もくじ
下げ札とは
名称(日本語/英語) |
下げ札(読み方:さげふだ) /Paper Hang Tag |
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カテゴリ | 商用資材 |
種類 | 大カテゴリ(下げ札) |
概要
下げ札(日本語名・・・下げ札(英語名・・・Paper Hang Tag)とは、アパレル製品等を店頭などで販売する際に、製品に取り付けてブランド名や製品の説明や詳細などを消費者に分かりやすく伝える為の主に紙で作られた商用資材です。また輸送時や倉庫や店舗での管理などにおいても、商品の判別をする為の役割なども担っています。下げ札にはブランド名やブランドロゴやマークを印刷したブランド下げ札、製品品番や色番、サイズ、JANコード等が表記されている品番下げ札など種類もいくつかあり、下げ札の種類によって用途も変わってきます。
また、下げ札には“情報を伝える”という役割だけでなく、そのブランドの価値をつくる為の一つの要素にもなっている為、下げ札自体のデザインもとても重要です。
成り立ち
「下げ札」という言葉のルーツは、江戸時代の公文書の欄外に、付箋の役割で張り付けられた「下げ紙」から来ていると言われています。下げ札の用途としての起源は、貨幣経済が広まり始めた鎌倉時代から室町時代の頃に、運送業者が運ぶ農産物や海産物に品名や産地が記された札が付けられていて、それが最初の下げ札の役割をしたものと言われています。
下げ札の魅力
下げ札の魅力は何といっても、紙や印刷や加工を組み合わせて表現できるそのオリジナル性です。限りなく費用を掛けずシンプルにすることもできますし、凝って手間を掛けて他と似ていない唯一のものをつくることもできます。取り付ける製品をこだわってつくっているなら、同じようにこだわった下げ札にすることでその世界観を更に引き出してくれます。下げ札は買った製品を入れてくれるショッピングバッグと共に、持ち運べる「店舗」として、ブランドイメージや店舗デザインづくりを助けてくれます。
下げ札の種類・用途
下げ札の種類は大きく分けて4つあります。
- ブランド下げ札
- 品番下げ札
- 機能下げ札
- 注意下げ札
1.ブランド下げ札
ブランド下げ札は、ブランド名やブランドロゴ、ブランドマークなどを印刷して、そのブランドの製品だということを分かりやすく伝える為の下げ札です。紙の色をブランド象徴するカラーのものを選んだり、色を印刷したりします。紙質や紙の手触りや紙の厚みなどでも
イメージが変わりますし、そのブランドや製品の「らしさ」を表現する大切な要素になります。高級なハイブランドでは、マットなモノトーンカラーにメタリックな箔プリントをすることで下げ札からも高級感を演出したり、ナチュラル感を売りにしているブランドでは下げ札のベースも木材をスライスしたものが使用し天然のイメージ、和紙などを使用してポップな色使いなどでブランドを想起してもらえるようなものにしています。
2.品番下げ札
品番下げ札は、その製品の詳細情報が記載された下げ札です。消費者が店舗で買い物をする際に情報を分かりやすく表示する為に使用します。またJANコードを印字してPOSシステムと連動して、売上管理、商品管理、在庫管理、顧客情報管理品番なども可能です。品番下げ札にはその商品の品番(型番)、色番、サイズ、混率、JANコード、販売会社、連絡先などの情報が印字されています。多くのブランドでは品番下げ札はブランド下げ札と一緒になっており、ブランド名が印刷された下げ札の裏側に情報を直接印字するか、もしくは印字されたシールが貼られており、ブランド下げ札と品番下げ札が兼用されています。
3.機能下げ札
機能下げ札とはその製品の機能を説明した下げ札になります。例えば保温力に優れたウェアで表生地に機能がある製品に表生地の保温力が表現された下げ札が取り付けられていたり、また多機能なポケットが付いたカバンには、機能ポケットの説明や図が掛かれた下げ札が使われています。特に機能が求められるスポーツウェアや小物などでは機能説明の札がよく付けられており、複数の機能下げ札が吊るされているものも多いです。機能下げ札は売り場でも分かりやすく目立つので、下げ札のPRで消費者の購買につながることもあります。
4.注意下げ札
注意下げ札はデメリットタグなどとも呼ばれ、消費者の方に、その製品の取扱いで注意するべき内容を記載して、その注意を促す役割の下げ札になります。例えば本皮が使用された製品の場合、水濡れや摩擦等で色落ちや色移りが発生する可能性がある旨が記載されていたり、また天然の材料の為、皮一枚一枚、部分部分で色やシボなど個体差があること、手入れ方法など注意すべき点を分かりやすく書き、取り扱い注意の内容を記載しています。
取付け位置
下げ札は消費者が買い物をする際に、見えやすい位置にまとめて取り付けられています。製品の種類によって、だいたいの取付け位置の傾向は決まっています。スーツやジャケットですとフロントのボタンホールに下げ札が取り付けられていることが多いです。パンツやスカートなどのボトムスは畳み方にもよりますが、ウエストのベルトループに吊るされています。ブルゾンやダウンジャケットなどのアウターでファスナー付きのものは、フロントのファスナーの引き手部分に取り付けられています。ポロシャツやTシャツなどのカットソーは取り付けられる場所が限られるのですが、衿のブランドネームや裾の洗濯ネームなどに付けられていることが多いです。
取り付け方法
下げ札は読んで字のごとく札を吊るして使用します。下げ札を取り付けるのに一般的によく使われるのはナイロン樹脂製のロックスピンやV字型をしたVロックス、吊下げ部分に柔らかい糸を用いた糸ロックスなどがよく使用されます。またロックスなどを通す箇所が無いようなTシャツや下着、靴下などは専用のタグガンを使い、生地などに針で穴をあけてそこにピンを通すタグピンも使用されています。またこだわりのブランドなどでは下げ札を吊るす紐を別注で作成したり、アパレル資材で使用される紐をイメージに合わせて選定して使用したりもしています。
下げ札の加工方法
紙の選定
下げ札をつくるベースの紙にはたくさんの種類があります。紙の堅さ、厚み、表面感、雰囲気、カラー、コストなどを加味してブランドのイメージに合うものを選定します。
表面加工
印刷
紙に色や文字や柄を印刷したものです。印刷した色の発色を良くしたい、希望するカラーに近い色を表現したい場合は、白い紙を選んでその上に印刷をします。色付きの紙の上に印刷をすると印刷が紙の色の影響を受ける為に、希望の色に仕上がらない可能性もありますのでご注意ください。
ビニール引き
印刷した下げ札の上に、塩化ビニール系合成樹脂と速乾性ニスを混ぜた液をのせ、熱乾燥させて光沢や耐摩耗性を持たせる加工です。
ニス引き
昔からある加工方法で、樹脂製の液体を下げ札の印刷面に塗って、透明の幕をつくり表面を保護します。保護強度はそこまで高くないですが、さりげない光沢や全面加工でなく部分的に加工できること、比較的に加工賃が安価なことが特徴です。
プレスコート加工
下げ札の印刷面に樹脂を塗り乾燥させた後に、加熱された鏡面版を圧着させる表面加工方法です。強い強度と光沢を出せるのが特徴です。また全面加工だけでなく部分的な加工も可能です。
PP貼り加工
下げ札の上にポリプロピレンのフィルムを圧着して貼り合わせる加工で、紙の加工としては最も有名な加工になります。フィルムを貼り合わせることで表面の保護と光沢感を出すことが可能です。
ホログラムPP貼り加工
ホログラムを施したPPフィルムを下札に貼る加工です。フィルムの超微細なエンボス柄が光の反射角度によって七色に変化しながら輝き、豪華さを演出しながら且つ下札を保護します。
代表的な下げ札メーカー
下げ札の代表的な資材メーカは以下
- テンタック株式会社
- ナクシス株式会社
- 東京吉岡株式会社
テンタック株式会社
メーカー名 |
テンタック株式会社 |
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URL | https://www.tentac.co.jp/ |
テンタックは、下げ札だけでなくブランドネーム、品質表示、パッケージ等 商標資材全般を取り扱っている会社です。次世代の下げ札、RFIDタグの導入も積極的に行っています。貧困問題と環境問題をビジネスの観点から解決しようとする試みである「フェアトレード」にも参画しており、社会的・経済的に弱い立場の人々の自立支援、環境保護に繋げています。
ナクシス株式会社
メーカー名 |
ナクシス株式会社 |
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URL | https://naxis.net/ |
ナクシスは京都の伝統技術と品質管理による織ネーム製造からはじまり、現在では下げ札やプリントネーム、パッケージ、ケアラベル、転写マークなどを企画製造販売している会社です。ナクシスもRFIDタグに力を入れていたり、アパレルメーカーやそのECサイトとも連動できる副資材データ連係ウェブ発注システムの開発や運営にも力を入れています。
東京吉岡株式会社
メーカー名 |
東京吉岡株式会社 |
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URL | https://www.tokyo-yoshioka.co.jp/ |
東京吉岡は、様々なバリエーションの下げ札をはじめ、織ネーム、プリントネーム、ワッペン、転写シートなどを取り扱っている会社です。近年の多様化したアパレルブランドにも対応できるよう、素材・形状・技法など多角的に取り組んでいます。
下げ札・ネーム業者は扱い商品が多岐に渡るため、自社で製造しているものもありますが、協力工場に作成を依頼しているものもあります。
下げ札・ネーム業者だけでなく、副資材業者でも下げ札類を扱っています。副資材業者に依頼することで、他の資材とまとめて発注することができるので、生産管理の手間が省けます。
下げ札発注時や下げ札企画時の注意とポイント
品番下げ札の発注枚数に注意
下げ札の発注枚数には気を付けましょう。特に品番下げ札は、製品品番、サイズ、色毎に印字されている内容が変わります。その為、SKUごとに必要枚数を算出して発注する必要があります。よく計算を間違えて数量が足りないとか、過剰だとかという問題が発生するので注意が必要です。
品番下げ札の印字内容の間違いに注意
品番下げ札は印字する内容がSKU毎に違うこと、また混率や原産地などの情報も品番毎に違ってきて印字内容を非常に間違えやすいです。間違えることで消費者が誤って購入してしまったりクレームに繋がってしまいます。また実際の商品と違う印字の下げ札を付けて販売してしまうことで、景品表示法違反になってしまうことがあるので気を付けなければなりません。
下げ札への色移りに注意
アパレル製品やカバンなどに下げ札を取り付けていると、下げ札が生地に触れた状態が続いたときなど、生地の色が下げ札に移ってしまうことがあります。これは下げ札に印刷をのりやすくする為に使用されている可塑剤が生地の染料などを吸いやすくしてしまっていることが考えられます。対策としては下げ札に印刷だけをするのではなく、印刷後の表面に加工をすることで軽減、防止できます。
下げ札による生地への傷に注意
下げ札の紙の角の部分が当たり生地に傷が付いてしまうことがあります。特に近年はアパレルの生地は着心地を追及して、昔に比べて薄く柔らかく風合いが良い生地が増えてきています。その反面で生地自体はとても繊細で傷付きやすいものも増えているので注意が必要です。対策としては下げ札に鋭角な角を付けないように、角丸や半丸型にすることで軽減できる場合もあります。
おすすめ資材
サステナブル下げ札
近年アパレル業界でも、環境や人にやさしい「サステナブル」な資材が注目されています。
FSC認証を取得した紙の下げ札
紙の主な原料は、木材チップという、木を細かく削った木片です。近年は無計画な乱伐や違法伐採で森林の減少が地球規模で問題となっています。しっかりと地域社会や環境に配慮して管理した森林由来の木材から生産された製品をFSC(Forest Stewardship Council)認証(参照 FSC®japan ホームページ:https://jp.fsc.org/jp-ja)といいます。サステナブルな材料からつくられた下げ札としてFSC認証を受けた紙でつくられたものが使われています。
目を引く特徴的な下げ札
一般的な下げ札ではなく、特別な加工をした下げ札は目を引きます。製品から外しても思わずとっておきたくなるような特徴的な下げ札をご紹介します。
ホログラム下げ札
ホログラムは光の干渉現象を利用して立体的な輝きを表現する手法で、角度によって見える柄やデザインが変わります。ホログラムデザインは複製することが困難な為、真贋判定のセキュリティラベルやシールなどに使用されることが多いです。その技術を下げ札全体に使用すると視覚的なインパクトも大きく、高級感も感じられお勧めです。
紙を部分的に貼り合わせた下げ札
紙に厚みや張りを持たせる為に、紙同士を全面的に貼り合わせるのではなく、デザインとして部分的に異なる雰囲気の紙を貼り合わせることで下札に高級感が出ます。一枚一枚手で位置を合わせて貼り合わせる為、生産に手間も掛かり、費用も掛かりますが特別な下げ札に仕上げることが出来ます。
細工がされた下げ札
紙を折り、貼り、印刷、抜き、差し込みなどの加工を組み合わせることで、細工がされた特徴的な下げ札が出来上がります。折り曲げられたものをひらくと飛び出す絵本のようになっていたり、内側をひらくと説明書が折りたたまれて収納されていたり差別化された下げ札が出来上がります。
プラスチック製下げ札
紙に印刷した下げ札ではなくプラスチック製の下げ札に印刷したものを使用することでとても高級感が増します。印刷部分をUVプリントで表現することで、熱盛りして盛り上がった感じになることで、そこがまたすぐゴミ箱に捨ててしまうような下げ札ではなく、アクセサリーや小物のように保管しておきたい気持ちをくすぐります。
スエード生地貼り合わせ下げ札
ベースの生地に起毛のスエード生地が貼り合わされた下げ札です。触ると柔らかくあたたみもあり高級感を演出しています。型押しでロゴやラインなどを表現すると、起毛部分と型押しした部分の対比がまた良い雰囲気を出します。
まとめ
下げ札はブランドと消費者をつなぐ大切なタッチポイント
アパレル製品やファッション雑貨などで、対面で小売店にて販売される製品のほぼすべてのアイテムに取り付けられているのが下げ札です。景品表示法に対応する為に商品情報を詳細に伝える為に必要な機能的な役割と、ほぼすべての製品に取り付けられることから、ブランドイメージをつくる製品デザインの大切な一つの要素としてブランドと消費者を結ぶタッチポイントとなります。
下げ札には様々な種類や加工方法がある
たかが下げ札されど下げ札、低価格のファストファッションなどでは下げ札は最小限の加工で最小限のコストで、必要な情報を伝えるだけでよいと割り切って下げ札を作成するブランドもあります。しかしこだわりのブランドやハイブランドなどは、いかにそのブランドのこだわりを下げ札のデザインや仕様にこめ、そのブランド“らしさ”を表現するかが大切です。それを表現する為の種類や加工方法はご紹介したようにたくさんあります。それらを組み合わせてオンリーワンの下げ札をつくりましょう。種類が多すぎてわからない、こんな下げ札がつくれるのか相談したいなどの場合はネーム・下げ札メーカーや付属商社に相談してください。イメージをお伝えいただければ、イメージに近いピックアップした情報で提案してもらえるものと思います。
参考文献
東京吉岡 TECHNICAL GUIDE FOR PAPER