こんにちは!&CROP編集部の野崎です。
10月28日(土)に、尾州地域(愛知県と岐阜県の木曽川が流れるエリア)で行われた「ひつじサミット尾州」に参加してきました!
ひつじサミットは、ウール生地の産地である尾州地域で工場見学やワークショップ、ショッピングや美味しい飲食などを通して【持続可能性】を体感する地域のオープンファクトリーイベントです。
織り工場・編み工場や染色工場(カセ染め・チーズ染め)など、糸から生地ができるまでの過程を見ることができるイベントで、とても勉強になり、楽しかったです。
今回は、中伝毛織さまの工場見学ツアーをレポートしていきたいと思います。
中伝毛織とは
中伝毛織は、染色から織り・編み・整理工程まで自社で一貫した生産体制をもつ生地の製造・販売会社です。織機はレピア型織機やエアージェット型織機、編機は丸編み(シングルニット・ダブルニット)と横編(コンピュータ横編機)、ホールガーメント機など、幅広い機械が揃っています。
今回ひつじサミットでは「織り&丸編み&横編み 全部見せます!工場見学ツアー」として、尾州の生地がどのように作られているのか分かりやすくご説明いただきながら工場を見学するツアーを実施していました。
本記事では、ツアーの様子をレポートしながら、生地がどのように作られているのかをご紹介したいと思います。
「織物」と「編物」の違いって?
レポート前に「織物」と「編物」の違いをおさらいしたいと思います。「織物」とは、糸を経緯(たてよこ)に組み合わせて作った生地のことです。経(たて)の糸と緯(よこ)の糸が直角に交わって、面をつくっていきます。
それに対して「編物」は、経糸(たていと)は無く、緯糸(よこいと)だけでつくられる生地で、ループを繰り返していくような形で1目1目編むことで面をつくっていきます。
工場ツアー~織り~
整経(せいけい)の様子
織物をつくるには、まず経糸(たていと)を準備する必要があります。必要な経糸の本数を揃えて、長さや張力を適切に合わせ、織機にセットできるように並行に並べることを「整経(せいけい)」といいます。
シリンダー(写真でグレーの糸がかかっている、大きいボビンのようなもの)をクリルに並べていきます。このシリンダーの糸1本1本が、経糸になります。写真ではグレーの糸ですが、柄物の生地の場合は、柄の配列に合わせてシリンダーを配置するそうです。
1つ間違えれば違う柄になってしまうため、とても重要な作業です。
ちなみに152cm巾の生地をつくる場合、経糸は3000本~4000本も使われているそうです。
クリルから集められた糸は、蜘蛛の巣のようにまとめられながら、穴を通ってビームというさらに大きいボビンのようなものに巻かれていきます。
織物の柄は、経糸が1柄で何本並べられるかによってサイズが異なります。中伝毛織は、1柄で1008本まで並べることができ、ビックチェックと呼ばれるような大きな柄物まで対応できることが強みだそうです。
尾州産地は部分整経
整経には、荒巻整経と部分整経の2種類がありますが、中伝毛織を含め尾州産地では「部分整経」の方法がとられています。
部分整経とは、例えば150cm巾の生地なら、15cmずつを10回に分け、部分部分で整経する方法です。手間は掛かりますが、比較的小さなスペースでも整経できることが特徴です。
糸を巻きなおす工程(ワインダー)
糸を巻きなおす工程のことを、ワインダーと言います。
基本的に糸メーカーから糸を購入すると紙管(紙でできた筒)で届きます。しかし、糸を染色してから織りたいときは、紙管のまま染色すると濡れてふにゃふにゃになってしまうため、PP製(ポリプロピレン製)の管に巻きなおします。
PP管は、染色の際に管の内側から外側に染料をしみこませるようにして染めるため、穴が開いた構造になっています。
織機にセットして緯糸(よこいと)を通す
やっと織機にセットできる段階まできました。ビームに巻いた糸を、1本1本ドロッパーに通していきます。ドロッパーとは、織っている途中に経糸が切れてしまった際に、織機を止めてくれる機能を持った穴です。
そして次に、綜絖(そうこう)と呼ばれる部分にも通していきます。綜絖(そうこう)が上下することで、平織り・綾織などの織り方を区別することができます。
手作業だと20時間ほど掛かるそうなのですが、ドローイングという機械を使うと、1時間まで作業時間を短縮できるそうです。(しかしその機械が1億円ほどするのだとか…)
経糸が準備出来たら、横糸を通して織っていきます。写真の織機はドイツのドルニエという機械で、緯糸を片側から運ぶのではなく、真ん中まで運んだら反対側で掴んで引っ張るという方法で織るため、糸がループしていたり太さが異なるものでも織ることができるそうです。
また、中伝毛織では、織っていると出てきてしまう「捨て耳」の部分を混率ごとに分けて、もう一度ワタにして糸にするリサイクルをしているそうです。ウール100%の捨て耳で年間6トン、ウールナイロンで年間2トンも回収できるそうなので、かなりの量をリサイクルすることができますね。
まとめ
織り工場の様子、いかがでしたでしょうか。
私はここまでご説明いただきながら工場を拝見したのは初めてだったので、普段取り扱っている生地がこのようにできているのだなと思うと感動でした!
ひつじサミットで楽しいツアーを開催してくださり、今回の記事掲載も快諾してくださった中伝毛織さま、ありがとうございました。
また別の記事で編み工場の様子もご紹介させていただきます。