もくじ
レースとは
概要
1本の糸、何本かの糸を撚り合わせたり、透かし模様にしたものの総称。針でかがるニードルポイント・レース、結んでつくるノッティド・レース、かぎ針で編むクロッシェ・レース、ねじって絡ませるボビン・レース、刺繍レース布地を化学消去してつくるケミカルレースなど、手製と機械製のものがあります。
また広義には、カットワークオープン・ワーク、ドロン・ワークを布地全体に施して透かし模様にしたものや、ネット、チュールなどの網状の布に刺繍をして透かし模様につくられたものも含まれます。
語源
ラテン語の古語ラシが変化した俗語ラキウムから発生したもの
成り立ち
レースの起源は古く、原始時代の古代人が鳥獣、魚をとる為に、つや樹皮などの植物の繊維で網や罠を作ったことが始まりであります。現在のようなレースに発達したのは13世紀頃で、14~15世紀頃には初期ボビン・レースが誕生し、16世紀中頃~にはヨーロッパ各国に伝わり、発展していきました。この時期、レースは「糸の宝石」ともいわれ、イタリアではニードル・レースの「ヴェネツィアンレース」、フランドルでは(旧オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部の地域)、「フランドル・レース」や「ブリュッセル・レース」とも言われる、ボビンレースの二大生産地を誇っていました。フランスでは、17世紀にルイ14世の宰相コルベールが王立レース製造所を創設し、フランス・レースを確立していきました。
しかし、英国の産業革命やフランス革命などの影響により高価な手工レースは激減し、代わって、機械レース機が開発され複雑な模様レースも完璧に模倣出来るようになり、大量かつ安価に生産されるようになっていきました。
日本でも1920年代にレース機械が輸入され、国内各地で大量生産されるようになっていきました。
種類
レースの種類は大きく6種類
- ニードルレース– ヴェネツィアン・レース、アランソン・レース等
- ボビンレース – フランドル・レース、ブリュッセル・レース
- かぎ針レース – クロッシェ・レース
- 手編みレース– マクラメ・レース、バテンレース
- 刺繍レース – カットワーク、ドロンワーク、チュールレース、ケミカルレース
- 機械レース– リバーレース、ラッセル・レース、トーションレース
ニードルレース(ヴェネツィアン・レース、アランソン・レース等)
ボビンレース(フランドル・レース、ブリュッセル・レース)
かぎ針レース(クロッシェ・レース)
手編みレース(マクラメ・レース、バテンレース)
刺繍レース (カットワーク、ドロンワーク、チュールレース、ケミカルレース)
機械レース (リバーレース、ラッセル・レース、トーションレース)
用途
衣服
ウエディングドレス、フォーマル系服地、ブラウス、衿飾り、カフス飾り、スカート裾飾り、アップリケ、キャミソール、ランジェリーなどの縁飾りにも幅広く使われています。細巾レースを含めると、多種多様のレースがかなりあり、どの表生地に組合わせてもそれなりに相性が良いです。
雑貨
日傘、帽子のデコレーション、ハンカチ、テーブルクロス、カーテン等に使用されています。日傘に使用されている刺繍レースの多くは、カットワークの技法が多く見られます。
※画像:Amazonより参照
魅力
レースは薄地のチュール生地や綿生地に刺繍を施したり、透かし技法等で織レースや編みレースの形状があり、様々なレース種類や多種多様の柄があります。レース特有の繊細で優美な作りが魅力です。
その昔(16世紀~17世紀頃)、レースは「宝石」にも匹敵する価値のあるもので、特にニードル・レース、ボビン・レースは、中世のヨーロッパでは「糸の宝石」と称賛され、王侯貴族のトップモードになるほどでした。18世紀頃に入るとボビン・レースは、フランスの「王立レース工房」よる繊細で優美な「ロココレース」を確立し、女性のファッションにおける贅沢で優雅な芸術的なものになっていきました。19世紀の英国でのロイヤルウエディングで、ヴィクトリア女王が純白のウエディングドレスとヴェールにホニトン・レースを用いられ、その後、レーススタイルは花嫁衣装として定着していきました。
現代では、機械レース生産によって安価の商品とはなってはいるものの、女性の下着や、ファッションにおいて欠かせないものであり、今もなお、繊細で優美な魅力は変わらず、あらゆる製品の飾り装飾品と存在感を華っています。
特徴
刺繍を施したり、透かし技法等で織レースや編みレースなどの形状があり、様々なレース種類や多種多様の柄があります。レース特有の繊細で優美な作りが魅力ですが、その反面、耐久性が悪く脆い部分があるのも特徴です。非常にデリケートなものである為、着衣している時でも引っ掛けて切れたりすることもあり、十分取り扱いに注意する必要があります。また、透かし部分が多いレースのタイプ等では(綿のトーションレース等)、水などによる縮率も大きく反映する場合もあります。
代表的な現代レース
代表レースは大きく6種類
- ニードルレース– ヴェネツィアン・レース
- ボビンレース – 手織りレース
- クロッシェ・レース -かぎ針レース
- 手編みレース – マクラメ・レース、バテンレース
- 刺繍レース – カットワーク、ドロンワーク、チュールレース、ケミカルレース
- 機械レース – リバーレース、ラッセル・レース、トーションレース
ニードル・レース
針レースの一種で、縫い針と糸だけで作る技法のひとつである。最高級品の「ヴェネツィアン・レース」は、複雑な技法で作る盛り上がった柄が特徴です。
ボビン・レース
何本もある糸巻の(ボビン)糸を交差させたり組紐のように手織りして模様を作る技法レースです。トーション・レースが代表的で、手芸による手織りレース~機械レースまであり、甘撚り麻糸や木綿細糸で、幾何学模様や連続模様の目の粗い細幅レースです。
古くは、「ブリュッセル・レース」が有名です。
クロッシェ・レース
かぎ針編みレースの一種、鎖編み、細編み、長編みを組み合わせて模様を編み出していきます。「アイリッシュ・クロッシェ・レース」は、高度な術を要する立体的なレースになります。
手編みレース
針などを使わず、糸や紐をクッションにピンを刺しながら結んで作るレース、接結飾り技法で模様を作ります。
代表的なのは「マクラメ・レース」で、最も古いレースの技法とされ、タオルの端がほつれないように糸を結んでいたものが、装飾的な模様レースに発展していきました。
刺繍レース
特にエンブロイダリー・レース機によって刺繍加工をしたレースのことをいいます。ワンピースやブラウス、日傘等、汎用性が広いレース。
チュール生地に刺繍を施したものを「チュール・レース」
水溶性の基布に刺繍加工し、基布を溶解して刺繍糸のみ残した「ケミカル・レース」
生地全面に刺繍やレース加工した「オールオーバー・レース」
穴あき刺繍を施した「ボーラー・レース」「アイレット・レース」などがあります。
中国伝統の「汕頭レース」は「オープン・ワーク」透かし技法の一種です。ハンカチ、ブラウスにも多く使用されています。
機械レース
イギリスの産業革命で開発、発祥されたリバー・レース機で編まれたのが「リバー・レース」と呼称されています。繊細で精巧優美なレースです。機械で作る最高級のレースといわれるものです。
経編みのラッセル編み機で編まれたのが「ラッセル・レース」です。高級なリバー・レースを安価に生産する為、開発された機械レース機であります。用途としては、ファンデーション、キャミソールの縁飾りに多く使われています。
また、トーション・レース機作られた細幅のレースを「トーション・レース」といいます。組レース機の一種で、糸を交差させながら組紐のように作られています。ボビーレースの一種です。様々な糸の種類を使用出来るのが特徴で、日本では細糸で作られたものを「アランソン・レース」とも呼称されています。キャミソールや雑貨の縁飾り等、汎用性が広いレースです。
現代におけるレースの先進国について
リバーレース フランス
刺繍レース スイス
ラッセルレース 中国
代表的な国内レースメーカー
黒田レース、二渡レース、大定レース
取り扱い上の注意
(注釈※主に国内メーカーの全般レースにおいて)
レースの品番は、時折メーカー違いで重複していることも多く、確認&注意が必要です。予め、品番とレース柄をきちんと確認しておく事が肝要です。発注時には柄の写真とメーカー名を添えるのがベストです。また在庫品番であったとしても、今シーズンで終了の品番があったり、在庫が切れている状況のまま保留となり、次の上がり納期が出てこない場合も多くあります。ある程度まとまらないと生産を進めない事がありがちです。特に高級レース(リバーレース等)や、アップリケ、特殊レース等は、在庫を沢山持っていないことも多いので、使用する前に在庫背景の確認をしておくと安心です。
レース選定の考え方、ポイント
価格 (作りたい服の上代とのバランス)
主流となっている機械レースでも、単価の開きはかなりあります。高級ゾーンでは、リバーレース。安価ゾーンでは、ラッセルレースになります。
リバーレースは、繊細でエレガントなレースになりますので、やや上代の高め製品向けになります。一般的に糸が細く、糸量を沢山使用する柄ですと比例して生産に時間が掛かり、単価は高くなります。
ラッセルレースは、生産性が高く比較的安価ですが、その代わり巻m数も大きくなり、購入単位数量も大きくなります。
規格サイズ (仕様はどこに?広幅のレース生地か細巾レースのどちらになるのか?)
次にどのような製品仕様として使用するのか、レースのイメージする使用サイズを確認していきます。どんなにレースの柄が気に入っても、その製品企画のイメージサイズに合わなければ使用できません。生地の広幅を裁断して使用するのか、それとも両耳のある細幅レースが良いのか、その場合、何㎝巾サイズの細幅レースが良いのか確認していきます。
その他にも、アップリケやモチーフもあります。
デザイン (レースの柄や土台生地の有無)
サイズが決まったら、どの種類のレースが良いか確認していきます。
まず、立体的なレースが良いのか、フラットな感じのレースが良いのか?決めて行きます。立体的なら、ケミカルレース、バテンレース、トーションレース等が良さそうです。フラットタイプなら、チュールレース、オールオーバーレース、ラッセルレース等が良いでしょう。そして柄を確認していきます。幾何学模様か、花柄タイプが良いのか、製品企画に合わせて決めて行きます。総体的に花、葉のモチーフが多く使われています。
取り扱いの容易さ (比較的耐久性がありそうか?洗濯可能か?)
レースは主に綿100%、ナイロン100%、綿×レーヨン、綿×ナイロン、ナイロン×レーヨンの組合せ等で作られているのが多いです。キャミソールやファンデーションによく使用されている組成は、ナイロン×ポリウレタンのラッセルストレッチレースや綿レースが多く、洗濯可能となっています。昨今のほとんどのレースは、手洗いなら洗濯可能ではありますが、糸が細かったり、透かしが多いレースは、水などによる影響や縮率も大きく反映する場合があり、洗濯ケアには細心の注意を払う必要があります。その企画製品が洗濯頻度の多い商品なのか、そうでもないのか、その辺りを考えて選定すると良いですね。
資材発注時の注意とポイント
(注釈※主に国内メーカーの全般レースにおいて)
レースに色を染める場合には、表生地と同色にするのがベターです。表生地よりレースの色を濃色にして染色するのは、最も危険があります。反応染料で染めたとして堅牢度が良かったとしても色落ちのリスクが伴います。逆に、表地の方が濃くてレースが淡色であれば、リスクは少ないでしょう。昨今では洗剤の洗浄力が上がり、色落ちトラブルも多くなりがちです。ご注意ください。
また、染める時は縮率を考えて多めにレースの数量手配が必要です。一般的に必要m数より5%~10%(柄や巾にもよります)多い数量を染工所に渡します。ストレッチレースの場合は、15%~20%多く、レースを手配するのが望ましいです。このUP分も購入側の負担となります。
最後に用尺の取り都合についてです。
エンブロイダリ―レースは、約13.7m(15ヤード)巻上がりになります。例えば、1着2mの用尺の場合は、6着しか取れないという事になります。
発注計算する際に、この用尺取り都合を考慮の上、手配数量を算出する必要があります。
小売りの際の注意とポイント
(販売スタッフ・消費者へ必要なアナウンス等)
レースは非常にデリケートなものである為、着衣している時でも引っ掛けて切れたりすることもあり、十分取り扱いに注意する必要があります。また透かし部分が多いレースのタイプでは(綿のトーションレース等)、水などによる縮率も大きく反映する場合があったり、色物のレースでは色落ちなど、洗濯ケアには細心の注意を払う必要があります。
おすすめレース
リバーレース
フランスで生産されているリバーレースは、繊細で精巧優美なレースです。機械で作る最高級のレースといわれるものです。現在はこのリバーレース機械本体の生産が既に無いため、将来的により価値のあるレースとなるでしょう。
ラッセルリジットレース
呼称は他にも存在しますが、リバーレース風に考案され作られたラッセルレースです。経編み機で生産されるため、比較的安価にてリバーレースの雰囲気を楽しめます。
提案
上級テクニック組み合わせレース使い
細幅のチュールレースや綿レースでも、一つの洋服の中にレースの幅や柄を変えて多種のレースを使いこなすのも、上級者デザイナーといえるでしょう。
そのレースの組み合わせ次第でオリジナルデザインとなり、優美で華美な女性らしい洋服、雑貨になります。
オリジナル刺繍レース
広幅生地サイズであれば、オリジナル刺繍レースは小ロット生産が可能です。13,7m×10反(色)で生産出来ます。
オリジナルの型代はかかりますが、自らのデザイン一点柄ですので、価値観が非常に上がります。巷に出回っている既成レースなどや他ブランドに一切被ることもなく、制作側にとっても購入側にとっても嬉しい製品になりますね。
サンプル迄はおよそ1か月くらい掛かります
まとめ
種類豊富なレース で組み合わせを楽しむ服作りを
レースの歴史や現代レースについて解説させていただきました。一口にレースといっても、奥深く多種多様なものが沢山あり、女性的な演出資材として魅力が満載です。(昨今男性向けレースもありますよ)
知識を深めていろんなレースを自由に組み合わせたり、オリジナルレースを作成したり、魅力的な製品づくりをしてみませんか。
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参考文献:
(株)テキスタイル・ツリー『テキスタイル用語辞典』著者 成田典子
文化出版局 『ファッション辞典』
“公開日:2022年12月16日
更新日:”