アパレル資材の“色ブレ・色落ち”トラブルと対策まとめ

&CROP編集部の野崎です。
アパレル資材でよくあるトラブルのひとつが、“色”に関するものです。アパレルブランドでは、ブランドの世界観やそのシーズンのテーマを「色」で表現することが多く、色選びはとても重要な工程の一つです。例えば、シーズンカラーに合わせた小物やアクセントカラーのテープなど、全体のイメージに直結するため、ほんの少しの色差でも全体の完成度に大きく影響することがあります。こだわって選んだ生地や副資材でも、微妙な色の違いによって違和感が生まれたり、染色したパーツが色落ちしてしまい、お客様からのクレームに発展してしまうことも。

今回は、実際によく起こる色に関するトラブル事例を5つに整理しながら、「どう防ぐか?」のポイントもあわせてご紹介します。「そんなこと知らなかった…」と後悔しないために、ぜひチェックしてみてくださいね。

付属(副資材)は、迷ったら「暗い色」を選ぶのが基本!

付属を選ぶ際、生地にできるだけ色を近づけようと「定番色の中から一番近いものを選ぶ」ということはよくあると思います。しかし、実際に並べてみると「どれも微妙に違う…」と悩んでしまうことも多いのではないでしょうか?そもそも、資材メーカーの定番色には限りがあるため、生地にぴったり合う色はなかなか見つかりません。そこで覚えておきたいのが、「迷ったら、生地より少し暗い色の付属を選ぶ」ということです。明るい色は目立ちやすく、ちょっとの違いが悪目立ちしてしまいがちですが、暗めの色は自然と馴染んで見える傾向があります。あえて目立たせたい場合は生地より明るくしたり、違う色を使うことでデザインのアクセントにもなりますが、あまり目立たせたくないパーツは、生地とぴったりの色が無ければ、暗めにして「なじませる」色選びが基本です。サンプル段階で取りあえずの代替色を選ぶ場合にも、「暗めの色を選ぶと失敗しにくい」というこの法則はとても役立ちます。

 

色番の指示ミスに注意!色番と色名はセットで書くのが鉄則

資材の発注や仕様書を書くとき、つい品番と色番だけを記載して終わりにしていませんか?副資材には「色番(C/#)」がついていることが多いですが、この色番はメーカーごとに独自の番号体系になっていて、同じ番号でも全く違う色になっていることがあります。たとえばニットテープにおいて、同じ「C/#24」でも、SHINDOのSIC-105では淡い黄色、Telalaの5004ではブルーという具合に、全然違う色が割り当てられています。

つまり、色番だけで伝えてしまうと、メーカーを変えたときに色がまったく合わなくなることもあるのです。そこで重要なのが、「色番+色名」をセットで記載することです。
例:C/#14/ブルー、C/#14(イエロー)など

色名が添えてあれば、もし色番のミスがあったとしても、「あれ、番号と名前が合ってないかも?」と気が付ける可能性があります。資材メーカーを変更して、品番も変えたのに色番を変え忘れていた、ということが無いよう、発注前の最終チェック時には必ず色の整合性も確認しましょう。他にも、ファスナーの色番は3桁で構成されており、1桁違うだけで全く別の色になるため注意が必要です。しかもファスナーは受注生産で納期もかかり、基本的に返品・交換ができないため、発注時は念入りに確認が必要です。

染色のリピート=全く同じ色にはならない!

生地の色に合わせてボタンやストッパーなどを染色することはよくありますが、「前回染めた色と同じにしたい」と思っていても、ロットが違うと全く同じ色に染まらないことも珍しくありません。染色では、工場で染料を調合してその都度色を作っているため、わずかな調色の違いでも色味が変わってしまいます。また、染色時の釜の状態や室温、水温など、ちょっとした環境の違いも仕上がりに影響を与えるのです。

同じYKK#896で染めた別ロットのストッパーの画像
同じYKK#896で染めた別ロットのストッパー

「同じ色番(PANTONEやYKKカラー番号)で指示をして染めたら完璧に再現される」とは限らないので、量産時にはサンプルで染めたパーツの現物(色見本)を必ず控えておくことが大切です。色番で伝えるのではなく、「これと同じように染めてください」と実物を渡して指示するのが、もっとも正確でトラブルを防げる方法です。またリピート手配をなるべく減らすため、染色する資材はロスを考慮し、必要量より多めに発注しておくことをおすすめします。

定番色にもある程度の”ロットぶれ”は起こることがある

注意したいのが、定番色でもロットが異なる場合です。たとえばテープを、「10反必要なうち、8反は在庫があったため、足りない2反だけを発注しよう」となったとき、在庫分と追加分で生産タイミングが異なればロットも変わってくるため、同じ色番でも微妙な色差が出ることもあります。ロットぶれの許容値はメーカーによってさまざまですが、ブランドによっては色差が気になるポイントになることがあります。色が変わっていないか現物で必ず確認し、許容範囲だとしても同じ製品にロット違いの資材を使わない等の工夫をしましょう。

後染は“色落ちする前提”で考えることが大事

染色には大きく分けて「先染」と「後染」があります。

  • 先染…原料や糸の段階で染めたもの。色が安定しやすく、堅牢度も高い。
  • 後染…完成した状態のパーツや生地を後から染める方法。色落ちリスクが高い。

付属のサンプル帳を見ると、「先染」「後染」と分かるように記載されていることが多いです。

Telalaサンプル帳(右上に「後染め」と記載)の画像
Telalaサンプル帳(右上に「後染め」と記載)
SHINDOサンプル帳(右上に「先染め」と記載)の画像
SHINDOサンプル帳(右上に「先染め」と記載)

後染された付属は、摩擦や水濡れ、汗などによって色落ちする可能性が高くなります。とくに「濃色(後染)×白生地」などの配色使いをすると、色移りが目立ちやすくなります。もし後染を使う場合は、メーカーの染色堅牢度試験を確認したり、自分で検査機関(ボーケン、カケンなど)に依頼して事前にテストしておくと安心です。

特に気をつけたいのが、首まわりや脇など、汗をかきやすい・摩擦が起こりやすい部分に使う付属。基本的に後染は色が落ちるものだと考えて、衿伏せテープなどは、配色使いは避けるか、先染めのテープを使うことででリスクを軽減しましょう。

ポリエステルでも油断禁物!「昇華移染」による色移り

「合成繊維なら色落ちの心配はない」と思っていませんか?一般的に綿などの天然繊維よりも色落ちはしにくいと言われていますが、実はポリエステルなどの合成繊維でも染料が移染してしまうことがあります。これは「昇華移染(しょうかいせん)」という現象で、特に高温下ではポリエステル染色に使用されている分散染料が表面に浮き出し、他の素材に色が移ってしまうことがあります。これを「サーモマイグレーション」とも呼びます。

具体的な事例としては:

  • レイン企画などの防水機能を持たせるためのポリウレタンフィルム+袋布に濃色のメッシュ生地 → 内側でメッシュの色がフィルムに移る
  • 濃色のポリエステルテープに白のラバープリント → 濃色のテープの色が白いロゴに移る
  • 濃色のポリエステル生地に淡色の転写マーク(ポリウレタンやシリコン) → マーク圧着の際の熱で、転写マークに生地の色が移る

転写マークの圧着など、熱をかける加工を行う際は当然注意が必要ですが、そうでなくても海外の高温地域で縫製されたものがコンテナで日本に運ばれてくるケースでは、コンテナ内の高温多湿が原因で問題が起きることもあります。昇華移染を防ぐには、メーカーに昇華堅牢度を確認したり、還元洗浄が十分にされているかをチェックしましょう。また、できるだけ淡色×濃色の組み合わせを避ける、といった基本的な配慮も効果的です。

色の指示ってどうすればいいの?

最後に、トラブル事例とは別ですが、色指示の方法についてご紹介します。

染色の色指示で最も確実なのは「現物での指示」です。画像やデータでは、モニター環境によって色が変わってしまうため、誤認の原因になります。

色指示の仕方は以下のいずれか:

  • 実際に染めたサンプルや生地の端切れを渡す
  • PANTONEやDICなどの共通の色見本帳の色番で指示をする
  • YKKカラーカードの色番で指示をする
※出典:YKKカラーサンプル帳より

また、染め上がりの確認は、自然光または太陽光に近い光源で行うのが鉄則です。蛍光灯や照明の色温度によっては、見え方が変わってしまうので注意が必要です。

まとめ

色トラブルは「知っていれば防げる」ものも多い!

色に関する問題はアパレル現場で起こりやすいトラブルですが、その多くは事前の知識と確認によって防ぐことができます。色指示、染色の指示など、ひとつずつ丁寧に確認をすることが大切です。細やかな配慮がブランドの信頼や品質を守ることに繋がります。トラブルが起きてから「知らなかった…」と後悔しないように、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。

&CROPを運営している株式会社クロップザキでは、ボタンやファスナー、テープなど洋服に使われている資材全般を取り扱っています。染色のご相談も含め、「相談しながら資材選びがしたい」という方は、いつでもご相談ください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

最新情報をチェックしよう!