&CROP編集部の瀧澤です
今回は生地の起毛(きもう)の話です。起毛というどんなテキスタイルが思い浮かびますか?フリース・冬物のコート・ネル・ベロア・コーデュロイ・フェイクファーなど毛足のある生地がまず浮かぶのではないかと思います。でも、起毛にはほとんど毛足の無いピーチ起毛や毛足があるけど起毛ではない作り方をしているものもあります。一般的に起毛(加工)は生地の表面を毛羽立たせることを言い、保温性を高める、風合いを柔らかくする、組織の表面感を変えるなどの効果があります。また起毛には用途によって片面起毛と両面起毛があります。起毛は素材や使用目的によって加工所が独自のノウハウによって加工しています。そして生地の仕上がりに大きく影響する重要な工程でもあります。この記事では起毛加工の歴史や方法について基礎的な知識を知ることが出来ます。また一見毛羽のある生地でも起毛加工のものとそうでないものが区別出来るようになるので是非最後までお付き合いください。
起毛加工とは
起毛加工は、生地の表面をこすったり引っかいたりして、繊維を掻き起こして毛羽を立たせる加工です。生地にかさ高性を与えて、保温性を高めたり、風合いを柔らかくしたり、表面感に変化を与えたりする効果があります。
基本起毛加工は織り(編み)上がった生地に施される場合がほとんどです。同じ生地でも起毛ありとなし、起毛の程度や仕上げ方で表情(テクスチャー)が変化します。また用途によって裏面を起毛する場合、表面を起毛する場合、両面を起毛する場合があります。
起毛のかかりやすさや表情は素材や組織・密度・糸の撚りなどで変化します。起毛を前提とした生地では、織りの段階から起毛しやすいように設計されている場合もあります。
起毛の歴史
古代ローマの工房に残る、起毛の絵
イタリアのポンペイに、フローニカ(fullonica)と呼ばれる布の仕上げ工房の遺構があります。ウェラニウス・ヒュプサエウスの工房と呼ばれる建物の柱には、職人たちの作業を描いたフレスコ画がありました。西暦79年のヴェスヴィオ火山の噴火で埋もれ、現在はナポリ国立考古学博物館に収蔵されています。
この絵の上段に、ブラシのような道具で布をこすり、毛羽を立てている職人の姿があります。その隣では女性と少女が仕上がった布を検反しており、右側には漂白用の硫黄と、布をかぶせる籠を運ぶ男性が描かれています。籠の上に乗っているのはフクロウで、これは布仕上げ職人の守護神とされたミネルウァの象徴です。
およそ2000年前の工房で、布を毛羽立てる作業がすでに独立した工程として存在していて、壁に描いて残す価値がある仕事と考えられていたようです。
道具についての記録も残っています。1世紀の博物学者プリニウスの記述として、毛羽を立てるのにハリネズミの皮を使ったという説明と、チーゼルの類の植物(spina fullonia)を使ったという説明の両方が伝わっています。ラテン語では、この道具をaenaと呼びました。
そのチーゼルという植物の学名は、Dipsacus fullonum といいます。fullonum は布仕上げ職人を指す語で、用途が名前に入っているのが興味深いです。
チーゼルから針布へ
ヨーロッパでは、乾燥させたチーゼルの果穂を十数個ずつ枠に並べ、それで布をこすって毛羽を立てる方法が長く続きました。この作業は英語で napping、あるいは raising と呼ばれます。
やがて、枠ではなくシリンダーにチーゼルを取り付けて回す機械が生まれます。ギグミル(gig-mill)と呼ばれた起毛機です。メルトンやビーバーといった毛織物は、この機械によって起毛される代表的な生地です。やがてチーゼルは梳綿機で使われるものに似た針金へと置き換えられていきました。
島本化繊起毛工場の資料にある機械の年表では1684年にアザミ起毛機が最初に作られ、1806年にフランスでStab起毛機、1872年にFranzMuller社が「あざみ起毛機に代わる」5本ロールの針金起毛機を開発し、1890年ごろに現在のような針金起毛機が現れた、とされています。
この針金起毛機は現在の針布起毛機を指します。針布とは、先の曲がった金属の針を基布に植え込んだもので、これをローラーに巻いて使います。もともとは紡績のカード(梳綿)機で繊維の向きを揃えるための部品として使われていたもので、1790年ごろに英国のアークライトが発明したと言われています。紡績側で確立していた道具を、布の表面を掻き起こす用途に転用したのが針布起毛です。この針布起毛は、アザミで行っていた起毛を工業的に効率よく行うために生まれた技術で現在も広く行われています。
ただすべてが針布起毛に置き換わったわけではなく、英国のサマセット南部では、起毛用に栽培されたチーゼル(Dipsacus sativus)が1970年代まで商業的に作られていました。そして現在も繊細な繊維の仕上げにはチーゼルが使われています。チーゼルは生地の強い抵抗にぶつかると自分が折れることで素材を守ります。カシミヤやビキューナのような高価な原料を扱う場合ほど仕上がりに影響を与えます。
日本の起毛は紋羽織から始まった
日本では紋羽織(もんぱおり)という綿織物に起毛が施されたのが始まりと言われています。和歌山市の記述によれば、江戸時代の中期に紀北地方に紋羽織が現れ、明和年間(1764年から1772年)からは松葉で毛羽立てた防寒用の特産品となり、頭巾・股引・足袋などに加工されていました。
また大阪の泉南地域では厚手の綿布を松葉や針などで起毛したものが紋羽織と呼ばれ、安永年間に1戸だった織元が、天保年間には40戸まで増えたとされています。和歌山県工業技術センターは、『紀伊国名所図会』に描かれた「」の図を紹介しています。櫛のような道具を手に持ち、布を起毛している様子が描かれています。
明治に入ってこの紋羽織の在来技術を改良して和歌山県内で発明されたのが、当初「毛出し木綿」と呼ばれた綿ネルです。西洋のフランネル(毛織物)に似せた綿織物だったことから綿フランネル、略して綿ネルと呼ばれるようになり、紀州ネルの名で全国に知られました。
島本化繊起毛工場の資料では、明治5年(1872年)に瀬戸重助が現在のようなネルの製造に成功し、同じころ宮本政右衛門が「エギ」という道具を考案したとされています。針を数百本並べて櫛状に板へ挟んだものです。松葉の束から、針を並べた道具へと変わっていきますが、この頃までは手作業のままで道具だけが進化しています。
機械が入るのは明治27年(1894年)で、大阪の天満織物会社に英国製の起毛機が導入されました。これを見た和歌山の竹田某が近くの鉄工所に似た機械を作らせたのが、国産起毛機の始まりとされています。大正2年(1913年)には電気モーターによるフランス式起毛機が輸入されました。
やがて紀州ネルで使われていた起毛加工は、綿メリヤス(ニット生地)に応用されるようになりました。これによって肌着用生地などの需要が急速に拡大し、大正末期には和歌山が丸編みニット生地の生産で全国シェア1位の産地になります。いま私たちが着ている裏起毛のスウェットやカットソーの起毛は、江戸時代の技術とつながっています。
2つの起毛方法
起毛の方法には、先述の針布起毛のように生地表面の繊維を引き出す方法と、生地表面を削る方法の2つに分けられます。引き出す方法は毛羽が長く、出方は不揃いになりやすい。削る方法は毛羽が短く、比較的均一になります。この2種類の起毛方法についてもう少し詳しく説明します。
針布起毛
針を植えた針布をローラーに巻き、そこへ生地を通して繊維を引き出す方法です。ネル、フリース、毛布、コート地など、毛羽の長い生地の多くはこの方法で作られます。
尾張整染は、針布の種類によって毛の掻き出され方が変化し、針の選定は各工場のノウハウとして重要度が高い、としています。ベル繊工の説明では、針布にはループ針布、カット針布、マッシュルーム針布といった種類があり、針の番手も使い分けられています。
仕上がりは、針の強度、弾力性、角度、そして生地に押し当てる圧力などによって決まります。調整を誤ると生地が破れたり、起毛ムラや起毛段といった不良が出る場合もあります。
起毛機には形式があり、ドイツ式、フランス式、英国式が使い分けられています。島本化繊起毛工場はこの3形式を保有し、東洋染工はループ起毛機とカット起毛機を別に持っています。同じ「針布起毛」でも、素材や表現したい表情によって機械を使い分けています。
高級毛織物に残るアザミ(チーゼル)起毛
ポンペイの時代から使われてきたチーゼルは、いまも現役です。マツムシソウ科の植物の果穂で、トゲの先にさらに細かなトゲがあり、複雑な角度に生えています。これを乾燥させて機械にセットし、生地をくぐらせます。自然のものなので、トゲの形や長さはひとつひとつ微妙に違います。針布起毛に比べて作用がやわらかく、細かく密な毛羽になり、光沢が出るとされています。
泉大津の深喜毛織(1887年創業)は、原毛から仕上げまでの一貫生産を行い、日本の毛織物メーカーとして唯一CCMI(カシミヤ・キャメル製造業者の国際団体)に加盟しています。同社は出したい風合いによってワイヤー起毛とチーゼル起毛を使い分けています。泉大津はもともと毛布の産地で、毛布を手触りよく仕上げるための起毛技術が、カシミヤのコート地など高級毛織物に応用されてきました。
乾燥起毛と湿潤起毛
通常の起毛は乾燥した状態で行いますが、湿らせた状態で行う起毛方法もあります。この起毛方法は加工所では湿潤起毛と呼ばれ、アパレルや消費者向けには水起毛(みずきもう)と呼ばれます。これは生地に水や温水を含ませて湿った(湿潤)状態で起毛機にかけて毛羽(けば)を立たせる加工方法で濡らすことで繊維の毛羽立ちを抑えて滑らかな仕上がりになることからネルや紡毛織物などに用いられる場合があります。
サンディング起毛(ピーチ起毛・マイクロピーチ起毛)
サンディング起毛はサンドペーパーやエメリーロールで生地の表面をこする方法です。ピーチ起毛、ピーチスキン加工、スエード調と呼ばれる起毛はこの方法で加工されます。
この方法にはサンディング起毛、エメリー起毛、ピーチ起毛、ピーチスキン加工など呼び名があるので、混乱を防ぐために簡単に説明します。エメリーというのは金剛砂、つまり研磨材のことで、爪を磨くエメリーボードと同じ語です。これを巻いたローラーがエメリーロール、それを使う機械がエメリー起毛機です。加工所の設備名としてはエメリー起毛機、生地の表情の呼び名としてはピーチが使われます。ピーチは、仕上がりが桃の実の表面に似ていることから来ています。スエード調と呼ばれるものも同じです。極細繊維(繊度が1デシテックス以下)を使用した化合繊織物に施すことで非常にしっとりした肌ざわりになります。
削る加工なので、生地が機械に均一な状態で入ることが必須で皺やたるみが残ったまま通れば、その部分だけ削れ方が変わってしまいます。そのためエメリー起毛機は、生地のクセを取り除いてからエメリーロールにかける構造になっています。
またサンディング起毛は合繊向けというイメージがありますが、綿素材にも多く使われ、ウールやシルクなどの素材の微細な起毛にも使われます。
酵素による起毛風(フィブリル)加工
起毛ではありませんが繊維の性質を利用した起毛に似た表情を作る方法もあります。
シルク、レーヨン、テンセルなどは、摩擦によって軸方向に裂けて白く見える白化(フィブリル化)が起こり易い繊維です。この性質はもともとは欠点として扱われていました。現在ではこのフィブリル化を積極的に利用して独特の風合いにするフィブリル加工があります。レーヨンのフィブリル化を利用して表面をピーチスキン調にする加工では、セルラーゼの働きで極端に短いフィブリルだけを残します。テンセルの場合は、バイオ加工の前に揉み洗いでフィブリル化させる毛羽出しの工程を行い、酵素の働きによって表面を均一にそろえる加工方法です。
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方法 |
使う道具 |
毛羽の性格 |
よく使われる生地 |
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針布起毛 |
針を植えた針布ローラー |
長め、不揃いになりやすい |
ネル、フリース、毛布、コート地 |
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アザミ起毛 |
チーゼル(植物の果穂) |
細かく密、光沢が出るとされる |
カシミヤなど高級毛織物 |
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サンディング起毛 |
サンドペーパー、エメリーロール |
短く、比較的均一 |
ピーチスキン、スエード調、微起毛 |
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酵素によるフィブリル加工 |
セルラーゼなどの酵素 |
ごく短い |
レーヨン、テンセル |
起毛の前と後の工程
多くの場合、起毛加工を行なう前と起毛後にはセットで行う工程があります。これらの工程は素材の種類や求める仕上がりによって変わるので代表的な作業工程について説明します。
起毛の前工程
綿織物の場合、織る際に経糸へ糊を付けているため、まず糊抜きと精練が必要になります。糊が残ったままでは繊維が固まっていて、掻き起こしても毛羽が出てきません。
東洋染工は、パラフィンやシリコーンを主成分とする起毛剤を起毛工程の前に付与すると、起毛の程度が上がるとしています。掻き起こしやすくするための下地作りです。
ウールの紡毛織物では、起毛の前に縮絨工程が入ることが多いです。石鹸溶液などで湿らせて毛を絡ませ、フェルト状にして組織を緻密にする工程です。ウール以外の繊維では基本的に出来ません。縮絨で密度を上げてから起毛する、という順序になります。
起毛後の工程
起毛したままの生地は毛羽の向きも長さもばらばらです。起毛後の生地はブラッシングで毛羽の方向を揃え、シャーリング(剪毛)で長さを切り揃えてポリッシャーやプレスで熱を加えて毛並みを揃えて希望の風合いに仕上げられます。
これらの起毛とその前後の工程はそれぞれ別々の工程ですが起毛生地の風合いはこの前後の工程の組み合わせで決まります。とくに紡毛織物ではメルトン・モッサ・ビーバー・シャギーのように仕上げ方が生地の名前になっている(逆かもだけど)のでご存じの方も多いと思います。次項ではこれらの代表的な仕上げについて簡単に触れます。
代表的な紡毛織物の仕上げ
同じ紡毛織物でも、縮絨の強さ、起毛の程度、刈り込みの長さ、プレスの仕方によって仕上がりと呼び方が変わるので代表的な仕上げ方法について簡単に説明します。
メルトン仕上げ
メルトンは、平織または綾織の紡毛織物に強い縮絨をかけ、ごく短く起毛します(起毛しない場合もあります)。そこへ強い圧力をかけて表面を平らに仕上げるため、織り目が見えないほど密着してフェルトのような仕上がりになります。。冷たい風や雨を通しにくく、比較的厚手でピーコート・ダッフルコート・チェスターコートやスタジアムジャンパーなどに使われます。
モッサ仕上げ
モッサは、縮絨した紡毛織物の表面を起毛して立たせてから毛羽を短く刈り揃えます。苔(こけ)のようにふっくらと仕上げることから英語の「moss(苔)」に由来してモッサと呼ばれます。メルトンに比べるとソフトで柔らかく温かみのある仕上がりになります。 主にレディスの冬物のコートやジャケットなどに使われます。
ビーバー仕上げ
ビーバーは、綾織または朱子織の紡毛織物に強く縮絨を施した後に起毛して長い毛羽を出し、均一に刈り揃えた後に、特殊なブラシで梳いてたて方向に寝かせながらプレスして仕上げます。メルトンやモッサよりも毛足が長く、光沢があります。ビーバーの毛に似ていることからビーバー仕上げと呼ばれます。
その他の仕上げ方法
この他にも紡毛織物の仕上げには、シャギー仕上げ、ベロア仕上げ、パフ仕上げ、ポリシャ仕上げ、クリアーカット仕上げ、スエード仕上げ、ファー仕上げなどの仕上げ方法があり、目的の仕上がりによって起毛と前後の工程が違ってきます。
毛羽はあるけど起毛ではない生地
さて、冒頭で挙げた生地の中には実は起毛ではないものが混ざっています。わかりやすいように表にしました。
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生地の種類 |
毛羽の作り方 |
起毛かどうか |
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ネル、フリース、コート地 |
織り上がった生地を掻き起こす |
起毛 |
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ピーチスキン、スエード調 |
表面を削る |
起毛 |
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ベルベット、別珍、コーデュロイ |
織りの段階でパイルを作り、カットする |
起毛ではない |
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ベロア(ニットベロア) |
編みの段階でパイルを作り、カットする |
起毛ではない |
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フェイクファー |
織りや編みの段階で毛足を作り込む |
起毛ではない |
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植毛(フロッキー) |
短い繊維を接着剤で貼り付ける |
起毛ではない |
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割繊糸を使った生地 |
合成繊維を化学的に細かく割る |
起毛ではない |
パイル織・編物で有名な和歌山・高野口産地のメーカーは、この違いを次のように説明しています。パイル織物は織り工程の中でパイルを作る立体的な織物であるのに対し、起毛織物は平滑に織った生地を後から起毛機にかけて繊維を掻き起こしたものである。また、カットタイプのパイル織物と見た目が似ているため、同じものと思っている人も多い、とも述べています。
見分けの手がかりは、毛羽と地組織の関係にあります。起毛生地の毛羽は、地組織を構成している糸そのものが掻き起こされたものです。毛を指で分けて地を覗くと、毛の根元が地の糸につながっています。一方、パイル生地の毛は、地組織とは別に織り込まれた(あるいは編み込まれた)パイル糸です。地組織と毛が、別々の糸として存在しています。
コーデュロイのように畝があるものは判りやすいのですが、別珍やベロアは毛足が短く密なので、迷うことがあります。ベルベットやベロアなどのパイル織(編み)については、&CROPの下記のリンクの記事で詳しく整理しています。
&CROP編集部の瀧澤です。 「ベルベット・別珍・ベロア…違いがよく判らない!」 ベルベット・別珍・ベロアについて以前からよく聞かれる質問です。実は繊維やアパレルにたずさわる仕事をしている方でも人によって理解が違っていることも良く[…]
なお、ベロアという言葉は通常はニットのパイル生地を指しますが、紡毛織物のベロア仕上げをベロアと呼ぶ場合もあります。
割繊糸を使った生地は、糸の段階で合成繊維を細かく割ったもので、通常は起毛とは呼びません。ピーチスキンに似た風合いになります。
まとめ
起毛は、織り上がった生地や編み上がった生地に後からかける加工です。ハリネズミの皮やアザミの実、松葉の束で手作業していた時代から、針布起毛機へと道具は変わっていますが、実際の工程では職人の経験や勘によって仕上がりが決まる部分が大きい加工工程と言えます。
また毛羽があるからといって起毛とは限らず、パイルも植毛も割繊糸も、それぞれの方法で毛羽を作っています。起毛かパイル生地かの判別は生地を指で分毛羽の根元を見たときに根元が生地のベースに織り(編み)込まれていれば起毛ではなくパイル生地です。是非色々な生地を実際に触って違いを確かめてみてください。
起毛生地発注時のチェックリスト
- 毛羽が起毛によるものか、パイルや植毛によるものかを確認しましたか
- 指定風合いの現物見本がありますか
- 用途(アイテム、着用シーン、洗濯条件等)を伝えましたか
- 量産前に生地の試験データを確認しましたか
- 毛並みの方向がある生地の場合、裁断時の方向指定を縫製工場に伝えてありますか
- 量産時の起毛のロット差についてメーカーに聞きましたか
FAQ
Q:起毛加工をすると生地は弱くなりますか
A:繊維を掻き起こす加工なので、程度によっては強度に影響します。針布起毛は作用が強く、調整を誤ると生地が破れることもあります。用途に対して起毛が強すぎないか、加工所と相談しておくことをお奨めします。
Q:裏起毛と裏毛(パイル)は同じものですか
A:違います。裏毛はスウェット地などで、編みの段階で裏側にループを作った組織です。裏起毛は、編み上がった生地の裏面を起毛機にかけて毛羽を立てたものです。ただし裏毛のパイル面を起毛した裏毛起毛という生地もあります。
Q:フリースは起毛ですか
A:一般的なフリースは、編み立てた生地に起毛をかけ、シャーリングで毛足を整えて作る起毛加工の生地です。片面起毛と両面起毛のフリースがあります。
Q:ピーチ起毛は毛足がほとんど無いのに起毛なのですか
A:起毛です。サンドペーパーやエメリーロールで表面をごく短く削る方法で作られます。毛足の長さではなく、生地の表面から繊維を出しているという点で起毛加工に含まれます。
Q:同じ生地を再度発注したら風合いが変わりました。なぜですか
A:起毛には織物のような規格がない為、針布の状態、圧力、回数、そのときの生地のコンディションなど多くの要素が仕上がりに影響します。ロット間による差にはある程度の許容が必要です。継続生産する場合は、最初の段階で許容範囲を加工所と確認しておくことをお奨めします。