知られています。
キャンブリック cambric
細番手のリネンを使用した高級リネンの薄地織物(シアーリネン)に似せた平織のリネン織物をキャンブリックと言い、目が細かシャリ感があって柔らかい風合いが特徴ですが、綿素材のキャンブリックは40~60番手で織った金巾にキャンブリック加工(漂白・糊付け・カレンダー加工)を施した生地をコットンキャンブリックと呼んでいます。
まとめ
見分け方をわかりやすく解説するつもりでしたが…正直に言って判りにくいと思いますし、生地の画像だってシャッフルされたら自分でも答え合わせに困ります(笑)。無地の綿(コットン)の平織りって本当に色々な種類や呼び方があって相当に慣れないと判りにくいです。私自身もちゃんと理解している自信が無かったので、今回は改めて勉強するつもりで記事を書きました。今はネットで調べればおおよその事は判りますが、手触り・見た目・匂い・味…? 実際に触れて、お客様に使っていただき、おつり(クレーム)も、もらって徐々に覚えるしかないので出来るだけ沢山の生地に触れてみてください。無地の平織だけでもまだ他にオックスフォード・タッサー・グログラン・ホップサック…など、さらに薄地平織にはローン・ガーゼ・シフォン・楊柳・ファイユ・ボイル…などまだまだ種類があります。加えて同じ生地にも色々な呼び方があったりします。今回は最もプレーンな生地に限定して紹介したので他の平織や綾織の生地についてはまた別の機会にご紹介して行きたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。