繊維ってなに? textileコラム①  

まえおき…

&CROP編集部の瀧澤です。

「アパレル資材辞典」の表地・繊維についての解説や「探る」記事を中心に書いています。正直に言うと、もちろんかなり調べまくって書いているのですが、参考にしているのはやはりネットと書籍です。繊維技術や商品の刷新速度も日々加速していて、ネット上には古い情報と新しい情報が混在し、誤った解釈で書かれた記事が検索上位に表示されていることも多々あります。今後さらにCGPTなどのAIによって生成された間違った情報が大量にネット上に放出されたらどうなるのだろうと多少の不安を感じながら、出来る限り現状に即した正確な内容になるようにと心掛けて書いては…います。それでも自分自身が内容を誤解して認識していたり、知らないうちに古い情報をもとに書き進めているのに気がついてハッ!としたり、また調べているうちに知らなかった事実や知識に出会って色々なことが連鎖して腑に落ちるような発見もあったりします。そうした気づきや、なんとなく思いついたことをもう少し気軽&タイムリーに書いてしまおうと…独断でこのTextileコラム①を書いているので主旨に合わないと言う理由で却下されて消えるかもしれません(笑)…

繊維って、なに?…

初回は繊維についてです。「アパレル資材辞典」の方で書くと“繊維とは”というタイトルになってチョット肩が凝る内容になるのでここでは思いつくままに多角的に繊維に迫ります!

私たちの業界は繊維産業・繊維業界と呼ばれています。しかしほとんどの若い人たちには自分が繊維の業界に属しているという認識は無いのではないかと思います。何故かと言うと繊維って何ですか?という質問をしてもほとんどの人がピンと来ない顔をしています。せんい?…食物繊維? 便秘解消~!みたいな反応ですからね(笑)

繊維の定義

ではまず、繊維の定義から見てみます。やっぱり…硬い?

JIS規格の繊維の定義は「糸、織物などの構成単位で、太さに比べて十分の長さを持つ細くてたわみやすいもの。」

Wikipediaでは「動物の毛・皮革や植物などから得られる自然に伸びた、または人工的に伸ばされた細くしなやかで凝集性のある細長い素材。ASTMインターナショナルの定義では繊維は物体の形状であり材質を問わないとされている。」

ちなみに私が新人研修向けに繊維を説明するときに使うテキストでは

 「繊維=布となる材料(糸やワタ)の原料で細長い個体の総称」としています。

これらの定義では凡そファッションや繊維産業に用いられる布や不織布となる繊維の素材について規定しています。繊維は細長くしなやかであることによって撚り合わせて糸にしたり、絡みあわせて不織布にしたりすることが可能な素材と言えます。

天然繊維と化学繊維

そして、私たちが衣類やインテリアをはじめとした様々な用途に用いている繊維には、古くから人類が自然から得られる原料を利用してきた天然繊維と人工的に合成される化学繊維があります。天然繊維には植物を原料とする植物繊維(セルロース繊維)と獣毛や昆虫の繭を利用する動物繊維(タンパク質繊維)化学繊維には合成繊維・再生繊維・半合成繊維があります。これらの繊維の詳細な解説は文末に記事のリンクを貼ってあるので興味があれば参考にして下さい。

有機繊維と無機繊維

繊維には有機繊維無機繊維があります。無機繊維は人工的につくられる繊維でガラス繊維・炭素繊維・セラミック繊維・金属繊維などがあり、天然の石綿(アスベスト)も無機繊維に分類されます。無機繊維についてはあまり衣料に使われることがないのでここでは取り上げません。今回の本題は有機繊維、先に取り上げたファッションや衣料に使われる繊維は全て有機繊維です。天然繊維=有機 、合成繊維=無機と誤解しやすいのですが

天然繊維も化学(合成)繊維も全て有機繊維になります。ポリエステルもナイロンもアクリルもみんな有機繊維です。では天然繊維と化学繊維の違いは何かと言うと自然に存在している有機高分子化合物を利用しているのが天然繊維で人工的に合成された有機高分子化合物を繊維状に加工して利用しているのが化学繊維なのです。

天然繊維は生物由来?

私たちが利用している天然繊維が全て生物に由来しているのはご存じの通りです。麻は植物の茎や葉を構成している不溶性の繊維質を取り出して利用するので靭皮繊維と呼ばれ、綿(コットン)やカポックは種子(種)の周りの綿毛を利用するので種子毛繊維と呼ばれます。ウールなどの動物の毛は獣毛繊維と言い、蚕(カイコ)やヤママユガの仲間の幼虫が蛹になるときに吐き出す繊維が絹(シルク)です。ですから無機繊維の石綿を除くすべての天然繊維は生物由来と言えます。

セルロースとタンパク質

セルロース分子モデル
セルロース分子モデル

植物由来の靭皮繊維や綿の成分はセルロースを主成分としてヘミセルロース(セルロース以外の多糖類)リグニンと呼ばれる低分子の糖が長く連なった高分子(炭水化物)で動物繊維を構成しているのはアミノ酸が長く連なったタンパク質です。それで植物繊維はセルロース繊維動物繊維はタンパク質繊維とも呼ばれます。綿・麻・セルロース再生繊維を燃やすと紙を焼くような臭いがして、ウールやシルクを燃やすと髪の毛を焼いたような臭いがするのでセルロース繊維とタンパク質の繊維は焼いてみることで簡単に見分けることもできます。

セルロース繊維もタンパク質繊維もポリマー(高分子)なのだ

人類は有史以前から様々な天然原料を繊維として利用して来ました。そして19世紀になってこれらの繊維が単糖類(ブドウ糖)アミノ酸の様な低分子(モノマー)が長く繫がった(重合した)有機高分子化合物であるということが分って来ると人工的にモノマーを重合させてナイロンやポリエステル繊維の原料となるポリマーを合成する技術が開発されて行きます。

(textileコラム②に続く予定です。)

まとめ

  • ファッションにおける繊維とは布(テキスタイル)となる材料(糸やワタ)の原料で細くて長い個体の総称です。
  • 繊維には有機繊維と無機繊維があり一般の衣類に用いられる繊維は有機繊維です。
  • 繊維には天然繊維と化学繊維があります。
  • 天然繊維には植物由来のセルロース繊維と動物由来のタンパク質繊維があります。
  • 有機繊維は低分子(モノマー)が長く繫がった高分子(ポリマー)です。
  • 天然繊維は天然のポリマー、化学繊維は人工的に合成されたポリマーです。

繊維素材の記事リンク

天然繊維とは 

綿とは 

麻とは  

ウールとは 

絹・シルクとは 

化学繊維とは  

再生繊維とは 

ポリエステルとは 

ナイロンとは 

再生繊維・合成繊維・半合成繊維の違いと成り立ちを知る 

次世代タンパク質繊維とセルロース繊維の未来 

 

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