布帛・織物とは
名称(日本語/英語) | 布帛・織物(ふはく・おりもの) / fabric・textile |
---|---|
カテゴリ | 主資材 |
種類 | 大カテゴリ(布帛) |
概要
(日本語名:布帛・織物 ふはく・おりもの/英語名・・・ fabric・textile)漢字では麻や葛などの植物の繊維を利用した織物を「布」と表し、絹の織物を「帛」(はく・きぬ)と表しました。布と帛をあわせて布帛(ふはく)と言う言葉は元々、天然繊維の織物を表す言葉でした。現在では不織布やメリヤス生地、レース、化学繊維も含めて広く布(ぬの)と呼んでいます。また英語のテキスタイルという言葉も元来は織物を指す言葉でしたが現在は繊維を薄く加工した布全般を指す言葉として使われています。織物(おりもの)は縦糸と緯糸を交差させて作られた布地で一本の糸をループ組織にして作られるメリヤス生地(編地・カットソー)や繊維を絡み合わせて布状に加工する不織布とは区別されます。織物は先史時代から世界各地で織られていてその技法や素材、表現はとても多様です。ここでは織物の基本となる組織と代表的な織物の種類について簡単に説明しています。
織物の組織と組織図
組織
織物は縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)の組み合わせで作られています。この縦糸と緯糸の組み合せを織物の組織と言います。織物では組織と素材の組み合わせによって様々なテクスチャー(表情や風合い)を表現することが出来ます。
組織図
織物を設計するときに織物の交差の仕方を平面図で表したものを織物の組織図と言います。組織図は図1)のような方眼紙のマス目を使って表します。1つのマス目は織物の交差する点(組織点)表していて上から見たときに縦糸が緯糸の上になっている部分を黒く塗りつぶします。普通織物は同じ組織の繰り返しで出来ていますがこの一定の繰り返しの一循環を完全組織と呼んでいます。平織の完全組織は図2)のように4つのマス目で表すことが出来ます。
三原組織
すべての織物組織の基本となる3種類の組織を三原組織と言います。一見複雑な織物の組織も平織・斜文織(綾織)・朱子織の三原組織を組み合わせて変化発展させたものと言えます。
平織
平織(図2)は縦糸と緯糸が交互に交差した最も基本的な組織です。組織が均質で安定していて幅広い用途に使われます。代表的な平織りの織物にはブロード(ポプリン)・オックスフォード・シーチング・トロピカル・ローン・ダンガリー・ウェザー・羽二重などがあります。
斜文織(綾織)
斜文織 図3)は一般的には綾織とも呼ばれます。2本~数本の縦・緯の糸が連続して交差する組織で斜めの畝(斜文)が現われ、布の裏面は逆方向の斜文になります。平織に比べて地厚く、シワになりにくい柔らかい感触の布になります。綾織の組織は縦糸が沈んで緯糸が見える目数を分母、縦糸の目数を分子として綾の向きを添えて2/2右綾・2/2左綾・1/3右綾・1/3左綾…etcのように表示します。綾織の代表的な織物にはカツラギ(ドリル)・デニム・バーバリー等の綿織物やギャバジン・サージ・カルゼ・サキソニー等の毛織物等があります。
朱子織(繻子織)
朱子織 図4)は5本以上の縦緯糸の組み合わせで作られています。組織点は一定の法則に従って飛び離れていて綾織のように連続していません。縦または緯の糸が長く浮いている組織なので織地は一方の糸だけを並列させた組織になり光沢のある地厚で柔らかい布になります。 一般的には表面に良質の糸を密に用いて織られることが多く、英名でサテン(satin)と呼ばれます。朱子織は製織する際の綜絖の枚数(完全組織の糸数)によって5枚朱子・八枚朱子などとも呼ばれます。表面に縦糸の浮きを見せた朱子織を縦朱子または表朱子と言って最も多く用いられます。緯糸の浮きを表面に出した朱子織を緯朱子(よこしゅす)または裏朱子と呼びます。代表的な朱子織の織物にはシルクやポリエステル・レーヨン等の光沢のある糸を用いたサテンやウールの糸を朱子織にして染色・縮絨・剪毛等の工程を経て鹿皮の様な光沢に仕上げたドスキン。綿の8枚緯朱子を短く起毛してスエード状に仕上げたモールスキン等があります。
変化組織とその他の織物
織物の組織には基本の三原組織を変化させたり組み合わせた変化組織があります。平織りの変化組織には縦または緯方向に畝目が見える畝織(うねおり)や縦緯の糸を2本以上引き揃えて織る斜子織(ななこおり)。破れ斜文・山形斜文などの斜文織の変化組織や朱子織の変化組織があります。また変化組織の範疇に入らない蜂巣織りや捩り織(もじりおり)に似せてレースの様な透き間を表現する摸紗織り(もしゃおり)。組織点に大小の変化をつけて凹凸感を表現する梨地織(なしじおり)などの模様織、表と裏を2枚に分離して織る二重織り、二重織に経緯の糸の配色で柄を織りだす風通織り等があります。
パイル織物
平織りや綾織りの地組織の片面または両面にパイルを織り込んだ織物をパイル織と言います。身近なパイル織物にはタオルや絨毯がありますが、織物の表面を覆う毛羽やループをパイルと呼んでいます。パイル織物には縦糸でパイルを作る縦パイルと緯糸でパイルを作る緯パイルがあり、タオルやベルベット、絨毯は縦パイル。コーデュロイ、別珍が緯パイルです。またタオルのようにループをそのままにしたパイル織物をループパイル、ループをカットして毛羽状にしたパイル織物をカットパイルと言います。ベルベット・別珍・コーデュロイ、フェイクファー等はカットパイル織物です。絨毯(カーペット)にはループパイルとカットパイルの物があり、カットとループを組み合わせた物もあります。
綟り織り
綟り織(もじりおり)は縦糸を交差(綟り)させて緯糸を織り込んで布面にレースの様な柄を織りだす織り方で搦み織・絡み織(からみおり)とも言います。綟り織には綟り方の違いによって紗(しゃ)・絽(ろ)・羅(ら)とその変化組織があります。
まとめ
主に服地に用いられる基本的な織物について説明してきましたが、先史時代から世界中で作られて来た織物の種類や表現はとても多様です。ここまで述べた以外にも緯畝織で模様を織りだすフランスのゴブラン織りで有名な綴織り(つづれおり)や紋紙によって縦緯の糸で柄を織りだすジャカード織り、ジャカードよりも単純な複数の紋板によって連続した単純な柄を織りだすドビー織。二重織を変化させた袋織り(ふくろおり)や風通絣(ふうつうかすり)、斑に染めた絣糸で模様を織りだす日本や琉球の絣織り(かすりおり)はインドで生まれ東南アジアを経て日本に伝わったと言われていて世界各地に見られる織物です。代表的なパイル織物の絨毯も先史時代から織られて来た織物で私たちの衣と住の歴史はそのまま織物の歴史と言えるかも知れません。
参考書籍
- 繊維の種類と加工が一番わかる 日本繊維技術士センター
- 図解染色技術辞典 理工学社
参考URL
Wikipedia