裏地とは

  • 2024年4月2日
  • 2024年6月20日

裏地とは

タフタ裏地

 

名称:日本語名 裏地/英語名・・・lining
カテゴリ 繊維資材
種類 大カテゴリ(裏地)

 

裏地(うらじ)とは、衣服などの内側に施される内張りのことです。

裏地が使用されたジャケットの画像

表地と調和するような無地の色布で仕立てられることが多いですが、デザインの一環として、柄物や、表地とは対照的な配色のものが用いられたりもします。

 

裏地の役割

裏地付きダウンウェア

 

保温性を上げる

服の役割の一つが身体を保温することです。表地だけではなくて裏地を施し生地を重ねることでその保温性は高まります。生地が重なることで風を通さなくなり防風性が上がったり、表地や裏地よる空気の層が増えることで、熱を蓄えたり、外気との断熱が可能です。また起毛タイプの裏地を選定することで、より暖かさを感じることが出来ます。

 

表生地と衣服を補強して保形する

表生地が薄かったり、柔らかかったり、糸の打ち込み密度が少なく強くないものですと、服自体の重みや引っ張られてしまったりすることで、生地が破れたりだれてしまったりします。裏地を使用することで、表生地への負荷を分散軽減することができ、表生地と服自体を補強、保形することができます。

 

着脱しやすくする

滑りが良い裏地を使用することで、衣服の脱ぎ着がしやすくなります。天然素材や起毛した表生地は滑りがよくなく、腕や脚が通しづらい場合があります。特に細身でタイト目なシルエットの服の場合には脱ぎ着がしづらいので、滑りがよい裏地を使用することで着脱しやすい服にすることが可能です。

 

表生地のベタつきやムレを軽減する

スポーツウェア等で表生地が布帛のフラットな組織な場合など、汗をかいたときに生地が肌にベタっとまとわりつきとても不快です。それを軽減する為に吸湿性のあるコットンやキュプラ素材のものを使用したり、メッシュやトリコットなどの通気性がよい立体的な組織のニット裏地を使用することで、肌と生地の接地面積を減らして不快感を軽減したりムレを防ぐことが出来ます。

 

透けを防止する

表生地が薄くて、糸の密度が少ない場合などには、衣服を着ていても地肌や下に来ているものが透けてしまいます。裏地を使用し表生地とで生地を二重にすることで、透けを防止、軽減することができます。

 

内側の汚れ防止

裏地が衣服の内側の汚れを防止します。体からの汗などが表地に付いて汚れてしまうことを防ぎます。

 

ファッション性の向上

裏地は様々な色や柄を表現することが可能です。表生地と逆配色にしたり、柄でアクセントを付けたり、ブランドのオリジナル柄やロゴを入れることで衣服の差別化をはかれます。

 

裏地の魅力

特徴的なヒョウ柄裏地のコート

裏地の魅力は表生地を補う様々な機能です。表生地と組み合わせることで縁の下の力持ちとして衣服を支えます。またもう一つの特徴としては裏地自体にも数多くのバリエーションがあることです。織物裏地や編物裏地、その中にも数多くの組織のバリエーションがあり、用途によって使い分けることができます。裏地によっては色や柄なども数多くあり、配色やデザインアクセントとして製品の表情をつくっていく為の大切な要素の一つとなります。

 

代表的な裏地の種類

タフタ

タフタ裏地

独特の光沢と張り感が特徴の薄手の平織物で織物の三原組織の一つです。タフタの語源は「紡ぐ」という意味のペルシャ語の“taftah”からきているなどいくつかの説があります。裏地では安価で汎用性が高い“ポリエステルレギュラータフタ”や打ち込み本数を増やしたポリエステルやナイロン製の“高密度タフタ”などが裏地としてよく使用されます。

 

ツイル

ツイル裏地

織物の三原組織の一つ、綾織物で斜めに畝が見える組織です。光沢に富み柔軟性もあり、シワが寄りにくいという特徴があります。タフタなどと比べて厚めに仕立てることができます。しかし糸を浮かせる部分が多い為、摩擦にやや弱い傾向があります。カルゼなども綾織物(ツイル)の一種で綾の畝の感覚が広くなっているのが特徴です。タフタと同じく裏地としても一般的で、スーツからカジュアルウェアまで幅広く使用されています。

 

サテン

サテン裏地

織物の三原組織でさる朱子織りで、サテンという場合は細い糸使いで滑らかな手触りと強い光沢の優美な織物のことを表現することが多いです。平織や綾織に比べて糸が長く浮いている為、丈夫さはやや欠けます。しかし滑りがよい為、裏地としてもよく使用され、レディースのジャケットやドレスの裏地などによく利用されます。

 

ジャカード

ジャガード裏地

織りや編み技術で組織や色を変えながら柄を表現したものをジャカード生地と言います。 “ジャカード”が正確な読み方ですが、日本では“ジャガード”と濁点が付く方が呼びやすいので“ジャガード”と言う方が一般的です。小紋柄、花柄、ドット、ペイズリーなどの模様の裏地がよく流通しています。

 

トリコット

トリコット裏地

トリコットとは経編みのトリコット編み機で編まれるニット生地の一種です。裏地としてはメッシュよりも目が細かくしなやかなで、ほどよいストレッチ感と通気性がありレディースジャケットやスポーツウェアの裏地として使用されます。

 

メッシュ

メッシュ裏地

メッシュとは網目のことで、網目状のニットのことを主に指します。裏地として使用されるのは、トリコット編み機で作られたトリコットメッシュが多いです。網目が開いていることで通気性がよく、また肌に当たる面積が少なく汗をかいた際でもベタっと肌にはり付きづらいのでスポーツウェアの裏地に利用されます。しかし裏地で使用する場合には網目が開いている分、透けたり、中綿やダウンが抜けやすかったりするので使用するアイテムには注意が必要です。

 

代表的な裏地の組成

ポリエステル

合成繊維を代表するひとつで、ナイロン、アクリルと共に「三大合成繊維」と呼ばれています。強度があり、摩耗に強く、耐久性もあり、また弾力性、張り、コシがあり、形態安定性にも優れ、シワになりにくく、型くずれしづらいです。価格もリーズナブルで、スーツからカジュアルウェア向けまで幅広いアイテムの裏地として使用されています。

 

キュプラ

キュプラ裏地

再生繊維の一種で、コットン・リンター(綿花の種を包む産毛)を原料に、「銅アンモニア(cuprammounium法)」で製造された繊維であることからキュプラと名付けられました。

旭化成株式会社の「ベンベルグ」の商標でも知られています。比較的摩擦に強く、しなやかな風合いでシワになりにくく、吸湿性が高く静電気がおこりにくいという特徴から高級なレディースウェアからスーツの裏地などに使用されています。しかし縮み、色落ち、毛羽立ちが発生しやすく取扱いには注意が必要です。洗濯もクリーニングや手洗いなどが推奨されています。

 

コットン(綿)

コットン生地

コットン(綿)とは、アオイ目アオイ科ワタ属に属する多年草「ワタ(綿)」の「種子毛」からとれる繊維です。コットン(綿)は吸水性や吸湿性が高く、通気性も良く丈夫なため、植物性繊維の中でも特に優れています。その機能は裏地としても使用され、カジュアルウェアでよく利用されます。

 

代表的な資材サプライヤー

裏地の代表的なサプライヤー名は以下です

  • 田村駒株式会社
  • 株式会社ニシヤマ
  • 蝶理株式会社
  • 旭化成アドバンス株式会社

田村駒株式会社

田村駒株式会社HPより

田村駒は繊維系の1894年に洋反物商としてスタートした繊維専門商社です。現在では繊維業界だけにはとどまらず、建築や産業資材などでも取り扱い資材の範囲を広げています。裏地では織物から編物まで、幅広い取り扱いの中で特に合繊の機能性生地開発が得意で、最近では裏地でのノウハウを活かして表生地の開発、販売にも力を入れています。

 

メーカー名

田村駒株式会社

URL https://tamurakoma.co.jp/

株式会社ニシヤマ

株式会社ニシヤマHPより

ニシヤマは70年以上の歴史がある裏地を中心とした繊維製品のサプライヤーで、原材料の輸入なども行っています。株式会社ミツヤや株式会社ダナックスなど染工場の系列会社で、北陸の地場をいかしたポリエステルを中心とした合繊生地加工に強みを持ちます。また近年はサステナブルのセルロース繊維「ナイア」の取扱いなど、環境にやさしい商品づくりに力を入れ、布帛表生地のオリジナル品の開発、販売も増やしています。

メーカー名

株式会社ニシヤマ

URL http://www.nishiyama-inc.jp/

蝶理株式会社 

蝶理株式会社HPより

蝶理は1861年に京都西陣の生糸問屋発祥の繊維、化学品、機械の専門商社です。合繊繊維品の産地である北陸地方とのつながり、30ヵ所以上の国内外ネットワークを駆使した裏地を含めた生地開発、生産、OEM縫製生産には定評があります。

メーカー名

蝶理株式会社

URL https://www.chori.co.jp/

旭化成アドバンス株式会社

旭化成株式会社の子会社で繊維、樹脂化学品、建材事業中心の販売会社です。繊維ではベンベルグ®やロイカ®など旭化成の開発せんいを中心に、アパレル向け裏地や表生地などを取り扱っています。

メーカー名

旭化成アドバンス株式会社

URL https://www.asahi-kasei.co.jp/advance/jp/

取扱い上の注意

裏地の色落ち、移染に注意

表生地と反対色の裏地を使用して裏地から表生地に色が移ってしまったり、下に着用する服に色が移ってしまうことがあります。使用する裏地の色の組合せや染色堅牢度には注意が必要です。特に綿などの天然繊維の裏地を使用する場合、合成繊維に比べて染色堅牢度が良くない傾向があるので注意が必要です。

 

強度に注意

裏地の強度にも注意が必要です。裏地単体に付加がかかるような場面は多くないと思われますが、裏地が裂けたり破れたりすると服として着用できなくなってしまいます。織物裏地では引裂強度試験や滑脱抵抗力、編物裏地では破裂強度を確認しておく方がよいです。

 

キュプラ裏地の取扱いに関して

キュプラは縮みやすく、シワになりやすい素材なので取扱いに注意が必要です。水分に弱く摩擦で毛羽立ちやすい特性があるので家庭洗濯は避けた方が無難です。クリーニングでの処理をお勧めします。

 

選定ポイント

着脱しやすい裏地の選定

裏地の役割の一つに服を脱ぎ着しやすくするということがあります。表生地が滑りが悪い生地などであれば、裏地には滑りがよいキュプラやフィラメントの合繊の裏地を使用することで着用しやすくなります。特に袖は細く、裏地によって袖の通しやすさが全く変わるので、その選定には注意が必要です。

 

製品と表生地の特徴を生かせる裏地選びを

表生地の特徴を生かせる裏地選定も重要なポイントになります。伸縮性のある表地を使用した製品に裏地も伸縮性のあるものを使用することで、着用した際に製品として伸縮性が感じられ着やすく動きやすくなります。また薄くて軽量の表地を使用する製品には裏地も軽量のものを使用することで製品として軽量に出来ます。ダウン製品や中綿製品などには綿抜けを軽減する為に高密度で通気が少ない裏地を選ぶことをお勧めします。

 

資材発注時や縫製時の注意とポイント

繁忙期の長納期に注意

裏地だけではないですが、繁忙期には注文が集中して在庫が切れてしまっていたり、生産にも時間がかかることがあります。キバタ在庫が無い場合などには生産リードタイムで3カ月以上かかってしまうこともあり注意が必要です。

 

同一反内での裁断の推奨

製品1着の中で裏地のパーツが身頃、袖など複数になる場合、同一原反内で裁断して使用することをお勧めします。原反が違うと生産ロットが異なることもあり、同じ色でもロット毎の色差が生じてしまう可能性があるので要注意です。

 

素材による染色堅牢度と色移りに注意

裏地も生地の組成や種類によって、色落ちや色移りの度合いを示す染色堅牢度が良くないものもあります。特に綿などの天然繊維の生地は摩擦をはじめ堅牢度がよくない傾向があります。裏地から表生地や、裏地から内側に着ている衣服へ色移りする可能性もあるので注意が必要です。

 

おすすめ資材・加工方法

リサイクル材料使用裏地

リサイクル裏地のサンプル帳

 

エコやサステナブルという言葉とともに、環境に対する意識が強まっているなか、服をつくる材料にもエコやサステナブルな商品が日々開発されています。裏地でもリサイクルポリエステルやリサイクルナイロンを使用したタフタやツイル、メッシュやトリコットなどがあり、人気が出てきています。

 

ラミネート防風裏地

ラミネート防風裏地のサンプル帳

織物や編物のベースにポリウレタン製のフィルムなどを貼り合わせたラミネートの裏地などがあります。織目や編目から風が通ってしまいますが、フィルムを貼ることで通気性を抑え裏地に防風性を持たせることが出来ます。フィルム自体の防風性はありつつも透湿性能がある高機能なものも多く、蒸れを軽減させることができます。また通気性が抑えられることでダウンや中綿の吹き出しを防止することもできるので、その用途でも使用されることがあります。

 

静電気防止裏地

静電気防止裏地のサンプル帳画像

                   

冬場に発生しやすい静電気ですが、特に合繊繊維が帯電しやすいと言われています。静電気が溜まると“パチッ”と電気と痛みがはしったり、生地がまとわりついたりします。そんな静電気を軽減や防止する為に、制電糸や導電糸を織り込んだり、編み込んだりして帯電しないようにした機能裏地がございます。

 

まとめ

 裏地は服をつくる上でとても大切な役割を担っています。裏地の色やデザインが全体への大きなアクセントになります。また裏地の種類や表生地との組み合わせ方によって着心地が変わったり、服自体に機能を付加させてくれます。服に付加価値を付ける為にも慎重に裏地を選定いただくことをお勧めします。

 

参考文献

テキスタイル用語辞典

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