もくじ
貝ボタンとは
概要
貝ボタン(日本語名・・・貝釦(読み方:かいぼたん)/英語名・・・shell button)とは、貝の殻を使ってつくられた留め具(ボタン)です。
成り立ち
人類は7万年前から服を着るようになったと言われています。はっきりとはわかっていませんが、ボタンもその頃からあったと考えられています。ですがその頃は、現在のようなプラスチックは無く、動物の骨や貝、木の実などの自然にあるものを使っていました。現在のような見た目のボタンだったかは分かりませんが、貝は昔からボタンの原料として使われていたことは間違いありません。
現在のような貝ボタンの製造技術は、1887年頃にドイツから伝わってきたと言われています。兵庫(神戸)、大阪(河内)、奈良(川西)の順に広がっていき、今でも同地方で盛んになって製造されています。
用途
衣類
シャツボタン(袖、フロント)、ワンピース、ジャケット 等
魅力
貝ボタン特有の輝き
貝ボタンの魅力は、ポリエステルには出せない貝特有の輝きです。貝ボタンは、貝殻を使って作られていますが、貝の種類によって色や輝き方は様々です。
古くからある貝殻を使った装飾技法のひとつに「螺鈿(らでん)」というものがあるように、昔から貝の輝きは美しいとされてきました。そんな貝の美しさを、服に取り入れられるのが「貝ボタン」なのです。
黒蝶貝は名前の通り黒っぽい貝殻が特徴の貝ボタンです。高瀬貝の次によく使われており、ボタンは濃茶色~黒っぽい色をしています。黒蝶貝は2枚貝で、真珠の母貝としても使われています。エレガントな印象の服にも、モードな印象の服にも合います。
代表的なボタンの種類(貝の種類ごと)
貝の種類ごとに、代表的な貝ボタンをご紹介させていただきます。
高瀬貝ボタン
高瀬貝は最もよく使われている貝ボタンです。今回ご紹介する貝ボタンの中では唯一の巻貝で、貝殻が分厚く重みがあります。
比較的多く採れるため、貝ボタンのなかではお値段も最もリーズナブルです。
表側にピンク色や黄緑色の模様があることが特徴で、高瀬貝ボタンの裏を見ると、あえてこの模様を削らずに残しているものも多いです。
表面は、温かみのある少しクリーム色がかった白色をしています。
黒蝶貝ボタン
黒蝶貝は名前の通り黒っぽい貝殻が特徴の貝ボタンです。高瀬貝の次によく使われており、ボタンは濃茶色~黒っぽい色をしています。黒蝶貝は2枚貝で、真珠の母貝としても使われています。エレガントな印象の服にも、モードな印象の服にも合います。
白蝶貝ボタン
白蝶貝は、今回ご紹介する貝ボタンの中で最も高級なボタンです。
2枚貝で、黒蝶貝と同じように真珠の母貝とも言われてして使用されています。「白色」でいうと高瀬貝と同じ色なので間違えられることも多いですが、白蝶貝ボタンは雪のような真っ白な色をしています。また、角度を変えてみると、反射の光が様々な色に見えることも特徴です。
茶蝶貝
茶蝶貝ボタンは、「黒蝶貝」「白蝶貝」よりはあまり見かけませんが、名前の通り茶色のボタンです。茶蝶貝は「マベ貝」とも言い、貝殻の形がペンギンの翼に似ていることから、学名ではPteria Peguin(プテリア・ペンギン)と名付けられています。温かみのある色合いが特徴です。
代表的な貝ボタンメーカー
貝ボタンの代表的な資材メーカは以下
- トモイ
- アイリス
- 御田釦
トモイ
メーカー名 |
株式会社トモイ |
---|---|
URL |
トモイは、1914年創業の老舗貝ボタンメーカーです。
高瀬貝・黒蝶貝・白蝶貝・茶蝶貝・アワビ・アコヤ貝・淡水貝など多くの種類の貝で、ボタンを生産しています。貝ボタンでは国内では一番種類を扱っています。
アイリス
メーカー名 |
株式会社アイリス |
---|---|
URL | https://www.iris.co.jp/ |
アイリスは、1946年創業の老舗総合ボタンメーカーです。日本最大規模で、天然素材のボタンから非天然素材のボタンまで幅広く取り扱っています。
シリコンワッペンやストッパー等のボタン以外のパーツも取り扱っており、台湾や上海にも工場があります。
御田釦
メーカー名 |
御田釦販売株式会社 |
---|---|
URL |
御田釦販売は天然素材から非天然素材まで幅広く取り扱っているのが特徴です。貝ボタンでは、珍しいデザインや凝ったデザインの貝ボタンを多く扱っており、高級レディスアパレルに人気です。
取り扱い上の注意点
割れに注意
貝ボタンは、貝殻でできたボタンとなっています。
基本的に割れにくい貝の種類を採用していますが、扱い方によっては割れる恐れがあります。割れてしまうと、かけらで手を切ってしまうこともあるので注意してください。
天然素材ならではの個体差
貝ボタンは天然の貝を切り抜いて作られています。
貝殻の個体によって色合いや凹凸感が違うものもあります。全く同じボタンが届くことはありませんのでご注意ください。全く同じものがない点も貝ボタンの魅力だと考えていただけると幸いです。
貝ボタンの選定ポイント
基本的な選定ポイントとしては、《価格》《デザイン》《色》があります。
4つの基本的な選定ポイント
- 価格(作りたい服の上代とボタンの種類とで)
- デザイン(作りたい服のイメージやデザインは?)
- 色(貝の種類によって色が違う)
選定ポイント1.価格
作りたい服の上代と相談しながら種類を選定
同じ貝ボタンでも貝の種類によって大きく価格が変わります。これは、原料となる貝殻は天然素材であるため、その希少価値によるものです。
最もリーズナブルなのは高瀬貝ですが、同じ白色だからと言って「白蝶貝」をつかうと、その約3倍もの値段となります。採用したい服の上代価格も加味して選定ポイントの一つとしてください。
貝ボタンを使いたいけれど、一番安い高瀬貝を使っても単価がどうしても合わない、という場合は、貝調ポリエステルボタンを使うことも考えてみてご検討ください。
選定ポイント2.デザイン
作りたい服のイメージやデザインにより選定
同じ素材のボタンでも、様々なデザインがあります。
基本の17型や18型から、ボタンの形が四角いものや、彫刻が施されているものもあります。使用したい製品のイメージによって使い分けるとよいでしょう。
選定ポイント3.色
貝の種類によって色が違うため、使いたい色によって種類を選定
貝ボタンは染色しない限り本来の貝殻の色を採用しているので、欲しい色によってボタンを選ぶというのも選定ポイントの一つとなります。高瀬貝の場合はクリーム色がかった白色をしているので比較的生地に馴染みますが、白蝶貝の場合は真っ白なので、生地が暗めの色だとはっきりと目立ちます。
また、貝自体に染色はできませんが、貝ボタンに色のついたポリエステル樹脂をコーティングしたり、コーティング後に染色したりすることで色味を変える方法もあります。
資材発注時の注意とポイント
ロスを見て発注
基本的に貝ボタンを出荷する際は緩衝材などに包んで割れないようにしていますが、特に海外輸送時は割れてしまう可能性もあります。そのため、ロスを見て手配をしておくと安心です。
貝ボタンの「白」が欲しいから白蝶貝ボタンを発注!は間違いなので注意
貝ボタンの白色が欲しい時に、白という漢字が付くことから「高瀬貝」と「白蝶貝」を勘違いして「白蝶貝」を発注される方がたまにいらっしゃいます。
白蝶貝は、高瀬貝の3倍くらい値段が高くなりますので、欲しいものが「高瀬貝」なのか「白蝶貝」なのか間違えないように注意してください。
小売の際の注意とポイント
販売スタッフ・消費者等に必要なアナウンス
使用するボタンにより、消費者の手に渡った後にトラブルになる、というケースがあります。ブランド価値を下げてしまわないよう、以下のケースに注意し、取扱の注意点を下げ札に記入するなどの工夫が必要です。
主な《消費者》へのアナウンス
貝ボタンは割れやすいので、洗濯絵表示を洗濯可能にする場合は手洗いを推奨します。
おすすめ貝ボタン
デザイン性のある貝ボタン
凝った彫刻が美しいものや、樹脂・金属と組み合わせた貝ボタンもあります。
レディスのカーディガンのフロントなどに使用すると、ボタンが製品の訴求ポイントにもなります。
※樹脂・金属と組み合わせたボタンを使うことで、今回ご紹介した内容の他にも取り扱い上の注意点が増える可能性があります。確認の上、使用するようにしてください。
貝ボタンのスモーク加工
スモーク加工は、貝ボタンの輝きを少しくすませるような加工です。
艶のある貝ボタンよりも落ち着いた印象があるので、モード系の製品や、貝ボタンを使いたいけれどあまり目立たせたくないときにおすすめです。
まとめ
美しい色合いの貝ボタン。バリエーションが豊富な貝ボタン。
天然ボタンの中でも美しい色合いから人気の高い貝ボタン。貝の種類まで把握している方は少ないのではないでしょうか。貝ボタンは形のバリエーションが豊富で、貝の種類によって色が違ったり、加工によって違った表情を見せてくれるのも良いところです。知識を深めて、魅力的な製品づくりに活かしてください。
参考文献