もくじ
リブとは
名称(日本語/英語) |
リブ・横付属・横編みパーツ / rib |
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カテゴリ | 副資材 |
種類 | 大カテゴリ(リブ) |
概要
リブ(日本語名・・・リブ(読み方:りぶ)/英語名・・・rib)とは、横編み(リブ編み)の編地でできた衿や袖口、裾に付けるパーツ(副資材)のことです。
語源
リブ(rib)は英語で肋骨やあばら骨を意味し、横編みの編地があばら骨のように見える事が語源とされています。
アパレル業界では、リブ=パーツ(≠生地・編地)
リブ編み(横編み)のアパレル資材には、主資材のニットやカットソーもあります。このため「リブ」というと、一般の方は、リブ編みのセーターやワンピース、Tシャツなど編地の方をイメージされるかもしれません。ですが、アパレル業界で「リブ」と言った場合は、編地ではなくパーツのことを指します。
リブの別称
日本では、「リブ」の他に、「横編みパーツ」または「横付属」とも言われます。
リブの特徴
リブの特徴は、伸縮性と畝(うね)のある編地、やわらかい風合いと肌触りです。裾や袖口を絞る目的で使用される資材の中では高級資材に当たります。
リブの素材と編地
リブは編物のため、ニットやカットソーと同様、糸が素材(資材)です。リブの編地は、「横編機」という機械を使い、染色した糸を編んで作ります。リブの編地は、どの①素材(糸)で、どの②ゲージを使い、どのような③針の抜きで、④糸を何本使って編むか(糸の取り本数)により、種類はさまざまです。
どの編地でリブを作るかは、着心地や印象を左右する上に、リブは素材と編み方を細かく指定する受注生産型の資材のため、リブを使って服作りをする場合、上記の4つの理解が必須となります。
リブの素材については、『代表的なリブの素材(糸)』で紹介していますので併せてをお読みください。
リブの編地の決め手となる、《ゲージ》《糸の取り本数》《針の抜き》については、『リブの編地』で詳しく解説していますので併せてお読みください。
リブの製法
リブの製法は2つあります。一つは、リブの編地を裁断・縫製して作る「流し」(流しリブ)と、もう一つは、パーツひとつ一つを編んで作る「編み立て」(編み立てリブ)です。パーツにより編み立でしか作れないものもある上に、発注方法や製造にかかる日数が変わります。
詳しくは、選定ポイントの『流しと編み立て』で解説していますので併せてお読みください。
リブの色指定
リブの色は、使用する糸の色を指定します。但し、単に希望の色を指定すればいいわけではなく、「在庫色」と「糸染め」のどちらかから色指定する必要があります。
在庫色とは糸メーカーが予め用意している色で、糸は染色済みですので用意された色の中から指定します。糸染めとは、希望の色を指定し、糸を一から染めてもらう指定方法で糸染めだけで約1か月かかり、どちらにするかは、製造日数に関わります。
詳しくは、選定ポイントの『在庫色と糸染め』で解説していますので併せてお読みください。
リブの発注
リブの発注先はメーカーに直接、もしくは卸会社です。発注は、「流し」か「編み立て」でそれぞれ発注方法が異なります。
詳しくは『発注方法』で解説していますので併せてお読みください。
成り立ち
リブの成り立ちは、横編みの成り立ちと、リブというパーツそのものの成り立ち、2つの側面があります。
リブ編み(横編み)の成り立ち
靴下、肌着などに使われる伸縮性のある生地を「メリヤス」と言いました。メリヤスは編み物の生地の古い呼び名で、漢字で書くと「莫大小」と書きます。メリヤスが日本に入ってきたのは南蛮貿易時代で1567年~1610年の間と言われています。その頃、フランスで靴下を作るための足踏み式の編み機(横編み機)が開発され、イギリスでは手編みから機械化が進み、産業化していきました。リブ編みを作るための編み機はそれから170年後の1700年代後半に開発されました。日本ではメリヤスが足袋を作るための生地として普及していきましたが、本格的に横編みが機械化されるのは第二次大戦後になります。横編み機の世界的企業でもある島精機製作所(和歌山県)も1962年の設立で、全自動手袋編み機から始まっています。意外に歴史は古くないのです。
リブというパーツの成り立ち
リブの普及は、ポロシャツの普及が関連しています。1927年、テニスプレイヤーだったルネ・ラコステがテニスをするのに動きやすい服としてポロシャツを考案。その後、紳士のスポーツであるテニスに相応しいようにハイゲージのリブ編みの編地をポロシャツの襟に採用しました。その後、1970年代にラルフローレンのポロシャツが大人気となったのをきっかけとしてリブが広く使われ始めます。
1950年代にはフライトジャケットとしてのMA-1の襟に、それまで使われていたムートンファーに代わってリブがパーツとして使われました。その時には既に伸縮性のある機能を活かして袖口、裾にはリブがパーツとして使われていました。スタジャンの襟、袖、裾にも1940年代からリブが採用されています。現在ではブルゾン、スエットパンツのパーツとして、リブは幅広く使われています。
代表的なリブの産地
- 北陸(石川・福井)
- 和歌山
- 東京(墨田・八王子)
北陸(石川・福井)
合成繊維の産地でもあるので、合繊系の糸を使ったハイゲージのリブをつくるメーカーが多いです。
和歌山
日本最大の横編機メーカーの島精機のお膝元。リブ製造大手の吉田編織もあり、ローゲージからハイゲージまで幅広く製造。
東京(墨田・八王子)
東京でもリブを作成しています。メリヤスの産地である墨田区、昔からの繊維産業がある八王子でも生産しています。
その他
その他、大阪、愛知、岐阜など古くから繊維産業のある地域ではリブを生産しているメーカーがあります。
用途
リブは衣類用のパーツの為、衣類以外の用途はありません。
衣類
ポロシャツの襟、袖口。ブルゾンの衿、袖、裾。スエットのシャツの襟元、袖、裾。スウェットパンツのウェスト、裾など
魅力
柔らかな風合い、伸縮性と高級感
リブの魅力はその風合いの柔らかさ、伸縮性と高級感です。MA-1やスタジャンだと表生地はメルトン生地だったり、革、ナイロンだったりします。その風合いとは異なるリブの柔らかい風合いは魅力です。袖や襟は直接肌に触れることもあるので、柔らかい風合いだと違和感を与えません。また、伸縮性があるため、袖や裾を絞ることができます。袖や裾にはリブではなく、ストレッチテープやゴムスピンドル、平ゴムを使って伸縮性を持たせることもあります。しかし、仕上がりの綺麗さ、高級感でいうとリブ使いには敵いません。
編地の表記と用語解説
編地の表記が分からないと、糸や編地の見本帳を見てもチンプンカンプンで、選定も発注も困難です。基本的な表記と用語をご紹介します。
編地の表記
編地は「ゲージ数 糸の素材と番手(太さ) 針の抜き 糸の取り本数」の順で表記されています。
例えば、14ゲージ、綿30番手単糸の糸、総針、4本取りで編まれた編地の場合は「14G綿30/-4本」と記載します。異素材の糸を編む場合は、×(かける)を使い、「14G ポリエステル150d 2本 × ゴム糸 1本」のように記載します。
詳しくは以下表を参考にしてください。
項目 | ゲージ数 | 糸の素材と番手(太さ) | 針の抜き | 糸の取り本数 |
---|---|---|---|---|
表記方法 | 数字+G |
素材+番手(太さ) *綿・毛は単糸・双糸も明記 *合繊はデニール(d)表示 |
数字×数字 ※総針は「総針」と明記 |
数字+本 |
表記 | 14G | 綿30/- | 2×1 | 4本 |
読み方 | ジュウヨンゲージ |
メンサンマルタン |
ニーイチ |
ヨンホン |
表記の意味 | 14ゲージの編地 | 30番手単糸の綿の糸 | 2本に1本針を抜いている | 4本取り |
単位の意味 | 1インチ内にいくつの針が入っているか | 番手:糸の太さのこと | ゲージ内の針を全て使っているか、何本かに一本針を抜いているか | 糸を何本使って編んでいるか |
各項目の意味などについては、『代表的なリブの素材と種類』で詳しく解説していますので併せてお読みください。
用語解説
- ※1.「横編み」
横編機という専用の編機を使って編む、糸の編み方のこと。編地の編み方には、経編み・丸編み・横編みの3種類がある。各編地については、弊社クロップオザキスタッフブログ『MA-1の袖に付いているパーツって何?』で詳しく解説しています。 - ※2.「編地」糸を編んだ生地状のもののこと。
- ※3.「付属」副資材の別称。
- ※4.「番手」
「番手」とは糸の太さのこと。番手(太さ)は2/48、20/2など「数字/数字」で表す。番手には「毛番」と「綿番」があり、2/48と分子より分母の方が大きい(分子<分母)のが「毛番」、20/2と分母より分子が大きい(分子>分母)が「綿番」。1や2の数字は単糸か双糸かを表しています。
番手については、丸安毛糸(株)が運営するKNIT MAGAZINEの『ニット糸の番手(毛番手・綿番手)と適正ゲージの計算方法』に詳しくまとめられています。ポリエステルなどの合成繊維はデニールと言って、9000mの長さで1gの重さの糸の太さを「1デニール」と定めている。 - ※5.「表地」衣類のメインとなるボディの表側に使われる生地のこと。
代表的なリブの素材(糸)
リブは編物の為、ニットやカットソーと同様、糸が素材(資材)です。糸を横編機で編み上げていくことでリブ(リブの編地)が出来上がります。どの糸を選ぶかで、リブの風合い肌触り、仕上がり、コストが異なります。ですので、リブを使った服作りでは、どの糸にどんな特徴があり、どんなシーンで使われているか、糸の選定基準の基礎知識は持っておいた方が良いでしょう。
代表的な糸の素材は以下5つ。
素材紹介の最後に、『素材の選び方』として、素材選びの基本的な考え方も解説していますのでそちらも参考にしてください。
ウール
ウールは、羊毛を使った糸です。糸番手では2/48の糸がよく使われます。冬ものブルゾンの襟、袖、裾にローゲージのリブとして使われることが多いです。
A/W(アクリルウール)
アクリルウールは、アクリルとウールの混紡糸で、A/Wと表記されます。一番使われるのは、アクリル70%、ウール30%の糸です。見た目にはウールと変わらない感じですが、コストは安くなります。ウール同様、冬物衣料のリブとして使われます。
綿
綿は、綿100%の糸です。リブでよく使われる糸の番手は、20/2、30/1、30/2、40/1、40/2、60/2等です。ポロ襟、袖口、春夏物ブルゾン、スエットパンツのリブとして使われます。
T/C(テトロンコットン)
テトロンコットンは、ポリエステルと綿の混紡糸で、T/Cと表記されます。よく使われるのは、50%/50%の割合の糸です。見た目は綿に近いですが、綿よりリーズナブルで、強度があるのが特徴です。用途は綿糸と一緒で、ポロ襟、袖口、春夏物ブルゾン、スエットパンツのリブとして使われます。
ポリエステル
ポリエステルは、ポリエステル100%の糸です。見た目が他の素材よりも光沢感が出ます。ナイロンやポリエステルなどの合繊の生地(表地)との相性が良い為、スポーツブルゾン、スポーツポロシャツなど、ハイゲージのリブに使われます。
素材の選び方
リブの糸選びにNGはありませんが、表生地の色と素材に合わせる、もしくは近い素材を選ぶ、など表地と組み合わせて違和感のない糸を選ぶのが基本です。
シーズン、用途別の糸選びの基本は以下
シーズン
秋冬物にはウール系、春夏物には綿、ポリエステル系を使うのが基本です。
スポーツウェア
スポーツウェアには、季節に関係なくポリエステルを使うのが基本です。
ポロシャツ
ポロシャツには、表生地に合わせて綿、T/C、ポリエステルを使うのが基本です。
リブの編地
リブは、横編みの編地でできているパーツです。そのリブの編地は、先ほどご紹介した《素材》に加え、横編機で《どのように編むか》により種類は様々です。その《どのように編むか》を決めるのが、《ゲージ》《糸の取り本数》《針の抜き》です。
- ゲージ:横編機で使われる針で、編地の肌理を表す単位。どの単位のゲージを使うかで、編地の肌理が変わる。
- 糸の取り本数:糸を何本使って編むかのこと。どの糸を何本使って編むかで編地の仕上がりが変わる。
- 針の抜き:ゲージ内の針を何本に何本針を抜いて編むかのこと。糸の抜きにより編地の畔(畔(凸凹))の深さが変わる。
これらの組み合わせにより、ポロ襟に使われるような目の詰まったリブ、スタジャンに使われるようなざっくりと編地の凹凸が深いリブ、ライン入りのリブ、などバリエーション豊かなリブができあがります。
冒頭から申し上げているように、リブはメーカー側で既にパーツが用意されているのではなく、襟や袖口、裾など1つ1つのパーツ毎に、編地、もしくは糸~編み方まで全て指定して発注する受注生産型の資材です。この為、素材に加え、これらの基礎知識もないといけません。
リブの編地の決め手となる《ゲージ》《糸の取り本数》《針の抜き》についてと、それぞれの特徴について説明しますので、編地選びの参考にしてください。
《ゲージ》
ゲージとは、1インチ(2.54cm)に何本針が入っているかのことで、編地の厚さや密度を表す単位です。単位はゲージ(G)です。
表記
7G(ななげーじ)、14G(じゅうよんげーじ)と「数字+G(ゲージ)」で単位を表します。
ゲージ数と編地
数字が小さくなると編地が厚く、ざっくりしたものになり、大きくなると薄く、平たい仕上がりになります。
3~5ゲージをローゲージ、7~10ゲージをミドルゲージ、12ゲージ以上をハイゲージと呼びます。
よく使われるゲージ
リブで使われるゲージ数は3ゲージから18ゲージが一般的です。秋冬物のウール系の編地(MA-1、スタジャンなど)はローゲージ、ミドルゲージを使い、ポロ衿、スポーツウェアはハイゲージをよく使います。
《糸の取り本数》
糸の取り本数とは、どの糸を選び、何本糸を使うかということです。
リブの編地は、ゲージだけでなく糸の取り本数によっても仕上がりが変わる為、発注の際は糸の取り本数も指定します。但し、糸の取り本数は、ゲージ数、糸の太さにより自動的に決まる場合がある為、発注先に確認しながら決めます。
表記
糸の取り本数は「数字+本」で表します。4本取りの場合は、「4本」と表記します。
よく使われる糸の取り本数
例えば、ポロ襟だと「14G 綿30/− 4本取り」というのがよく使われます。また、伸縮性を持たせたい裾や袖の場合、ゴム糸(ポリウレタン)を入れます。スポーツウェアの裾だと、「14G ポリエステル150d 2本 × ゴム糸 1本」といった具合です。
《針の抜き》
針の抜きとは、ゲージ内の針の抜き方のことです。針を抜くことでリブの畔(あぜ)(凸凹)を強調できます。
表記
針の抜きは、2×1(にーいち)、3×2(さんにー)と、「数字×数字」で表します。総針の場合は「総針」と漢字で表記します。
よく使われる針の抜き
よく使われる針の抜きは、針を全て使って編む「総針(そうばり)」、2本に1本針を抜く「2×1(にーいち)」、3本に2本抜く「3×2(さんにー)」です。
針をすべて使って編む「総針(そうばり)」の編地は畔が詰まっているので、編地の凹凸は目立ちません。一方で2本に1本抜く「2×1(にーいち)」は、抜いた部分が凹んで編地が上がります。従って凹凸がより強調されます。さらに3本に2本針を抜く「3×2(さんにー)」は、更に深い凹みのリブになります。他にもジャガード編みでメッシュ調にしたり、文字を入れたりする編地もあります。
選定ポイント
リブの基本的な選定ポイントは、《生地(表地)との相性》《流しと編み立て》《在庫色と糸染め》《コスト》です。
1.生地(表地)との相性
生地(表地)との相性は大事ですが、この生地にこのリブはNGということはありません。わざと異素材感を出したいということで、表地と全く違う素材を使うのも自由です。しかし、多くの場合、素材感を合わせる方が馴染みます。ウール系の生地ならウールやA/Wのリブ、綿系の生地なら綿やT/Cのリブ、合繊系の生地ならポリエステルのリブ、といった具合です。
2.流しと編み立て
リブには、「流し」と「編み立て」という2つの作り方がある為、発注方法も、「流し」か「編み立て」で異なります。発注方法が異なるだけでなく、編み立でしか作れないリブもあるため、2つの違いを理解し、選定する必要があります。
流し
流しとは、生地状に横編みを編んだいったものを裁断、縫製して作る製法です。
流しの場合は、生地幅何㎝で何mという形で発注し、上がったものは縫製工場で裁断して縫製します。
メリット・デメリット
流しは正確な寸法が出なくても発注できますし、発注するのが簡単です。一部リブメーカーは流しの状態で在庫しているリブがあり、即入荷するので納期的にかなりメリットがあります。一方で、裁断するのでロスが出てしまいます。また、ライン入りリブやポロ襟は流しでは作れません。
編み立て
編み立てとは、パーツ毎にひとつ一つ編んで作る製法です。編み立てで発注する場合は、1揃い1人分とし、1人分(パーツ・サイズ・枚数)x何人分」で発注します。
例えば、ポロシャツの場合は、襟10㎝×60㎝ 1枚、袖3㎝×40㎝ 1枚(袖は2分割して両袖に充てる)を1人分として、何人分といった具合です。
メリット・デメリット
編み立ての場合、寸法がすべて出ないと発注できない、発注書が複雑などのデメリットもありますが、ロスがなく、作りたいものが作れます(ライン入り、ジャガードなど)。時間のないファーストサンプルなどは流し(代替えもあり)で進め、展示会サンプル、量産は編み立てで企画通りのものをロスなく進めることをおすすめします。
流しと編み立ての比較表
項目 | 流し | 編み立て |
---|---|---|
メリット |
正確な寸法が分からなくても発注できる。一部メーカーでは、流しの状態でストックしており即納可能な場合も |
パーツ毎に編んで作る為ライン入り、ジャガード等作りたいものがつくれる。ロスがない。 |
デメリット |
ロスが出る。 |
発注には正確な採寸が必要で、発注自体も複雑で、時間がかかる。 |
その他 | 流しでの発注が不可のパーツがある。ポロ襟、ライン入り・ジャガード織りなどは流しでの発注は不可。 |
サンプルは流し、量産は編み立てにすることで時短かつ、ロスを防げる。 |
3.在庫色と糸染め
リブの糸の色は、「在庫色」と「糸染め」、2つから選びます。何用のリブか、どのパーツかも選定に関係します。2つの違いを知り、正しい選定をしましょう。
在庫色
在庫色とは糸メーカーが在庫している色から選ぶことです。
織物生地のブルゾンのように、織地と編地と組織が違う衣類は多少の色誤差は気にならず、在庫色から選ぶことが多いです。在庫色は、糸が在庫切れでない限り即入荷するので、編みにすぐ入ることができます。
糸染め
糸染めとは表地に合わせて染色することです。ポロシャツのように、身生地と襟の色が違うと目立つ衣類は、表地に合わせて糸染めすることが多いです。但し、糸染めを選んだ場合は、糸染めだけで1ヵ月掛かることもありますので、早めの発注を心がける必要があります。
比較表
項目 | 在庫色 | 糸染め |
---|---|---|
製品 | リブと表地の色の差が気にならないブルゾンなどは、在庫色を選ぶことが多い。ポロシャツなど、色目立ちする衣類は合わない。 | ポロシャツなど、身生地とリブの色の違いが目立つものは、糸染めが多い。 |
納期 | 直ぐにリブの生産に入ることができる | 糸染めだけに1か月かかる為、早めの発注が肝心 |
4.コスト
リブは副資材の中では高価なものです。ブルゾンで襟、袖、裾すべてをリブにすると一着あたりのコストが1000円超えます(糸によっては2000円超)。このため、どこまでリブ使いにするのか考えないといけません。
コストを抑えたいのであれば、裾はゴムスピンドルや平ゴム仕様などにします。中国など海外でもリブの手配は可能なので、現地で安価なリブを調達するというのも一つの方法です。但し、副資材卸を通さずに現地工場に手配させる場合には、リブの品質に注意する必要があります。
発注方法
発注先は、自分で横編み工場を選ぶか、アパレル副資材商社(卸)に代行してもらうかのどちらかになりますので事前に決めておきます。
発注方法は、「流し」か「編み立て」で異なります。流しは既製品を使うので簡単ですが、編み立ては選ぶ項目がたくさんあります。
1.流しの場合
リブの発注について、既製品の流しであれば、好みの編地、色を選んで、必要m数を発注すれば完了です。
2.編み立ての場合
編み立ての発注工程は全5つ。
- 糸の種類を決める
- 編地の種類を決める
- 寸法、ラインなどを決める
- 糸の色を決める
- 発注数量を決める
1.糸の種類を決める
リブを編むためにはまず、どの素材で、どの番手の糸を使うかを決めます。既成品でよく使われる糸メーカーは共立繊維株式会社(http://www.kyoritsu-seni.co.jp/)と三山株式会社(https://www.miyama-tex.co.jp/)です。それぞれ素材毎のサンプル帳がありますので、実物を確認するのがおすすめです。
2.編地の種類を決める
編地の種類として、ゲージ数、糸の取り本数、針の抜き(総針か2×1か等)を決めます。『リブの編地』の中で説明しましたが、ゲージ数と選んだ糸によって、糸の取り本数はだいたい自動的に決まります。ゴムを入れるかどうかはここで決めます。糸の見本だけでは編地は想像しづらいので、編地の見本帳を参考にすることをおすすめします。
3.寸法、ラインなどを決める
リブを使う場所毎に縦横の寸法を指示します(基本的にリブは長方形)。その時にシングル使い(ポロ衿、ポロ袖等)かダブル使い(ブルゾンの襟、袖、裾等)か、ダブル使いの場合は折れ線を入れるかどうかも指示します。また、ラインを入れる場合はラインの位置と色の指示も行います。寸法を指示する時は縫い代(1㎝)を入れることを忘れないでください。
シングル使いとダブル使い
シングル使いは、ポロ襟や袖など、一重のリブのこと。ダブル使いとは長方形のリブを2つ折りにして使う使い方。ブルゾンの袖、裾はほとんどダブル使いです。折れる位置(通常センター)に折れやすいように針抜きして折れ線を入れるのが一般的です。
4.糸の色を決める
糸の色を決めます。選定ポイントの『在庫色と糸染め』でお伝えした通り、糸の色は在庫色、糸染色の2つから選んで決めます。糸の種類により色見本帳があるので、そこから好みの色を選びます。その中に合う色がない場合は、色見本(身生地等)に合わせて染色します。糸染めから行う場合は時間が掛かる(染色だけで1ヶ月ほど)ので要注意です。
5.発注数量を決める
最後に発注数量決めます。発注数量は、各パーツ毎に色・サイズ別に指定します。
リブの発注寸法が同じならサイズ別数量指定は不要の場合も
サイズ毎にリブの寸法を変えない場合はサイズ別の数量でなくても大丈夫です。例えば、S~Lまであり、すべてLの寸法で作成し、小さいサイズにはリブを裁断して使用するというケースです。
編み立ては全項目指定が必須&納期に時間がかかるので早めの発注を
編み立てのリブの場合、この5つの項目(糸の種類・編地の種類・寸法やライン・糸の色・発注数量)すべて決めないと発注できません。また、編み立てリブはすべて受注生産で加工期間が長いです。従って、編み立てリブは早く決めて、早めに発注することを心がけてください。
資材発注時の注意とポイント
リブは時間がかかるもの
発注時の注意点として、リブは基本的に受注生産になるので納期に時間が掛かることを認識しておくことです。特に既成の糸では色が合わないので糸染めから行うことも多いです。糸染めから行う場合はそれだけで1ヶ月以上かかります。リブが上がるまで2ヵ月かかるというのも普通です。納期に余裕を持って、早め早めの発注をしてください。
横幅の最大寸法を把握
発注時の注意点になりますが、生産できる編地の横幅の確認をしてください。編み機の種類、ゲージ数や糸の取り本数、編地によって最大幅が変わってきます。ブルゾンの裾は“ぐるり”を1枚で取ることは難しいです。よって、裾は2枚作ってはぎ合わせる必要があります。流しの場合でも、横幅何㎝で編むかによって要尺が変わってきますので、確認が必要です。
加工・縫製工場へ渡す際のポイント
どこに使うものかを明示
編み立ての場合、どのパーツの部分のリブなのかを明確にしておく必要があります。特に袖や裾は同じくらいの幅の場合が多いので、間違って使用されないようにする必要があります。梱包する時には各パーツ名を書いてもらったり、品番や寸法、色を記入したりするように発注先に伝えてください(通常、副資材卸はそのように対応)。また、輸出の場合、パッキングリストに色、パーツ毎に明記してもらうようにすることで、縫製工場にとってわかりやすくなり、間違いも防止できます。
小売の際の注意とポイント
主な《消費者》へのアナウンス
リブはニット製品なので、ニットと同じ取り扱いの注意が必要です。スナッキングといって、針やベルクロのオスの部分などに引っ掛けると糸が引けてつれてしまいます。スナッキングに気を付けてもらうようにアテンションタグなどで注意喚起してください。
おすすめ資材
《中空糸のリブ》
中空糸といって、糸の真ん中が空洞になっている糸があります。ポリエステルの糸ですが、中空糸にすることで、軽量で、柔らかな風合になります。さらに繊維内に空気層ができることにより保温性が上がります。機能性を重視するスポーツウェアにはもちろん、カジュアルウェアにもおすすめです。
《ジャガードリブ》
ジャガードといって、単色、ライン入りだけでなく、オリジナルの柄やロゴを入れることができます。メッシュ調にすることもできます。
まとめ
高級感と機能性が活きるリブ
リブはアパレル業界にいないと聞かない言葉かもしれません。私たち副資材卸にとってもボタンやファスナーとは違って理解の難しい資材です。既成品が少なく、受注生産でお客様の要望に応じて発注する必要があるからです。
しかし、リブを使うことで製品の高級感は上がりますし、機能的にも体にフィットするので心地よいです。リブのことを理解して、発注できるようになるとデザインの幅も広がります。リブを使ったデザインにチャレンジしてみてください。